2018年3月期決算説明会
石井隆一氏:本日はお忙しい中、ソネット・メディア・ネットワークスの決算説明会にお越しいただき、ありがとうございます。私、社長の石井より、2018年3月期の決算についてご説明いたします。
本日は、前期(2018年3月期)の連結決算概要と、第4四半期事業の状況および、今期(2019年3月期)の連結業績予想という3点について、ご説明したいと思っております。
2018年3月期 経営方針の振り返り
まずは、2018年3月期の連結決算の概要について、ご説明いたします。
前期は経営方針としまして、「規模の拡大」と「収益力の強化」および「新規事業の種まき」を掲げました。
規模の拡大と収益力の強化に関しては、計画を大きく上回るかたちで着地しまして、「◎」の評価と認識しています。
一方で、新規事業(の種まき)に関しましては、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)の設立などにとどまっており、具体化するのは今期からというところで、我々の自己評価としては「△」と置いております。
決算ハイライト(総括)
こちらは、2018年3月期の決算ハイライトになります。
主力のアドテクノロジー・アフィリエイトで大きく伸長しまして、全体で売上が約90億円、営業利益が約5.4億円と、前期比で増収増益を達成することができました。
また、純利益に関しても大きく増加しています。これは、繰延税金資産の(追加)計上が含まれていることが、要因となっております。
サービス別の売上内訳に関しては、(スライドの)下の表にあるとおりとなっております。
決算ハイライト(進捗率)
こちらは、前期の期初業績予想と実績の比較になります。真ん中の黒い数字が(期初)業績予想、左の白い数字が実績、黄色い数字が達成率となっております。
ご覧いただくとおわかりのとおり、売上・利益とも(すべての指標において)予想を上回る結果となっております。
決算ハイライト(売上)
こちらのページは、全社の売上になります。
売上に関しては、主力のアドテクノロジー・アフィリエイトが牽引して、全体で前期比プラス29パーセント、約90億円といったかたちで着地しています。
決算ハイライト(営業利益)
こちらは、営業利益と営業利益率になります。
前期は、収益力の強化に関して注力しました。こちらが順調に進捗して、営業利益は前期比プラス約2.2億円の約5.4億円、営業利益率は前期比プラス1.3ポイントの6.0パーセントとなりました。
決算ハイライト(売上原価)
こちらは、売上原価および売上総利益率のグラフになります。
売上総利益率は、前期比プラス1.5ポイント改善しまして、21.7パーセントとなりました。
利益改善施策が功を奏しています。主なものとして、利益率の高いノンターゲティング商材がございます。これには例えば、当社のAIエンジンである「VALIS‐Engine」を活用した、潜在顧客ターゲティングという商材を含んでいます。そのような商材の拡販に注力したところが、功を奏している状況になっております。
決算ハイライト(販管費)
こちらは、販売管理費の推移となります。
事業規模の拡大に伴いまして、人件費やオフィスの増床費用など(固定費)が増加傾向にありますが、販売管理費率は15.6パーセントと前期並みということで、コントロールできていると認識しています。
決算ハイライト(貸借対照表)
こちらは、貸借対照表になります。
AI関連の投資や新規広告商材の開発によりまして、無形固定資産は前期末比でプラス37パーセントと大きく増加していますが、引き続き、健全な財務基盤は維持できていると認識しています。
決算ハイライト(フリー・キャッシュ・フロー)
こちらは、フリーCFの表になります。
これまで投資先行できていたために、マイナスが続いていたのですが、前期は上場以来、初めてプラスとなりました。そうは言っても(フリーCFは)3,800万円と、まだまだ小さいと認識しております。今期以降、これまで投資してきた技術力の収益化が、キーになると考えております。
アドテクノロジー
続きまして、前期の第4四半期の状況につきまして、簡単にご説明いたします。
こちらは、主力のアドテクノロジーの売上の推移になります。
アドテクノロジーに関しては、注力商材である「Logicadダイナミッククリエイティブ」が全体を牽引しまして、第4四半期では過去最高の売上を記録しています。第4四半期で、16億4,900万円という売上になっております。
アフィリエイト①
こちらは、アフィリエイトの売上推移になります。
こちらも、第4四半期としては過去最高の売上を達成しています。第2四半期・第3四半期に比べると、若干落ちているように見えるのですが、美容系のお客さまで特需があり、それが落ち着いたということで、下がっている状況ではあります。ただ、対前四半期ではプラス15パーセントで伸びているということで、ここも着実に成長しているという認識でおります。
メディアプランニング①
メディアプランニングに関しては、ソニーのニュースアプリの媒体取扱が減少しておりまして、第4四半期に関しては、若干苦戦しています。現在も、媒体取扱を増やすなど、改善の最中です。後ほど詳しくご説明しますが、今後は、当社に強みがあるWeb媒体の収益力向上の支援などを行っていく予定です。
