決算のポイント

佐藤和弘氏(以下、佐藤):みなさま、おはようございます。本年6月に、前任の安形に代わり社長に就任いたしました佐藤でございます。日頃は多大なるご支援を賜りまして、誠にありがとうございます。心より御礼を申し上げます。私にとりまして初めての決算説明会となりますので、よろしくお願いいたします。それでは、牧野より業績について説明させていただきます。

牧野一久氏:みなさま、おはようございます、牧野でございます。それでは決算の業績についてご説明させていただきます。スライドの2ページです。まず決算のポイントということで、1つ目は当第2四半期、これは7月から9月までですが、ここは日本での販売回復や固定費削減などの努力効果により、黒字を確保しています。また後でご説明します。

そうは言っても、やはり前半の4月から6月に売上が非常に減少したということもありましたので、結果的には販売が累計で約3割減少し、その影響を受けて各段階利益は赤字となっています。

それから2つ目は業績予想ですが、第1四半期、第2四半期、販売の回復とともに固定費および原価改善を非常に努力した結果、あとでご説明しますが、第2四半期は黒字になっています。

しかし、我々としてはまだ先がよく見えない、特にコロナの再拡大ということもありますので、公表値は据え置いています。これについてはこのあと社長の佐藤からも説明があると思いますが、いったんは据え置いたということでご説明します。

それから配当金、これについても今の公表値ベースでいくと当期利益のところは2期連続の赤字です。本来としては配当金は……ということになりますが、我々は極力最低のところは確保して、みなさまに報いたいということで、8円ということで何卒ご承知おきいただきたいと思います。

1-1)実績 - 連結損益

すでにみなさまご存知の数字のところはあえてご説明しませんが、スライド上部に記載のように、全事業で大幅減収、地域では中国は比較的堅調でしたが、中国以外については大幅減収となりました。先程ご説明したように、上期、第2四半期までの累計で約3割の売上減で、大幅赤字になっています。しかし、費用削減および原価改善に向けた努力もあり、7月から9月は黒字化しています。

1-2)実績 - 事業利益増減分析

5ページです。これが事業利益、私どもは国際会計基準IFRSを採用していますので、事業利益と呼んでいるものが従来の営業利益に該当します。これについてグラフで示しています。

やはり今期第2四半期までは売上の減による利益減が非常に大きく、600億円以上の影響がありました。それに伴って原価改善、それから費用減です。原価改善にも必死になって取り組んできましたが、やはり売上にボリュームがない分、絶対額としてはやや少なく見えているということです。

費用については、ここに記載の労務費ですが、当初は物量も落ちてきたということもあり、それ以降は体質強化という意味でも工数削減による残業削減、それと一部操業短縮も行っています。そのため労務費の改善が非常に多くなっています。

修繕費、設備投資についても、その下に記載の研究開発費と同様に、それぞれ前年に比べて2割から3割落としています。これは単純に落としたわけではなく、中身を精査し優先順位をつけて、開発力、設備投資も効率化させるという中で、当たり前の状況に戻してきているということです。結果的に第2四半期で収益を65億円ほど向上させて、マイナス233億円です。

1-3)実績 - 所在地別業績

6ページは所在地別、地域別です。ここは第4四半期の累計ですので、売上収益、事業利益とも前年に比べて大幅な減となっています。しかし、先ほどお話ししたように、中国はみなさまご承知のとおり4月はじめから非常に顕著に動いていますので、中国については増収増益です。

1-4)実績 - 事業別業績

7ページは事業別ですが、ほぼ地域別と同じような動きになっています。やはり累計ですので、4月から6月の影響が大きく、大幅な減収減益です。ただし、工作機械については一部アメリカの子会社による利益確保などがあり、絶対額としては工作機械のみ黒字を確保しているということです。

1-5)実績 - 所在地別業績 (1Q:4-6月→2Q:7-9月)

8ページは第1四半期と第2四半期を対比させたものです。ご覧の通り、売上も第1四半期は4割以上の大幅な減でしたが、第2四半期以降は2割ほどの減に戻り、回復してきています。

それを受けた内容として、事業利益は、中国はもともと4月から回復していたということもありますが、欧州を除いた全地域で絶対額でも黒字化となっています。欧州も、4月から6月に対しては、物量の増に伴ってということもありますが、大幅な費用減および利益改善が進んでいます。

1-6)実績 - 事業別業績(1Q:4-6月 → 2Q:7-9月)

次のページは事業別です。これも、スライド上部に記載のとおり、完成車メーカーの生産回復に伴い販売は回復基調、各事業とも増収です。特に第2四半期、7月から9月を切り出すと、ステアリング、駆動、工作機械が黒字化しています。

以上が実績です。総じて、第2四半期では固定費のあるべき姿、削減、適正化、それと原価改善がかなり功を奏してきているのではないか、という状況になっているということです。

