「ドル円で読み解く、個別銘柄」

叶内文子氏(以下、叶内):第一部は、岡三オンライン証券株式会社、投資情報部長兼シニアストラテジスト、武部力也さんによる講演「ドル円で読み解く、個別銘柄」です。武部さん、どうぞよろしくお願いいたします。

武部力也氏(以下、武部):よろしくお願いいたします。まず、資料をご覧ください。経歴は記載のとおりでございます。正直なところ、私は場違いなんじゃないかなと思っております。

叶内さんとは、ラジオNIKKEIさんの番組で数十年前にご一緒しました。あとは、坂本慎太郎さん……みなさんはBコミさんと呼んでいますが、私はどちらかというと慎太郎ちゃんと馴れ馴れしく呼ばせていただいているんですけれども、坂本さんともお付き合いがあります。「カブりつき・マーケット情報局」というラジオNIKKEIさんの番組によく呼んでいただいて、そのご縁で、今日はこちらの会に呼んでいただきました。そこでどんな話をさせていただこうかなと。では、ここで簡単にアンケートをとらせていただこうと思います、

投資スタンスは、個別銘柄でそちらに軸足を置いているという方、挙手いただけますでしょうか。

(会場挙手)

では、FX、為替をやっているという方、挙手いただけますでしょうか。

(会場挙手)

わかりました。大変申し訳ないんですけれども、私は日和見主義でございまして、やはり個別銘柄に寄せないといけないなと思いました(笑)。

今日は、為替のところがどういったかたちで個別銘柄に関係するのか、FXのお取引をされていらっしゃる方にも、どのあたりがポイントなのかをお話しします。いつもはネット上の番組だったり、いろんなところに呼んでいただくのですが、今日はみなさま方と直接顔を向き合わせて……オフレコの部分もあるかもしれませんが、限りなく実際のところをお伝えできればと思います。

さて、時間に限りがありますので、テンポよく進めさせていただきたいと思います。今のうちに申し上げておきますが、今日は後半に、直近の海外情報もお伝えしたいと思っています。武部はいつも奇策を狙う男でございまして、ここに電話を繋げて何をしようとしているのかなということですが、後ほどつまびらかにお伝えしますので、そのあたりも楽しみにしていただければと思います。要はゲスト出演がいるということですね。

では、さっそく始めさせていただきます。繰り返しになりますけれども、私は為替ばかりやっていました。平成元年組でございまして、新卒で入社したのが東京短資というところで、国内金融市場の短資会社。このあたりはわかりづらい方もいらっしゃるかもしれませんが、そのあと、トウキョウフォレックス上田ハーローにも出向いたしまして、ずっと為替ばかりでした。

日銀の担当をしておりましたので、為替介入などもサポートさせていただきました。私がずっと「いくらです、いくらです」とやっていました。日銀にずっとレートを入れていました。毎日、朝から晩までです。

そうした経緯のなかで、ここで1つだけお伝えします。FXをお取り組みの方も、個別銘柄をお取り組みの方もいらっしゃっていますね。証券会社の人間ですから「絶対」とは言ってはいけないルールになっているのですが、私の経験則からすると、まず間違いないなということが1つだけあります。

JPX、要は東京証券取引所の為替レポートを書いてと言われましたので、「JPX 武部」で検索すれば、おそらくレポートが出てくるかと思います。東京証券取引所でなぜ為替レポートを書くのかという話なのですが……そこで最初に書かせていただいたことが、ほんの一言なのですが、「日本経済の大動脈は、日経平均株価である」と。

そして、日経平均株価のために、時の政権、財務省、日銀は、円安にしたり円高にしたりしています。これは過去の経緯、経験則に近いですから、絶対とは言えないわけなんですけれども。一方で、ドル円を上下させるために、日経平均株価を上げる・下げるといったことは聞いたことがないと書かせていただいたんです。

大変恐縮ですけれども、個別銘柄をお取り組みの方で、FXもよくわからない、為替もよくわからないという方がいらっしゃると思います。ここが大前提です。日経平均株価、すなわち日本経済のために円高にしたり円安にしたりというのは、国際協調枠組み、ないしは対米外交、国内のいろんな事情に合わせて、時の政権、財務省、日銀は為替レートで誘因したり抑制したりといったことはあります。しかし、ドル円のレートを上げたり下げたりするために、日経平均株価を上げたり下げたりするというのは、聞いたことがないわけです。

