代表取締役 経歴

鈴木歩氏(以下、鈴木):よろしくお願いいたします。最初に簡単にご紹介したいと思いますが、私はココナラで代表取締役社長を務める鈴木と申します。当社には取締役が3名います。

ココナラのビジョンと事業内容

鈴木:ココナラのビジョンと事業内容について、簡単にご紹介したいと思います。課題認識についてですが、まず1つ目に労働人口の減少が起きています。もちろん少子高齢化などもあるのですが、一方で「人生100年時代」ということで、みなさまの活躍できる期間が非常に長くなっています。

また、働き方の多様化が進み、副業推進や「個の時代」と言われるような時代がやってきているため、我々はそこに対してなにかできないかを常に考えています。

ココナラのビジョンとしては、「一人ひとりが『自分のストーリー』を生きていく世の中をつくる」ということで、誰かの「今がんばりたい」「社会とつながっていきたい」という想いの後押しや応援をする企業でありたいと思っています。

その手段として、知識・スキル・経験を商品化し「ECのように売買できる」マッチングプラットフォームを運営しています。

ココナラの戦略コンセプト:「サービス版のAmazon」

鈴木:スライドはココナラの戦略コンセプトについて簡単にまとめた資料で、上段が「モノ」、下段が「サービス」になります。サービスはモノに遅れること10年くらいで、2010年からいろいろなバーティカルなサイトが立ち上がってきています。

2020年代はモノと同様にプラットフォームが立ち上がっていくだろうと考えており、そこにおいて我々が似たようなポジションを築いていけるように事業を進めています。

ココナラとは

鈴木:今日は会社概要、特徴と強み、成長戦略、財務実績と主要指標について、順を追ってご説明したいと考えています。

冒頭でお話ししたとおり、ココナラはEC型のスキルのマッチングプラットフォームを運営しているのですが、特徴が3つあります。

1つ目の特徴は「すべてオンラインで完結する」ということです。検索して購入するところまでではなく、取引が成立し、出品者と購入者がやりとりして納品に至るところまで、すべてオンラインで完結します。

2つ目は「EC型である」ということです。出品者の方が先にサービスを出品し、購入者は並んでいるたくさんのサービスを比較検討しながら購入していくため、モノを買う体験、すなわちEC型に非常に近い構造になっています。

3つ目は「幅広いカテゴリ」です。プライベートからビジネスに至るまで、また相談系から制作系まで、200以上の幅広いカテゴリを有しています。

EC型のサイトデザイン

鈴木:EC型であることは、サイトを訪れていただくとデザインから簡単に見てとれると思うのですが、いろいろなサービスが並んでおり、自分のニーズや予算に合うものを直感的に選んで購入することができます。

実際の取引画⾯

鈴木:スライドは実際の取引画面になるのですが、サービスの検索から購入、納品まで、「すべてオンラインで完結する」と先ほどお伝えしたとおりです。スライド右側は弊社側では「トークルーム」と呼んでいるもので、ユーザー同士でチャットができるようになっています。このような機能まですべてそろっています。

カテゴリ⼀覧

鈴木:カテゴリについてですが、制作・ビジネス系ではデザイン、イラストから翻訳に至るまで、相談・プライベート系では占いのようなエンターテイメント性の強いものから悩み相談、美容・ファッション、キャリアに至るまで、本当に幅広くSKUがある状態になっています。

ココナラと、⼀般的なクラウドソーシングの⽐較

鈴木:よくご質問をいただくため、国内クラウドソーシングとの比較についてご説明したいと思います。

ビジネスフローについては、これまでご説明したとおり、我々はEC型であるのに対して、クラウドソーシングは商流が逆であると理解しています。クラウドソーシングは先に購入者側、すなわち発注者側がいて、「このようなことをやってくれる人はいませんか?」と投げかけると、そこに出品者が提案していくというモデルです。これは我々とは逆の流れです。

ユーザーの獲得においては、実はココナラには営業人員が1人もいません。すべてWeb広告、TVCM、その他、オーガニックも含めてユーザーに訪れてもらっています。

一方で、クラウドソーシングは営業活動をメインとしています。大手企業の案件は営業のほうが獲得しやすいとは思いますが、我々のモデルは非常に裾野が広く、個人や中小企業のみなさまから認知されやすいという特徴があると考えています。

TAM、すなわちマーケットの広さについては、我々が本当にホリゾンタルに、制作から相談、ビジネス・プライベート、また法人・個人、すべてを対象としているのに対して、クラウドソーシングはどちらかと言いますと「お仕事色」が強いマーケットを特に対象としていると考えています。

結果として、最近は「個の時代」になってきて、個人や中小企業のマーケットが非常に活性化しているため、そこをターゲットとしている分、売上成長率が高まっているのではないかと考えています。また、営業人員を抱えていないことから、粗利生産性も一定の高い状態を維持できています。

