連結損益計算書

朝倉研二氏(以下、朝倉):みなさま、おはようございます。長瀬産業社長の朝倉でございます。今回もカメラ越しとなりましたが、大勢の方にご参加いただきましてありがとうございます。それでは、さっそくではございますが、2022年3月期第2四半期決算概要および通期の見通しについて私からご説明申し上げます。

売上総利益687億円、これは前年比128パーセント。営業利益194億円、これは218パーセント。そして純利益146億円、144パーセントとなりました。おかげさまをもちまして、段階利益すべてにおいて、第2四半期累計としては過去最高の数字となっています。

自動車、樹脂、エレクトロニクス、加えて北米のPrinovaグループなど、おかげさまでおしなべて、ほとんどの業界において好調に推移したと申し上げることができると考えています。

当初予想と比べて円安に推移した結果として、営業利益ベースで当期3億円前期比で多く計上されています。

また1つ、昨今の特筆事項として、物流関連の経費につき申し上げます。仕事が増え、当然のことながら販売費に含まれる物流経費は増えていますが、昨今の船舶、トラック等々の物流の混乱により、この経費が非常に大きくなっています。概算ですが、月々1億円、年間では10億円近辺の経費増と、私どもは見積もっています。

所在地別 売上総利益

所在地別の売上総利益です。国内外ともに好調に推移していますが、国内は特に自動車、モバイル機器・ディスプレイなどを筆頭とするエレクトロニクス関連が好調に推移しました。海外においては、グレーターチャイナ、アセアンを中心とした地域において、樹脂関連の仕事が大幅に増加し、数字を牽引しました。

米州ですが、Prinovaグループは先ほどお伝えしたとおり好調です。詳細は後ほどご説明しますが、私どもが持つ化成品関連・電子材料関連の現地法人や、メキシコにおいて担当している業務が非常に好調に推移し、米州は前年同期比で大幅増となっています。

業態・セグメント別売上総利益 2期比較

セグメント別の利益ですが、詳細は次ページ以降の営業利益のところでご説明します。

業態・セグメント別営業利益 2期比較

各セグメントもご覧のとおり、前年同期比で大幅にアップしています。市場環境によるものもありますが、おかげさまで第2四半期累計の営業利益は過去最高となりました。

一方で、先々に向けた準備もしっかりと継続しており、DX関連の投資は昨年度に引き続き今期も国内外で行っています。

私どもの1つの特色、または強みとも言えるバイオ関連では、全社の力を上手く結集して取引先の役に立ちたいということで、新設組織として「NBT」と呼んでいるNAGASEバイオテック室を創設し、強化しています。

セグメント 営業利益概況:機能素材

8ページからはセグメント単位でご報告します。最初は機能素材セグメントです。当社グループの活動では、このセグメントがサプライチェーンにおけて一番川上に位置するセグメントです。

間接的な取引が多いのですが、自動車、エレクトロニクス関連の好調に支えられ、スライドのとおり前年同期比で大幅な増益となっています。

スライド左側の棒グラフは、販売と製造の2つの営業利益を表しています。製造の部分は、例えば、私どもの100パーセント子会社のナガセケムテックスの場合、機能素材と別のセグメントに分けて明示していますのでご了解ください。

セグメント 営業利益概況:加工材料

加工材料セグメントです。先ほどお伝えしたとおり、国内外の特にアジア地域において樹脂原料の需要の好調、価格の高騰、市況の好況化により、前年同期比で大幅な増益となっています。

一方で、スライド左側の茶色の棒グラフの製造部分をご覧ください。子会社の福井山田化学工業で製造しているカラーフォーマーという材料ですが、中国などの競合品との競争があり、残念ながらその分野においては低調に推移しています。

セグメント 営業利益概況:電子・エネルギー

エレクトロニクスは昨年も新型コロナウイルスの影響が比較的少ない分野でした。今期はナガセケムテックスで製造している薬液、エポキシ樹脂などをはじめ、半導体関連、精密加工関連などの部材の販売が大変好調に推移しています。

