連結売上高(対前年同期比、3か月累計比較)
小椋一宏氏(以下、小椋):みなさま、こんにちは。HENNGE株式会社代表取締役社長の小椋でございます。本日は当社の決算説明動画をご視聴くださいまして、誠にありがとうございます。
それでは、2021年9月期第1四半期の決算についてご説明します。まず、第1四半期の業績についてです。第1四半期の連結売上高はスライドのとおり順調に推移しました。
連結業績サマリー(対前年同期比、3か月累計比較)
連結業績サマリーはスライドのとおりです。第1四半期は11月13日開示の通期業績予想に対して順調に推移しています。
売上総利益(対前年同期比、3か月累計比較)
売上総利益も引き続き高い粗利率を確保しています。
当期純利益(対前年同期比、3か月累計比較)
当期純利益は、前年同期と比較するとスライドのようなグラフとなっています。
営業費用の構造(対前年同期比、3か月累計比較)
営業費用の構造を前年同期と比較すると、スライドのようなグラフとなっています。
営業費用の構造(対前四半期比)
営業費用の対前四半期比では、こちらのスライドのようになりました。採用費が前四半期に比べて減少したことや、前四半期中に発生した一時的な費用が当四半期には発生しなかったことにより、その他販管費全体は前四半期よりも減少しています。
広告宣伝費は、2月開催予定の「HENNGE NOW!」に向けて少しずつ使い始めています。また、HENNGE Oneの売上高が堅調に増加した一方、売上原価と研究開発費の合計は前四半期から200万円ほど減少しています。主な理由としては、プロフェッショナル・サービスおよびその他事業の外注費減少や、HENNGE One事業における基盤クラウドサーバの利用効率向上等が挙げられます。
売上高と営業費用の推移
売上高と販管費の四半期推移はスライドのとおりとなっています。前四半期からは売上高が減少していますが、これは前四半期でプロフェッショナル・サービスやその他事業のSIサービス売上高が大きく計上されたことによるものです。HENNGE One事業とその売上高については、すべてリカーリング性質の売上高であり、これまでと変わらず四半期ごとに増加する傾向となっています。
従業員(アルバイト含まず)の状況
従業員数は189名となりました。構成比はスライドのとおりです。
従業員数(アルバイト含まず)の推移
従業員数の推移は、スライドのとおりです。四角で囲ってある部分は、第1四半期の終わり時点の数字です。
事業トピックス
次に第1四半期の事業についてご説明します。事業トピックスはスライドのとおりです。
広告・イベント活動
第2四半期に開催を予定している大型デジタルイベント「HENNGE NOW!」に向けた広告宣伝を一部開始しています。SMBC日本シリーズでの企業広告や、東京駅での交通広告を試みました。今期は全国の幅広い層に対するブランド認知力の向上を目指しています。
新プログラム
また、2020年11月に「HENNGE Oneプロダクトアライアンスプログラム」を開始しました。プログラムスタートのタイミングから、多くのすばらしいSaaS企業にご賛同・ご参加いただいており、HENNGE OneによるSSO連携について積極的に技術連携を実施することで、ユーザ企業におけるID・パスワード管理の課題を解決できればと考えています。
HENNGE One KPI(対前年同期末比)
次は、第1四半期のKPIについてです。HENNGE OneのKPIの前期比較はスライドのとおりとなっています。
HENNGE One KPIのハイライト(対前期末比)
各KPIの前期末からの進捗はスライドのとおりです。
HENNGE One平均月次解約率の推移
平均月次解約率の推移は前四半期から0.06ポイント上昇し、0.22パーセントとなりました。引き続き非常に低い水準にあると考えています。
HENNGE One契約企業数と契約ユーザ数の推移
契約企業数と契約ユーザ数の四半期ごとの推移はスライドのとおりとなりました。 第1四半期の契約企業数の伸びは、これまでの水準に比較して大きくなりましたが、これは前期末で開通待ちだった案件が当四半期で多くサービスインしたこと、また、受注が好調になってきたことが要因となっています。
受注が好調である要因において、在宅勤務によるトレンドが影響しているのか、また、この加速が今後も継続するものなのかについては、もう少し営業の状況を見て判断したいと考えています。
なお、第1四半期の契約ユーザ数については、前四半期と比較して期末時点の総ユーザ数が減少する結果となっています。ここについては特殊な要因があるため、後ほど詳しくご説明します。
HENNGE One ARRとARPUの推移
第1四半期のARRは順調に推移しています。ARPUについては、これまで同様緩やかな上昇基調にありましたが、今四半期は特殊な要因が影響し、やや大きく上昇しています。
HENNGE One契約ユーザ数の減少について
今ご説明したように、契約企業数やARRが順調に推移した一方で、ARPUは通常よりも大きく伸びています。しかしながら、ユーザ数は四半期で減少するという大変わかりづらい状況となっています。これは、主に1社のお客さまの解約による影響となっています。
HENNGE Oneの販売の方向性が定まっていない初期の頃には、いろいろな方法で販売を試みていましたが、この時代の販売先に、メールセキュリティ機能を中心にご利用いただいている、比較的特殊な用途でサービスを継続しているお客さまがおりました。こちらのお客さまから長らくお使いいただいていたのですが、残念ながら解約というかたちとなりました。
スライドにある3つのグラフは、契約企業数、ARPU、ARRの四半期増減の推移を線グラフで示しています。この四半期に関しては、大規模な、8万ユーザが解約されたことによりユーザ数が減少し、全体が少し見にくくなりました。その結果、逆にARPUは上昇するという結果となり、普段よりも少し大きめに上昇しています。
しかし、全体としてのトレンドはそれほど変化はないと考えています。先ほどお話ししたように、「N」(契約企業数)に関しては、受注が好調であったものの、基本的には事業は順調に進捗していると考えています。将来に向けた成長が鈍化しているのではないか、ユーザ数が減ってきて、サチュレートしているのではないかというようにも見えかねない状況ではあるのですが、基本的には順調に進捗していると考えています。
