受託業務における契約及び法令違反について①

隈元裕氏:システムズ・デザイン株式会社代表取締役の隈元でございます。本日はお忙しいなか、当社の決算説明会にご出席いただきまして、誠にありがとうございます。2019年3月期決算について説明いたします。

はじめに、2018年12月に公表させていただきました、受託業務における契約及び法令違反について説明いたします。その後、2019年3月期の実績、2020年3月期通期見通し、第6次中期計画の進捗状況、トピックスの順で説明いたします。

受託業務における契約及び法令違反についてでございます。本件につきましては、株主・投資家のみなさまをはじめとして、関係者のみなさまには多大なるご迷惑とご心配をおかけし、誠に申し訳ございませんでした。

今回の受託業務における契約及び法令違反であるデータ入力業務の無断再委託の経緯を説明いたします。

2018年11月上旬に、東京国税局および大阪国税局より受託していた、特定個人情報を含む個人情報のデータ入力業務の一部を、契約および法令に違反して外部業者に無断で再委託していたことが、国税庁の現地監査により判明いたしました。

それに伴い、11月8日に原因究明と再発防止に向けた改善策の評価および定着に向けて、調査委員会を発足させました。なお、同委員会は2019年2月に委員構成を強化し、原因究明委員会に改称しています。その後、原因究明委員会による外部調査を進めたところ、国税局以外にも契約・法令違反の再委託があったことが判明いたしました。

11月中旬には、本件のような無断の再委託を防ぐため、契約書に基づく外部発注の適正性を一元的にチェックする部署である業務統括課を設置いたしました。

12月上旬には、特定個人情報を含む個人情報の流出や不正な利用の恐れがないことを調査するため、外部からの弁護士を加えたデータ調査委員会を発足させ、データ調査専門会社である株式会社フォーカスシステムズに委嘱して専門的な検証を開始いたしました。12月14日、18日には、みなさまへの報告として、「受託業務における契約及び法令違反のご報告とお詫び」をリリースいたしました。

その後、当社内や各再委託先への調査を進め、2019年3月上旬には(データ調査委員会による)現地調査を終了しています。調査内容については各関係先にご報告し、当局の調査に全面協力のもと、各関係先からの個別のお問い合わせや追加の要請などに応じるなどして、最終報告に向けて鋭意対応を進めています。

なお、これまでの調査の結果、各再委託先および当社のいずれからも、個人情報の流出の形跡は認められておらず、個人情報を含むデータは削除されており、残存するデータも適切に削除したことを確認しています。

受託業務における契約及び法令違反について②

再発防止策の骨子について説明いたします。再発防止に向けた体制整備を早期に推し進める観点から、一部の対策につきましては、最終報告に先立ち前倒しにして着手を進めています。

1つ目の対策は、ガバナンス体制の強化で3点ございます。1点目ですが、アウトソーシング事業部内に事業統括部を新設し、業務の受注・外注を一元的に管理するとともに、処理可能量を超過する業務が発生しないように計画・調整しています。

2点目は、管理本部内に法的専門部署として法務コンプライアンス室を設置し、法務コンプライアンスの指導・監督を強化しています。

3点目ですが、社内規程類の全面的な見直しに着手しています。内部通報制度についても見直しを行うとともに、社内へ再周知し、制度の活用を促しています。

2つ目の対策は、従業員のコンプライアンス意識改革の実施です。社内説明会などを開催して、規程類の遵守を徹底いたします。また、倫理意識を向上・定着させるため、コンプライアンスに特化した研修を6月に実施予定です。

3つ目の対策は、アウトソーシング事業部内の連携の強化・見直しです。組織連携の促進と統制強化を図るため、2019年4月にアウトソーシング事業部の再編を実施いたしました。また、部署を横断した会議体を設け、横連携の強化も図っています。以上が、再発防止策の骨子でございます。

これらの再発防止策の実施とあわせて、原因究明委員会においても、当局への全面的な協力のもと、最終報告に向けて鋭意対応を進めている状況でございます。

連結業績(前年比)