どういうことかというと、基本的には、我が国は経済政策に合わせてドル円レートをある一定の水準の方向にしていこうということは、経験則上、絶対とは言えないけれども、かなりありました。実際に円高になってしまったとしても、円安になってしまったとしても、時の政権、財務省、日銀としては、不本意なかたちになっているというのが大前提にある。ここはチェックしていただければと思います。

要は株高のために、今のセンチメントをどうしたいのかというのは、みなさん推して知るべしだと思います。日経平均株価を上げるために、国は、時の政権はどうしたいのか。そのあたりはまず大前提というところで、ご理解いただければと思います。

主要政治経済日程

さて、それでは項目を進めさせていただこうと思います。2枚目のところです。「ドル円で読み解く、個別銘柄」という前提で、まずスケジュール感だけイメージしていただければと思います。つい先日まで米国議会で大騒ぎになっていたところはあったと思いますが、そのあたりはなるべくささっと流して、国内事情に特化していくようなかたちで考えていきたいと思っております。

私が今、一番注目しているのは何かというところです。これはもう前々からわかっていたところではございますが、中国経済の財政支出で、減税策といったところが感応度を強めて、日経平均株価、ないしは上海株なども上昇した経緯はみなさんもご存知のところかと思います。それよりも、私が先ほど申し上げました国の方向性という大前提で見ると、興味を持っているのは、6月の通常国会の会期末と7月からの参院選挙です。

4月の統一地方選挙は、国政にはあまり関係ございません。そうすると、リンクしてくるのが日米物品貿易協定(TAG)の交渉開始と、6月の会期末、7月の選挙です。

財務省関係者と少しお話をしましたが、G20はあまりテーマがないという話でございますので、こちらは正直な話、スルーしてもいいかなと思います。まだ大きくメディアには出ていないと思いますが、先進主要国では高齢化などにどう対処するのかということを議題にするという話を聞いておりますので、このへんは流すと。

やはり国内は、先ほど申し上げましたとおり、時の政権がどうなるか、というかたちになります。

私は個人的に、去年の秋口ぐらいから与党さんや野党さんの勉強会、パーティーに呼ばれているんです。何が言いたいかと言うと、ダブル選挙に備えて資金集めをしている可能性があるんです。

この状況は何かというと、当然ながら消費税……おそらく軽減税率あたりで、今のところは自民党や公明党を中心に、いろんなかたちで動いています。これが恒久的に進むのかと。日本維新の会からも、つい先日の国会で質問があり、麻生財務大臣も明言を避けているように見受けました。

ちなみに、ずいぶん前ですけれども、去年の6月ぐらいでしょうか。「ドルと円の長期金利が3パーセント開くと、必ずドル高円安になる」と言っていました。我々ストラテジストは口が裂けても言えないようなことを言っているんです。

3月12日に麻生財務大臣が何をおっしゃったのか……これは少し個別銘柄に関係するかもしれませんので、「ああ、岡三の武部はそんなことを言ってたな」ぐらいのところでいいと思います。

私はかなり難しいと思いますが、韓国に関しての関税の引き上げ、輸出・送金の停止、そしてビザの発給の停止と。ここを詰めていくと、非常にわかりづらいかもしれません。次のスライドに進みます。

極東外交対立図

今、極東の地政学も含めたかたちでこのように見合いがあります。米中通商交渉あたりは流したいと思います。麻生財務大臣がおっしゃったのは、対韓国でビザの発給停止や輸出・送金の停止、関税の引き上げです。

ところがこれは、法律を改正しないと全部無理なんですよね。ですから、実際のところはほとんど実効性がない。ビザの発給停止はどうなんだと言っても、これは外務省の管轄です。

昨年の訪日外国人は、3,100万人ぐらいでしたでしょうかね。中国からいらした方がだいたい800万人ぐらいで、韓国からいらした方が750万人ぐらい。ざっくりとこんな数字でございます。細かいデータは観光庁の資料を見ればすぐ出てくるかと思います。

中国、韓国、台湾、そしてオーストラリアが今のところ抜き出ているんですが、ランキングを見ますと、実は中国が一番で23万円だと出ているんですけれども、それに続いて二十数万円を落としている国は、オーストラリアやフランスなど、欧米の方々なんです。