2-1)予想 - 連結損益

11ページをご覧ください。連結の公表値は据え置きます。収益体質の改善、強化がかなり進み、第2四半期、第3四半期以降もそのスピードは緩めないということですが、現状ではコロナの再拡大など不透明な点もありますので、いったんは据え置こうということです。

これは社長の佐藤のほうから説明があると思いますので、私の説明としてはここで終わりたいと思います。次、社長のほうからよろしくお願いいたしします。

3-1)重点取り組み課題

佐藤:それでは13ページをご覧いただきたいと思います。重点取り組み課題についてご説明します。私がこの会社を引き継いだ時には、20年3月期に37億円の赤字という状態でした。まずはこの会社をなんとか健康体にしたいということと、より強い会社、魅力のある会社に変えていきたいという思いで、たとえとして「外科的治療」「内科的治療」それから「漢方治療」としました。

1番の外科的治療は、言うまでもなく赤字、血が流れているのを早く止めようという、そのような活動です。それから内科的治療は、このままでいくとまずいということで、会社の体質、体制、仕組みのようなものを変えて、より強い会社にしたいという中身です。

それから漢方治療は、これが一番時間がかかるのですが、これが本当に変わった時には揺るぎない強い会社になれるという思いで、漢方治療と呼んでいます。当然TQMを中心としてお客さまに向いた改善マインドを持った全従業員であったら、体質の強い会社になるであろうということです。このような3つの方向で、取り組みを進めてきました。

3-1-1)重点取り組み課題 - 外科的治療

それでは14ページをご覧ください。こちらがまず外科的治療ということで、「聖域なき収益改善」としています。まだ社長になる前の4月の顧問の時に、収益向上委員会というものを立ち上げました。当然私が責任を持つ期になるものですから、4月から取り組みを始めたということです。

まず当然「会社から出ていく出金というものをしっかり精査して抑えましょう」と、それから「一生懸命、原価低減を粛々と進める」「利益の出るものはしっかりと売っていきましょう」と、そのようなことを目的に収益向上委員会を立ち上げ、取り組んできました。

私がリーダーで、2週間に1回、主要なメンバーを集めながらずっと続けてきました。最近になってくると、提案の中身が会社の構造的な課題のようなところに移ってきて、今そのような内容に関してメスを入れている状況です。

それでスライド最初の「聖域なき収益改善」の項目1つ目を見てもらいたいのですが、ここに記載のとおり、資本コストや成長性、財務状況等という切り口で全事業、それからグループ会社を分析して、そこで問題のある事業の内容や子会社にメスを入れようということで、粛々と選定を進めているところです。

その下に「欧州人員削減」と記載していますが、ご承知のとおり欧州はずっと苦しい状況が続いているものですから、まずは手のつけられるところということで、人員を21年3月末までに600人ほど減らしていこうと取り組んでいる最中です。

それから詳細はお話しできませんが、赤字子会社も選定を進めています。軸受やステアリングに関しても、全部が黒字というわけではなく、赤字の型番もあるものですから、まずはこの赤字の型番というものをなんとかしようと取り組んでいます。

一方、軸受やその他事業に関しても「このような方向性でやっていこう」ということがだいたい決まってきましたので、ロードマップを策定しながら進んでいます。このようなところを進めていきながら、次なる、例えばキャパシタとか駆動の部分などに力を入れて、成長戦略を練っていきたいなと考えています。

それから、スライド下部に「損益分岐点の引き下げ」と記載していますが、19年度の損益分岐点は売上高比率で92パーセントという状況でした。したがって、今回のコロナ禍においては、とても耐えられる状況ではなかったというわけです。

それで全社一丸となって、さっきお話しした収益向上委員会を中心にいろいろ取り組んできて、20年度の上期には85パーセントまで改善しています。これにはいわゆる神風も吹いていて、コロナ禍で出張がなかなかできなかったり、ステイホームで残業的なところもセーブされていたり、そのような追い風もあって85パーセントとなっています。

我々としては、やはりリーマンショックのあとに、本来であれば70パーセントの売上でもトントンでいける会社を目指してきたはずなのですが、現状92パーセントという状況に陥ってしまっていました。

一方、トヨタなどを見てみると、リーマンショック以後粛々とやってきて、今回このような事態に陥ってもあれだけの利益が出る会社になっている。ここを我々は深く反省して、これから先、まずは80パーセントの損益分岐点を目指し、その先70パーセントを目標として粛々と体質強化を進めていきたいと思っています。

3-1-2)重点取り組み課題 - 内科的治療

それでは15ページをご覧ください。これは「出来ていない」と認識していても、なかなか手を付けられずにいたような課題に、本格的に手を入れていこうということです。私から見ると、ここが本当の構造改革ではないのかと思っています。

まず「本社機能の強化」です。みなさま方もジェイテクトに対していろいろな思いがおありだと思いますが、これまで事業部制ということで、あまりジェイテクト全体、本社という考えが見られなかったという点に関して、社内のボードメンバーを中心に毎週戦略会議をもちました。

