「手仕舞い」は「仕掛け」よりも重要

中原良太氏(以下、中原):こんにちは、株式予報の中原良太です。

今週は手仕舞いの基本というテーマで動画セミナーを収録していきたいと思います。

株式投資をしている方で、株を買い付けるタイミングだとか、どういったふうに銘柄を選べばいいのか、スクリーニングの条件はどうすればいいのか、など「仕掛け」についてはいろんな投資本や雑誌を読めばある程度学習することができます。でも、いろいろと本を読んでみても「手仕舞い」に関する研究や体系的な知識などを収録しているものは、ほとんどないんですね。

僕自身、株を買い付けるタイミングについてはそれほど迷ったことはないんですけれども、「いつ売ろうか」「利益確定のタイミングをどうしようか」「損切のタイミングをどうしようか」など悩んだことは多々ありました。

なかなか他では学ぶことができないということで、手仕舞いを研究する1つのきっかけになればいいかなと考え、この動画の収録をすることにしました。

ということで、さっそく内容に移っていきたいと思います。

手仕舞いの適切な方法を知って、着実に利益を出せるようになるというのが今回の目的です。

今回お伝えする手仕舞いの方法は、基本的には短期のトレードをしている方、長くても1ヶ月以内で、短いとだいたい1日から1ヶ月くらいの短期間で利益を出したいと考えている方に役立つ内容ではないかと考えております。ぜひご活用いただければと思っています。

個人的な考えですが、「手仕舞い」は「仕掛け」よりも重要だと僕は考えています。

なぜかというと、取捨選択をするのが「仕掛け」なんですね。買うか買わないかの判断をするのが仕掛けで、最悪、買わないという選択肢を取っていれば、何事もなく絶対安全な状況になると考えられる。株を買わなければ現金を持っているだけだから、銀行に預金しているのと同じ、貯金しているのと一緒なので、結果的にはなにも起こらない。仕掛けについては最悪判断しなければいい、わからないのであれば手を出さなければいいということで、保留という選択肢があるんです。

その分、難度が下がると考えられます。

わからなければ手を出さなければいい、こういった選択が取れるので仕掛けは非常に考えやすいと思うんですけれども、「手仕舞い」はそうはいかないんですね。

1回株を買い付けてしまった、もう株は持っている、刻一刻と株価が上がったり下がったりしている。最悪、今売らなかったらもっと大きな損失、最悪の場合は倒産なんていう可能性も考えられるということで、手仕舞いというのは必ず決めなくてはならないことなんですね。

株を買い付けた入口は、1回入ってしまったら出なければいけないんです。どんな株式をトレードするにせよ、投資するにせよ、出口戦略というのは必ず決めなければならないことなんですね。入口は別に入らなければいいだけの話で、保留するという選択肢があるんですけれども、手仕舞いに保留という選択肢は基本的にはないですね。利益が見込める限り株を保有し続け、利益が見込めなくなった瞬間にさよならする、ということが非常に大事な考え方です。手仕舞いというのは株を買い付ける前からきちんと決めなければいけない。決めないという選択肢はないんです。

僕は昔よくやっていたんですけれども、手仕舞いを決められずに、ずーっとだらだら株を保有し続けると、株価がどかんと下がって大損してしまっているんだけれども、なにかいいことがあるかもしれないからとりあえず株を持っておこう、損を確定させたくない、ということで「塩漬け」に陥りがちなんですね。

そういったことのないように、手仕舞いは必ず決められるように、実力を身につける必要があると考えています。

冒頭にもお話したとおり、手仕舞いの手法については教えてくれる方が非常に少ないです。

僕も投資に関する書籍はたくさん読んできたんですけれども、実家に帰ると投資に関する本ばかりずらーっと並んでいて、両親からは「お前なにやっているんだ」と心配されるくらい、株式投資に関する本は読み漁ってきたんですけれども、いろいろと読んできたけれども、手仕舞いについて体系的な手法を教えてくれる本というのは、ほぼなかったです。というか、1冊も知らないですね。

それくらい、手仕舞いというのは誰も教えてくれないもので、教えられる実力がないとか、あとはテクニックは知っているけれども体系だった手法を知らないとか、そういった方も多数いらっしゃると思います。非常に難しい分野ですし、あとは個々人に非常に依存するんですね。

どんな投資法を使っているか、どれだけの資金量があるのかなどによって、適切な手仕舞い方というのが千差万別ということもあります。手仕舞いに関しては仕掛け以上に自分自身で研究しなければいけない対象の1つだと思っております。

今日は誰も教えてくれない手仕舞いについて、僕の考える手仕舞いの基本をお伝えしていきたいと思います。

僕の考える手仕舞いの基本というのは、いたってシンプルです。

まず、手仕舞いは自分の都合で決めてはいけないものだ、ということだけはあらかじめ共有しておきたいと思います。どういうことかというと、例えば、今お金が必要だから株を売るとか、10パーセントくらい利益が出た、僕はこれで満足だから株を売るとか、こういった手仕舞いの手法は基本的にはあまりよろしくないと考えています。

株の買い時、売り時というのは基本的には相場状況だとか株価の動き方、決算状況などなど、自分の都合ではないところで現れるものだと考えています。だから、自分の都合でなんとなく気分がいいから売ろうとか、気分がいいから買ってしまおうとか、自分の気分に左右されるものはギャンブルに近いものだと考えています。