5Gや、次の6Gなどに用いられる様々な素材・部品について、当社では一昨年から全社を挙げて事業展開を行っています。正直に言いますと、まだまだ経費先行状態ですが、素材などの開拓が一歩一歩しっかりと進んでいる状況です。

セグメント 営業利益概況:モビリティ

モビリティです。車関連ですが、みなさまもご承知のとおり、特に昨年の前半は大きく傷んだ分野です。ですので、この上期は前年同期比で大幅な増益を記録することができました。

このセグメントの中心の1つである樹脂関連ですが、次世代の車である、エネルギー対応車、EVなどに向けての様々な機能素材・部品の販売が増加しています。ポートフォリオ上、セグメント内でよいかたちになっているものと理解しています。

セグメント 営業利益概況:生活関連

生活関連です。前中期経営計画から引き続き力を入れているセグメントです。Prinovaグループが牽引する部分も多いですが、この上期はトレハロースをはじめとした林原の活動やまた医薬の原体等々が非常に好調に推移しました。

主要製造子会社の業績概要

ここからは、当社3社の主要製造子会社について簡単にご報告します。ナガセケムテックスは21年前に4社統合で発足して以来、最高の数字を計上しています。

電子関連の部品や薬品に加えて、エピクロ誘導体である「デナコール」という商材が、北米で展開している3Dプリンティング等で大幅に採用いただくなど、大変好調に推移しています。

林原は、昨年竣工した新しい生産棟が今期から無事に稼働を開始しています。主力製品「トレハ®」「AA2G®」に加えて、新しい食品素材も好調です。償却費は高まってはいるものの、スライドに示しているとおり、営業利益は前年比27パーセント増と、大きな数字ではありませんが増益です。

Prinovaグループについては、当初予想よりも好調に推移しています。これについては後ほどご説明します。

連結貸借対照表

B/Sです。取引の増加に伴い、運転資本が大幅に増加しています。在庫も取引増に伴い大幅にアップしていますが、幾分かの要因については、先ほど少しご説明したとおりです。

サプライチェーンの混乱について、私どもは非常に考慮しているため、いささか多めと言える戦略的な在庫の積み増し等々も含まれているとご理解いただければと思います。当然のことながら、本社のみならず各地域において、在庫の出入りを注視している状況です。

自己資本比率は9月末で50.1パーセント、NET D/Eレシオは0.28倍となっています。

連結キャッシュ・フロー

キャッシュ・フローです。こちらも運転資本が増加しており、営業キャッシュ・フローは136億円の支出となっています。投資有価証券については、この上期も売却を進めています。

一方で、各製造関連の組織において固定資産への投資があり、投資キャッシュ・フローは49億円の支出となっています。

2022年3月期 通期業績見通し

ここからは、2022年3月期の通期業績の見通しについて簡単にご報告します。これはまだ速報ベースですが、足元の10月度はこの上期並みに推移しています。

一方、上期を牽引した樹脂関連は、特に原料の値段や供給、流通、トータルのサプライチェーンにおける在庫等々において、これまでのような一本調子の好調な推移が続くことは非常に難しいと、私どもは判断しています。

そのようなこともあり、第1四半期終了時に上方修正した数字を、通期見通しとしては据え置いています。営業利益300億円、純利益225億円という数字です。

もう1つの不透明な要因として、中国の状況があると思います。事業にどの程度の影響があるかというところまで、具体的な数字をまだ見積もってはいない状況ですが、エネルギー関連および貿易摩擦、また、2月に開催予定の北京オリンピック等々に絡んだ中国の経済状況が関わってきます。私どもとしては中国関連が大きなポーションとなるため、この地域の経済状況を不透明な部分として注視しているところです。

2022年3月期 セグメント別業績見通し

セグメント別の業績見通しについては、スライドの表をご覧ください。下部にその他・全社というところがあり、営業利益は前年比12パーセント増となっています。これは主に、人件費の高騰によるものと理解しています。特に、北米における人件費の高騰は著しいものがあり、このような数字となっています。