今後も、当社グループの成長戦略である「N」とARPUを増加させることによって、将来ARRの最大化を果たし、ひいてはLTVを最大化させていくという方針ですので、それに向けて順調に進捗していると考えています。その解約がなければ、すごくきれいなKPIになったなぁとは思うのですが、なかなかそう簡単にはいかないと。そういう状況です。
2021年9月期の方針
続いて、2021年9月期の業績見通しについてご説明します。計画どおりに事業が進捗しており、前回の決算説明からアップデートがほとんどない状況です。しかしながら、これから広告宣伝費の大規模な投下が予定されていますので、ほぼ同じ内容とはなりますが、念のためにもう一度、今期の方針についてご説明します。
2021年9月期は、積極的なマーケティング投資を行い、ニューノーマル下で拡大する機会を捉えることで、HENNGE Oneの中期的なARR成長を加速させていきたいと考えています。契約企業数、ARPUを上昇させることにより、ARR成長速度の変曲点を作り出したいと思います。2021年以降のHENNGE One ARRの年間20パーセント以上での持続的な成長を作り出すために、ここで変曲点を作り出したいと考えています。
広告宣伝費の投下の中で大きなイベントとなるのが、2月に予定されている当社のバーチャルイベント・デジタルイベント「HENNGE NOW!」と、それに付帯した大規模広告です。当社では、例年の10倍規模とお伝えしていますが、今までのイベントが1,000人規模くらいだとすると、1万人規模のデジタルイベント・バーチャルイベントを開催していきたいと考えているということです。
これまでに広告宣伝ではアプローチしていなかったような、全国のディシジョンメーカーおよびパートナー企業を含む、より幅広い層に対してHENNGEのブランドを認知していただき、契約企業数、ARPUの両方に作用するような変曲点を作り出していきたいと考えています。
人員については、全社で30名以上の純増を目指し、営業職とカスタマーサクセス職を中心に増強していく計画です。
連結業績見通し(通期)
連結業績見通しについても、特に変更はありません。HENNGE One事業については、引き続き20パーセント以上での持続的な成長を目指していく一方、今後の持続的な成長のための変曲点を作り出す活動として、当期に積極的なマーケティング投資、広告宣伝費の投下を行う計画となっています。そのため、今期の営業利益は前期に比べて減益となる計画です。
連結売上高の推移
事業別の売上高の過年度からの推移と、今期見通しに対する第1四半期の進捗は、スライドのとおりとなっています。第1四半期は順調に進捗しています。
営業費用(売上原価+販管費)の見通し(通期)
広告宣伝費と広告費を除いた営業費用の過年度からの推移と、今期見通しに対する第1四半期の進捗は、スライドのとおりとなっています。進捗が少し遅れているのではないかとも見えるのですが、広告宣伝費については、大規模イベントが開催される第2四半期に重点的に投下される見通しとなっています。前四半期の決算説明動画でもご説明しましたが、2020年9月期に投入できなかった分以上の広告宣伝費を思い切って投下する計画となっています。
マーケットの変化について
これまで、私どもはLTVやARRを最大化することを目指してきた一方で、マーケティング費用の投下については保守的に考えてきました。この背景には、クラウド市場が力強く拡大していることには違いがないものの、例えば我々が広告宣伝活動を行ったりすることで、それを加速することができる環境ではないという考えが影響しています。
私どもとしても、クラウド市場の拡大とともにじっくりシェアを拡大していき、最終的にマーケットで支配的なポジションを築いていきたいという思いがありました。しかしながら、この状況についてCOVID-19以降少し変化があった、あるいは大きな変化があったと捉えています。
日本全国の企業が2020年に強制的にリモートワークに入る状況になり、クラウドサービスの認知は急速に拡大しました。その有用性が認識される機会がたくさんあったのが2020年です。2021年についても、このような状況が今のところ続いていますので、当社にとっては、端的に言うとチャンスが急拡大していると感じています。10年に1度あるかないかの大きなチャンスです。
お客さまが当社のソリューションを使って事業を加速していける状況が生まれたと考えています。したがって、私どももやり方を少し変えていかないといけないと認識している次第です。
HENNGE Oneは、企業が利用するさまざまなクラウドサービスに対して、横断的にセキュアなアクセスとシングルサインオンを実現するクラウドセキュリティサービスであり、これからクラウドを利用していく企業には、ぜひご利用いただきたいサービスとなっています。このチャンスを掴むために、ニューノーマル下においてクラウドサービスの利用拡大を模索する企業に対して、積極的なマーケティング活動を実施していきたいと考えています。
日本では2011年の震災をきっかけとして、首都圏を中心にクラウドの導入が加速したと考えています。しかしながら、その後の導入ペースに関しては、例えば米国などと比べると緩やかに進捗していったのではないかと考えています。
今回のCOVID-19は、首都圏ではなく全国的にクラウドが導入されるきっかけとなる、大きな出来事であると捉えています。2011年の大震災の影響により、首都圏でクラウドへの移行があり、その後、2013年以降にクラウド市場の拡大がありました。そのようなものを受けて、日本でもSaaS各社が生まれ、昨今ではそのような企業が次々と上場している状況があります。
これと同じようなことが2020年以降に起こっていると考えています。当社およびSaaS各社にとっては大きなチャンスが生まれている状況だと思います。
一方で、そのようなお客さまを直接訪問できない状況の中で、どのようにしてリードを獲得し、お客さまをお手伝いしていくかということが課題になってきます。COVID-19によって、これまでのようなリアルイベントができなくなった一方で、人々がデジタルイベントに参加することもかなり一般的になってきたと思っています。
2020年はいろいろと試行錯誤してきましたが、この機にニューノーマル下での営業マーケティング手法を確立し、急拡大する市場でのチャンスを掴んでいきたいと考えています。