ランキングを見ていくと、韓国は75,000円と書いてある。かなり低いんですね。そうなると、経済的な影響はあまりなさそうだというところがあるかもしれません。

ただし、自民党内部の意見も、かなり割れているみたいですので、軽々には出てこないと思います。そうなると、関税だとか送金の停止だとか、そうしたものがなかなかできにくくなってくるという話です。

もう1つ、ずいぶん踏み込んでおっしゃっていたなというところで、日銀は物価目標2パーセントにこだわる必要性がないんじゃないか、ということをおっしゃった12日は日銀の金融政策決定でした。

当分の間、長短金利水準は低めに設定したいと日銀の黒田総裁はおっしゃっていたなかで、フォワードガイダンス、当分の間というものを、もっと長期間に言うのかねというところが、昨日、少し外為市場では期待されていたのですが、そうしたところに踏み込まなかったということで、また少し円高になってしまった。

追加はなかなかできないよねと。ある意味、銀行さんなどの金利がマイナス金利になると、収益が圧迫されますので、そうした状況のなかではかなり抑制されたというところだとは思います。さて、その12日を1つのキーワードとして、もう1つ、おもしろいなと思いましたのが、自民党の二階幹事長……これも以前から国会のなかで少し話題にはなっていたのですが、安倍首相の四選はあり得るね、とおっしゃったわけです。

安倍首相の四選があり得るとはどういうことなのか。これは数字がややこしいのですが、安倍首相は今、自民党の総裁で3期やっていらっしゃいます。3期目なんですけれども、いわゆる終わりが2021年の9月までなんです。

2021年9月でアベノミクスが終わるじゃないかと。これは普通の見方だったと思います。いわゆる「アベグジット」が始まるのかと。

日銀の金融政策のメンバーはずっと変わっていないわけだから、それほど急激にはいかないだろうと言われてはいたものの、黒田総裁の任期が2023年までとなってくると、安倍さんが辞めたら私も辞めますというかたちで、一緒に辞める可能性があるねと。

2023年4月に黒田総裁もお辞めになられるのかなと思っていたなかで、ガス抜きだとか、先ほどのダブル選挙のあとはレームダック化するというのは避けている見方もあるんじゃないかということを、永田町のとある筋から聞きましたけれども、四選となると、2024年9月まで安倍政権が続くのです。

2024年9月ということは、日銀の黒田総裁が終わって1年後。そのあたりが少し空白になりますが、いずれにしても2023年4月まで、日銀の黒田総裁は席にいらっしゃるわけです。そうすると、「アベグジット」だとか、緩和の縮小などという話がありますが、現在の政策は2023年4月までは続くんじゃないかという見方が、にわかに出てきたというところです。そのあたりのところもイメージしていただければと思います。

さて、米中の通商交渉に関して。このあたりは対立軸があるよというところでございますので、今後これがどういった動きになってくるのか。これは正直なところ、わかりません。

対立構造は変わっていないんですけれども、日米同盟と言いつつも、我が国は米国の財務省のなかで監視対象国に収められている状況でございますので、そうした状況のなかでは、うかつなことはできない、介入もすぐにはできないです。

2015年の夏だったでしょうか。浜田内閣官房参与と少しお話しする機会があったのですが、その時に「武部さん、まいっちゃったよ。1ドル110円を割れて、100円になるような時だったら介入するべきだと言ったら、怒られちゃったよ」とおっしゃっていました。「先生、誰にしかられたんですか?」と聞いたところ、「アメリカからしかられた」と言ったんです。

私はてっきり国内の首相官邸や財務省あたりかと思いましたら、米国サイドからしかられたということなんです。

だいたいドル円は国際政治銘柄でございますので、我が国が円安にしたいと言っていても、米国がいやだと言えば、それで終わってしまう部分が絶対にあるわけです。これは1ドル360円から始まってきたところで、ずっとその流れがありましたよね。そうした状況をぜひ認識いただければと思います。

想定為替レート①

ドル円はわかったよというところで、次を見ていただければと思います。個別銘柄に関連してまいりますけれども、お手元の資料をご覧ください。

上期と下期でのドル円の設定レートで、これは企業の決算報告書で開示しているところをピックアップしました。足元では、110円のところも26企業ですから、半分ぐらいでしょうか。さて、この半分の企業が意識している110円とは何か。

日銀短観の設定レートは、たぶん109円41銭。また4月に発表されますけれども、次はどれぐらいの水準を見ているのかがポイントになってくるかと思いますが、具体的に、今日は個別銘柄に対しての影響度は何なのか、どう見たらいいのかというところで、次の資料をご覧になっていただきたいと思います。

