個人投資家向けIRセミナー
工藤貴史氏(以下、工藤):ただいまご紹介にあずかりました、工藤と申します。よろしくお願いいたします。本日は師走のお忙しい中、こんなにたくさんの方にお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
さっそくですが、当社の事業説明をさせていただきます。せっかくの対面形式の場ですので、今回は「当社が実際にどのようなことをやっているのか?」ということを中心にお話ししたいと思います。配布資料をご用意していなかったのですが、こちら(のスクリーン)を見ていただければと思います。
企業概要
当社は2007年に創業しまして、10年ぐらいの会社となっています。昨年(2017年)の6月に札証アンビシャスに上場しまして、今年(2018年)の6月に東証マザーズに上場しています。ちなみに、当社のことをご存じの方は、ご挙手いただけますか?
(会場挙手)
工藤:けっこういらっしゃって、びっくりしました。まだ上場して間もないので、それほど認知度がないと思っていたのですが、ありがとうございます。
沿革
当社の沿革です。2007年に創業しました、札幌本社の会社となっています。現在も、本社は札幌にございます。
ちょっと(文字が)小さいんですが、(同年に)創業事業として、融雪システム遠隔監視ソリューションの「ゆりもっと」を始めています。詳細については、後ほどご説明します。この「ゆりもっと」を、当社では「雪のIoT」と呼んでいるのですが、札幌や青森を中心にビジネスを展開しています。そのための営業所を、2009年に青森で開設しています。
そして同年2009年に、先ほど(司会の叶内氏より)ご紹介いただいた、コンストラクションソリューションの「現場ロイド」の提供を開始しています。「現場ロイド」は「土木のIoT」になっていまして、市場は全国になります。ですので、2011年以降、東京・北信越・関西・九州・仙台と、営業所を全国に展開しています。
そして、IoTプラットフォーム「FASTIO」、交通事故削減ソリューション「Pdrive」や、「KDDI IoTクラウド Standard」と、順次サービスを展開しているのですが、詳細については後ほどご説明申し上げます。
IoTとは
まず、「IoT」という言葉です。
当社はIoTを専業で10年ほどやっているのですが、「『IoT』とは何か」というのを(こちらにお示ししています)。最近いたるところで聞く言葉なので、ご説明は不要かもしれませんが、念のため。
IoT/AIが提供する価値
まず、下の「現実世界」(M2M領域)です。リアルの世界で収集したデータを、「クラウド」(ICT領域)の世界に蓄積します。
当社ではIoTを、「蓄積したデータを分析して、それをリアルの世界にフィードバックする・活用するといったプロセスをぐるぐる回して、新たな価値を生んでいくこと」と定義しています。
事業紹介(IoTの提供形態)
事業紹介なのですが、大きくインテグレーションサービスとパッケージソリューションがございます。
「インテグレーション」は、お客さまの多様なニーズに対応して、当社のプラットフォームを使ってカスタマイズをしたり、新たなシステムを開発したりというサービスです。「パッケージソリューション」が、特定の市場にパッケージ製品を提供するものになっています。
自社パッケージソリューション
自社パッケージソリューションです。
3つございますが、まずは(一番左の)「ゆりもっと」です。
雪のIoT 融雪システム遠隔監視ソリューション「ゆりもっと」①
「ゆりもっと」は「雪のIoT」で、これが創業ビジネスになります。
札幌市は、人口が約200万人で、年間降雪量が512センチメートル。100万人以上の人口と500センチメートル以上の降雪がある都市は、世界唯一になっています。
人が密集しているところに雪がたくさん降るので、どのようなことが起きるかと言うと、雪を捨てる場所がないんです。昨日も大雪だったのですが……これは昨日の写真ではないのですが、おそらく今朝はこのような状況になっていると思います。
ロードヒーティングが社会インフラとして普及
この雪を捨てる場所がないので、どうするかと言うと、ロードヒーティングが当たり前に普及しています。「ロードヒーティング」をご存じない方もいらっしゃるかもしれないのですが、道路のアスファルトの下に温水パイプを引いて、ボイラーで温水を温めて雪を融かすものです。これは、札幌市内の道路や駐車場に多く入っています。