株主還元状況

株主関連についてご報告します。当初公表のとおり、年間配当は48円と予定しています。中期経営計画にも記載していますが、継続増配を維持するべく努めているところです。今期で12期連続増配となる見通しです。

自己株式の取得については今年2月に発表しており、現在オペレーションを進行しています。足元の状況では、50億円に近いところまで取得が進んでいるかと思います。以上、業績および見通しについてご報告しました。

サステナビリティ推進体制の構築

当社のサステナビリティ推進の状況について、簡単にご説明します。2018年度を「ESG元年」と社内で宣言して、様々な活動を進めています。スライドに記載している体制にて、会社を挙げてサステナビリティを推進できるように、鋭意努力しているところです。

サステナビリティ推進委員会については私が委員長を務めており、米国人、女性、製造会社の社長等を含む多種多様なメンバー構成にて、積極的な委員会活動を行っています。こちらは、グループ全体の基本方針や活動の推進状況を常に俯瞰して、いろいろな施策につなげようという委員会です。

この委員会のもとに、従業員エンゲージメント向上プロジェクト、カーボンニュートラルプロジェクトを今年発足しています。この2つのプロジェクトが大きな柱として進行中です。

スライド右側に記載しているのは、今年4月に新設されたサステナビリティに関わる業務執行の組織です。サステナビリティ推進室として、関連部署とともに、右下に示しているような活動を鋭意推進しています。

コーポレートプロジェクト

コーポレートプロジェクトとして、2つのプロジェクトが進んでいます。私自身、このサステナビリティ活動の原点はやはり人であると確信しており、従業員エンゲージメントを大変重要視しています。

NAGASEグループにおいては、会社と従業員が相互に理解し合い、お互いに高め合う状態と定義して、この浸透に努めています。グループワイドで、様々なかたちによる第三者サーベイを行い、この点を客観視できるような体制も組んでいるところです。

カーボンニュートラルについては、製造業が中心かと思いますが、2050年、2030年、2025年と、それぞれ長期目標の設定に取り組んでいます。現在は特に非財務目標の設定を推進しており、今期中に社内外に開示する予定です。

サプライチェーンにおける排出量の可視化/ゼロボード社と業務提携

具体的な取り組みについて1つだけご紹介します。ゼロボードと提携して、サプライチェーンのCO2排出量を可視化する取り組みを進めています。ご承知のとおり、私どもは化学業界に身を置いています。自社のCO2排出量算出に苦労されている会社は多く、さらに、自社および様々な製品を取り巻くサプライチェーンの排出量算出となると、なかなか手が付けられないという会社もあります。

そのため、2,000社を超えるNAGASEグループの取引先のみなさまに、CO2排出量算出において私どもが提案しているクラウドサービスがお役に立てるのではないかということで、すでに140の会社とお話を進めている状況です。

簡単ではありますが、私からの説明は以上です。このあと、Prinovaグループの説明を担当の池本より行います。

中期経営計画 ACE 2.0 Prinovaグループの位置付け

池本眞也氏:みなさま、おはようございます。長瀬産業の池本でございます。担当しているPrinovaグループの成長戦略についてご説明いたします。

「中期経営計画 ACE 2.0」におけるPrinovaグループの位置付けや、2019年8月の買収以降に進めていたこと、強みなどを中心にご説明します。

Prinovaグループの位置付けです。ACE 2.0において、事業ポートフォリオの考え方を整理しています。スライドにある4象限については、中期経営計画の中でもご説明していますが、注力、育成、それぞれにおいて事業分野を特定しています。

フード関連は生活関連セグメントに含まれる事業ですが、ACE 2.0における注力分野の1つです。これに加え、海外主導事業への取り組みも将来の成長に向けた重要な施策として、育成分野と位置付けています。

この両分野において、Prinovaグループは重要な位置付け、言わば中核になると考えています。数字をお示ししていますが、2025年に向けても大きな飛躍を期待されている、そのような数字的な位置づけもしています。

