2021年2月期決算説明会

榎本修次氏:みなさま、こんにちは。乃村工藝社、社長の榎本です。当社グループ2020年度の決算説明の動画配信をご覧いただき、誠にありがとうございます。

本来であれば、決算説明会にて直接みなさまにご説明をするところですが、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点からリアル開催を見送り、動画配信とさせていただきました。何卒、ご理解のほどよろしくお願いを申し上げます。

本日は、2020年度決算の概要、そして、今後の展開についてご説明をいたします。

2020年度 連結業績ハイライト

はじめに、2020年度の業績ハイライトです。売上高1,077億3,600万円、営業利益48億8,200万円、経常利益50億1,000万円、当期純利益30億7,100万円となりました。2月2日に発表した業績予想に沿った着地となりました。

12月から2月の第4四半期は大型案件の完工もあり、高い売上と利益を確保いたしましたが、依然としてコロナ感染症拡大の影響は大きく、全社を挙げてコスト削減に取り組んできましたが、売上高の減少に伴い減益となりました。

売上高・売上総利益

では、段階別の利益についてご説明をいたします。売上高はコロナ感染症拡大の影響により、商業施設やホテル、テーマパークなどの新装・改装需要が減少しました。

また、前年のオフィス環境需要における超大型案件の売上計上があったことなども影響しまして、前期に比べ25パーセント減少の1,077億3,600万円となりました。

売上総利益は売上高の減少により、前期に比べ27.3パーセント減少し、210億7,200万円となりました。売上総利益率は、専門店市場・余暇施設市場などにおきまして採算性の高い大型案件が減少したことにより、前期に比べ0.6ポイント低下し、19.6パーセントとなりました。

営業利益

販売管理費は、人件費・経費の削減に努め、前期に比べ9.5パーセント減少し、161億9,000万円となりました。在宅勤務の対応に伴い残業費等が削減され、人件費は9.1パーセント減少し、また、行動費などの経費は10.2パーセントの減少となりました。

売上高販管費率は、売上高の減少に伴い2.6ポイント増加し、15.1パーセントとなりました。この結果、営業利益は前期に比べ56パーセント減少し、48億8,200万円となりました。

経常利益

営業外収益は、受取配当金の減少などにより1億4,400万円となり、営業外費用は、為替差損の計上などにより1,600万円となりました。これにより、経常利益は前期に比べ55.4パーセント減少し、50億1,000万円となりました。

当期純利益

特別損失は、オフィスの移転に伴う固定資産の除却損、ならびに飲食・物販事業における店舗の臨時休業期間の固定費を計上したことにより増加いたしました。法人税等は、減益に伴い減少いたしました。

これらの結果、当期純利益は前期に比べ60.6パーセント減少し、30億7,100万円となりました。

市場分野別の売上高

続いて、市場分野別の売上高についてご説明いたします。コロナ影響の拡大により、出店が減少した専門店市場、催事・装飾が減少した百貨店・量販店市場、ホテル・テーマパークの需要が減少した余暇施設市場が減収となりました。

また、前期に大型案件の売上計上があった複合商業施設市場、博物館・美術館市場、その他市場が減収となりました。

市場分野別の受注高・受注残高

次に、市場分野別の受注状況についてお話をいたします。受注高は、コロナ影響の拡大により受注活動が停滞したことや、商業施設分野を始めとして、広報・販売促進市場、ホテルやテーマパークを手掛ける余暇施設市場におきまして、お客さま企業の投資が控えられたことにより、前期に比べ43.6パーセント減少し、853億1,400万円となりました。

受注残高は、博物館の大型案件、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会関連などがございますが、商業施設分野における受注減少や、オフィス大型案件の売上計上により、前期に比べ30.5パーセント減少し、492億8,300万円となりました。

2021年度 連結業績予想

続きまして、2021年度の通期業績の予想です。東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会が、予定どおり開催されることを前提として計画を策定しています。