雪のIoT 融雪システム遠隔監視ソリューション「ゆりもっと」②
このロードヒーティングには問題点がありまして、降雪センサーや外気温度センサーが付いていて、自動でセンサーが反応してロードヒーティングが稼働するのですが、このセンサーには3大ムダ運転があります。
1つは、予熱運転。急に雪が降っても、アスファルトが温まるのは時間がかかるので、常に予熱運転をしています。それと、誤認運転。雨や地吹雪でも「雪が降った」と思って動いてしまう。
あとは、過剰運転。雪が降っているときだけに動くわけではなく、雪が降って1時間~2時間動き続けるのが、このロードヒーティングの(遅延タイマー)の特徴ですので、「ちょっと降っただけでずっと動いちゃう」ということがあります。従来のセンサーだと、ムダな動きが多いのが課題になっていました。
当社の「ゆりもっと」なのですが、ロードヒーティングが入っている駐車場に、まずカメラを付けています。カメラを付けることで、実際に人が雪を見る。雪があるのかないのかを人が判断します。このようなセンターで、札幌市内の1,500物件ぐらいを見ています。1,500物件の画像データと気象情報、あとボイラーの稼働データを1点に集めて分析して、ボイラーの入切をしています。
(スクリーンを指して)これが監視画面です。後ろの方は見えないと思いますが、このような画面で、札幌市・青森市を中心に全域のボイラーの稼働を当社で管理しています。人の目で見ていると言ったのですが、いろいろなセンサーデータや、今は画像認識にAIを使うなど、AIやシステムの支援を受けながら、人が入切をしているというものです。
雪のIoT 融雪システム遠隔監視ソリューション「ゆりもっと」③
約1,500件の導入実績があり、平均56パーセントのコスト削減につながっています。
大きいマンションやパチンコ屋さんみたいに、大量に何百台も車が停まるところですと、月に何百万円もの灯油代がかかるんです。なので、ワンシーズンで1,000万円~2,000万円の灯油代がかかるところを、半分に抑えることができる。かなり、コストメリットのあるソリューションになっています。
車のIoT 交通事故削減ソリューション「Pdrive」①
続きまして、「車のIoT」の「Pdrive」です。
最近でも煽り運転などで痛ましい事故が起きていて(交通事故は)社会問題になっているものでありますが、「Pdrive」は簡単に言うとドライブレコーダーです。一般的なドライブレコーダーの使い方は、「事故が起きた後に、どのような事故が起きたのかを検証するため」に使われるものが多いと思います。
当社の場合は、「事故を起こさないために、どうしたらいいか」というソリューションになっています。
(スライドの左側に)ピラミッドがあります。死亡事故などの「1件の重大な事故」の周りには、「29件の軽微な事故」があります。ちょっと当たったとか、怪我をしたとか。
その29件の軽微な事故の周りには、「300件のヒヤリハット」があります。「ヒヤリハット」とは、教習所などで聞いたことがある方もいると思うのですが、「ヒヤッとしたりハッとしたりする」。そのようなものがあります。この「300件のヒヤリハットを見える化しましょう」というものが、当社の「Pdrive」のコンセプトです。
(スライドの右側に)「高危険度」と書いています。例えばGセンサーで急ブレーキや急発進を検知したときに、動画を飛ばしています。
(「ヒヤリハット」の動画が流れる)
工藤:このようにヒヤリハットは、みなさまも気づかないうちに体感していることが、けっこうあると思うんです。それを、見える化しましょうと(いうことです)。
(スクリーンを指して)これはインカメラです。中の映像が見えるので、「(たばこを吸うために)ライターを点けた」とか「電話をした」とか、そのようなことを見えるようにするものです。
車のIoT 交通事故削減ソリューション「Pdrive」②
ターゲットになるものは、一般の法人車両です。例えばタクシーやバスではなく、一般の事業会社の営業車両がターゲットになっています。やはり企業も、事故を起こすことはかなりのリスクになりますので、そのリスクを回避するために、このようなものを導入していただいています。