ココナラの事業上の強み

鈴木:ココナラの事業上の強みということで、事業環境、競合優位性、収益構造について、いくつか挙げています。これはサマリーになっているため、詳細についてはこのあとの各スライドでご説明していきたいと考えています。

営業収益の推移

鈴木:営業収益の推移になります。2020年8月期が昨年8月に締まっていますが、非常に高い成長推移を見せており、昨年対比で50パーセントから60パーセント近い成長となっている状態です。

ココナラの収益構造

鈴木:ココナラの収益構造です。まず、ユーザーが「ココナラ」において使った金額すべてをカウントしたものが流通高になります。これを構成するのは、購入ユーザー数と1人当たりの購入額です。

我々は今、特にトップラインの成長を追い求めているため、購入ユーザー数と1人当たり購入額を重要なKPIとして置いています。

流通高にテイクレートを掛けたものが我々の営業収益で、これは普通の会社で言うところの売上総利益に近い指標です。ココナラは原価がないためこのような表現になります。

販管費の構成としては固定費が占める割合が非常に大きく、逆の言い方をするとトップラインに連動した変動費が少ないため、今後トップライン成長に応じてオペレーティングレバレッジが効くということで、営業利益率も高水準を目指していけるのではないかと考えています。

IPOによる株主構成の変化

鈴木:IPOによる株主構成の変化です。IPO前はVCの比率が55パーセントでしたが、IPO後には8パーセントとなっています。一方で、機関投資家比率は11パーセントから60パーセントに増加しています。

坂本慎太郎氏(以下、坂本):ここの部分について、上場して間もないIPO企業は個人投資家の保有比率が非常に高いのが一般的ですが、御社は機関投資家の持分がかなり多くなっています。

個人投資家には1期から2期先くらいまで、もう四半期でだめだったら売るという人がけっこういるのですが、機関投資家がたくさんつくと、安定した株価形成や成長を長く共有できる点で非常に有利になります。

「この株主構成にしたい」という新興企業も多いのではないかと、IRの仕事をしていて思うのですが、かなり難しいことだと思います。機関投資家に積極的にアプローチしないと難しいと思いますし、おそらく海外も視野に入れて、ロードショー含めて注力されたと思います。

今までお話しいただいた事業への評価も非常に高いとは思いますが、それと別途で、御社が行った機関投資家へのアプローチについて教えていただけたらと思います。

鈴木:一般的なIPO直前のロードショーだけではなくて、数年前から将来的なIPOを見据えて投資家としっかり会話してきたところが、我々の活動の特徴だと思っています。

「インフォメーションミーティング」と言っているのですが、数年前から国内だけではなく海外の主要投資家のみなさまと非常に積極的にお会いして、事業のご説明をしてきました。

その結果、我々が数年前に「このようなことを実現していきます」と言ったことを、上場前のタイミングで、有言実行で実現しているところをお見せできています。

坂本:なるほど。

鈴木:「確かに、彼らって言ったことはやる会社だよね」という実績作りをIPO前にできたというのが1つの特徴です。

また、かなりの数の会社や投資家のみなさまにお会いする中で「どのようなポイントを気にしているのか」「どのような強みに特に興味を持っているのか」ということを事前に把握することができました。

そのような内容を、本番のIPO直前のロードショーの資料にすべて盛り込むことができたため、短い時間の中ではありましたが、おそらく1社ごとにココナラの強みをしっかりお伝えできました。これが実を結び、このような機関投資家の比率、そして海外の比率の高さにつながっていると考えています。

品揃え(サービス出品数とレビュー数)

鈴木:特徴と強みのパートに移りたいと思います。まず「品揃え(サービス出品数とレビュー数)」ということですが、現時点でサービス出品数は40万件を超えています。レビュー数も270万件近くにまで伸びており、これは非常に圧倒的な数字であると考えています。

特にモノと比べて、サービスの領域というのは目に見えないため、「どのようなものがよいのか」を自分だけでは判断しづらく、他者による基準・評価が非常に参考にされます。そのため、レビュー数を圧倒的に確保していることによって、購入者の方々が安心して「取引を一歩進めてみよう」と思えますし、そこが参入障壁にもなっているのではないかと考えています。

坂本:レビュー数の積み上げはかなりの参入障壁になると思うのですが、この積み上げのために行ってきた施策のようなものがあれば、具体例を含めてでもよいので教えていただけたらと思います。

鈴木:そこまで誇張するつもりはないのですが、特段、機能的にものすごく新しい先進的な何かを入れたということはないです。もちろん、投稿しやすいように機能の使い勝手は意識しています。