Prinovaグループの会社概要

Prinovaグループの会社概要について、買収から2年が経ちますが、あらためてご説明します。Prinovaグループの本社はアメリカのイリノイ州、シカゴの近郊にあります。創業は1978年です。売上高は866億円、営業利益は47億円とありますが、これは2020年12月期の結果です。

現在、従業員数は1,200名に達しており、NAGASEグループの買収後も、人数面では大きな成長を続けている会社です。

スライドの写真はPrinovaグループの本社ですが、特徴としては、商社業、製造業の両方を兼ね備えるハイブリッド型、垂直統合型の企業ということです。NAGASEグループの業態と非常に似た形態をとっています。スライドの小さな写真は各拠点です。アメリカ以外にも中国、イギリスなどにも生産拠点を持っています。

Prinovaグループの強み

Prinovaグループの強みについてご説明します。スライド上部にある青色の部分が、食品業界の一般的なサプライチェーンです。食品素材メーカー、ディストリビューター、製造・加工メーカーを経て、最終的に食品メーカーに至る流れです。

Prinovaグループはこの中に3つの強みを持っています。1つ目の強みとして、Prinovaのディストリビューション機能です。強みの①の赤いところになりますが、2,000品目以上の食品素材を取り扱っており、これらをディストリビューターとして各加工メーカーさんに販売させていただいています。中には、世界でも有数のレベルにある取扱量を持っているものも多々含まれており、非常に強いポジションでの食品素材の取り扱いをさせていただいています。

そして強みの②ですが、このお客さまに販売する先、加工メーカーさん、プレミックスメーカーさん、こういった企業さんの部分にかぶる部分ですが、自社でも加工し、バルク品でお客さまにお届けする、そのような機能も持っています。最終製品に至るまで、このバルク製品を、品質保証を含めて、Prinovaで混ぜたものをお使いいただける、そのようなものをまず供給させていただいています。

そして3つ目、これは業界としてはスポーツニュートリション業界にかなり特化していますが、最終製品の受託販売です。これは、お客さまの最終販売形態まで、Prinovaでパッケージを含め生産する事業で、スポーツニュートリション業界の各お客さまの中では、自らの製造ラインをお持ちにならないところが多々ありますので、そのようなところでPrinovaの強みを持っています。

Prinovaグループの事業概要

Prinovaグループの事業概要です。スライドに記載のとおり、全部で5つのディビジョンに分かれています。下から順番に、Ingredients事業、Aromas事業と続きます。

Ingredients事業は商社部門のディストリビューションとして、先ほどご説明したような各食品素材で強みを持っています。特にビタミン類、アミノ酸の類においては、世界トップレベルの取扱高を誇り、非常に強い調達力、供給力を持っています。Aromas事業では香料の販売を行っています。

Solutions事業、Armada事業は製造の中核を成す部分です。Solutions事業は、先ほどお伝えした配合品、プレミックス製品に加え、粉体の大きさを流動コントロールする事業では、お客さまのご希望に応えて微細加工のような機能も持っています。Armada事業はスポーツニュートリション業界に特化するものです。

それらの製造業に関して、さらに付加価値を加えているのがFlavors事業です。最終製品の差別化において、市場の一人ひとりのお客さまの味覚を含む嗜好に対応するために、味付け、言わばフレイバーの技術は欠かすことができません。Prinovaグループではそのような技術のみならず、全米の加工業者の中でも珍しい専門の調香師も備える事業です。

ビジネスモデル(サプライチェーン)

サプライチェーン全体における、NAGASEグループ参画後のPrinovaグループの位置付けです。スライド上のオレンジ色の部分が、NAGASEグループ各社の位置付けです。

素材生産としての林原とナガセケムテックス、販売チャネルとしての長瀬産業と各現地法人として、素材生産および販売チャネルをPrinovaグループと合体化することにより、スライド右端にある対象市場に対し、それぞれの事業が販売を強化していく位置付けです。