大規模デジタルイベント HENNGE NOW!①
今期は、むしろ効率よく全国のお客さまにアピールできるよい機会であると捉え、オンラインでのSaaSの祭典「HENNGE NOW!」を企画しています。これまではバーチャルではなく、リアルの世界で行ってきたイベントでした。昨年にもリアルイベントとして行いましたが、今年に関してはバーチャルイベントとして大々的に執り行う予定です。
2021年2月15日から6日間にわたり、40社以上の企業や自治体、教育機関にご登壇いただき、DX、SaaS、セキュリティといった、さまざまなテーマの中で変化と挑戦を実践するたくさんのセッションを開催します。
ユーザだけでなく、SaaS各社にも参加いただき、ニューノーマル下の新しい働き方や、どのように生産性を維持、向上していくかについてのヒントをみなさまで考えられるイベントにしていきたいと考えています。また、このイベントへの集客を狙った、デジタルイベントに付帯した大規模広告を実施していくことで、多くの企業とともにSaaS市場をより盛り上げていきたいと考えています。
大規模デジタルイベント HENNGE NOW!②
スライドにある、さまざまなSaaS企業の他、ユーザ企業からも多くの講演を行っていただく予定となっています。
LTV最大化
続いて、当社の成長戦略についてご説明します。当社の成長戦略はLTV最大化、つまり、Life Time Value、保有している契約の総価値の最大化です。
先ほどお伝えした解約率のスライドにも記載のとおり、当社のサービスは比較的長期にわたって、場合によっては何十年も利用される性質のサービスです。そのため、例えば今年受注した年間100万円の契約も、今期に100万円だけもたらす性質のものではなく、この先何十年、場合によっては35年以上も売上をもたらし続ける契約となり得るわけです。
このような契約をどんどん積み上げていくことで、将来の売上を最大化させていきたいと考えています。このように、契約の持つ価値を最大化させていきたいというのがLTV最大化の意味です。
スライド上段にLTVの考え方を示しています。年間契約金額の合計のARRに、平均契約年数の「Y」、そして粗利率の「r」をかけることでLTVが求められると考えています。これら3つのパラメータを上げていくと、我々の価値が高まっていくことになるわけですが、すでに解約率が非常に低い水準にあることから、平均契約年数「Y」は高い水準にあります。また、粗利「r」も高い水準を維持しているため、これからの成長ドライバーを作っていくのは、ARRが中心であると考えています。
このARRを3要素に分解すると、契約企業数「N」、1企業あたり何人が使っているのかという、契約企業あたりの平均契約ユーザ数「n」、そして1人あたりの単価であるARPUの3つに分けられます。この3つをかけ算しますと、ARRが求められます。
これを最大化させていくのが、我々の成長戦略の根幹となっています。このため、直近の営業利益の水準にはこだわりすぎずに、将来の売上を作る投資を積極的に行い、ARRを積み増していきたいと考えています。
ARR最大化
ARRを上げていくためには、この契約企業数「N」、平均ユーザ数「n」、そしてユーザあたりの単価のARPUを上昇させていくことが必要になってくるわけですが、もし2つ以上のパラメータを同時に上げていくことができれば、ARRをエクスポネンシャルに増やしていくことができます。
私どもの方針は、まずは契約企業数「N」の最大化を主眼に置きつつも、中期的にはARPUも向上させていくものです。「n」については、ややアンコントローラブルなパラメータであり、横ばいもしくは微増を見込んでいくと考えています。
成長戦略の進捗
実際の推移を表に表すと、ご覧のスライドのようになっています。2020年9月期については、さまざまな一過性の要因が重なった結果、ARRのデルタは昨年を下回る結果になっていますが、基本的にはデルタも含めてどんどん順調に積み上がっているのが現状であり、基本的にはARRは引き続き増加傾向を実現できると捉えています。
そうした中で課題になることは、ARRの成長率の低下ではないかと考えています。ARRのデルタを順調にどんどん積み上げていったとしても、プラス何パーセントという成長率に着目した場合、これをどんどん積み上げていっても分母がどんどん大きくなってしまうため、成長率はどんどん鈍化してしまうという事業の性質があるわけです。
私どもとしては、この成長率をなんとしても20パーセント台にとどめ置き、持続的な成長を実現していきたいと考えています。このため、短期的には契約企業数「N」を増やしていき、中期的には単価のARPUを上げていくことを目指していきたいと考えています。
2021年9月期は、大規模なマーケティング、広告宣伝費投資を行い、ARR成長率の変曲点を作り出し、逓減傾向にある成長率をあわよくば上向きに変えていく機会にしていきたいと考えています。これまでは「N」を中心に注力してきましたが、営業要員の増加、代理店との協業の推進を通して、さらに増加させていきたいと考えています。
ARPUについても、2019年6月にライセンス体系を改定し、新規顧客のARPUは大きく向上していくというフェーズの中にあります。今後も新規顧客の流入に伴い、全体のARPUは上昇傾向で推移すると考えています。さらなるARPUの上昇を目指していくために、新機能追加やブランドの強化により、変曲点を作り出すようなARPUの上昇をもたらしていきたいと考えています。
先般、パスワードからの解放を実現する革新的な新機能HENNGE Lockをリリースし、HENNGE Oneの機能も強化していますが、こうした機能強化は今後も継続的に進めていきます。また、デジタル分野での積極的な露出やマーケティング活動によって、我々の革新性、ブランドを広く市場に訴求していくことで、ARPU上昇を果たしていくことができると考えています。
スライドの右から2列目の「n」は平均ユーザ数となっていますが、これまでどおり比較的コントロールしづらいパラメータであると認識しています。大規模な顧客をとれば上がっていきますし、中小規模のお客さまにより強くアプローチしていくことになれば下がることにもなりますので、引き続き横ばい、または微増を見込んでいます。
2021年以降の成長戦略①