2019年3月期の実績を説明いたします。連結売上高は、前年同期の82億9,500万円に対し、当期は10パーセント増の90億8,400万円でした。営業利益は、前年同期の2億1,600万円に対して、当期は3,900万円となりました。経常利益は、前年同期の2億3,900万円に対して、当期は5,100万円となりました。当期純利益は、前年同期の1億3,400万円に対して、当期は1億500万円という結果となりました。

当社グループでは、継続して主要顧客との信頼関係に基づく案件受注や大型案件の獲得、新規顧客の開拓などに注力してまいりました。主要顧客からの安定した受注と新規案件の増加や、既存顧客の売上が堅調に推移したことにより、売上高が増加しています。

営業利益は、不採算案件による追加費用の発生により減少しています。当期純利益においては、特別利益として子会社株式売却益と、特別損失として受託契約関連損失が発生いたしました。また、引き続き人材育成を目的とした中堅管理職の研修の開催や、人材確保のための採用、グローバル人材の活用、M&Aの実施など計画的に投資活動を行ってまいりました。その結果、当期の連結業績は増収減益となりました。

セグメント別の状況(前年同期比)

セグメント別の業績について説明いたします。システム開発事業は、売上高が51億2,400万円となり、営業利益が(前年同期から)1,800万円のマイナスとなりました。継続案件や新規案件の受注確保に注力した結果、案件の受注は増加しましたが、不採算案件による追加費用の発生で増収減益となりました。

アウトソーシング事業は、売上高が39億5,900万円となり、営業利益が5,800万円のプラスとなりました。既存顧客からの受注増加や、連結子会社の業績も好調を維持していたため増収となりましたが、株式会社フォーを子会社化したことによる関連費用の影響や、データ入力業務の無断再委託に伴う顧客対応費用の増加により減益となりました。

連結業績(計画比)

当初の通期計画に対する実績比較です。売上高は(計画の)94億500万円に対し、当期実績は90億8,400万円となりました。営業利益は3億1,800万円に対して3,900万円、経常利益は3億1,800万円に対して5,100万円、当期純利益は1億8,700万円に対して1億500万円となりました。

子会社の業績が好調に推移し、売上高はほぼ計画どおりとなりました。営業利益は、不採算案件による追加費用の発生により未達となりました。純利益においては、特別利益として子会社株式売却益と、特別損失として受託契約関連損失が発生いたしました。その結果、当期の連結業績は、売上はほぼ達成するも、利益は大幅な未達となりました。

キャッシュ・フロー

キャッシュ・フローの状況について説明いたします。当期末における現金および現金同等物の残高は25億4,300万円となり、前期末より1,600万円増加いたしました。各キャッシュ・フローの状況と主な増減の要因は次のとおりです。

まず、営業活動によるキャッシュ・フローです。獲得した資金は1億3,200万円となりました。これは、主に税金等調整前当期純利益の1億4,600万円と、子会社株式売却益のマイナス2億5,500万円と、受注損失引当金の増加2億300万円によるものです。

次に、投資活動によるキャッシュ・フローですが、獲得した資金は2,700万円となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出のマイナス3,000万円と、連結範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出のマイナス1億4,900万円、連結範囲の変更を伴う子会社株式の売却による収入の2億1,500万円によるものであります。

また、財務活動によるキャッシュ・フローですが、使用した資金は1億4,300万円となりました。これは主に、借入金の返済による支出のマイナス9,900万円と、配当金の支払額のマイナス4,500万円によるものであります。

期末配当予想

期末配当ですが、当社では従来より、株主のみなさまに対する利益還元を重要な経営課題の1つとして位置づけ、安定配当の継続を基本方針としています。この方針のもと、当期の期末配当金は、1株あたり普通配当13円を予定しています。

2020年3月期通期計画

2020年3月期通期の業績見通しについて説明いたします。2020年3月期の連結業績計画ですが、売上高は92億9,300万円、営業利益は2億2,700万円、経常利益は2億3,200万円、当期純利益は1億2,100万円と、前期に比べ増収増益を見込んでいます。

システム開発事業は、受注案件の増加の傾向が予想される一方で、アウトソーシング事業は、継続案件の縮小や価格競争など、依然として厳しい状況にあります。このような状況のもと、当期において大幅な受注損失を計上した開発案件も、抜本的な開発計画の見直しを実施しています。