想定為替レート②

ピックアップしていきますと、このあたりの個別銘柄は、関連しているところをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、ドル高円安、円高ドル安に対して、一概にみんなが喜ぶわけではなくて、かなり横ばいになってくるのが一番望ましいんです。

我々業者としては手数料を頂戴しますので、ずっと横ばいだったら困っちゃうんじゃないかなというところですが、1つお話をします。

2月半ばあたりに、実は浅川財務官と少しお話しする機会がありました。業者根性丸出しだったのかもしれませんが、「為替はドル円が全然動いていないんですよね」と話をしたら、にこにこ笑っているだけでした。

ここがたぶんポイントなんですよ。安定している為替相場は、FXをお取り組みの方は「えー」と言うかもしれませんが、通貨当局は横ばいが一番いいわけです。

これは一概に言えませんが、輸入企業さんにとって115円というのは、かなり伸びしろがありますよ。

一方で、今度は輸出する企業でございますけれども、100円あたりでやっていただければ、かなり余裕というか、伸びしろがあります。

何を申し上げたいのかというと、保有している個別銘柄において、決算の時に為替差益が出てくるところがあるわけです。ボーナスポイントが出てくるわけですね。

大きく上方修正してきたというのは、意外と為替が関わってくるというところを意外と見落としがちです。そのあたりは実際に為替の取引をなさらなくても、自分が持っている保有株にどれぐらいの水準で為替が影響してくるのかを意識しましょう。

例えば、国内で100店舗ぐらい構えているんですけれども、海外にも店舗がある場合、海外の収益を円に戻すわけです。その意味では、円高よりも円安のほうが収益性がいいわけです。

個別株によって、それぞれ事情が変わってまいります。そのあたりのところは、ぜひお含みおきいただければと思います。

ドル円と日経平均

さて、時間も限られてきておりますが、トレンドのところだけチェックしていただければと思います。先ほど申し上げました麻生節。長期金利がうんぬんというかたちで、今はトレンド的には右肩上がりになっているので、日経平均株価も支援していると見てとれますが、一方で為替レートの実勢レートだけを見ているわけではないなということで、次の資料をご覧になっていただければと思います。

ドル円①

これは少し難しいんですけれども、実質実効為替レートというものがありまして、日銀のデータで見てみますが、以前に1ドル125円にいった時に、実質実効為替レートが70をわって、これ以上はいかないぞという水準感がありました。

今後、日米の通商交渉も踏まえて警戒していただければという人もいます。ここ最近、実質実効為替レートが少し上に上がってきているんです。

怖いのは、こういう局面になり得るのかどうか。日米通商交渉で、どうしても国際政治銘柄になってしまうと先ほども申し上げました。日銀が追加緩和の手当を抑止されてしまうようなかたちになった場合、為替市場にダイレクトに影響し得る可能性がありますよということです。

為替レートもそうですが、こうしたところの実質実効為替レートというものも、ご念頭に置いていただければと思います。

ドル円②

通貨当局担当者も、シンプルなチャートの追随を見ていらっしゃるというところでございます。こちら、ご参考までです。

ドル円③

今回のセミナーではFXに取り組んでいる方もいると思いますけれども、個人投資家の方がどういったかたちで買比率を持っているのか。実は今、少し下がってきているところで、順張りで追随を見せている。それが今のトレンドです。

上がったところでは売っていますけど、今はこの111円、110円あたりは買ってもいいんじゃないかと。要は、上を見ていらっしゃるんでしょうね。ドル円の上値を見ているから、逆張りでミセスワタナベ、ミスターワタナベ……下がったところで買うのではなく、上がり始めてきたところに順張りで買っていると。

個人投資家のみなさん方は、それほど見ていないかもしれませんけれども、投資意欲はかなり下がってきていますので、上がっていったら、個人投資家も追随して上げていく可能性があるということです。そのあたりもチェックいただければと思います。

最新の米国市場情報(電話での特別出演)

さて、先ほど少しお話しさせていただきましたけれども、ゲストを呼んで、マーケットのポイントとして、いま何を見ているのか、ニューヨークと電話を繋げて話をしてみたいと思っております。

叶内:「岡三証券NYの近下さん」は、テレビでよく拝見する方ですよね?

武部:少し電話に出てほしいと、今回は特別にお願いしました。

近下篤子氏(以下、近下):はい、近下です。

武部:どうも。岡三オンライン証券の武部でございます。近下さん、聞こえますか?