このようなドライブレコーダーの端末製造から、当社独自で行っています。
建設情報化施工支援ソリューション 現場ロイド①
続きまして、「現場ロイド」です。これが、今の当社の主力ソリューションになります。
建設情報化施工支援ソリューション 現場ロイド②
建設現場の安全管理や品質管理のためのソリューションになります。
今は土木工事現場で亡くなっている方が、年間で300人ほどいらっしゃいます。そのような方たちの安全を守るためのソリューションを作っています。
多数のNETIS登録済み製品
(文字が)小さくておそらく見えないと思うのですが、「多数のNETIS登録済み製品」と書いてありまして、「NETIS」(新技術情報提供システム)という国土交通省が出している新技術の登録を受けています。
「『新技術』とは何か?」ということですが、従来品よりも革新的な製品に対して、このNETISが登録されます。土木工事を国交省や自治体が発注をかけて、そこに施工業者が入札するときに、技術提案をするんです。
技術提案事例ダウンロードもセットで活用
例えば建物・ビルの建設をするときに、「近隣の騒音・振動が気になるので、『震動騒音・振動にどう対応するのか』を、技術提案で書きなさい」という課題が与えられます。
施工業者には、例えば「計測機をつけて、騒音・振動を測ります」という会社もあれば、「計測機をつけて騒音・振動を測って、さらにそれをクラウドに上げて、リアルタイムで見えるようにします」とか、「騒音・振動を測ってクラウドに上げて、ある一定の閾値を超えたときに『メールを飛ばす』とか『パトランプを回す』など、作業を止めるようにします」という、いろいろな技術提案の段階があり、技術提案の点数が高ければ高いほど、入札の価格も高くなります。
なので施工業者からすると、「入札に勝つための武器」が、このようなNETISの製品になります。当社ではこの技術提案事例もセットで、ゼネコンさまや建設会社さまに提供しています。
AIによるピンポイント気象予測
事例として、AIによるピンポイント気象予測の「サインロイド2」という製品をご紹介したいと思います。
風速を測るときに、従来の技術では吹き流しや、くるくる回る風速計を現場に付けています。
現場のニーズとしては、「その瞬間の風速はそこにいればわかるけれど、この後、風はどうなるんだろう?」。
例えば、クレーンを使った高所作業などで、「今は風が強いけれど、1時間後に風が弱くなるんだったら、作業できるよね」とか「風が弱くならないんだったら、みんな帰ろうぜ」とか。そのような工程管理をするときに、「この後(風は)どうなるんだろう?」という情報が必要になります。
通常の天気予報ですと、だいたい1キロメートルメッシュの風速情報はとれます。
しかし、例えば右上のA地点です。風速9メートル。B地点は、風速1メートル。このときに、天気予報ではどう出るかと言うと、「平均風速5メートル」と出ます。でも、A地点で作業している場合、「風速10メートル以上では、作業をしてはいけない」というルールがありますので、A地点だと(後々)作業ができなくなってしまいます。
他にも、ビル風です。吹き降ろしやピロティ風(開口部風)など、フィールドの状況によって風は変わってきます。
あと、高さによる風速の違い。高いところに行けば行くほど、風速は強くなります。
このような「高さ」や「地点」の風速を、AIを使って予測するものが、このソリューションです。
ピンポイント気象予測の仕組み
ピンポイント気象予測の仕組みなのですが、当社はライフビジネスウェザーという会社さまから、気象予報データをもらっています。そのピンポイントの気象予報データと現地の実測値をかけあわせて、AIで予測をしています。
これが、実際に設置されている風景です。
かなり高いところの作業です。落下防止ネットがあるようなところで、ご活用いただいています。ちょっと見づらいかもしれないのですが、この(赤い折れ)線が、「サインロイド2」から出た1時間後の予測数値。青い線が実測で、ほとんど外れていません。
風速以外にも、雨量や熱中症の予測もしています。
エッジAIカメラによる安全対策①
他には、エッジAIカメラによる安全対策です。
