2018年3月期のハイライト
町田公志氏:2018年3月期の決算概要、中期経営計画の進捗状況、2019年3月期の業績予想の順にご説明いたします。
まず2018年3月期のハイライトでございます。
当期のポイントとしては、適正運賃収受を踏まえた積極的な人員・委託先への投資による働き方改革への対応と、輸送インフラの強化により、次年度以降の成長を見据えた事業基盤作りの実施ができた点でございます。
物流業界全体としては、雇用情勢の改善にともなう労働需給の逼迫や、賃金上昇懸念が継続している中、政・労・使、一体で推進されている働き方改革への対応、輸送品質を維持するためのコストなどは増加傾向にあります。
このような環境のもと、冒頭申し上げたポイントの通り、適正運賃収受の取り組みを継続しつつ、働き方改革・輸送インフラ強化のための従業員、委託先への増強を行ってまいりました。
連結業績サマリー
3ページ目でございます。
このような取り組みの結果、2018年3月期の当社グループの業績は決算日変更の影響もあり、連結営業収益は1兆450億円で前期比112.3パーセント、連結営業利益は627億円で前期比126.8パーセントの増収増益となりました。
また参考値ではありますが、決算日変更の影響を除いた365日ベースの実績においても、連結営業収益は9,961億円で前期比107.1パーセント、連結営業利益は596億円で前期比120.5パーセントの増収増益となっております。
配当金につきましては、2018年2月2日の開示時の1株あたり配当金の通りを予定しております。
営業収益の増減分析
4ページ目でございます。
ここから2ページにわたりまして、2018年3月期の営業収益、営業利益の増減要因について順にご説明いたします。
ここでは2018年3月20日までの365日ベースの業績と、前期実績の比較を中心にご説明いたします。
まずは営業収益の増減要因であります。平均単価は前期の511円から548円と37円上昇し、これにより営業収益は470億円増加いたしました。取扱個数は前期の12億7,600万個から12億8,500万個と900万個増加し、これにより営業収益は47億円増加いたしております。
また宅配便以外の付加価値サービスとして展開しているTMS、Transportation Management Systemにおいても、営業収益が77億円増加いたしております。
一方で、不動産売却による収入につきましては、前期との売却物件の損により71億円減少いたしております。これらの要因により、365日ベースで比較した営業収益は9,961億円と前期比658億円の増収となっております。
これに決算日変更の489億円を加え、2018年3月期の営業収益は1兆450億円となっています。
営業利益の増減分析
5ページ目でございます。
営業利益の増減要因をご説明いたします。
営業収益の増加の影響は658億円でございます。一方、新規採用者の初任給の引き上げや、賞与の引き上げ、人員の増加等により、人件費が217億円増加いたしました。
また輸送品質向上のため、外部委託している幹線輸送の増車、委託単価の見直し、TMSの売上拡大にともなう要所の増加等によりまして、外注費が315億円増加しております。
また減価償却費の減少による増加は70億円となりました。これらにより、365日ベースの営業利益は596億円と前期比102億円の増益。これに決算日変更の影響を加え30億円を超えますと、2018年3月期の営業利益は627億円となっております。
なお、減価償却の償却方法の変更、耐用年数の変更により従来の方法と比べ、減価償却費は77億円減少しております。
セグメント別業績
6ページ目でございます。
セグメント別では、デリバリー事業、ロジスティクス事業、その他の事業で増収増益となっております。不動産事業は前期との売却物件の相違によりまして減収増益となっております。
セグメント別業績概要
7ページ目をご覧いただきます。
セグメント別の業績概要についてであります。
デリバリー事業では、取扱個数の増加と、また継続的な適正運賃収受により、平均単価が上昇しております。人件費や外注費は働き方改革、輸送インフラ強化の取り組みにより増加いたしましたが、増収効果が上回り、前年に対して増収増益となっております。また「GOAL®(GO Advanced Logistics)」による営業強化や、株式会社日立物流との協業による付加価値の高い輸送サービスの拡大も業績に寄与いたしております。