また、データ入力受託業務における契約および法令違反が発生したアウトソーシング事業においても、抜本的な組織変更や業務フローの見直しなどの再発防止対策を実行しています。2020年3月期も引き続き受注確保・品質および顧客満足度の向上を追求し、着実な収益向上に取り組んでまいります。

第6次中期計画

第6次中期計画の進捗状況について説明いたします。当社グループでは、「ONE sdc - 新たな礎をつくる -」に向けて、4つの方針を掲げています。スライドに記載したとおり、高付加価値サービスの提供、プロフェッショナル人材の育成・確保、グローバル化・ダイバーシティの推進、業務の標準化、集約化です。本日は、これらの進捗状況を簡単に説明いたします。

第6次中期計画 進捗状況

高付加価値サービスの提供に関して説明いたします。1つ目は、新技術・新サービスの創出に向けた産学連携についてご紹介します。当社では、新技術への取り組みをより積極的に加速させる目的で、国立大学法人電気通信大学のTLO(技術移転機関)である株式会社キャンパスクリエイトを通じ、産学連携のスキームを2018年度から取り入れました。

それを皮切りに、AIエンジニアの育成・強化を目的として、電気通信大学の先生を講師に招いて、AI技術研修会を半年間にわたって実施いたしました。各部署から参加メンバーを募り、想定以上の多くのメンバーがAI技術の基礎から実践的な部分までを受講してきました。引き続き、AI関連の受注体制の拡充を推進してまいります。

今後はこのような技術研修に加え、新製品や新サービスの創出を目的とした共同研究や技術開発などにおいても、この産学連携のスキームをより積極的に活用していく予定です。

第6次中期計画②

2つ目に、いくつかのツールを組み合わせた新サービスの1つとして、「BPEC」と「RPA」について説明いたします。働き方改革に対する私どもの提案の1つとして、お客さまの情報システムと人間系の実務をより合理的に効率化を図っていくことを目指した「BPEC+RPA導入支援サービス」の提供を開始しました。

当社が長年培ってきたさまざまな情報システムの構築や運用支援のノウハウと当サービスを融合することで、お客さまのあらゆるIT環境と業務処理をより合理的に効率化していくことが可能となります。

業務の可視化を支援するツールとして「BPEC」を使用し、業務処理を自動化するツールとして「RPA」を組み合わせ、基幹システムと部門ごとに作り込まれた表計算ソフトなどの分散処理の最適化を図ることで、合理的に効率化を実現します。

2018年半ばに当サービスの提供を開始して、すでに複数社にご採用いただいていますが、今期はさらに増員を行い、より充実したサービス体制にしてまいります。今後は、これらの技術やサービスを新たな顧客のシステムへの提案などにつなげていけるよう取り組んでまいります。

第6次中期計画③

新規サービスの創出に向けた先端技術への取り組みとして、AIに関する事例をご紹介いたします。当社では2018年に、「Kleioナレッジサーチ」をリリースいたしました。「Kleioナレッジサーチ」は、知識探索型のAIを用いて、文書データの共有と検索を実現するクラウドサービスです。

商流については、ソフトバンク株式会社と販売パートナー契約を締結し、販売網の拡充に向けて共同で営業活動を展開しています。同社との共同提案による受注事例としては、商社における電子部品の営業支援システムがございます。

商社では多種多様な電子部品を取り扱っており、営業社員はこれら電子部品に対する顧客企業からの問い合わせを日々、数多く受け付けています。問い合わせの内容は、部品の仕様に関する高度で専門的なものも多く、回答がわからない場合は技術部門や仕入先の部品メーカーに相談するなど、その対応が営業社員の大きな負担となっています。

こうした課題を踏まえ、当社では「Kleioナレッジサーチ」による照会応答システムの導入を進めています。過去の膨大な問い合わせ内容と回答履歴をAIに学習させることにより、営業社員からの問い合わせに対して、AIが回答候補を画面上に提示します。本システムの導入によって、問い合わせ対応にかかる営業社員の負担を軽減するとともに、回答時間の短縮による顧客満足の向上を目指しています。