どちらかと言いますと、これもまたモノとの対比になりますが、人と人がやりとりすることになると、「ありがとう」という気持ちや相手に対しての感情が、おそらくモノの時よりも湧きやすいのだと思います。そのため、取引の件数に対してレビューを返してくれる割合が非常に高いことも、今のレビュー数の多さにつながっていると思います。

ネットワーク効果で⾃律的に向上するプラットフォーム価値

鈴木:出品者、購入者の各種KPIを表したグラフです。右肩上がりで伸びていますが、こちらについて特徴を1点ご説明します。

我々はツーサイデッドのマーケットプレイスのため、「出品者を増やしたら、今度は購入者を増やさなきゃいけないよね。その逆も然りだけれど、そのバランスはどのようにとっているの?」というご質問をよくいただきます。

実は、そのバランスを気にしたことはほとんどありません。なぜかと言いますと、これもモノと対比して、サービススキルには「売り切れ」という概念がないためです。

どんどん出品していただくとそれが積み上がっていく一方で、レビューを獲得できた出品者の方ほど、その実績を元にさらに活動し、リテンション、リピートが続きます。出品者側が非常に積み上がっていくため、創業以来、出品者側の獲得のために特別なマーケティング投資をしたことはありません。

購入者側に対してWebマーケティングやTVCM等などを進めていくと、「一番売れるのだったら」ということで出品者も登録するということもあり、よいネットワーク効果が築けていると考えています。

リカーリング型の収益モデル

鈴木:リカーリング型の収益モデルについてです。グラフの見方が難しいのですが、年度ごとにご登録いただいた購入ユーザーが生み出す流通高の推移になっています。

ご覧のとおり、登録翌年以降の流通高もほとんど減っていっていません。もちろんユーザー数自体は多少離脱もあるのですが、残ってくださる方は購入の単価もどんどん高まっていくため、結果としてほぼ減衰しないかたちになっています。

そこに新しい年度の流通高が乗ってくるため、サブスクリプションではないのですが、EC型でありながらリカーリング型の収益モデルを作れていると考えています。

坂本:1回使った方はある程度リピートするという前提になっているのですね?

鈴木:そのとおりです。

坂本:着実にユーザーも積み上げられ、利用もあるということですが、売れ筋の変化について、おそらくユーザーが増えることで変わってくる部分もあると思います。初期と現在の、御社の売れ筋の変化を教えていただけたらと思います。

鈴木:けっこう大きく変わっています。そもそも相場の価格がまったく違いました。実は「ココナラ」の創業期は、ワンコインのマーケットプレイスだったのです。

「500円均一」ということで500円でしか売れなかったため、例えば似顔絵の作成や占いなどの、わりとライトなカテゴリの比率が非常に高かったです。

年を追うごとにだんだんと機能も拡充していき、ビジネス利用や制作系のサービス業もできるようになってきました。さらには販売の上限価格を500円から5,000円、1万円、10万円、そして今は100万円まで引き上げています。

このような中でビジネス利用の割合がかなり増えてきて、今はWebサイト制作やデザイン、音楽、動画制作などの割合が伸びてきているという特徴があります。

高井ひろえ氏(以下、高井):なるほど。

坂本:単価も上がっているということですね?

鈴木:おっしゃるとおりです。

流通⾼の成⻑要因(出品者サイド)

鈴木:流通高の成長要因を出品者サイドから見ていきたいと思います。こちらも堅調にご利用いただいており、販売ユーザー数は昨年度も非常に伸びました。加えて1人当たりの販売額も伸びています。

スライド右のグラフをご覧いただくと、先ほどの購入者のグラフと逆サイドの販売額の推移になるのですが、非常に力強く積み上がっている状態です。

スキルシェア市場の拡⼤可能性

鈴木:成長戦略のパートに移ります。最初に、スキルシェア市場の大きさについて簡単にご説明したいと思います。2020年度の個人のスキルシェアの領域は1,588億円、そこに中小企業を加えると2.2兆円ほどありました。これに対し、我々は10年後には3兆円から5兆円を見込んでいます。

考え方として、オフラインで行われているあらゆる役務提供、サービス取引は、全部オンラインに置き換わり得る対象だと思っています。

「制作会社にお願いしている」「いろいろなコンサルティングの会社にお願いしている」「知り合いにお願いしている」というところが、すべてではないにせよ、10パーセントから15パーセントでもオンライン化されていけば、少なくともこの5兆円というターゲット市場にはなり得ると考えています。

そして、この中で「我々が業界で一番の影響力を持ったスキルマーケットプレイスとして事業を展開できる状態ならば、この5兆円のうち何パーセントのシェアになるのか?」という発想でビジネスを組み立てています。

ココナラの世の中への浸透の必然性

鈴木:世の中への浸透の必然性についてですが、「そうは言っても、そもそもオフラインの取引って、そんなに簡単にオンラインに置き換わらないのではないか?」と思う方もいると思いますので、丁寧にご説明していきたいと思います。