現在顧客は3,000社以上に上っており、このような市場の要望に対し、このサプライチェーンで力強く応えていきたいと考えています。

買収~PMI~現在までの状況

2019年8月に買収を完了していますが、そこから本日までの間に取り組んできたことをご紹介します。2019年よりPMI活動を実行し、13個のWorking Groupをそれぞれの分野に設置しました。NAGASEグループから約半数、Prinovaグループから約半数で、両社を合わせて90名が結集し、それぞれのチームがWorking Groupとして活動しています。

手始めにガバナンスの構築、グループシナジーの創出に注力し、それぞれの経営体制の見直しや、NAGASEグループとしてのいろいろなルール・システムの導入に取り組んできました。

グループシナジーとしては、林原やナガセケムテックス製品の販売を開始しました。また、Prinovaグループは長瀬産業に対しても非常に強い購買力を持っているため、原料の集中購買を行い、さらに、アジア展開向けに各地域と協業を開始しています。

2020年に入ると、NAGASEグループとしてDXへの取り組みを同時にスタートしました。マーケティングプラットフォームを構築し、今年4月より新たにDXのオンラインセールスを開始しています。

2021年に入ると、ガバナンス構築の一環によるコンプライアンス対応として、内部通報窓口の設置などを行っています。後ほどご説明しますが、M&Aやキャパシティの増強などにも取り組んでいます。また、デジタルマーケティングによる販売強化を進めている状況です。

NAGASEグループ力の活用

NAGASEグループ力の活用です。スライドの円の中心にPrinovaとディビジョンを黄色で記載しています。DX開発、グローバル化、M&A、研究開発、ITなど、ありとあらゆるNAGASEグループの戦略的ビジョンをPrinovaグループと共有し、統合を進めてきました。

ACE 2.0 成長戦略

成長戦略です。特にPrinovaグループにおける成長戦略ですが、製造・加工事業の拡大、グループシナジーの創出の2つを挙げています。まずは製造・加工事業です。欧米市場においてPrinovaグループの存在感は日に日に高まっていると自負しています。

新規のお客さまや大手ブランドとの取引も拡大しています。そのようなお客さまのニーズに応えるため、配合技術や先ほどお伝えしたフレーバーの技術、お客さまに提供する製品形態など、パッケージを含む技術を拡充してきました。

M&A・製造・生産能力の増強も後ほどご説明しますが、新たな付加価値を作り、新たなお客さまを獲得するための能力増強を進めています。

グループシナジーの創出としては、NAGASEグループ、特に林原製品の欧米での拡販に注力しています。スライドに写真を2枚載せていますが、1つは「CITRAPEAK」です。これはスポーツ業界で林原の製品をどのように拡販するかということで、新たなブランドで林原の製品を投入しました。

そしてまた下のハンバーガーですが、代替肉はハンバーガーの中に使われます。最近、日本でも出てきており、代替肉用のフレーバーをコントロールする、そのような役割の素材なのですが、林原とともに開発し投入しています。

市場規模・成長性(スポーツニュートリション市場)

現在、Prinovaグループで注力している大きな市場のスポーツニュートリション市場についてご紹介します。スポーツニュートリション市場については、買収以前からPrinovaグループが持っているということで注目していましたが、大変強い立場でPrinovaグループが展開しています。

グローバルの市場規模ですが、CAGRで8.8パーセント成長という非常に高い伸びを示しており、特にアメリカ、ヨーロッパでの市場が大きなところです。アメリカでは年間1兆4,000億円の市場規模で、アジア・日本はまだその10分の1程度ですが、20年で数百億円規模から1,600億円規模(日本)に急成長しています。

世の中のスポーツに対する健康志向の高まりとともに、さらに見直しが進んでいることが表れていると考えています。

製造・加工事業の拡大

スポーツニュートリション市場を含む我々の戦略です。先ほど新設備、生産能力の増強についてお話ししましたが、アメリカのユタ州に新工場を設立します。

今年11月に発表させていただいていますが、現工場はテネシー州にメイン工場があり、こちらの工場だけでも工場として全米有数規模の生産工場です。スポーツニュートリションの配合工場としては有数のレベルですが、それと同じ大きさの規模の工場をユタ州に作るということです。