「これから先、未来に向かって、ジェイテクトは会社としてどういうことをやっていくんだ」「その中の事業部としてどういう役割を持っていくんだ」ということを、みんなで毎週毎週、集中審議をしているところです。この集中審議を踏まえて、ジェイテクト全社の中計を策定して、来年の5月には公表したいと考えています。

それからスライド中央に「ガバナンス強化、シナジーの発揮」とあるのですが、やはり今まで事業部制ということを特に強調していたこともあって、事業部間連携が若干弱いと思っており、ここの強化が必須であると感じています。

一例ですが、ステアリング部品や駆動部品には軸受が使われています。単純な見方をすると、ステアリング、駆動はTier1、軸受はTier2という立場です。したがって本来であれば、Tier1のお客さまの意見を聞いて、それに合致する軸受になるようがんばる、それで競争力を上げていくというのが望まれる姿です。しかしその点が、同じ会社にある観点で厳しさが足りなかったのではないかと思っており、そのようなマインドで仕事に取り組むようにということを今進めています。

工作機械に至ってはいろいろな技術を持っています。この工作機械の技術を各々の事業部で活かすことができるだろうということで、今積極的に工作機械のメンバーたちを他の事業部に行かせて「なにができるんだ」「これだったらできる」というようなことを積極的に進めている最中です。

それから国内グループ会社の管理機能強化、グループ会社間の連携強化ということですが、親会社のジェイテクトもどちらかというと肥満の体質だったものですから、子会社も同様な状況です。

だからまず子会社自身もスリムな体になってもらって、連結に貢献してもらいたいということで、一社一社を私が社長訪問という格好で回りながら、その会社の個別の課題について打ち合わせをして、それから「このような方向に行こう」ということで手を握って取り組んでいるという状況です。

ご承知のとおりジェイテクトのグループ会社、個々の会社はいろいろな技術力を持っています。この技術力をグループとしてもっと活かしていくということで、販売ひとつとっても、グループ会社が細々と個々に売っているものを、グループ全体で売っていったらもっと間口も広がるし、販売力も伸びるだろうとか、いろいろな連携の方向を模索しているところです。

それから「地域ガバナンス強化」です。今まで事業部制が強かったことから、各海外の子会社は事業部の延長でした。残念ながら地域全体を踏まえて見るというガバナンスが足りていませんでした。

そこで副社長が2人いるものですから、その副社長に地域を担当してもらって、1人の副社長には欧州と北米、もう1人の副社長には中国とアジア、インドといった全体最適を地域で考えてください、事業部の延長線上ではなくて地域として考えてください、という進め方をしています。

それから3番目の「プロジェクト管理の強化」ですが、当初、原価企画で立てた数字が、立ち上がりの時には予想に反して利益率が低いということが散見されました。そこで、それはやはり原価の見積もりが甘いのか、それともプロセスの管理が甘いのかということで、原価管理の方法、プロセス管理の方法を本気で見直そう、体制的に見直そうということを、今一生懸命やってる最中です。

3-1-3)重点取り組み課題 - 漢方治療

16ページは従業員の意識改革です。ご承知のとおり、20年の12月に本社を名古屋から刈谷に移し、1月1日から刈谷でしっかりと仕事をするという体制に変えました。この目的は、やはり我々は製造業ですから、ここのミッドランドスクエアという製造業の現場から離れたところにいるより、本社機能を司る人間も物を作っているところの近くにいて、物を作っている人の気持ちに立って、それでいろいろな施策を打っていく、現場に近い本社であるべきというのが1点目です。

それから刈谷はご承知のとおり、デンソー、アイシン精機、豊田自動織機、トヨタ紡織と、トヨタグループの我々が懇意にしている仕事仲間である会社の本社があります。したがってトヨタグループの一員ということで、そのような場所でよりグループ会社間の連携を高めていきたいと、そのような目的でした。

今後、これから本社移転に伴って、組織体制の見直しや役員体制の見直し、それから人事体制の見直し等々に取り組み、従業員全員「会社が変わったんだ」「我々ジェイテクトはリボーンをしないといけないんだ」と、そのような風土を醸成していきたいと考えています。

それからTQMの浸透ですが、正直これはまだできていません。会社の今おかれている赤字という状況を打破するために、そちらに注力しているものですから、この時間のかかる「お客さま視点で考え、全員が改善マインドを持つ」という仕組み作りと人作りは、まだまだできていないというのが正直なところです。

しかしながら、この最後の、お客さま視点で考え弛まぬ改善ができる仕組みと人作りができれば、ジェイテクトの体質は相当強くなるのであろうと予測しています。今の赤字の解消ということが一段落したら、このあたりを本腰を入れて進めていきたいと思っている次第です。説明は以上となります。ご清聴ありがとうございました。