4Q TOPICS アドテクノロジー①
続きまして、第4四半期のトピックスについて、いくつかご紹介したいと思います。
第4四半期に「テレビ視聴者ターゲティング」という、新しい広告商材を投入いたしました。これは、特定のテレビ番組の視聴者と当社のcookieデータを連携させまして、当社のAIエンジン「VALIS‐Engine」を使って、そのユーザーと似たユーザーをインターネット上から探し出してきて、配信するという商材です。とくに、テレビ広告を多く打たれている総合代理店さまから、現在は多数のお問い合わせを受けているという状況です。
4Q TOPICS アドテクノロジー②
もう1つ、技術絡みの話になるのですが、ご紹介したいと思います。すでに新聞記事にもなっているのですが、クリエイティブの領域におきまして、東京大学の山崎准教授をアドバイザーに研究を行っています。山崎准教授は、「魅力工学」の分野で、非常に著名な教授でいらっしゃいます。
今回の研究は、当社の持つ2万枚の広告を持つバナーを活用し、クリック率の高かったクリエイティブ(バナー)と、クリック率の低かったクリエイティブを選び、AIで大量に機械学習させて、新しいクリエイティブの効果を予測する取り組みです。
実際に実験を行いまして、9割のデータを学習させ、残りの1割のデータを、クリックされやすいクリエイティブなのか、クリックされにくいクリエイティブなのかを、人間とAIで判断させました。実験結果としましては、人間の正答率が5割だったことに対して、AIは7割という結果が出ております。
まだ研究段階のため、実用化に向けてやることがあるのですが、クリエイティブ領域に関しましても、進めていきたいと考えております。
4Q TOPICS アドテクノロジー③
こちらは、当社の技術力のアピールになってしまうのですが、モバイル端末からアクセスした際、ページを高速に表示させる「AMP(Accelerated Mobile Pages)」と言うプログラムがございます。このAMP対応ページに世界で最初に(外部DSPとして)技術的に対応し、モバイルページにおける広告表示時間を従来より33パーセント減少させたという(実績を出した)ことで、アメリカのGoogle本社主催のカンファレンスで、紹介されました。
4Q TOPICS アドテクノロジー④
昨今、インターネット広告の信頼性・安全性が問われる記事が、いろいろ出てきているかと思います。当社はこれまでも、不正広告(アドフラウド)への対策やブランド毀損の防止(ブランドセーフティー)を打ってきました。
このたび、「ビューアビリティ(広告の視認性)」……つまり、配信された広告がきちんとユーザーに見られているかどうかを測定する、第三者ツールを導入いたしました。さらに透明性を高めて、広告主のみなさまに安心してお使いいただける環境を整えました。
今期からは、動画をはじめとしまして、いわゆるブランド系の広告拡大に、注力していく予定でございます。その準備として、環境を整えているということです。
2019年3月期 経営方針
続きまして、今期(2019年3月期)の連結業績の予想について、ご説明したいと思います。
2019年3月期につきましても、「規模の拡大」と「技術の収益化」、そして「周辺領域での新規事業」という、3つの経営方針を掲げております。
繰り返しになりますが、当社の強みは技術力でありまして、継続的に大きな投資をしてまいりました。前期より着実に実を結んでいて、先ほど申し上げた売上総利益率の改善につながっているのですが、今期は本格的に、当社の技術力を収益に還元していく足がかりの年だと位置づけております。
また、周辺領域での新規事業に関しましては、前期は、まったくの新規領域での新規事業を模索した結果、苦戦しました。その反省を踏まえまして、まず今期に関しましては、我々の得意領域の既存領域周辺で、新規事業を立ち上げていく方針に切り替えております。こちらに関しましても、準備ができ次第、追って発表していきたいと考えております。
業績予想(サマリー)
こちらは、今期の業績予想となります。売上・利益とも、二桁成長継続を目標といたしました。
売上に関しては、前期比プラス約22パーセントの110億円となります。営業利益は、前期比プラス約38パーセントの7.5億円となります。売上に対して営業利益の伸びが大きくなっておりますが、こちらが先ほど申し上げました、技術力の収益還元を強化しているところになります。
なお、サービス別(の売上内訳)に関しては、以下のとおり(スライドの下部)でございます。売上68億円、前期比プラス29.1パーセントのアドテクノロジーが、引き続き全体を牽引していく構造の計画となっております。
アドテクノロジー 2019年3月期の事業全体像
次に、今期の事業運営につきまして、いくつかご紹介していきたいと思います。
まず最初に、アドテクノロジーになります。昨年(2017年)12月に、自社開発のマーケティング特化型AIエンジン「VALIS-Engine」を使った、「VALIS-Cockpit」という広告効果の可視化ツールを出しました。