フェーズ1において同規模のため、今後はさらなる増強も可能な設計で建設を進めており、来春の量産開始を目処に取り組んでいます。

また、北米における甘味料専門のディストリビューター、The Ingredient Houseを買収しました。本年10月にグループ化していますが、主に飲料関係で使われる人工甘味料の大手の取引ディーラーです。Prinovaグループでもこのようなビジネスはありますが、商品の幅をより拡充し、お客さまとの関係を強化するために買収しました。

みなさまもご存じのアメリカの多くの大手飲料メーカーとの取引があり、これらの会社との取引を通じて拡大する予定です。

グループシナジー創出

グループシナジーの創出についてです。スライドの地図をご覧いただくとおわかりのとおり、欧米に強いPrinovaグループと、アジアネットワークにおけるNAGASEグループの役割を融合し、グローバルにPrinovaグループのビジネスを拡大していく戦略で取り組んでいます。

ACE 2.0 グローバル展開

2020年から2025年の売上高を掲載していますが、それぞれACE 2.0に即してスライドのとおりの数字を目指しています。欧米は今のところ97パーセント程度ですが、アジアがまだまだだと思っていますので、このような地域での拡大・拡販がPrinovaグループの1つの成長戦略として重要だと思っています。

ACE 2.0 成長規模・事業ポートフォリオ

事業ごとの中身です。全体のバランスをご覧いただくと、2020年度はトータルで47億円の営業利益ですが、2025年には106億円のレベルに高めるべく拡大していきます。

グラフの黒枠で囲っている部分が製造・加工事業に貢献する部分です。現在、Flavors、Armada、Solutionsの3つにおいて、営業利益のシェアは3分の1程度ですが、半分以上がこれらの製造・加工事業になるように、先ほどお伝えした戦略を踏まえ拡大していきます。

ACE 2.0 計数計画

それらを踏まえてPrinovaグループ全体での営業利益をご覧ください。先ほどお伝えしたとおり、営業利益が100億円を超える目標計画を2025年に向けて進めています。

2019年の買収直後に、私はこの場で同じようにPrinovaグループについて事業説明を行いましたが、当時は「営業利益は40億円程度から倍くらいを目指す」とお話ししたところ、みなさまから「非常にバラ色でよいね」という評価をいただきました。

それから2年が経ち、現在は倍程度をさらに上回る106億円を目指せる位置にいると考えています。引き続き、この目標を達成できるように努力していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

以上、池本からPrinovaグループの事業の成長戦略についてご説明差し上げました。ありがとうございました。

質疑応答:政策株式の売却の実施について

司会者:政策株式の売却を実施していますが、当期はさらなる売却を予定していますか?

朝倉:政策株式については、中期経営計画において1年間で60億円、5年間の期間中で300億円の縮減を謳っています。基本的にはこの数字、この規模の縮減を年次における基準と考えています。

そのような中で、この上期は昨年の上期よりは少ない数字ですが、政策株式の売却を進めています。下期においても、まだ最終的な規模感は決まっていませんが、今お伝えした基準に沿って進めていく予定です。

質疑応答:中国における現在の影響と今後のリスクについて

司会者:経常利益の上期実績は204億円ですが、通期計画の310億円は保守的に見えます。その理由の1つに中国についてのご説明がありました。特にどのようなセグメントやどのような商品取引で影響が出始めているのか、今後のリスクに関してもう少し詳しく教えてください。

朝倉:経常利益のご質問でしたが、段階利益のすべてにおいて堅めの数字の見通しとさせていただいています。その背景となる中国および他の分野についても理由をご説明します。中国については、私どもの関連会社を含め、昨今、中国政府の強制的な指示により電力が止められ、稼働を停止せざるを得ない事例が頻発しています。これは大会社においてもそのような経験があると聞いています。私どもはそれぞれのオペレーションの粒が小さいですが、大きな打撃を受けている状況です。