まず「マッチング範囲」です。これまでのオフライン、すなわち対面型の取引では、おそらく知っている人に対するリーチが中心だったと思うのですが、オンラインであればデータベースに登録されている数十万人という人にいつでもリーチできます。

「時間・場所」という観点でも、まったくとらわれることなく、いつでもスピーディにやりとりができます。そのため、地方の方と首都圏の方がマッチングすることもできますし、時間差はありますが、夜型の方と朝型の方がチャットでやりとりできるため、問題ありません。

「情報」という観点でも、「対面で相手の人となりがわかったほうが安心だよね」という考え方もありますが、実はオンラインにはオンラインのよいところがあって、全部のやりとりやコミュニケーションがデータとして蓄積されています。

これを実績やレビュー、ポートフォリオ等々で丁寧に可視化することで、オフラインに匹敵するくらい相手の人となりがわかって、その上で取引が成立することから、期待値どおりのものが納品され、満足がいくという構造になっています。

「価格」に対しても、オフラインと違ってオンラインでは当然、組織の維持費用や店舗料金などが一切かからないため、購入者からすると、クオリティは変わらないものを相場より安く購入できます。

スライドの最後、おもしろいところとして「需要」なのですが、オンラインであるがゆえに、そして我々がホリゾンタルなマーケットプレイスであるがゆえに、いろいろなものがどんどん勝手に売られるようになっています。

昨今はVTuberなどYouTuberの領域が盛り上がっていますが、我々のマーケットプレイスでは2年くらい前から、VTuberのキャラクターのモデリングや動かす技術のようなサービスが売れ始めていました。それをいち早くカテゴリ化することによって、その需要を取り込めるというメリットもあります。

ユーザーの拡⼤戦略_ビジネス

鈴木:ユーザーの拡大戦略についてですが、もちろん我々はあらゆる方々に機会を提供していくということで、引き続き「個人・ビジネス関係なくすべての方々に」と思っています。その一方で、お話ししているとおり、足元では制作・ビジネス系が非常に伸びているため、そこに向けて注力し、機能をいくつか出していきたいと考えています。

ターゲットとしては、もちろん大企業のみなさまにもご利用いただき始めていますが、今は小規模企業と中規模企業の約350万社というレンジにおいて、まだまだご利用が一部であるにもかかわらず賑わっています。そのため、ここを大きく獲得し、支持していただけるような機能を提示していきたいと思っています。

坂本:toB領域のシェア獲得のためにビジネス向け機能開発に注力するということですが、決済まわりや商習慣ニーズなど、けっこう面倒なところがあると思います。このあたりも併せて開発されるのでしょうか?

鈴木:「ココナラ」は2年ほど前から、すでにこのような機能を一部ご提供しており、法人アカウントというものがあります。

法人アカウントで何をご提供しているのかと言いますと、例えば、請求書払いなどを含めた後払いのほか、企業アカウントを作成して、そこにいろいろな社員の方々のアカウントを統合し、案件や予算、進捗の管理ができます。

このような機能をよりアップデートしていくこと、加えて、まさにおっしゃっていただいた商習慣のところで、源泉徴収などについても考えています。

坂本:それは「支払いサイトがかなり長い」など、いろいろありますよね。

鈴木:そうですよね。そのようなところも全部、我々はリストしているため、順次ご提供していきたいと考えています。

坂本:かなり使いやすくなりますね?

鈴木:そのとおりです。ここから加速してリリースしていきますので、ご期待いただければと思います。

PL

鈴木:最後のパートですが、財務実績と主要指標についてです。まず今期のP/Lの進捗になります。スライドの表の左側が第2四半期単独、右側が第2四半期累計の実績です。

昨年度の実績と同様に、引き続きトップラインは60パーセント近く成長し、さらに利益は今期から大きく黒字化している状態です。ただし、こちらについてはいろいろと今後の考え方や方針がありますので、また追ってご説明したいと考えています。

流通⾼の四半期推移

鈴木:分解して、流通高の推移です。重ねてになりますが、60パーセント近い成長になっています。ただし、注釈を入れると、昨年の第3四半期から第4四半期で新型コロナウイルスの追い風を受け、非常に加速して伸びました。

それ以降も減退することは一切なくそこからさらに伸びており、昨年同時期実績の成長は変わらないものの、この第3四半期から第4四半期で大きく伸びた分、一旦どこかのタイミングで昨年同時期比のポイントが落ちる可能性はゼロではないと思っています。