第6次中期計画④

プロフェッショナル人材の育成に関してです。先に説明いたしましたとおり、産学連携の取り組みとして、AI技術研修会を実施しています。各事業部から選抜された技術者たちが、AIエンジニアを目指して研修に取り組みました。

組織力強化の観点からは、前期に引き続き、営業と製造現場のより強固な連携を目指した組織力強化研修を実施いたしました。業務に即した具体的な目標を掲げ、営業と製造現場が一体となって推進する場であり、短期だけではなく中長期的な目標を再認識するよい場となりました。

また、2018年に引き続き、2019年も新技術・新サービス発表会を開催しました。発表会では、各部署での新技術・新サービスへの取り組みを共有することで、部門間の連携、そして人材育成を図っておりまして、会社としての投資対象を発掘する場でもあります。

プロフェッショナル人材育成の取り組みですが、既存のビジネスに加え、さまざまな新しいビジネスに対応するためには、世の中の流れを敏感に汲み取り、状況に合わせて仕事のやり方も変えていく必要があり、その変化に対応できる人材を育成する取り組みでもあります。

これらの取り組みの成果も少しずつ表れて、アウトソーシング事業では「オンサイト型BPOサービス」という新たなビジネスのスタイルができあがりつつあります。今後も継続的に教育を実施し、プロフェッショナル人材のさらなる育成に努めてまいります。

また、グローバル化・ダイバーシティの推進では、女性委員会を立ち上げ、女性だけでなく社員全員が働きやすい環境を作るための施策を作成しています。まずは全社員にアンケートを実施し、取り組むべき課題を抽出いたしました。今後は人事部門などと連携しながら、働きやすさの実現や、キャリアプランの構築、研修の拡充、女性管理職の登用などをテーマに進めてまいります。

さらに、東京都主催の「外国人おもてなしボランティア育成講座」を社内開催し、グローバル・ダイバーシティの意識啓蒙にも取り組みました。

トピックス(M&A)

トピックスとして、M&Aについてご紹介いたします。当社は1967年の創業以来、総合情報サービス企業として、お客さまの要望に応えるために高品質なサービスを提供してまいりました。お客さまごとの状況やニーズに応じて、システム開発、コールセンターなどを効果的に組み合わせ、付加価値の高いBPOサービスとSIサービスを展開しています。

当社は、2018年7月に株式会社フォーを完全子会社化いたしましたが、株式会社フォーは、自社で開発したIDカード発行システム「フォーカードシステム」の販売と、FeliCaカードなどのICカードの受託発行を行っております。フォーを子会社化することで、当社のIDカード分野へのサービス領域拡大を図るとともに、フォーの持つFeliCa技術の新たな活用分野の創出を目指します。

また、2019年2月に、当社の100パーセント子会社であった株式会社アイデスの全株式を大興電子通信株式会社に譲渡いたしました。中期戦略において、新技術・新サービスへの取り組み強化を図るなか、成長事業への経営資源の集中を行うため、事業ポートフォリオの見直しを行いました。その一環として、アイデスの事業を理解し、従業員などを含め発展的に継承していただける有力な企業に対して株式を譲渡する方針に至り、2018年年初より検討を進め、結実したものです。

株式譲渡で得た資金により、新たな成長事業への戦略的な投資によるさらなる企業価値の向上や株主還元策の拡充などに努めてまいりたいと考えています。

最後になりますが、冒頭で説明いたしました受託業務における契約及び法令違反に関しましては、株主・投資家のみなさまをはじめとして関係者のみなさまに多大なるご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございませんでした。当社といたしましては、再発防止を着実に実施していくとともに、コンプライアンスの順守を徹底し、信頼回復に向けて引き続き取り組みを進めてまいります。

また、本件においては長期の調査時間を要しており、最終的なご報告が未だにできていないことについて、あらためて深くお詫び申し上げます。関係者のみなさまには可能な限り速やかに最終報告が提示できますよう、引き続き努めてまいります。みなさまにおかれましては、何卒ご理解のほど、また今後ともご支援を賜りたく、よろしくお願い申し上げます。

以上で、2019年3月期決算の説明を終わります。長時間にわたり、ご清聴ありがとうございました。