先ほど(ご説明申し上げたように)土木現場で亡くなる方は年間300名ぐらいで、1日1名ぐらいいらっしゃるということなのですが、事故の一番多いもの……3割ぐらいが落下です。その落下に対して何かできないかということで、作ったソリューションです。
エッジAIカメラによる安全対策②
エッジAIカメラというもので、「エッジ」というのはデバイス……ハードウェア側で、AIで画像解析できるカメラを開発しています。
フルハーネス装着検知
2019年2月から、高さ6.75メートル以上での作業に、フルハーネス型安全帯の着用が義務化される予定です。(フルハーネス装着検知として、エッジAIカメラを)どう使うかと言うと、デバイス側で画像認識をAIでやっているので、リアルタイムに今どのような状況かを判定できます。
(スクリーンを指して)今は赤くなっていて「フック異常」となっています。フックがブラブラしているので、その異常をこのカメラが認識しています。これをやることで、例えば土木作業現場にカメラを付けて、「安全帯を付けていない人がいたら、アラートを鳴らす」ようにして、義務化に対応できるのではないかということで、開発しています。
IoTに必要な要素
最後に、インテグレーションによるソリューションです。
先ほどお話ししたように、IoTにはデバイスからアプリケーションまで、いろいろなレイヤーのものが必要になってきます。当社のインテグレーションの強みは、いろいろなレイヤーにあるものを、ワンパッケージで提供できるところです。
サービス提供範囲
なので、当社のサービス提供範囲も、デバイスからアプリケーションまでのすべてに対応しています。
サービス提供範囲(デバイス)
デバイスです。これは、自社開発のゲートウェイ端末になります。
サービス提供範囲(アプリケーション)
アプリケーションです。
IoTにはいろいろな使い道があると思うのですが、例えばユーザー端末の管理や、ログデータ管理、位置情報、カメラ画像。このようなものを、アプリケーションとして当社で用意しています。
サービス提供範囲(センサーの選定・調達)
センサーの選定・調達です。
当社は、100種類以上のセンサーと接続実績を持っています。「FASTIO LINK」という、センサーメーカーさまとのパートナー連携をしているものがございます。
サービス提供範囲(汎用的なデータ収集機能)
あとは、スマホやPLC(シーケンサー)のような、汎用的なもののデータ連携も可能になっています。
サービス提供範囲(API連携)
システムの詳しい話は割愛しますが、APIと言って、いろいろな他のクラウドサービスにも連携できます。
IoT業界でのポジショニング
「IoT業界で、当社はどのような立ち位置にいるのか?」というご質問をよく受けるのですが、これが、そのIoT業界でのポジショニングを整理したものです。
いわゆる一般的なIoTプラットフォームは一番右のオレンジなのですが、そこはサイバー空間のアプリケーションや(クラウド)サーバーの部分です。ここをやっているのが、よく言われる「IoTプラットフォーマー」です。
当社の場合はそこもやっているし、その分野でも他社とAPIなどを使って連携していますが、もっと下のレイヤー……センサーや(通信)デバイス、ネットワークのところもワンパッケージでできるところが強みになっています。
必要なものは全てそろっています
今までご紹介したものは、デバイスからアプリケーションまで、当社がワンパッケージですべてやっています。
エコモットのIoT事業を支えるパートナー
そして、いろいろな事業パートナーです。AWS、日本コムシスさま、KDDIさま、テラスカイさまなどが、ビジネスパートナーとして一緒にビジネスに取り組んでいます。
各種経営指標経年推移
今日は数字の話よりも事業内容をメインにと思っていたのですが、意外とみなさまは、こちらのほうがメインだったようなので……すみません、数字の話もちょっとだけしたいと思います。
前期の2018年3月期です。売上高が約16億円で、今期(2019年3月期)の目標は19億円となっています。
営業利益は、前期実績が1億1,700万円、当期で1億3,300万円を目標にやっています。
売上高(ストック・フロー分計)経年推移
ストックとフローの売上高の割合です。
だいたい前期(2018年3月期)実績で、2割強がストック売上になっています。今期(2019年3月期)も25パーセントほどに、ストックの積み増しを予定しています。