そこを中心に戦略を組み立てていくのですが、今期に関しましては、AI「VALIS-Engine」の適用範囲を拡大します。従来、いわゆるコンバージョンというファネルの一番下の部分、購入・申込みのところ(顧客層)で活用してきました。これを上のファネル、つまり認知・興味のところ(低関心層)まで、適用範囲を広げていくフルファネルでのソリューションを提供していきたいと考えています。
まず、1つは、認知・興味に関わるもので、動画広告の「Logicad Video Ads」です。次に潜在層に、行動・欲求を促す「潜在顧客ターゲティング」など一環したソリューションを展開したいと思っています。
また、当社の人工知能「VALIS-Engine」について、もう1つの大きなテーマなのですが、現在約20名ほどで行っている運用業務を、2020年に向けて、完全に自動化していきたいと考えています。今期はその適用範囲を拡大していくことが、1つのポイントになるかなと考えています。
アドテクノロジー ①ブランド系商材の拡充
先ほど申し上げた認知・興味喚起のための動画広告商材「Logicad Video Ads」や、「VALIS-Engine」による潜在顧客を発見する、いわゆる「潜在顧客ターゲティング」などの商材を通じ、今後は、ブランド広告のソリューションを強化していきたいと考えています。こちらが、今年の大きなテーマの1つになるかなと認識しています。
アドテクノロジー ②Logicadダイナミッククリエイティブ
こちらは、いわゆる大型のEC業者さま、あるいはオークションサイト業者さまが保有するフィードといわれている膨大な商品情報を広告配信向けに変換し、最適化する仕組みを構築いたしました。
これは、大型のEC業者さまでは、取り扱う商品点数が非常に多く、データとしては億単位で、膨大なものになります。これまでは、商品情報の一部を取り込んで、当社で広告配信をしていましたが、今期からは新しい仕組みを導入いたしました。つまり全商品情報を変換したフィードを、広告配信向けに最適化し、自動的に生成することを可能にいたしました。
個人の興味関心に対して、より最適化された商品情報を自動生成した、広告クリエイティブを配信できるようになっています。
アドテクノロジー ③VALIS-Cockpit
こちらは(2017年)12月に導入した、マーケティングAIプラットフォームの「VALIS-Cockpit」になります。
順次導入を進めている最中ではございますが、今期も新機能を追加して、より効果的な配信ができるように、ユーザビリティの向上を目指していきたいと思います。
2つの大きな機能の特徴としては、分析対象を(自動的に)クラスタリング(することです)。セグメントを分けていくという作業は、たいてい広告主さまや代理店さまが手作業でやっているのですが、AIで特徴を分析したうえで、AIで(自動的に)クラスタリングしていきます。
広告施策によるファネル内でのユーザー遷移を可視化するところで、PDCAを回して、次の配信施策につなげていくこと支援していきたいと考えています。
アドテクノロジー ④ロボット・トレーディング
こちらは、「ロボット・トレーディングに向けた開発/検証を継続」となっています。
繰り返しになりますが、2020年に向けて、人工知能による広告配信の自動化範囲を、(大幅に)拡大していきたいと考えています。今年は、自動化(範囲の大幅な拡大)に向けた前段階の、入札エンジンへの適用等を進めている状況です。これは非常に苦労もあるのですが、全体としては順調に進んでいて、できれば前倒しをしたいとも考えています。
アフィリエイト②
アフィリエイトに関しましては、2つの軸がございます。
1つ目は、前期の成功事例を横展開していくことで、既存事業を強化していくことです。
2つ目は、こちらも会社全体と同じ方針なのですが、(既存リソースを活用して)その周辺領域において、新規のサービスを立ち上げていくということで、今は計画している最中です。こちらもタイミングがありましたら、また発表させていただきたいと考えています。
メディアプランニング②
メディアプランニングに関しては、先ほど「第4四半期は、若干苦戦していた」と申し上げました。そうは言っても、当社には強みがございます。それは、Web媒体の収益力向上の支援だと考えています。
今期からは、Web媒体を運営している、ソニーミュージックグループの株式会社エムオン・エンタテインメントにおける、旧ソニー・マガジンズのWeb媒体(andGIRL)の収益化の支援をやっていく計画となっています。
また、一昨日(2018年5月8日)発表しましたが、佐渡島庸平さんを当社取締役候補者として(株主総会へ付議する)決議をしています。佐渡島庸平さんは『宇宙兄弟』『バガボンド』『ドラゴン桜』などで、非常に有名な編集者の方です。佐渡島さんには、当社のメディアプランニングをはじめとした事業へのアドバイスなども期待しています。
お知らせ
最後に、東証一部への市場変更に向けた準備を開始したことを、ご報告申し上げたいと思います。東証マザーズに上場して、だいたい2年半ほどなのですが、足元は固まってきたかなと認識していまして、このタイミングで一部への市場変更(準備開始)を判断いたしました。投資家のみなさまの、引き続きのご支援を賜りますよう、あらためまして、よろしくお願い申し上げます。
以上で、私からのご説明は終了いたします。ご清聴、どうもありがとうございました。