ロジスティクス事業では、国内では、大型物流受注案件のコスト改善、越境通販貨物の増加などにより、好調に推移いたしております。また海外では、フレイトフォワーディングの物量増加、新倉庫立上げにより増収となっております。
不動産事業では、保有不動産の継続的な売却を実施いたしましたが、売却物件の昨年との相違により、前期比では減収増益となっております。
また2018年2月には、佐川急便株式会社の営業所を併設する大型物流施設SGリアルティ和光が竣工いたしました。
その他の事業では、新車販売の増加や、燃料販売の増加により、増収増益となりました。
連結キャッシュ・フロー計算書
8ページ目に移ります。
連結キャッシュ・フローの状況についての説明であります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、1,010億円と増益の影響により、増加をいたしております。
投資活動によるキャッシュ・フローは、不動産・車両・システム投資等により、346億円の支出となっております。
財務活動によるキャッシュ・フローは284億円であります。
連結貸借対照表
9ページ目でございます。
次に貸借対照表は、スライド記載の通りでございますが、増益効果もあり、自己資金比率は46.4パーセントと前期末比で2.5パーセント増加いたしております。
中期経営計画「First Stage 2018」重点施策の進捗状況
続いて中期経営計画の進捗状況についてのご説明であります。
当社グループは2016年度から2018年度の中期経営計画「First Stage 2018」として、6つの重点施策に取り組んでおります。
1つ目、グループ連携によるソリューション力の強化では、GOAL®の推進によるグループ間連携の拡大、株式会社日立物流との連携を活かした物流ソリューション力の強化が進んでおります。
2つ目、グローバル物流ネットワークの拡張では、スリランカのExpolanka社の拠点展開や、東南アジア・東アジアの現地物流強化が進捗いたしております。
このほかにも、スライド記載の通り2018年3月期までは「First Stage 2018」の各施策は、順調に推移しており、2019年3月期には次期中期経営計画を見据えた取り組みを強化してまいります。
次のページから、足元でとくに取り組みを強化している働き方改革と輸送インフラの強化、GOAL®、競争プロジェクト、物流周辺事業強化の4点についてご説明いたします。
中期経営計画「First Stage 2018」取組状況と今後の展開①
12ページでございます。
まずは働き方改革と輸送インフラ強化についてであります。
外部環境として、現在国会審議中の法案では、自動車運送事業者に対する時間外労働時間の規制が強化される見通しとなっております。
現在は、限度基準告示の適用除外となっておりますが、法令が施行されると、5年の猶予期間の後に、年間960時間以内の規制が導入される見通しであります。また将来的には年720時間以内の一般則の適用も見込まれております。
また内部環境として、輸送品質を維持・向上しつつ、集荷・中継・配達という輸送における各機能のキャパシティの増強を行うことが、継続的な課題となっております。
これらのことから、時間外労働時間の短縮・輸送インフラの強化を実施する必要があるものと認識をしております。
中期経営計画「First Stage 2018」取組状況と今後の展開②
13ページ目でございます。
集荷・中継・配達、それぞれの機能において、スライド記載のような取り組みを実施いたします。
集荷の強化については、セールスドライバーの増員、定着化。BtoBの業務に注力できるよう業務分担の見直し、労働環境の改善と給与体系の見直しを実現、実施することで、営業力の増強、時間外労働時間の短縮、採用強化、定着率の向上を図ってまいります。
中継の強化につきましては、幹線輸送便数の増加、ダイヤ運行の徹底、2020年8月竣工予定の大型中継センターの新設を行い、輸送品質の安定と中継キャパシティの増強を行ってまいります。
配達の強化につきましては、多様な働き方の拡充による従業員の増員、委託先の増強、toC配達時の受取人の在宅傾向に即した配達体制の整備などを行うことで、配達インフラの強化、効率化を行ってまいります。
時系列で捉えますと、2019年3月期は輸送インフラ強化を実施し、2020年3月期は安定稼働、生産性向上、そして2021年3月期には大型中継センターが稼働するという段取りになります。