2021年度は、下期より受注が回復に向かうと見ており、売上高1,150億円、営業利益50億円、経常利益51億円、当期純損益33億円、配当は25円と予想しています。

配当につきましては、当社は、株主のみなさまに対する利益還元を経営の最重要政策の1つとして位置づけ、安定配当・業績連動の基本方針に基づき、業績の回復に応じて高い株主還元を実現してまいりたいと考えています。

前期までの振り返り

続きまして、当社グループの今後の展開についてご説明いたします。当社を取り巻く事業環境の変化は、この事業推移に顕著に表れています。

2019年度までの伸長は、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた投資意欲の高まり、インバウンド消費及び国内消費の拡大による集客施設の新装・改装需要の拡大、企業のオフィス投資などを背景として、お客さまニーズが拡大しました。その中で、当社として体制整備を実施したことが要因です。

市場環境

しかし、2020年度のコロナ感染症の拡大により、集客空間を手掛ける当社グループの業績は、大きな影響を受けています。人々の暮らし、働き方、価値観が大きく変わり、また、三密の排除など人が集まる空間における行動が制約され、打撃を受けたことは確かです。

しかしながら、リアルに人と人がふれあう・集まることは、決してなくなりません。空間に新たな価値を付加し、新しい市場を創造していきたいと考えています。

商業施設におきましては、リアル店舗とオンライン・デジタルを融合した店舗づくり、そして、大型施設は商業に加え、医療や教育、エンターテインメントなど複合化が進むことが考えられます。

企業ショールームや展示会では、デジタル技術の活用や、リアルな場ならではの提供価値が求められ、企業業績の改善に伴い投資回復が見込まれます。

また、博物館・公共イベントやホテル・テーマパークは、中期的にはインバウンド需要の回復に伴う投資や地方創生への取り組みの増加、そして2025年の大阪万博を見据えた投資が見込まれます。

そして、オフィス環境におきましては働き方改革が進み、ライフスタイルに応じた多様なワークプレイスや都市から郊外へのシフト、ワーケーション施設などのニーズが高まっており、これらの需要獲得に向けて、新しい働き方を実現するための空間づくりを行ってまいります。

2020-2022 中期経営計画①

このような状況の中、私たちの2020年から2022年における中期経営計画は、「社会から選ばれるノムラ」をテーマとして推進をしています。

今後、さらに大きく変化する市場環境を見据え、お客さま、そして社員、協力者、その家族、株主さまとすべてのステークホルダーとともに空間を通じて社会課題の解決を目指してまいります。

主な項目といたしましては、「人財・企業文化の戦略」「制度・仕組みの戦略」「事業の戦略」に取り組んでいます。

2020-2022 中期経営計画②

「人財・企業文化の戦略」では、健康経営の実現、事業の効率性・生産性向上への取り組みを推進してまいります。私たちが、社会から求められる新しい価値を創造するのは、人財であり、社員の働き方改革、そして育成・成長なくして継続的な成長の実現はありません。

コロナ感染症拡大による環境変化を積極的な契機と捉え、新たに策定した「働き方改革総合計画」のもと、働きやすさの改善、働き甲斐の向上、人財の確保と育成への取り組みを推進してまいります。

「制度・仕組みの戦略」では、2019年度までの前中期経営計画におきまして、拡大してきました事業規模、社会からの要求に見合ったグループ経営管理体制の整備を進め、持続的成長と企業価値の向上を支える経営基盤を構築してまいります。

2021年度より、経営基盤構築の機動力を上げるため、社長直轄の組織として総合企画本部を立ち上げました。経営戦略の統合と東証プライム市場に向けたガバナンス強化などを担う、中核の組織を編成いたします。