流通⾼の成⻑要因

鈴木:流通高の成長要因です。購入ユーザー数と1人当たり購入額は、四半期ごとのため多少ばらつきはありますが、順調に右肩上がりで伸びています。

このあとのスライドでも出てきますが、やはり制作・ビジネス系のご利用が増えており、1人当たり購入額や平均単価はビジネスのほうが高いため、伸びている状態です。

カテゴリ別の流通⾼

鈴木:カテゴリ別の流通高です。制作・ビジネス系が2020年の後半くらいから本当に大きく加速しています。

新型コロナウイルスの影響で非対面・非接触が進む中、これまで「プライベート利用はできるかもしれないが、ビジネス系の利用ってオンラインで大丈夫?」「非対面で大丈夫?」と思っていた方は、最初はもしかしたら「致し方ない気持ちで」だったかもしれません。

しかし、我々のようなオンラインのサービスをいざご利用いただくと、「ぜんぜん滑らかだ。信頼できるし、クオリティもよいね」ということで、そこから継続してご利用いただいています。そのためリピート率も高くなり、このように伸びていると考えています。

営業収益

鈴木:営業収益については、これも途中でお話ししたとおり、流通高に対してそこまで大きな変動のないテイクレートを掛けた指標になっているため、ほぼ流通高と連動するかたちで成長している状態です。

販管費の推移(除くTVCM費)

鈴木:販管費ですが、我々はTVCMを打つ時はわりと思いきって投資しており、その分まで入れてしまうとグラフが荒れるため除いてあります。もちろん安定して伸ばしています。

当然、我々はインターネット企業でテクノロジーが重視されるため、よりユーザーにとって使い勝手のよい機能を提供していくために、エンジニアやデザイナー、プランナー等の人員確保も必要です。加えて、営業人員がいない分、マーケティング投資等も積極的に行っている状況です。

坂本:「TVCMをするとグラフに山が出る」というお話でしたが、べンチャーからの上場企業は、上場直後はどちらかと言いますと「資金需要がCMに」ということで、成長することを見せるためにCMを流すのがすごく多いです。TVCMはコストが一番高い部類だと思いますので、今後の戦略があったら教えてください。

鈴木:これは最後のパートでも別途お話ししたいと思いますが、今言えることとしては、TVCM費用を控除した利益において黒字の状態を維持することは、今後も続けていきたいと思っています。なぜかと言いますと、TVCMをやめたとしても赤字の状態では、コントロールできているとは言えないためです。

坂本:そうですよね。

鈴木:大型キャンペーンの一時費用を除けば黒字という状態ならば、いつでもやめられる、いつでも黒字にできるという状態ですので、そのような状態の中での積極投資は検討していきたいと思っています。

加えて、我々は基準として「売上高の何パーセントを広告宣伝費にする」というよりは、回収期間、ユニットエコノミクスを重視しており、「ある金額を投じた時に、それがどれだけの期間で回収できるのか」という我々の中のルールを持っています。その回収期間が延びない範囲において積極投資をしていくという考え方で進めています。

坂本:非常に戦略的なCM投資ですね。

営業利益および修正後営業利益の推移

鈴木:少し補足すると、過去のTVCM費用を控除すると、実はかなり昔から修正後営業利益としては黒字の状態であったということが、スライドのグラフから見てとれると思います。この部分は黒字になるように、昔から意識してきました。

通期業績予想に対する進捗率

鈴木:通期業績予想に対する進捗率ですが、半期経ったタイミングで、営業収益は52パーセントで超過していますし、営業利益も172パーセントで非常に超過しており、順調に推移しています。

一方で、このタイミングで営業利益をものすごく余らせたいという意思はないため、もちろんガイダンスとしてみなさまに公告しているものは絶対に下回らないようにしながらも、余剰の出ている部分についてはマーケティング投資に振り替えていきたいと考えています。

将来PLに関する財務ポリシー

鈴木:このスライドで、先ほどの投資についての考え方をもう少し詳しくお話ししたいと思っているのですが、最初に、我々が最重視する指標は営業収益、すなわちトップラインになります。もちろん、営業収益は流通高に対して一定の手数料率で出てくるため、「流通高を伸ばしていく」とも言い換えられると思います。

加えて、お話ししたとおり固定費型で、固定費は営業収益にそれほど連動して上がらないため、トップラインを伸ばせば伸ばすほど、将来的には営業収益、もしくは営業収益率を最大化していくことができると考えています。

今後の投資領域ですが、マーケティング投資については、毎月行っているWeb広告に加えてキャンペーン的なTVCMも、先ほどお話ししたとおりのユニットエコノミクス、回収期間というものを考えながら、しっかりとコントロールして積極的に実施していきます。プロダクト開発の人材も、引き続き積極採用を継続していきたいと考えています。

スライド最後の「修正後営業利益の黒字維持」というものが、我々の社内においてのルールになっており、コントロールできる範囲においてマーケティング投資を実施していくということは、しっかりと明確な基準を持って進めていきたいと考えています。共有としては以上になります。ありがとうございます。

質疑応答:手数料勝負の競合他社と、有料機能による利益について

坂本:Appendixの41ページですが、おそらくみなさまも競合の話にご興味があるかと思います。この部分については、御社のレビュー数などの要素に加えて、例えばランサーズなどとは逆の方向で展開することに注力され、かなり高い参入障壁を持っているため、僕も利益が稼げる体制と思っています。

実際、大規模な競合がいないということですが、レビュー数等の要素を別として、手数料勝負の同業他社が登場した場合は大丈夫なのでしょうか?