2021年以降の成長イメージについて、こちらのスライドに示しています。当社グループのビジネスは基本的にサブスクリプションのモデルですので、当期中に獲得した契約が解約されない限り積み上がっていき、翌期以降の売上高の基盤になっていくという、堅調なビジネスとなっています。
基本的には、図の黒い線のように安定的に成長していくビジネスになっているわけですが、直線的に安定的に成長していく場合、成長率を見ると年々下がっていくという宿命にあります。
これに抗うために変曲点を作りたいと考えているわけですが、変曲点を作るためには、点線のように、これまで逓減傾向であったARR成長率を逓増傾向に変えていくことが必要になります。
まずは、成長率が減らない状況にし、あわよくば逓増傾向に変えていくことを実現していきたいわけです。これまではそう簡単に実現できるようなことではないだろうと認識していたのですが、もしそれができる機会があるとするならば、今をおいて他にないだろうと考えています。
COVID-19によって企業の行動様式が大きく変化し、クラウドやSaaSの利用が拡大していくことはもう間違いないという状況が生まれています。この機会を捉えるべく、積極的なマーケティング費用の投下を行い、全国のディシジョンメーカーおよびパートナー企業など、より幅広い層にHENNGE Oneの強みやブランドを認知していただきたいと思っています。これによって、「N」およびARPUの両方に作用する変曲点を作り出したいというのが、今、行いたいことです。
2021年以降の成長戦略②
現在HENNGE Oneは、168のSaaSサービスと連携を実現しています。例えば、こうした連携SaaSサービスは、HENNGE Oneをご利用しているお客さまに、他要素認証やシングルサインオン、パスワードレス認証といった新機能や脱パスワードに関する機能を自ら実装することなく提供できます。こうしたユーザエクスペリエンスをお客さまに提供し、安全にそして簡単に各種サービスを利用できるようになっているということです。
当社のHENNGE Oneは特殊な位置付けです。SaaSとSaaSをつなぐ位置にいるSaaSのプラットフォームです。お客さまがSaaSを活用すればするほど価値が高まる、IDaaSと呼ばれる種類のSaaSですので、今後も日本全国の企業においてクラウドサービスの利用が拡大していくという流れを、自らも後押ししていきたいと考えています。また、こうした中でSaaS各社との連携を強めながら、SaaSプラットフォームとしての成長を図っていきたいと考えています。
会社概要
あらためて、当社の会社概要です。HENNGE株式会社は、1996年に創業した会社であり、2021年9月期で25期目にあたります。
スライドに写真があります小椋、宮本、永留の3名が学生時代に創業した会社です。2020年12月25日の定時株主総会の決議を経て、新たに天野が常勤取締役に就任し、現在の常勤取締役は4名となりました。従業員数は189名です。
Locations
事業所は国内に4拠点、海外に1拠点ありますが、多くの従業員は東京に集中しています。東京以外の地域でクラウドの利用が拡大していくと考え、こうした流れを捉えたいという思いから地方および各都市、そして海外にもリージョンを延ばしていく狙いで各オフィスを持っています。そうした地方に展開中の会社であるとご認識いただければと思います。
VISION
私どものビジョンは、テクノロジーの解放です。私どもはテクノロジーの力を信じており、テクノロジーが大好きです。テクノロジーがきっと世の中をよくしていくだろうと、強く信じています。この力をできるだけ多くのお客さまに届けることによって、世の中をよい方向に持っていきたいというのが私どもの思いです。
変わらない志、変わり続ける事業領域
このテクノロジーの解放は、創業以来さまざまな分野で実現してきました。その時代その時代で、我々が解放すべきであると考えたテクノロジーを解放し続け、少しずつ領域を変えながらお客さまにテクノロジーを届けています。現在、当社グループの成長ドライバーと位置付けているのがHENNGE Oneであり、これが始まったのは2011年からです。
売上高の事業別構成
現在の売上高の約89パーセントがHENNGE One事業からもたらされており、HENNGE One事業が当社のメイン事業となっています。
HENNGE Oneは2011年の東日本大震災を契機に本格的にスタートしたサービスです。当時は地震によって急に会社に行けない状況になり、いろいろな会社が困っていました。自宅勤務、現在で言うwork from homeを実現しないといけない状況に追い込まれてしまったわけです。
そして、どのようにすれば在宅勤務が実現するのか、どのようにすれば自宅からコラボレーションできる状況が実現するのかが、企業にとって大きな課題になりました。このような中、クラウドに移行していく流れが生まれたのです。
しかしながら、企業がクラウドを導入し、みんなが家から働ける状況を作ろうとしたときに大きな障害がありました。これがアクセス・セキュリティ、つまりセキュリティの問題です。
それまでは、会社の情報は会社の中にあるのが主流でしたので、会社員が会社に行けば情報にアクセスできますし、会社に行かなければ情報にアクセスできないかたちで、比較的はっきりとしていました。そのため、会社としては、会社の建物の戸締りをきちんとしておけば、アクセス・セキュリティの問題は基本的にはそこまで気にしなくてよい状況だったわけです。
しかしながら、クラウドになると誰でもどこからでも会社の情報にアクセスできます。世界中に広がるインターネットのどこかに会社のデータが分散して置かれ、どこからでもコラボレーションの実現ができるということです。
こうした特徴がクラウドの最大の強みであり革新性ですが、一方でアクセス・セキュリティの側面から見ると、まったく知らない人も会社のデータにアクセスできる状況になってしまいます。よって、企業としてはやや不安です。
したがって、震災のあとはクラウドの導入にどうしても二の足を踏んでしまう状況がありました。一方で、私どもはそれまで15年間にわたってセキュリティのソフトウェアを企業に提供してきた会社でした。そうした企業として、この状況をどうにか変えていきたい、どうにかしてテクノロジーを解放したい、という思いがあり、そこからHENNGE Oneが生まれました。
HENNGE One①