中国では火力発電の再開などいろいろな情報があります。これから冬を迎え、間違いなくPM2.5が増える中で、北京オリンピックに向けて空気を綺麗にしなければならないという理由から、政府の決断で化学セクターの工場の生産活動の縮小やストップを余儀なくされる可能性が高いのではないかと見ています。

数字的にいくらということは非常に難しいですが、そこを今一つの大きな懸念点と見ています。一方、中国における半導体は、2025年に向けて自国製品を伸ばそうと一生懸命やっておられます。そのため、半導体においては、さほど大きな影響はないのではないかと見ています。

もう1つは先ほどご説明しましたが、この上期はプラスチックの樹脂原料のビジネスが非常に好調に推移しました。これは、1つは需要そのものが旺盛であったこと、もう1つは単価が過去ないレベルで値上げ基調となったことです。

ただサプライチェーンのすべてを俯瞰すると、巣ごもり需要の踊り場などいろいろな言い方をされますが、それぞれの分野において少しずつ好況感が薄れているのを肌で感じています。

中国に限らずアジア圏、日本において一本調子で樹脂の好調は続かないことが、第1四半期で公表させていただいた数値を据え置きとさせていただいている理由となっています。

質疑応答:2022年度の経営環境について

司会者:御社は2023年3月期も増益になりそうな経営環境ですか? 御社の自助努力としての具体的な増益要因は、どのようなものがあるのでしょうか?

朝倉:2023年3月期については、まだ細かな分析は済んでいません。おかげさまで今期はよい数字を残す予定で、私どもとしては、来期もぜひ続けて同様の数字を納めたいと思っています。

市況要因で良い数値であっても、なかなか私どもとしては満足すべきではないと考えています。そうした中で、やはり様々なポートフォリオを充実させていくことが重要ということで、その第1は先ほど池本から説明がありました、食品関連、これについてまだまだ世界規模で伸ばすことができると考えています。

さらに、こちらも先ほど触れましたが、樹脂原料中心であった私どもの車関連ビジネスですが、ここに素材、そして電池関連の様々な部品等々、エネルギー対応車、主としてEVになりますが、そのような分野における新しい商材の仕事が増えつつあります。車の場合、1つの製品が数字になるには時間を要しますが、幾分か既に読める部分も出てきており、2022年度のドライビングフォースになるのではないかと期待しているところです。

質疑応答:今後の増益計画について

司会者:Prinovaグループの営業利益に関してです。2021年度の70億円から2025年の106億円への増益計画について、その途中もリニアに増益する予定ですか? 2022年の米国ユタ州での新工場稼働開始や、The Ingredient House買収による増益効果をどのように見ればよいでしょうか?

朝倉:2025年の100億円を超える数字について、70億円からリニアで進むのかというご質問ですが、必ずしもリニアな成長だけで達成できるものではないと考えています。ユタ州の増産、The Ingredient House買収の効果については、2022年度から間違いなく数字に寄与するものと考えています。

NAGASEグループではPrinovaグループを1つの核として、東南アジアにおける食品素材関連など、今はまだほとんど数字として計上できていない地域について、2025年に向けてジャンプアップすることを目指しています。

そのための施策をまだ今日も発表申し上げていませんが、いろいろ打っていく必要があると考えています。そのような意味では、ミックスの要因において、100億円を超える数字を到達できるのではと思っています。

今日は担当の池本も来ていますので、もしあれば一言加えて下さい。

池本:概ね、社長から回答した内容のとおりです。ここでリニアかという点に関しましては、今期、食品素材分野も実は市況の影響をある程度、受けています。そのような今のサプライチェーンの混乱等も影響しているのですが、いわゆるディストリビューション事業に関して、今年ある程度追い風だったと見ています。このような追い風、また逆風もあり得るわけですが、これらに左右されることなく、より付加価値の高い事業を推進するという意味で、製造業であるArmada、Solutions事業を進めています。