また、御社の出品者のサイト内広告などの有料のオプションが増えてくれば、だいぶ利益は上がってくると思います。この利益はバランスを考えて御社がそのまま取ってしまうのか、それとも値下げにあてるのか、トータルで考えなくてはいけないことだと思いますが、イメージを教えていただけたらと思います。

鈴木:まず1つ目のご質問ですが、我々はある程度ユニークなポジショニングをしていると思っています。おっしゃっていただいたとおりEC型であるということと、加えて取り扱っているカテゴリがホリゾンタルで「広くあまねく何でも」ということが、あまり他社にないユニークなところです。

もちろん、このビジネスモデルをかなり模倣しているプラットフォームや、そこで「手数料率が数パーセントです」というのを売りにしている会社もあるのですが、事実として、過去何社もあった中で立ち上がっているところはないというのが現状です。そのため、特段大きなリスクは感じていません。

これは、ユーザーの目線に立った時に、やはりたくさんサービスが並んでいる中で比較検討できたほうが、選んだ時の満足感が上がるのですね。 

高井:確かに。

鈴木:ニーズの合致度も上がりますし、選ぶ時にレビューとして第三者評価が付いているほうが安心だということもあります。まずは出品者より購入者の方々が、「ココナラ」以外を使う理由がない状態にしていきたいと考えています。

2つ目のご質問ですが、出品者によるサイト内広告機能などは検討していきたいと思っています。ただし、営業収益のために積極的に進めたいというよりは、ユーザーが求めているためです。新規で出品する出品者が欲しい機能だと思います。

これだけ何十万というサービスが先に出品されてしまっていると、あとから参画したいという方々は立ち上がりづらかったりするため、そのようなところに対して一助になるのであれば、積極的に検討していきたいと思っています。

ただし、これで売上を上げたいということが第一にあるわけではないですし、それによって「手数料率を下げる・下げない」などのことは、もちろん検討の余地はありますが、今のところなんらかの強い方針があるわけではないです。

質疑応答:アフターコロナのスキル需要について

高井:個人投資家の方から「コロナ禍で副業市場はどんどん大きくなっていますが、スキルマーケットを運営している貴社の視点から見て、今後のアフターコロナにおいて特にどのようなスキル需要が伸びていくと思いますか?」というご質問です。

鈴木:これはけっこう難しいのですが、「副業市場がどんどん大きくなってきている」というのは、出品者サイドのお話ですよね。一方で、「アフターコロナのスキル需要」というは購入者サイドのお話です。

そのため、そこがリンクするとは一概には言えないと思っています。副業という意味では、今はわりとライトなところから始められるような、例えばコンサルティングや悩み相談などのカテゴリでの出品の伸びが特に強いです。

スキル需要という意味では、もともとのマーケットの規模が大きいためかもしれませんが、「非対面・非接触」と言われる中で、ビジネス・制作系です。DXの文脈の中で「Webサイト制作をしてほしい」ということや、Webサイトを作ったら今度は「Webマーケティングをしてほしい」「動画でプロモーションをする」など、このような需要が特に伸びていると思います。

ただし、「ココナラ」では、一定の成長が見込まれるカテゴリを残し、そうでないものは統廃合していくことをずっと繰り返しています。そのため、今残っているカテゴリについてはどれも一定数伸びている状態です。

質疑応答:チーム制作のための機能について

坂本:今後、高単価のものが売れると当然、御社の手数料も多くなりますよね。これからおそらくもっと複雑なものも出品されるようになると、単なる対価のサービスというかたちではなくなると思います。

僕のイメージでは、複雑なものはチームで作ったりすると思うのですが、窓口が1人では、その人だけとのやり取りになってしまいますよね。チームで制作ができるようなプラットフォームを整備される予定はありますか?