HENNGE Oneには、主に2つの機能があります。スライド右側には、アクセスコントロール、左側にはID統合と記載しています。
アクセスコントロールは、今お話しした問題を直接解決する機能なのですが、どのような機能かと言うと、企業が利用するさまざまなクラウドサービスにおいて、誰がいつどの端末からログインできるのかを一元管理し、それぞれにセキュリティポリシーを設定できるサービスです。
これによって、人事管理システムは人事の人だけがログインできるようにしよう、営業管理システムや営業日報のようなシステムは、どこからでもアクセスできるようにしたほうが営業効率がよいが、会社支給の端末だけに限定しよう、などといったかたちで、企業はどのクラウドサービスにいつ誰がどうログインできるかを制御できるようになります。これを導入することで、企業は安心してクラウドを使ったワークスタイルに移行することができるわけです。
スライド左側のID統合は、さまざまなSaaSのIDとパスワードをシングルサインオンによって統合する機能です。SaaSを活用していくと、徐々にいろいろなSaaSを利用するようになり、いろいろなIDとパスワードの管理に追われる状況になる問題があります。
例えば、SaaSを10個使っている会社では、社員が入社すると1人に対して10個のIDとパスワードを作らなければなりません。その社員が退社するときには、すべてのサービスからそのIDとパスワードを消さないと、IDとパスワードさえ知っていれば、退社後もその社員が会社の情報にアクセスできる状況が生まれてしまうわけです。
一方で、ユーザはいろいろなIDとパスワードを覚えないといけないため、ついパスワードを使い回しし、不正アクセスの原因を作ったりする問題もあります。
これを解決するのがID統合機能です。これを利用すると、お客さまはHENNGE Oneにさえログインすれば、その他のクラウドサービスにあらためてIDとパスワードを入力することなくアクセスすることができます。また、企業も従業員も、IDとパスワードを管理する手間やリスクから解放されることが特徴です。
HENNGE One②
私どもは企業に対してこうした機能を提供していますが、企業がクラウドを使い出したときに障害になりそうなものはすべて取り除きたいと考えています。したがって、ほかにもいろいろな機能を提供しています。例えば、スマートフォンのセキュリティ機能であったり、Eメールのセキュリティやファイルのやりとりを安全にするような機能をSaaSでお客さまに提供しています。
HENNGE Oneの強固な顧客基盤
これを1ユーザ毎の月額制でお客さまに提供しているのがHENNGE Oneです。これまで1,750社以上のお客さまにご利用いただいており、ユーザ数、つまり使っている従業員の合計はおよそ194万人になります。
さまざまな業種や規模のお客さまに広くご利用いただいているサービスとなっています。計算すると、1社あたりの平均ユーザ数は1,200名前後になります。
スライドには、2020年9月期末時点のARRベースでの契約アカウント規模別分布を掲載しています。グラフのとおり、300人から5,000人くらいがお客さまの中で一番多い層となっています。ここが私どもの主要な営業ターゲットになっています。また、300名より小さな企業もいますし、逆に5,000名より大きな企業もいます。
以上、駆け足ではありましたが、当社の会社概要および主要サービスのご説明をさせていただきました。本日はお忙しい中、当社の決算説明動画をご視聴いただきまして、誠にありがとうございました。
質疑応答:売上高成長率の考え方について
小椋:実は今回から、ご質問が集まらない場合に備えて、予想されるQ&Aを作成して公開するということを行っています。「2021年9月期第1四半期決算 Q&A」というものを決算と同時に開示していますので、こちらも見て少しずつ間をつないでいきたいと思います。
まず、連結業績について、売上高成長率の考え方を1つ目の質問として挙げています。売上高成長率については、現在20.6パーセント増となり、見通しに対して順調に進捗しています。動画の中でもご説明したように、ここからもっとARPUおよび契約数をとるスピードを上げていかなければ、20パーセント以下になってしまう状況も考えられます。そのような状況に対応するために変曲点を作り出したいということで、20パーセント以上で持続的な成長ができる状況を作り出していきたいと思っています。
質疑応答:採用費用が減少した背景や足元の採用状況について
小椋:このようなお話をしている間に、ご質問をいただきました。テキストでご質問いただいた場合は、私が読み上げるかたちで公開していきます。「採用費が減少したということですが、背景についてもう少し詳しくご教示いただけますでしょうか? また、足元での採用状況や環境についてもご解説いただけますでしょうか?」というご質問です。こちらは、管理部門担当の天野から回答します。
天野治夫:人材採用は四半期で季節性があるというよりは、四半期ごとに凸凹するところがありますので、前四半期よりも採用が少なかったため、費用がそれほど出なかったということです。
一方で前年同期比ベースでは多くなっております。採用の状況については、通期は純増で30名以上採用する計画を立てており、そこに向けて順調に進んでいます。しかし、ご存知のように、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、特に日本国外に在住しており、内定が出て日本に来て仕事をする予定の人材の入国に遅れが生じています。そのあたりは若干ネガティブな状況ですが、徐々に改善されています。
質疑応答:解約アカウントのARPUについて
小椋:2つ目のご質問をいただいています。「8万人の解約というお話について、このARPUは会社の平均よりもかなり低いという理解でよいでしょうか? また、新規の顧客のARPUはどのぐらいの水準なのか、お話しいただける範囲で教えてください」ということです。
今は解約アカウントのARPUを開示していないのですが、おそらく出ている数字から計算することは可能だと思うので、率直にお話しします。
初期のユーザで使い方もSSOではなく、ただたくさんのユーザでメールセキュリティを確保したいという案件でしたので、比較的思い切ってディスカウントしている状況です。したがって、そのようなユーザの解約によって、結果的に計算上はARPUが上がっているという状況になっています。