新たなネットワーク技術への対応
それと、新たなネットワーク技術への対応です。3G・LTEは既存のネットワークになっているのですが、これがLPWA……「Low Power Wide Area」と、新しい通信規格が出てきますので、今期からそれの対応に向けた活動をしています。今期も実証実験や製品のプレスリリースを出させていただいています。また、5Gはまだ実用化がされていませんが、5G対応に向けた取り組みを進めています。
10年後のエコモット
「10年後のエコモット」ということで、当社がこれから先どうなっていきたいのかとしては、「日本を代表するIoTリーディング・カンパニーへ」と、いろいろな社会問題に対して、IoTを使って解決する会社を目指しています。
10期後までの成長イメージ
成長イメージですが、(2019年を迎えると)創業から12年。ここ(創業当時)はIoTビジネスそのものが、まだ市場としてできあがっていませんでした。ここ数年でやっと市場ができてきたところです。当社のこれからの3年間は、「経営基盤を強化して、これからさらに飛躍するための体制強化などの準備をしよう」という期間になっています。
売上・営業利益成長イメージ
売上高・営業利益成長イメージです。先ほどお話ししたのですが、トップラインの伸びは重視しているものの、利益の伸びはそれほど見込んでなく、体制強化期間だと捉えています。「意志ある踊り場」として、今は将来の成長に向けてトップラインの成長と体制強化をしているところです。
売上高・営業利益の季節的変動について
最後に、(売上高・営業利益の)季節的変動です。
当社は、第1四半期・第2四半期が赤字になり、第3四半期・第4四半期で利益を出すビジネスモデルになっています。その理由としましては、先ほどお話しした「雪のIoT」の「ゆりもっと」は、ほとんどの売上が12月から3月に計上されます。当社は3月決算ですので、第3四半期、第4四半期に売上が集中しています。
そして、コンストラクションソリューションの「現場ロイド」も、だいたい4月から入札が増えてくるのですが、秋ごろに現場の数がピークになります。ですので、やはり10月~11月ごろが売上のピークになってきます。
さらに、インテグレーションソリューションです。これは、お客さまのニーズに合わせた開発やカスタマイズをするものですが、やはり納期が年度末に集中する傾向にあります。
そのような理由がありまして、どうしても下期偏重型になってしまっている状況です。当社としましても、これはよろしくはないと考えていまして、解決策としてはストックの積み増しを考えて、今の事業を推進しています。
駆け足となりましたが、以上です。
坂本氏より質問:IoT環境整備後の収益の伸び方は?
叶内文子氏(以下、叶内):それでは、まずは坂本さんから。機関投資家さんだったら、どのあたりが気になりそうですか?
坂本慎太郎氏(以下、坂本):みなさんもたぶん、IoTからエコモットさんに注目されていると思います。IT化がとても遅れていると言われている建設業界でIoTのチャレンジをされているのは、非常に共感するところではあるんですけど。
今後の見どころは、IoT技術はまだ発達している途中だと思いますし、インフラもそこまで……「5Gがしっかり整備されれば、さらに」という期待は高まっているところだと思いますが、そちらも飛躍的な成長になるかどうかは、まだわからないんですけど。
IoTがフルで使える環境が整備されて、さらなるIoTの(進歩があるかもしれない)……今はどちらかと言うと、1つ(のものを)使うためのIoT技術ですけど、それが進歩していくと、もっとすごい製品が生まれてくるかもしれないし、利益も上がってくるかもしれないと思っている。
その上、今はIoTが成長途中で、だいたい年率15パーセントぐらいの成長と言われていると思います。それは、早期にIoTを使いこなせたり、画期的な技術に乗っかったりすることで(今後は)15パーセントの2倍や3倍のスピードの収益の伸びに期待していきたいと思っています。
あとは、本日は資料配布がありませんでしたが、IRの説明会を細かくやられているのは、投資家としては非常に助かるので、今後も続けていただきたいと思います。
叶内:わかりました。それでは、会場のみなさまでご質問がある方は、その場でお手をお挙げください。