環境変化に対するリスク予防に注力し、管理体制を更新し、内部統制、コンプライアンスを重視するとともに、コーポレートガバナンス体制を引き続き強化してまいります。

2020-2022 中期経営計画③

「事業の戦略」では、私たちは2020年度の未曽有の事態において、お客さまに寄り添うことに注力し、お客さまの課題解決に真正面から取り組み、アフターコロナを見据えた仕組みづくりを行ってまいりました。

現有事業において、特に東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会案件を通じまして、新たに獲得できたお客さまとの関係も強化してまいります。

また、今後に控える都市再開発事業やインバウンドの回復による投資など、大型案件の獲得に向けた取り組みを、強固な生産体制・クリエイティブ力・プロダクトマネージメント力をもって、着実に推進してまいります。

お客さまは、アフターコロナ・ウィズコロナに向けた行動改革・戦略の見直しを、現在されている状況が続いています。

この不透明な状況の中、そして、変化するお客さまの状況に対し、当社グループはなにが必要であり、どのように対応すべきか、現有事業の枠を越えた発想の転換が求められていると強く感じています。

私たちは、お客さまの動向をしっかりと見極め、自ら新たな価値を生み出し、提案していかなければなりません。そのためにはこの2年間で、当社グループも事業行動の改革を行う必要があると私は考えています。

社会的課題を踏まえ、お客さまの今後の課題と状況の整理、情報収集を行い、私たち単独では解決できない場合はアライアンスを組み、時にはお客さま同士をつなげ、そして事業にも参画をしていく、提案型・資本参加型のビジネスモデルを付加してまいります。

また、地方創生の動きにおきましては、コロナ禍のリモートワークや、リゾート地のワーケーション、ウィズコロナ時代の観光開発の在り方などを、私たちが価値提供をすべき大きな社会課題と捉え、新たなサービスの拡充に取り組んでまいります。

そして、新たな営業開発の展開に注力し、グループ全体でリーシング・リレーションによる提案、不動産のバリューアップのための商品開発、ソフトコンテンツビジネスの強化などに取り組んでまいります。

このような取り組みを推進するにあたり、組織の再編を実施し、2021年度に当社グループの知見の共有・集約、営業開発力の強化に向けて、3つの部門を新設いたしました。

まず、「ビジネスプロデュース本部」は、全社に集まる情報を集約し、グループ全体を俯瞰した営業戦略の策定・運用を実行し、先ほどのリーシングなど新しい営業開発の施策を統合してまいります。

また、ビジネスプロデュース本部に新たに設置した「ソーシャルグッド戦略室」では、今後大きく社会や私たちのお客さまに広がるSDGsの動きに対応し、空間を切り口としたソリューションを提供するほか、社会貢献・地域貢献などの分野の事業創造に取り組みます。

ほかにも、コントラクション・マネージメントや2025年大阪万博などを全社連携のもと推進してまいります。

そして、「グループ・グローバル事業本部」は、国内グループ会社の連携強化、海外事業の拡大を推進してまいります。

「コンテンツ・インテグレーション・センター」は、文化・芸術・スポーツ・伝統芸能、そして観光資源などのコンテンツを起点とした体験・空間デザインのプロデュースや、リアルとバーチャル・デジタルテクノロジーを融合したソリューションの提供などに取り組んでまいります。

2020-2022 中期経営計画④

最後に、中期経営計画における2022年度の業績目標につきましては、不透明な事業環境の中、精査を行っているところです。

2022年度までの中期経営計画では、2020年度を底にして、今後回復基調に戻すことに注力をするとともに、2022年度後半からの本格的な回復を実現するため、盤石な経営基盤を構築してまいります。

今、当社グループは次の時代に向けた転換期にあると私は強く意識し、街に新しい活力を届け、心豊かな人間環境を創造する、社会に大きな貢献ができる、「社会から選ばれるノムラ」を実現し、新たな成長軌道を描いてまいります。

引き続き、乃村工藝社グループをご支援、そしてご注目いただけますよう、よろしくお願いいたします。本日は誠にありがとうございました。