ただ、それにかかわらず、以前からお伝えしているように、プライステーブルの見直しによって、基本的にはARPUが少しずつ上がっていく状況にあります。そのような傾向に加えて、解約によってさらに不自然に急に上がったのが、当四半期で起こったことであると考えています。
質疑応答:成長ペースについて
小椋:次のご質問です。「グローバルでは、Okta(オクタ)が20倍近い売上規模にもかかわらず、40パーセントから50パーセントで成長しています。なぜ、HENNGEでは20パーセントを目線にしているのでしょうか? 成長ペースを一段と上げるためのボトルネックは何ですか?」
この理由は2つあります。1つは、そもそも市場の環境が違うということです。米国のように、100人以下の企業でも平均100個くらいのSaaSを使っている市場では、投下するお金に対するリターンが比較的見込める状況にあると思っています。
日本については、2011年の震災から数年間、強いクラウドに対する乗り換えトラクションがありましたが、そのあとはゆっくりと、しかし力強く、DXや働き方改革などのキーワードでクラウドSaaSが普及してきたと私どもは捉えています。少なくともこれまでは、まだそのようなドライブが非常に強くかかった状態ではなかったことが挙げられるかと思っています。
しかしながら、それがまさに今変わろうとしている状況にありますので、私どもとしては、現状の20パーセントよりも高い目標を置いていきたいと考えています。今よりも高い成長率を作るための変曲点をここで作り出していきたいと思っています。これが1つ目の理由です。
「では、なぜ40パーセント、50パーセントではないのか?」ということに関して言うと、単純に、市場において、まだみんなが100個のSaaSを使っている状態ではないということです。
私どもは20パーセントが限度だと思っているわけではありませんが、これまでの私どものペースから積み上げて考えていくと、まずは20パーセントからどのように上げていくかという議論にならざるを得ません。ここから野心的に成長率を上げてくことができれば、あわよくば上げていきたいと思っていますが、今はまだ上げる実績を出していない以上、あまり大きなことは言えないという状況です。もちろん、ここから市場の変化に合わせて変曲点を作り出し、できるだけ高い成長率を目指していきたいと思っています。
もう1つの理由は、そもそも費用のかけ方に関する考え方の違いもあると思っています。私どもは、あくまでそのような成長ギャップがある市場に対して、どう効率的にアプローチしていくかという目線で考えています。
今期は思いきって広告宣伝費、営業マーケティング費用を投入し、売上成長率、ARR成長率を上げていこうという取り組みを行っていますが、Okta社のように利益水準はまったく気にせず、どんどんお金をかけていこうというフェーズにあるわけではないため、そこが少し違うと思っています。
したがって、「成長ペースを一段と上げるためのボトルネックは何か?」という質問に関しては、その市場の成熟度合いという点が1つです。もう1つは、私どもの費用に対する考え方ですが、要は費用対効果よりも成長率を優先するべきかどうかについては、その市場なりのバランスがあると私は考えています。
日本市場では、やはりお客さまも永続的に使うサービスについては、その企業がどのくらい事業継続性があるのかを見ます。10年間使うものを買うのであれば、きちんとした事業継続性を示している企業から買いたい、という性向がありますので、そのようなところを見ながらベストなバランスを作ります。ただし、市場では最終的には支配的な立場をとるため、一番費用効率が高いクレバーな方法でアプローチしようと考えています。
質疑応答:競合について
小椋:もう1つご質問をいただいています。「競合状況についてコメントをいただけますか? 日本においては『Active Directory』『Okta』『TrustLogin』『CloudGate UNO』等の競合がありますが、どのように差別化していきますか?」
何度も聞いていただいている方には同じ回答になってしまうのですが、私はこのビジネスはすごく市場性のある、地域性の高いビジネスだと考えています。お客さまが買っているものは機能ではなく、サポートも含めたクラウドの体験ですので、お客さまは、単純に機能が高いからこれを導入しようというよりは、どうやったら安定的に何十年間も使えるサービスを導入できるかという視点で考えています。
したがって、単純に機能比較や価格比較だけでは導入は決まりません。一番大事なのは、サポート力と、先ほどお伝えしたように、何十年は言い過ぎかもしれないですが、10年くらい使う可能性のあるものとして、適切なサポートができるかという点です。
この理由としては、IDaaSは他のSaaSと比べて乗り換えしづらいサービスであることが大きな原因であると思っています。例えば、明日に全員がAというSaaSからBというSaaSに乗り換えられる、あるいはAとBというSaaSを同時に使い、よい方だけ残せばよいというタイプのSaaSであれば、お客さまもあまり意識せずにネットでポチッと購入して、とりあえず両方使ってみればよいかというかたちで使い始めると思います。しかし、ことIDaaSは、一度使うとなかなか乗り換えられませんし、1回に1つしか使えません。
例えば、1,000人でIDaaSを使っているところから違うIDaaSに移ろうとすると、まず1,000人の従業員に対して、明日からログイン画面が変わりますだけでは済まされません。何ヶ月か前から、何ヶ月か後にログイン画面とパスワードが変わるため、この画面から何月何日までにパスワードを再設定してください、というアナウンスを行い、当日には、画面が変わったけれど、これは何ですか? という電話がたくさんかかってくるという話になるわけです。
したがって、簡単には乗り換えられないことから、このIDaaSというジャンル自体が比較的保守的なサービス選びをしがちであるため、機能性などではなく、総合力で戦っていかなければならない市場であると思っています。