質疑応答:設備投資とIoT人材確保について
質問者1:今日はありがとうございます。脳の医療系のテレビで、「AIと画像認識は、けっこう関係性がいい」という話を聞いていました。エコモットさんを見ていて、個人的に気になっているところとして、天気予報関連も(AIと画像認識は)すごく相性がいいような話を聞いて、そのあたりをとくに期待して見ているのですが。
今日の話を全体的に聞いていて、設備投資がけっこうかかりそうな気がするのですが、それに対しての回収に、どれぐらいかかるのかということ。
あと、さっき(従業員数の経年推移が)グラフにあったと思うのですが、IoTの人材確保に対して、その数値が目標として達成できる見込みがあるのか。そのあたりを聞きたいと思っています。
叶内:ありがとうございます。設備投資と人材(についてのご質問です)。
工藤:システム開発という意味で、設備投資はやはり人件費になりますので、モノの投資はそこまではないです。いわゆる在庫はありますが、固定資産になるような設備投資はそこまでありませんので、人の人件費の増加と在庫です。
また、従業員数ですと、ちょっと(グラフは)数字がつぶれて見えませんが、今期は89名まで採用する予定で進めています。これは開示している内容ですが、もう当期で85名まで、採用が終わっています。なので、計画どおりに採用が進んでいる状況です。
よく「IT人材は、北海道でちゃんと採用できるのか?」ということを、機関投資家さまとかにも言われたりするのですが、意外と北海道はそのような人材が多くて。理系の大学も多いですし、あと、最近多いのはUターンです。大学を出て東京で働いて、札幌に戻りたい人ですとか。
あと、これも意外と多いのですが、Iターンも多いです。「北海道に住みたかった」という人もけっこう多く、そのような方たちに来ていただいています。
叶内:ありがとうございます。
質疑応答:エコモットの強みは何か?
質問者2:エコモットさんの強みは、どのようなものがあるでしょうか? 何件か特許なんかもあったかもしれないのですが、「技術面」なのか、あとはニーズを見つけてそれにぴったりの商品を作る「開発力」ですとか。どのあたりに、強みがあるということでしょうか?
工藤:ありがとうございます。IoT業界における強みという意味でいきますと、まず実績では、なかなか他社にはないのかなと(考えています)。「現場ロイド」で7,000現場以上フィールドの計測をして、データを集めた実績があります。あと「ゆりもっと」も、雪のやつ(IoT)です。1,500件以上のボイラーを遠隔で操作する会社って、なかなかないと思います。要するに、IoTの実績や実際の運用をやっている会社は、他にはなかなかないと考えています。
先ほどポジショニングのところでも少しお話ししたのですが、ワンパッケージでIoTを提供できることが、最大の強みだと思っています。例えば、技術者について、ソフトウェアのエンジニアとハードウェアのエンジニアって、お互いが何をやっているのか、ぜんぜん知らないんです。領域もまったく違うんです。
でも当社の場合は、それを組み合わせないとビジネスとして成り立たないので、お互い「IoTマインド」みたいなものを持っていまして、ハードとソフトの全体最適を考えています。これは人もそうですが、ビジネスの作り方でもそのようなノウハウがあるのが、強みになっています。
叶内:それが強みなんですね。よろしいでしょうか? ありがとうございました。
質疑応答:人材不足? 予算取りが難しい?
叶内:坂本さんからも、ご質問をどうぞ。
坂本:そうですね。手も挙がっていたので、僕からは1点にします。
防災システムの事業に関してなんですけど。IR資料を見させていただくと、災害が起こってから受注につながるかたちに見受けられるんです。危険管理水位計や災害用監視カメラシステムみたいなものは「予防」や「監視」という意味なので、災害が起こってから売り込みに行くより、どちらかと言うと、もともとの商圏が非常に広いと思っています。
ですから、たぶん予算の関係と予防に対する考え方が問題だと、原因としては思っているんですけど。政府の災害に対する予算は、空前の金額が積み上げられていると思います。こちらはどちらかと言うと、保守や土木などのハード面にお金が流れているので、なかなかそのような予防とか、ソフトに対する予算取りはハードルが高いんでしょうか?