適切な手仕舞いを行うためには、自分の考えや感情に振り回されない別の場所に置いておくというのが非常に大事だと考えています。

ではさっそく、この考えを踏まえて、どうやったら手仕舞いを決められるのか、その基本を僕なりにお伝えしたいと思います。

手仕舞いの適切な手法は「投資戦略」によって変わる

僕は手仕舞いの適切な手法は「投資戦略」によって大きく変わると思っています。

ただ、経験則上、僕がいろんな投資戦略や売買ルールを考案していく中で、何百、何千と売買ルールを作ってきたんですけれども、こういう手法で手仕舞いを決めればあらかたうまくいくな、という方法が1つあります。

それはなにかというと、『仕掛けと逆のことをする』ということが有効なことが多いのではないかと考えています。例えば、「決算のいい会社だから買った」ということがあったら、「決算が悪くなったから売る」という発想が正しいのではないかなと考えています。要するに、入り口と逆のことで出口を決めるということですね。

これを使ってバックテストをするのが非常に有効だと思っていて、仕掛けと手仕舞いを対応させるということは非常に大事な考え方だと思います。仮に、決算がいいから買う、決算が悪くなったから売る、といった投資戦略を考えた上で、バックテスト結果が悪かったら仕掛けも悪いということになります。要するに、入り口主導で出口を決めるわけですから、入り口が悪かったら出口も悪くなるんですね。

当たり前の話だと思います。

決算がよかったから買うというのがあまり有効ではないからこそ、出口も悪くなってしまう、結果的に利益を出せない、という発想につながると考えていますので、この手仕舞いと仕掛けを対応させる、仕掛けが有効であれば有効であるほど、手仕舞いが有効になる。こういった構図が描けるものだと思っていますので、僕はこの仕掛けの逆のことをして手仕舞いを決めるということが個人的には有効なのではないかなと考えています。

例えば、逆張り投資、順張り投資という手法があります。

例えば、「逆張り」系だと株価が下がったら買う、上がったら空売りする、という手法があるかと思うんですけれども、逆張りだと値動きと逆行した取引をしますよね、こういった取引手法の場合は下がった時に買う、だから上がったら売らなければいけない。逆張りの取引として、魅力度が下がってしまうから売らなければいけない。

上がっている銘柄を空売りするのであれば、下がったら手仕舞う。

というふうに、逆のことをするということが非常に有効だと考えています。

逆に「順張り」系の、上がった株を買う、下がった株を空売りする、といった取引手法を用いる場合は、上がっている時に買うのだから、上昇が止んでしまって、下がり始めた時には手仕舞いする。といった具合に、仕掛けと逆のことをするということが大事なポイントだと思います。

仮にこれで成績が悪くなった場合は、おそらくその取引手法そのもの、仕掛けの時点で有効性がないと考えられます。

他にも、出来高の情報に着目する方法があります。

一般的に逆張りの投資戦略は、出来高が下がっている時に株を買い付ける方が利益につながったり、出来高が下がっている時に空売りした方が利益につながりやすいと考えているんですけれども、逆張り系で手仕舞いを決める時には出来高より減少している時に買う、出来高より減少している時に空売りする、こういった手法を用いると思います。出来高が下がっている時に仕掛けるのだから、出来高が増えた時に手仕舞いをしなければいけない。

こういった具合に手仕舞いのタイミングを決めていくというのが有効なのではないかなと考えています。

順張り系の場合は、出来高が増えている時に買う、出来高が増えている時に売る、こういった時に考えるべきことなんですけれども、出来高が増えている時が仕掛け時なんだから、減っている時が手仕舞い時なんだというふうに、仕掛けと対応させて、手仕舞いのタイミングを決めていく、こういったことが大事だと思います。

同じように、相場の動向に注目した場合、逆張り系の戦略の場合は相場と逆行した取引をすることがメインだと思いますので、下落相場で買う、上昇相場で売る、こういったことを行うと思うんですけれども、これも逆のことをすると有効だと思います。

下落相場で買うんだから上昇相場で売る、上昇相場で空売りするんだから下落相場で買い戻す。ということをするのが大事だと思っています。

順張り系の場合は上昇相場で買う、だから下落相場で売る。下落相場で売る、だから上昇相場で買う。というふうに、こちらも1対1で逆転させて、仕掛けと手仕舞いを対応させるというのが有効なのではないかなと思います。

もちろん、今回ここでご紹介したすべてがすべて有効ではないと思うんですけれども、有効でないということは仕掛けそのものが有効ではないと判断することができると思います。

この対応をさせた上で、成績が良好になる売買ルール、投資戦略を作ると、バックテスト上利益を出しやすい取引手法、有効な仕掛けと手仕舞いのペアを見つけることができると思います。手仕舞いの方法がわからないなと思っていた方は、今回のように仕掛けに対応させて手仕舞いのタイミングを考えることに意識を向けてみてはいかがでしょうか。

本講座のまとめ

まず1つ目、手仕舞いは自分の都合で決めてしまってはいけない、ということが非常に大事なポイントです。相場の概況だとか、株価の値動きだとか、計算の内容だとか、イベントだとか、そういったものに合わせて買い時、売り時を判断することが非常に有効だと思っています。

もう1つ目が、有効な手仕舞いの僕なりの決め方としては、仕掛けと逆のことをすることが手仕舞いの基本だと考えています。これを行って、成績のいい売買ルールは、仕掛けも手仕舞いも、ペアとして有効性が高いものだと考えられますので、こういったところに注目しながら買い時・売り時を考えてみていただければと思います。

ということで、今回の動画講座は以上です。