そのような意味で言うと、私どもが差別化するポイントは、まずは実績です。今はナンバーワンであるという実績自体が大きな差別化要因になっていると思っています。それ以外にも、例えば機能面で言うと、メールセキュリティやスマートフォンセキュリティ、あるいはファイル転送機能といった、クラウドに移行しようとするお客さまが必ず使うものが一緒に入っていることが大きな差別化要因になっています。しかし、一番大きいのは、やはりサポートと実績だと思っています。
質疑応答:営業のデジタル化の手応えについて
質問者1:3点あります。まず1点目は、営業のデジタル化の手応えについて教えてください。可能でしたら、リードの獲得のところと、リードから先のクロージングのところについて知りたいです。ポイントとしては、新型コロナウイルスにより新しい営業体制に変わり、御社側もお客さま側も使い慣れてくるところがあると思いますので、そのような改善が見られているかをお聞きしたいです。
小椋:デジタル化の手応えという意味で言うと、私どもの力だけと言うよりは、市場全体の動きやお客さまの商習慣の変化も含めて、かなり普通になってきたと実感しています。
初めの頃は、お客さまに会えないことが一番大きな問題であり、我々から見ると困難だったわけですが、今のところ第1四半期は少し好調です、と先ほどもお話ししました。営業面で言うと、緊急事態宣言下でほぼ誰も出社していない中でも、お客さまとコミュニケーションを取り、商談を進めていくことができるようになってきています。したがって、そのような面では、今のところあまり支障を感じておらず、むしろ新しい可能性を感じはじめているところです。
加えて、「HENNGE NOW!」の開催に向けて大々的なプロモーションを行い、今までよりも広い層に網掛けをして、それを口実に連絡を取っていくということを行っています。そのような活動も、おおむね好意的に受け止められながら進んでいると思っています。
手応えはどうかというご質問に関してですが、手応えは感じています。去年はけっこう試行錯誤でしたが、今年はこのようなイベントによる露出も含めた実践編に移っている状況です。
質疑応答:HENNGE Oneのコアバリューについて
質問者1:続いて、2点目です。HENNGE Oneのプロダクトについてお伺いします。手前の判断なのですが、御社のHENNGE OneのコアバリューはセキュリティとID統合がメインになっており、ここからあまり大きな変化は出ていないのかと思っています。
プラットフォーム化が恒常的な価値向上につながるものなのか、それとももっと別のものがHENNGE Oneの価値向上につながるのでしょうか? このあたりのお考えを教えてください。
小椋:デジタルトランスフォーメーションが進んでいく局面になっていくと、お客さまのほうでもSaaSの活用が進んでいきます。そして、お客さまがさまざまなSaaSを使う状況になると、その中でSaaSとSaaSを使った新しい価値をどう提供していくかというところが論点になってくるのだと思っています。
正直にお伝えすると、私どももCOVID-19以前はそのような新しい中心的な価値を見つけ出す段階に入ったのかと思っていました。しかし、現在このような状況下において思っていることとしては、もちろん全体的にはそうではないのですが、ある意味では2011年の再来という状況になっていると思っています。
スライドでも出しているように、今のフォーカスはDXというよりも、どのようにクラウドを使って今までの事業を継続していくのか、どうやって今までの仕事のやり方をクラウドに置き換えていくのかというところです。そこからさらに生産性を向上したり、複数のSaaSを活用して生産性自体を向上していく、あるいは仕事のやり方自体がより効率的になっていくという段階に入っているかというと、まだそこまでには至っていないと思います。先ほどお話しした米国で100個のSaaSを使っているという状況と比べてもわかると思います。
ただ、その一方でクラウドを活用していかないといけない、クラウドを活用していきたい、それによって事業を継続していきたい、という需要が急速に高まっているのが現状の市場の状況であると捉えています。
今のところの打ち出し方としては、DXや生産性向上ももちろん謳っていきますが、それよりは、今からクラウドを使い出すお客さまに対して、これを使って安全に今までの業務をクラウド化することができますよ、というコアバリューを強めに出していくフェーズなのかと思っています。ですので、製品の打ち出し方としても、引き続きセキュリティとID統合を中心にしています。
SaaS各社との連携もどんどん進んでいますし、お客さまの先進的な事例や使い方も出てきています。そのような中から、新機能のヒントや新しいかたちでの連携のヒントが生まれてきていますので、それからプラットフォーム化をさらに進めていく次の段階に移ります。
私がお伝えしたようないわゆるBCP、事業継続が観点ではなく、DX、生産性向上へと市場の状況が進化した2年から3年後くらいの世界においてもよりよい価値を提供できるように、今から技術開発あるいは拡張・連携を押し進めていきたいと思っています。
質疑応答:CHROMOのマネタイズについて
質問者1:3点目は、新規の事業についてお伺いします。これのマネタイズや収益寄与の状況と、具体的なお話は難しいと思いますが、それ以外のパイプラインなど、全体的な状況を教えてください。
小椋:CHROMOに関しては、いわゆる私どものプロフェッショナル・サービス及びその他事業の新規事業という位置づけになっていまます。しかしながら、これがエデュケーションセクターに拡大していくクラウドとうまく結びつくとHENNGE Oneともシナジーが出てくるかもしれない、という位置づけのものです。
私どもが2011年にHENNGE Oneを始める前までずっと取り組んできた、自治体や学校、公共団体向けのメール配信サービスという、けっこう強い事業があるのですが、これがオンプレミスの時代ではなくなっていくことによって、少しずつフェードアウトしていくというのが、プロフェッショナル・サービス及びその他事業の状況です。
とはいえ、この強みをクラウドに置き換え、今までのようにガラケーにショートメールを送るのではない、新しい時代の自治体や公共団体のコミュニケーションが実現できるのではないか、という観点で始めているものなので、率直に言うとアプローチする先があるお客さまもいます。