それとも御社としては、営業員のリソースが足りないから、商圏に比べるとここの拡販が取れていないのか。どちらかをおうかがいしたいと思うんですけど、背景を含めてよろしくお願いします。
工藤:ありがとうございます。確かに防災予算は、何兆円というかなりの金額で付いています。もともとは、例えば去年(2017年)九州北部豪雨が起きて、そこで当社の水位計などがかなり使われていました。災害が起きた後に事後的に使われていたのは、確かに多かったです。
ですが、今年(2018年)の漢字が「災」になったぐらい、異常気象がもう「異常」じゃない。災害が「異常」じゃない。常にそれを踏まえたインフラを作らなければいけない状況になっていますので、予防や減災に対する予算は、これから増えるだろうと考えています。
「人が足りないのか、予算取りが難しいのか?」というところにいきます。まず予算取りのところでいくと、今までどのような会社が防災や減災に入っていたのかと言うと……社名を出したらあれかもしれないのですが、大きい会社が、例えば「山の地滑りの警戒監視をしよう」となったときに、自社が作っている製品を動かすために電源を引っぱってきます。それは、消費電力がむちゃくちゃある、すごく重厚なシステムを組もうとするからです。それで、すごい金額がかかります。
しかし、当社の場合は、そこにモバイルバッテリーやLPWAを使った製品でやるので、従来何千万円もかかっていた工事が、何百万円で済む。だから、コスト面ではかなり当社は優位性があるので、当社の場合は予算的なハードルはそこまでないと考えています。
営業リソースというところにいくと、やはりまだ少し弱いところはあります。なので、今期は防災関連の営業マンを増強したこともありますし、また、日本コムシスさまと営業面で提携しています。やはり、そのような大手の会社さまの営業力を借りることもしています。
叶内:わかりました。
質疑応答:営業キャッシュフローがマイナスの理由は?
質問者3:本日はありがとうございました。3点お願いします。
1点目なのですが、売上高と利益のところを見てみると、ちょっと御社は粗利が他の会社より低いのかなと思っていて、このあたりに何か理由があるのかなと気になっていまして。ソフト屋さんってけっこう、10パーセントぐらいの利益率があるじゃないですか。
御社の場合はたぶん一貫でやっているのですが、どちらかと言うと「物販で売上を立たせているのかな?」というイメージはここから見えたので、粗利がちょっと低めな理由を教えてください。
2点目です。粗利という面でも同じだと思うのですが、官公庁の売上が意外と多いのかなと思っていまして、官公庁の売上の比率がどれぐらいなのかを教えてください。たぶん「官公庁扱いになると、『入札とかで負けるんだよね』みたいな話があって、利益が取れないのかな?」という妙な心配をしたのですが。そのあたりを聞かせていただければ、ありがたく思います。
3点目です。御社は、営業キャッシュフローでマイナスが多いじゃないですか? これ、どうなのかなと思っていまして。(決算資料を)見てみると、売掛金の回収がけっこう長引いているのかなというのがあって、それは何か理由があるのかなと(思っています)。回収が遅れると、あまりいいことじゃないのかなと思っています。
もちろん事業を拡大するためには、それもやむなしなのかなと思っているのですが、営業キャッシュフローがマイナスなところをどう考えているのか、聞かせてください。以上です。
工藤:ありがとうございます。まず1点目、利益率のところです。売上高が(2016年3月期の)7億3,900万円から2017年3月期に13億7,100万円と、かなり増加したんです。おっしゃるとおり、ここの売上の増加に、先ほどお話しした「Pdrive」、ドライブレコーダーの端末の販売収入がかなり影響しています。
「Pdrive」に関しては、端末の販売収入で、あまり利益が取れていません。と言うのも、当社のシステムを多くの方に使ってもらいたい……要するに、ストックを積み増したいので、端末ではあまり利益を乗せていないところがあります。それだけ、利益率が落ちているように見える状況になっています。
2つ目ですが、官公庁の売上。直接官公庁と取引をするのは、そこまで多くはなく、1割以下です(販売店経由が多い)。官公庁の利益率が低いかと言うと、そんなことはないと思っています。コンストラクションソリューションで販売店経由で自治体さんとお取引していますが、利益率はそれなりに取れている状況です。
そして、営業キャッシュフローです。1つとして、やはり下期偏重のため、3月に売上が集中します。そのため、年度末にきたときに、営業キャッシュフローが赤くなることがあります。
もう1つは、売上債権の回収です。コンストラクションソリューションの「現場ロイド」、土木のやつ(IoT)ですが、土木・建設の商慣習と言いますか、受取手形を出すお客さまがかなり多いんです。なので、回収に120日~150日が当たり前にあるところがあって、キャッシュ的に少しきつくなる。売上が上がれば上がるほど、営業キャッシュフローは赤くなるという状況になっています。
叶内:わかりました。建設業界では、わりとそのように長くなるのが慣習ですか? わかりました。
質疑応答:建設IoTの見通しは?