近下:はい、聞こえます。

武部:今日は、多くの個人投資家のみなさんが、近下さんのお顔をじっとにらんでいるのか優しく見ているのか、気持ちはよくわかりませんが……近下さん、少し直近のニューヨーク事情ということで、3つほど質問させていただきたいと思います。

1つ目が、ニューヨークの株式市場の事情がどんな感じなのか。2つ目が、そちらから見て日経平均株価や日本経済をどういったかたちでとらえているのか。そして3つ目が、これは会場のみなさん方に申し上げなかったんですけれども、日本はゴールデンウィークで10日間休みなのですが、そちらからはこの状況をどう見ていらっしゃるのか。

この3つをお願いします。いつもテレビ番組で拝見していますが、同じようなかたちでお話しいただければと思います。

近下:はい、わかりました。ご紹介いただいた、近下と申します。よろしくお願いいたします。

まず1つ目、ニューヨークの株式市場なんですけれども、横ばいに推移している状態が続いています。足元では、やはりボーイングの件が一番多く取り上げられている状態です。

米中貿易問題が解決すれば、ボーイングにとっては追い風だと読んでいることから、かなり株価は堅調に推移しています。ボーイングは、株式市場への影響がかなり大きい企業ですけれども、エチオピアでの航空機墜落の事故を受けて、アメリカも懸念しているような状態です。

これが例えば運航中止になるなどでマイナス要素があるということで、NYダウを押し下げているということで、かなり取り上げられています。

そのほかの話題としては、2020年の大統領選挙に向けた話題がかなり増えているように思います。

武部:なるほど。米中通商交渉あたりは、あまり話題になっていない感じですか? いったん休んでいる感じでしょうか。

近下:新しいニュースが減ってきたというところは、やはり注目が薄れてきているんだと思います。3月1日に向けて交渉が進んで、そこで合意になるのかといったところで、今まではかなり明るいシナリオを描いていましたが、もしかしたら米中首脳会談が4月下旬までずれ込むかもしれないという話が出るなかで、さらに高値をとるというのは難しい状態になっていると思います。

武部:わかりました。2つ目の話です。ニューヨークの方々と話していると、日本の政治事情も経済事情も「ソーリー、ノーコメント」と言われちゃう時があるんですけれども、近下さん、アメリカを代表して日経平均株価や日本経済について、何か話題となっていることはありますか?

近下:ニューヨークに来てびっくりしたことの1つに、日本、ヨーロッパ、中国といった海外のいろんなニュースが、ここではほとんど聞かれないというところは、かなり意外でした。日本の大きな話題がなければ、大きく取り上げられることがあまりないですね。最近の日本関連の話題と言えば、日産自動車の事件などですね。

武部:わかりました。3つ目ですが、ゴールデンウィークのイメージをどうとらえていますか? ニューヨークで話題になっていないにしても、みなさんにアドバイスというか、何かありますか?

近下:アドバイスはできないかもしれないんですけど、アメリカは4日以上休むことがないので、日本のように10連休というのは、少し考えにくいところがあるんです。

とくに今年は、日本がお休みの期間に、FOMCがあったり、重要な経済指標の発表もあって、何かあった時に日本で取引できないというのが、かなりリスクなんじゃないかなと思います。

アメリカだけではなく、中国でも4月から6月といった期間は、経済指標が市場予想を下回ることも多いので、世界的な景気減速懸念も高まっているなかで、日本がこの期間に10日間休むというのは、けっこうなリスクかなと思っています。

武部:わかりました。別にあおっていただくつもりもなかったのですが、海外から見たらそういったかたちになりますよね。そのあたりの話は、これから会場で、みなさん方ともいろいろ話をしてみます。

すみません。ニューヨークはもう夜10時半を過ぎていますもんね。夜分に、大変申し訳ないです(笑)。ご自宅でゆっくりお休みください。ありがとうございました。

近下:ありがとうございました。

武部:ということで、ニューヨークと少し繋ぎました。少し尻切れトンボ的なイメージはあるかもしれませんが、すべてのマーケットで、今は先送り、先送りという状況になっていますが、先ほど申し上げましたように、為替の大前提というところをご認識いただいて、しっかりといろいろな情報を見ていただいて、マーケットをとらえていただければと思います。

私の話はこれにてお開きとさせていただきます。どうもありがとうございました。