私どもがどういったものを提供すると、どういったかたちでお金をいただけるのかということを模索しながら、お客さまの意見を取り入れて機能を改善している段階にあるというものです。したがって、マネタイズの意味合いとしては、まったく新しいことを行おうとしているというよりは、これまでオンプレミスで売ってきた商流あるいはターゲットに対して、クラウドで提供できるものを提供しつつ、あわよくばHENNGE Oneとのシナジーも作っていきたいという位置づけになります。
その他のビジネスのパイプラインについては、試行錯誤という状況であり、引き続き社内でインスパイア祭りという、新規事業を生み出していく活動を行っています。コロナ禍で新規サービスを生み出していくのはけっこう大変ですが、そのような中でもおもしろいアイデアが出てきて試されている状況にあります。半年、1年というスパンで結果が出るものではないものの、私どもの将来にとって間違いなくよいものになる種がパイプラインとして出てきていると感じています。
質疑応答:利用度が低い大口の顧客について
小椋:引き続き、文字でのご質問を頂戴しています。「大きな解約があった顧客のように、ARPU、利用度が低い大口の顧客は他にありますでしょうか? また、それはスモールエンドのうちどの程度いるのですか? そのようなお客さまに対して、カスタマーサクセスの方々のアップセルに向けた活動はいかがでしょうか?」というご質問です。
ここは、会議資料を作りながら、これは絶対に気になる部分だよねと思いながらも、お客さまの情報も開示しづらいため、どうしようかと悩んでいたところなのですが、率直に言うと今回ご解約いただいたお客さまは初期のユーザです。
私どももSSOメインでいくのか、メールのアーカイブメインでいくのか、メールフィルタリングメインでいくのかといったことを議論している時に、とにかく貪欲にいろいろなお客さまにアプローチしている中で、すごく大口のお客さまにご利用いただいたというスタートでした。
そのような試行錯誤期の2012年、2013年、2014年あたりのお客さまですので、どのくらいいるかということについてダイレクトにお答えすることは難しいものの、おおむね2014年以降くらいからは現在の方向性でお客さまを獲得しています。
もし、そのようなユーザがいるとすると、それ以前のお客さまでいるという状況ですので、少なくともARRの中の割合で言うとそこまで大きな割合ではありません。最近積み上がってきているARRの中にはそのようなお客さまはおらず、初期のユーザの中にいくつかそのような代表的なユーザがいるという状況です。
これがわからないと全体の「n」、ARPUのパラメータの信用性と言いますか、パラメータの実際のところが分かりづらいということでご質問いただいているのだと思います。そのような意味で言うと、今回はかなり極端な例であり、ユーザ数が多くて金額が小さいという例ですので、このようなユーザはあまりいないと私どもは捉えています。
質疑応答:期ズレ案件についてや解約要因を除くARPUについて
小椋:「契約社数85社に、第4四半期からの期ズレ案件はどれだけ含まれているでしょうか? ARPUは解約要因を除くといくらでしょうか? 御社のビジネスは、クラウド導入後に導入される遅効性のあるビジネスだと思いますので、2022年から2023年以降に大きな成長が期待されると思っています。今回の第1四半期の契約者数をスタンダードに見ないほうがよいでしょうか?」というご質問をいただきました。
「期ズレの案件がどれくらい含まれているか」についてですが、私どもは期ズレとは捉えていないため、そこについてはお伝えすることができません。
「ARPUの解約要因を除くといくらなのか」ということについても、申しわけありませんが、回答が難しい箇所になります。今後の推移を見ていただきたいと思うのですが、定性的に言うと、今回の解約要因を除いた場合、今までのARPUが徐々に上がっていくという傾向に大きな変動はないと捉えています。
「クラウド導入後に導入される遅効性のあるビジネスのため、2022年から2023年以降の大きな成長があるとすると、第1四半期の契約者数はスタンダードとして見ないほうがよい」という件については、我々も正直、この傾向が永続的なものなのかどうかは見ていきたいと思っています。
目下、営業は比較的元気にしており、お客さまとのコミュニケーション方法もわかってきています。広告宣伝等も活発に行っていることもあり、お客さまへアプローチしやすい状況があります。したがって、しばらくはそのような追い風があると期待しているものの、私どもも楽観的にここからどんどん伸びていきますと言える性格ではありません。
私どもの感覚としては、第2四半期に大規模なプロモーションを行い、そこから反響があるお客さまが生まれ、リードタイムは半年くらいで私どものビジネスが加速するとみている状況です。
質疑応答:HENNGE Oneのプラットフォームで展開できるSaaSサービスについて
小椋:「ARPUの伸びに関しては、新規ユーザのミックス増加が第1段階にあると思いますが、非連続的な成長を考えるにあたり、HENNGE Oneのプラットフォームで展開できる、SaaSのサービスなどを展開するというのは、今後の選択肢としてあり得るのでしょうか?」というご質問です。
ここについては、HENNGE OneのARPUをアップセルしていけるようなネタを常に探している状況です。例えば、現在のHENNGE Oneからは分離するかたちで課金できる要素や、お客さまに求められている要素もあると思っています。
このようなものを積極的に模索していきながら、今の母数をどんどん広げていく活動と同時に、そこに対して買っていただけるような商材、あるいはネタを作っていくという活動は、もちろん両方行っていきたいと思っています。また、非連続なARPU増加を作り出すようなネタも常に探していますし、今後も貪欲に見つけていきたいと思います。もちろん、お客さまに有益なかたちで見つけていきたいと考えています。
今回から「2021年9月期第1四半期決算 Q&A」というかたちで、疑問としてありそうなことを開示していますので、こちらもぜひご覧ください。
それでは、長い時間にわたり、本当にありがとうございました。今後も、変曲点を作り出していきたいと思っていますし、他のSaaS企業と連携してSaaSを盛り上げていきたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。今日はお忙しい中、ご参加いただきましてありがとうございました。