鈴木:まさによいご質問だと思っています。そのようなご要望は出品者の方々からもいただいており、実は今は公式な機能として明確にあるわけではないのですが、そのようなかたちで活用している方々もいます。

坂本:そうですか。

鈴木:「ココナラ」の出品者同士の交流もあったりするため、そのような中において、例えばWebサイト制作を請け負う時に、その中で使う画像については、画像のカテゴリの出品者と組むなどのことがあります。

坂本:複合バージョンですね。

鈴木:また、「その中で文章の作成が必要だったら、うちのライターにお願いする」など、そのようなことも最初から明示されているようなサービスもあります。

今でもそのようなことができていて、実際にコラボレーションをすることで1人ではできないものを購入者に提供できているならば、それをもっと公式で使い勝手をよくしていきたいと思っています。ただ、「手数料をどうやって按分するの」とか、いろいろな問題がありますよね。

坂本:そうですよね。

鈴木:このようなことを滑らかにできるようにしていくという方向性は、十分あると思っています。

坂本:それができれば、本当に1個の仕事として、御社のサービスで完結することができるため、確かにそれはおもしろいと思っています。

鈴木:そうですよね。まずは購入者の方々のほうから始めているということで、先ほどお話しした法人アカウント活用して、複数人で企業アカウントを作ったりしているため、次は「出品者の方々にもそのような概念を」という発想はあります。

質疑応答:今後の海外展開について

坂本:会場からのご質問です。「サービス版Amazon」を目指しているということですが、海外展開を行う場合はどの地域に進出したいとお考えでしょうか?

鈴木:海外への進出は特に否定するものではないのですが、今のところ、実は積極的に考えているわけでもないです。

高井:なるほど。

鈴木:機会があればという感じですね。国内において、レガシーなオフライン取引というものが何十兆円とあるというお話をしましたが、その10パーセントがオンライン化したとしたら5兆円です。もし仮に、どこかのタイミングでその10パーセントのシェアを我々が獲得できたら、それだけで流通高は5,000億円となります。

このことを考えた時に、労働力の低下や人口低下よりも、オンライン化の流れのポテンシャルのほうがまだまだ大きいと思いますので、まず国内を主軸にしっかりと展開していきたいです。加えて、機会があれば、そのようなことも検討していくというところですね。

坂本:では、この「Amazon」は「全世界でプラットフォームとして出している」というイメージではなく、EC型で「Amazon」に似ているという部分もあり、「日本でメジャーなサービスとして展開していく」というイメージでしょうか?

鈴木:「困ったらすべてが叶うプラットフォーム」という意味で、その名前を使わせてもらっています。それこそ「日用品を買いたいなと思ったら、『Amazon』に行けばすべてそろう」という安心感が、すでにブランドとしてありますよね。

高井:確かにありますね。

鈴木:我々はそのような状態を目指しており、とにかく何か困って「誰かの力や助けを借りたいな」と思った時に、「ココナラ」に来ればすべての需要を解決するサービスがそろっている状態、世界観を作りたいのです。そのような意味で「サービス版のAmazon」という言葉を使っています。

質疑応答:TVCMの効果について

高井:TVCMの効果について「Webでの広告よりも効果があるということですか?」という個人投資家の方からのご質問ですが、いかがでしょうか?

鈴木:けっこう具体的なご質問ですね。

高井:ここは気になりますね。

鈴木:一概にはなんとも言えないのですが、普通のユーザーの獲得単価という意味では、Web広告よりは高くなってしまいます。回収期間も一定期間延びてしまうというところはあります。

高井:確かにそうですね。

鈴木:ただし、副次効果がけっこう大きいと思っています。やはりTVCMを流すと、Web広告だけでは上げられないブランドの認知というものが積み上がっていきます。そのような中において、毎月入ってきてくださるオーガニック、すなわち「指名キーワード検索」で「ココナラ」という名前でサイトに訪れてくださる新規の訪問ユーザーの母数が増えます。

このようなところのバランスも考えながら、短期指標だけではなくて長期指標も組み合わせて、どこが最適効率なのか考えながら投資していくという発想です。

質疑応答:人材採用について

坂本:次の質問は、「以前、鈴木社長が『資金調達はTVCMやWeb広告、人材採用にも活用していく』とおっしゃっていましたが、人材採用は順調でしょうか? 現在100人余りの社員がいらっしゃいますが、目先何人くらいの体制にしていく意向なのか教えてください」ということです。

鈴木:かなり順調に採用できていて、目先百数十人まではきています。

これはIPO前・IPO後関係なく、非常に順調に採用できている状態です。特徴としては、我々は「バリュー」というものを社内で共有しているのですが、その中で「One Team, for Mission」と言っています。

このココナラの世界観に共感してくださる方を増やしていきたいということで、ユーザーだけではなく、一緒に働く仲間に対しても思っています。そのため、そのようなところのブランドをけっこう強化して発信しているのです。

この中で、「一人ひとりが『自分のストーリー』を生きていく世の中をつくる」というビジョンにご賛同いただけるような、そのような領域・テーマに興味を持つ方々がそもそも増えている印象があります。それが採用の追い風になっている印象は受けますね。

坂本:そこは御社のCMなどを含めての知名度アップが、ある程度貢献している部分もありますよね。

鈴木:もちろんそれもあると思います。

坂本:ユーザーの増加もそうですよね。

鈴木:「けっこうメジャーなサービスですよね」と言っていただくと感慨深いですね。5年前くらいは誰に聞いても「知らない」と言われていました。だいぶ変わったと思っています。