このように、段階的に取り組みを進めることで、働き方改革における時間外労働の短縮を行うとともに、大型中継センター稼動後に取扱個数をある程度拡大できる輸送インフラを整備してまいります。
中期経営計画「First Stage 2018」取組状況と今後の展開③
14ページでございます。
次にグループ横断の戦略的営業チーム「GOAL®(GO Advanced Logistics)」の取り組みについてご説明いたします。
GOAL®では、セールスドライバーからの情報を基に、地域密着の体制で、お客さまに物流ソリューションを提案を行ってまいります。2019年3月期は、さらに20名を増員し230名体制でこの活動を行ってまいります。
また記載の各分野の専門性を活かした物流ソリューションの提案も行っております。
次のページは、GOAL®によるソリューション提案の事例について、ご説明いたします。
中期経営計画「First Stage 2018」取組状況と今後の展開③
15ページ目にお進みください。
スライドの図はベトナムにおけるスマート・インポート®の内容であります。
企業用のユニフォームの製造・販売を行っているお客さまの事例であります。
図に記載しておりますのは、従来のやり方であります。従来の方法では複数の海外工場から国内自社物流センターに製品を集約していたと。製品は企業用のユニフォームですが、これの納入が3月9月に集中していたことにより、国内倉庫のキャパシティが不足し、人員不足が生じ、この点が課題となっておりました。
これに対しGOAL®では、当社グループのベトナム現地法人SG佐川ベトナムの保税倉庫と国際輸送、日本国内の全国輸送ネットワークを組み合わせた改善提案を行いました。従来お客さまの国内倉庫で行なっていた作業をベトナムに移管し、最終納品先ごとに製品を組み合わせ、佐川急便の送り状貼付まで実施いたします。日本国内に荷物が到着した後も、お客さまの国内倉庫を通さず、佐川急便が全国の納品先までダイレクトに配達するスキームといたしました。
複雑な物流業務全体を効率化したことで、国内倉庫のキャパシティ、人手不足の解消だけでなく、リードタイムやコストの最適化も実現いたしております。今後もお客さまの物流課題に対するソリューション提供を推進していきたいと考えております。
中期経営計画「First Stage 2018」取組状況と今後の展開④
16ページ目でございます。
株式会社日立物流との協創プロジェクトの取り組みについてのご説明であります。
従来の活動として営業面での協業、国際フォワーディングの協業、技術面の協業、センター共同化、その他周辺事業の協業については引き続き取り組みを行なってまいりますが、協業の事例については次のページでご説明いたします。
また、これらに加えまして、2019年3月期につきましては「協創2.0」として、地域協創ミーティング、国・地域を横断したフォワーディング事業の強化、物流周辺事業の自律的連携強化にも注力をしてまいります。
中期経営計画「First Stage 2018」取組状況と今後の展開⑤
17ページ目でございます。
これは日立物流との協業による成果の一例でございます。
大型建造物における物流ソリューションの提供であります。
大型建造物の製造を行っているお客さまの事例となります。上の図に記載してありますのは、従来のスキームでありますが、作業現場で使用する工事用の資材の在庫管理、資材の過剰製造と外部倉庫の増加、輸送における無駄。とくに空コンテナの移動、倉庫間のミルクランといった点が課題となっておりました。
そこで当社グループと、日立物流グループの協創による改善提案として、TC倉庫の設置、倉庫と工場のシステム連携、倉庫から現場のジャスト・イン・タイム納品の提案をいたしております。TC倉庫は、作業現場近くのTC倉庫の設置であります。これにより、保管場所の集約による在庫管理の適正化、コンテナ輸送距離の短縮を行なっております。また、システム連携でありますが、TC倉庫と製造工場の連携であります。これにより、不足分のみの効率的な製造・輸送を行う体制といたしております。さらに作業現場へのジャスト・イン・タイム納品で、作業スケジュールに合わせた無駄のない納品を行う体制といたしました。
このように日立物流が倉庫運営、製造工場との連携を担い、私どもグループが工場・倉庫間の輸送と、倉庫・現場間のジャスト・イン・タイム納品を実施し、両社グループの強みを組み合わせた物流ソリューション提案により、お客さまの物流課題を解決することができております。