スライドのグラフをご覧いただくと、おおよその成長のイメージと数字についてご確認いただけると思いますが、倍増以上の規模での成長を見込んでいます。このような計画を軸に、地域としてはまず欧米を伸ばし、先ほど社長がお伝えしたとおり、さらにアジアでの拡大を図っていきます。

質疑応答:米国での飲料缶の総数増加見込みに対する影響について

司会者:最近、米国の飲料缶市場では飲料の需要増加に伴い920億缶市場から、2024年までに少なくとも1,220億缶以上の空き缶の生産が拡大されるとのニュースが出ています。これに伴い、M&Aを行ったThe Ingredient HouseやPrinovaグループに対するプラス効果はどの程度見込まれるものでしょうか?

池本:非常によいポイントをご質問いただきました。米国の飲料缶市場は、まさに我々が注目している市場です。市場では「Ready to Drink」と呼んでおり、「RTD」という略称がよく使われますが、この市場は急速に伸びています。プラスチックボトル、缶ボトルの両方が伸びていますが、我々が狙っているニュートリション市場やスポーツニュートリション市場も、缶やプラスチックボトルで供給する形態が増えています。

液状でどのような製品を販売するのかといった戦略を持っているのがSolutions事業です。完成品まで持っていけると、最終的にはボトリングというプロセスがありますが、将来のテーマとしてはそのようなところまで視野に入れた開発も必要ではないかと考えています。

しかし、現状はスポーツニュートリション市場においてパウダーを中心に販売していく方向で進めており、ユタ州の工場は市場が非常に活況である西海岸に近い場所でもあるため、すでに様々なお客さまと供給形態についての話し合いに入っています。

質疑応答:自己株式取得について

司会者:自己株式取得については今後も積極的に進めていく予定ですか?

朝倉:現在、2月に発表した自己株式の取得オペレーションを継続中で、まだオペレーションが終了していない状況です。そのため、今後については残念ながらまだ何も決めていません。

今回、株主還元の一策として自己株式の取得を初めて大規模に行っていますが、私どもは常に検討していきたいと考えています。

質疑応答:食品分野に参入することになった背景と売上構成について

司会者:ナガセケムテックスおよび林原に加え、Prinovaグループなどの子会社化による食品分野への注力が見られます。化学品の専門商社である御社が食品分野に本格参入することになった背景をお聞かせください。

またNAGASEグループでは今後、食品分野の売上を全体の何割まで引き上げていく考えでしょうか?

朝倉:食品素材をスタートした背景ですが、私どもは昔からバイオに関わる仕事をしています。私どもがバイオと言う時は、多くの場合「酵素」を指しています。

様々なタイプの酵素がありますが、酵素を用いる1つの出口である市場が食品素材市場です。例えば、牛乳に使う酵素を国内外で販売していますが、大きく伸びるまでにはなかなか至っていませんでした。

この酵素事業の出口を模索している中で、まず2012年に林原を買収し、林原が持つ酵素技術を当社が持っているものと合わせることで、市場を幾分か獲得できました。

ところが、林原の買収後も海外に打って出るには難しい状況でした。人口分布を見ても海外が圧倒的に大きいため、海外に出ないことには仕方がないのですが、海外展開が少し遅れたということがあります。

その中で、2年前に幸いにもPrinovaグループと出会うことができました。Prinovaグループの買収は、私どもにとって非常に大きな経験と勉強となりました。

この市場規模を考えたときに、私どもとしてはPrinovaをただ伸ばすだけではなく、当社がもともと持つバイオ関連の様々な知見を事業に生かすことができると確信を持ち、今、私どもとしてはこの食品関連に力を入れているところです。また、SDGsでも謳われていますが、人類にとって食の確保は間違いなく重要なものと考えています。「食の確保について、なんらかのかたちで世界規模で役に立ち続けたい」という意向もあり、食品に力を入れることを決めています。

売上については、全体で何割ということは謳っていませんが、以前この場でもお話ししたかと思いますが、食品関連の売上規模、2,000億円程度(単純合算値)を1つの目標としています。これを2025年までには達成したいなというのが、私どもの今持っている数字的な目標です。