坂本:なるほど。

高井:私も3年前に使用していて、とてもお世話になっていました。

鈴木:ありがとうございます。

質疑応答:特定カテゴリに特化しないメリット・デメリットについて

坂本:会場から「いろいろな出品者がいるメリットより、特定のスキルに特化していないデメリットのほうが大きく感じるのですが、実際どうでしょうか?」というご質問です。質問者の方は「特化したほうがよい」とお考えなのだと思いますが、そうなのか、そのようなことはないのか教えてください。

鈴木:正直なところ一長一短だと思っています。バーティカルに特定のカテゴリだけを扱う場合、ご利用いただけるユーザーのペルソナも明確なため、けっこう機能の磨き込みを尖らせやすいですよね。ある領域、あるカテゴリで圧倒的に尖ったものを用意できるという意味では、部分的に使い勝手でかなわないところもあると思います。

しかし、逆にあらゆるカテゴリを用意しているからこそ、購入者の方にとって便利なのです。例えば、個人事業主の方にけっこうご利用いただいているのですが、飲食店や美容室を出店する経営者の方は、最初にそのお店のロゴも作りますし、Webサイトも欲しいですよね。実際に店舗が開業したら「チラシが作りたい」となります。

そのようなことすべてが「ココナラ」でワンストップでできてしまう便利さがあります。コミュニケーションも、いろいろな制作会社に向けて、しかもそれがチャット、メール、電話というように散らばりません。全部「ココナラ」の中で完結する利便性があります。

そうすると、我々としてもクロスセルがはかどりますし、1人当たりのご利用単価も上がっていきます。そのため、メリット・デメリットありますが、けっこうよいポイントまで来ていて、この規模になってくると、大規模でありながら個別のカテゴリを強化していく余裕も出てきます。このような意味では、「いいとこどり」の開発ができるフェーズに差し掛かりつつあると思います。

質疑応答:来期のマーケティング施策について

高井:会場の方から「来期のマーケティング施策はどのようなものをお考えでしょうか?」ということです。どのようなバランスで広告を出していくのかというお話だと思いますが、いかがですか?

鈴木:執行額や具体的な比率についてはお答えできないのですが、まずベースとなるのは費用対効果の高いSEOの施策です。我々はサービス数が非常に多いためコンテンツ数も多く、うまくいけばSEOによる流入も非常に増えます。

そこにしっかり投資していくことと、あとは定常的に行っているWeb広告です。これも非常に筋肉質に、短い期間で回収できていますので、ここを強化していきます。

加えて、IPO時の目論見書などにも書いていますが、ここにTVCM等も効果的に混ぜ込み、認知の底上げ等も含めて進めていくという複合技で展開していこうと思っています。

質疑応答:出品者のクオリティの担保について

坂本:会場から「サービスやスキルのマッチングは、出品者のクオリティが購入者の満足度やリピートに直結すると感じています。クオリティを担保するような施策はあるのでしょうか?」と、購入者のためのクオリティについてのご質問です。

鈴木:2段階あって、まず安心してご利用いただける最低限のクオリティを守るという意味では、社内に「健全化のチーム」という組織があります。いろいろなサービスを自由にご出品いただく中で、違法性のあるものを排除したり、社会通念上よろしくないものについて、独自に整備している「ココナラのルール・マナー」の基準に反するものを取り下げたりしています。

ここに機械学習の力なども用いて、自動検知も含めながら、最低限の品質をしっかり担保していくというのがベースです。

加えて2つあるのですが、まず1つわかりやすいのが「認定制度」です。「プロ認定」というものがあり、「ココナラ」の内外問わず実績が豊富で、コミュニケーション等も安定していると判断できる方については、ラベルを付けて表示を強化しています。

また、「ココナラ」にはサービスがたくさん並んでいますが、メインは新着順ではなく「おすすめ順」としています。具体的なロジックについてはお答えできないのですが、「ココナラ」の中で「信頼性」「情報量」などのいろいろな観点でスコア化していて、信頼のおけるサービスから上に並ぶようにしています。購入者の方に安心してご利用いただけるように環境を整えているところです。

投資家へのメッセージ

高井:最後に投資家の方へのメッセージをいただけますか?

鈴木:ご注目いただきありがとうございます。ココナラは今後ともビジョンに沿ったかたちで事業を展開していき、個人のみなさまが「社会とつながりたい」と思った時につながれる世の中を作っていきたいと思っています。

「何か活躍したい」「機会が欲しい」と思った方々に、そのバッターボックスを提供していくという軸をぶらさずに進んでいきたいと思っています。その中で、機能展開やマーケティング等も含めて、複合的にできる限りのことを行っていきますので、ぜひ応援よろしくお願いいたします。