両社の強みを組み合わせることで、ご提案できる幅が広がり、お客さまにとってより良いソリューションを提供できるものと考えております。協創プロジェクトでは、今後もさまざまな可能性を模索しながら、シナジー効果を追求してまいります。
中期経営計画「First Stage 2018」取組状況と今後の展開⑥
18ページ目でございます。
当社グループでは、物流周辺事業の強化にも取り組んでおります。
一例として、2018年2月に竣工いたしましたSGリアルティ和光についてご紹介いたします。SGリアルティ和光は埼玉県和光市にあり、広域交通の結節点に設立した大型物流施設でありまして、2018年9月より1階に佐川急便和光営業所の開設を予定しております。
3つの目的で、新規拠点として開設いたしました。
1つは、佐川急便の輸送インフラの強化であります。和光営業所の開設により、担当エリアの輸送品質の向上を図っております。
2つ目は、グループ連携による付加価値の高い物流施設を提供することであります。1階に佐川急便が入居するため、上層階の倉庫を利用するお客さまは、輸送のリードタイムの短縮、コストの削減が図られます。
3つ目は、都市近郊で物流施設ニーズが高く、労働力の確保もしやすいエリアへの拠点展開であります。これにより、安定的な賃料収入が見込めるほか、流動化の検討も可能と考えております。
グループ各社の拠点の利用状況や外部顧客の物流ニーズ等を確認しながら、今後も同様の物件開発を継続的に検討してまいります。
2019年3月期の取組み
ここまで説明をいたしました2018年3月期の業績および中期経営計画の進捗、取り組みを踏まえ、最後に2019年3月期の業績予想についてご説明をいたします。
中期経営計画「First Stage 2018」の最終年度として、2019年3月期はスライド記載の通りの取り組みを行ってまいります。
連結業績予想及び配当予想について
21ページ目をご覧ください。
2019年3月期の連結業績予想については、直近の業績、事業環境を踏まえ、2017年5月1日に公表いたしました中期経営計画の目標値から見直しを実施いたしました。
連結営業収益1兆500億円、営業利益630億円、経常利益660億円、親会社株主に帰属する当期純利益370億円、EBITDA855億円としております。
配当予想につきましては、当期より中間配当を実施し、通期では1株当たり配当金35円としております。
営業集積の増減分析
22ページ目でございます。
業績予想の営業収益、営業利益の増減要因について順にご説明いたします。
2018年3月期は決算日変更による変則決算であることから、各要素の増減については、2018年3月期を2017年4月1日から2018年3月31日までに区切った数値との比較を中心にご説明いたします。
まず営業収益の増減要因であります。増収要因として、適正運賃収受の継続による平均単価の上昇によりプラス483億円、取扱個数は前年並みで想定しており、プラス2億円を見込んでおります。
前提としている平均単価は588円。これは前期比6.9パーセントの増加であります。取扱個数は昨年と一緒の12億7,000万個であります。このほか、不動産売却額の増加により、101億円増加を見込んでおります。
なお決算日変更による影響マイナス541億円でありますが、これを踏まえた上で増収の予想としております。
営業利益の増減分析
次のページをご覧ください。
営業利益の増減要因についてご説明いたします。
増加要因として、営業収益の増加591億円ございます。また減少要因として働き方改革、輸送インフラ強化等による人件費増による減少198億円、外注費増による減少179億円を見込んでおります。
また減価償却費の増加による減少44億円を見込んでおります。なお決算日変更による影響マイナス62億円がございますが、これを踏まえましても増益の予想としてございます。
セグメント別業績予想
セグメントごとの営業収益につきましては24ページでございます。
営業利益の輸送については、記載の通りであります。
連結業績予想(第2四半期累計)
25ページでございます。
第2四半期累計の業績予想でございます。
連結営業収益は5,160億円。連結営業利益は265億円を見込んでおります。
2018年3月期の決算説明に関しては、以上でございます。
引き続き適正運賃収受に向けまして、業績の向上を図ってまいります。どうぞよろしくお願いいたします。