質問者4:お話、ありがとうございます。建設IoTについてお願いしたいです。
「建設現場の今後の見通しとか、そのようなところに影響を受けるのかな?」という印象を受けたのですが、今後の見通しですとか。あとは、「建設が終わってしまうと、お付き合いが終わってしまう?」と思っていたのですが、建設が終わった後も、建物などにIoTは入っていくものなんでしょうか? そのようなところの見通しを教えていただけると、助かります。
工藤:ありがとうございます。いわゆる維持管理分野がありまして、今後50年で、すごい数の老朽化した橋梁やトンネルが出てくる。それらを、全部コストをかけて作り直すことはできないので、「どうやってモニタリングしていこうか?」というところで、このような「IoTを使ってやっていきましょう」という指針は国交省から出ていますが、そこってまだ、あまり動いていないんです。これは、ゼネコンさまも困っているところだとは思うのですが。
でも、LPWAや5Gという通信技術が出てきて、通信コストも下がってきた現状からいくと、おそらくそのようなものが普及してくると考えています。ちょっと、ふわっとした回答で申し訳ないです。
叶内:国が力を入れようとしている分野では、あるんですよね。
工藤:そうですね。
叶内:小さい自治体さんあたりになると、「うちは、そんなに予算がありません。すごいシステムとかを持ってこられても困ります」みたいになっていると聞くのですが。
工藤:そうですね。ですが、やはり大事なのは、安全・安心というものとコストを比較したときに、どうしてもやらなければいけないものなんです。「人が点検してやっているから、大丈夫」と言う自治体さまもあるのですが、そもそも、もう人がいなくなってきているところもあったり。じゃあ、「そこで何かをしなければいけない」となると、このような技術を使ったソリューションを、作っていかなければいけないのかなと思います。
叶内:わかりました。
質疑応答:将来的に、配当は考えている?
質問者5:まだ上場間もなく、成長途中だし(すぐには)ないと思うのですが、将来的には配当なども考えていらっしゃるんでしょうか?
工藤:今のところ配当の予定はないのですが、今は「株主さまに、どう還元しようか?」というところで、やはり成長してキャピタルを上げて、還元することがメインになっています。将来的には、配当という方法もあるかと思います。
叶内:今のところは、成長フェーズということですね。わかりました、ありがとうございます。
質疑応答:雪・車・土木のIoTの売上比率は?
質問者6:冒頭で「雪のIoT」と「車のIoT」と「土木のIoT」という話がありましたが、この売上的な比率はどうなっているのでしょうか? それと、ライバルにはどのような企業があるのかが気になっています。
工藤:ありがとうございます。それぞれのソリューションの売上比率ですが、今日は(2018年3月期の)決算短信を出していないので、申し訳ないのですが、このページで説明します。
「ゆりもっと」……雪のやつ(IoT)の売上は、だいたい全体の1割強です。昨年(2018年3月期)実績で、1億7,000万円ほどになっています。(「土木のIoT」の)「現場ロイド」は6億円ぐらいで、全体に占める割合は4割ぐらいになっています。(「車のIoT」の)「Pdrive」も6億円ぐらいで、全体に占める割合は4割ぐらいという状況になっています。
質問者6:伸びているのは、どのあたりなんでしょうか?
工藤:今伸びているのは、「現場ロイド」と「Pdrive」です。やはり短期的には、当社はコンストラクションソリューションの「現場ロイド」、「防災」に力を入れたいと考えています。中長期的には、インテグレーションソリューションの「FASTIO」からいろいろなパッケージが派生してくるだろうと考えて、今はそこにも力を入れています。
叶内:ありがとうございます。