2018年2月期上半期 決算ハイライト

五石順一氏:本日はお忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。それではさっそくご説明をさせていただきます。

まず2018年2月期上半期の連結業績は、会社計画対比で売上高90.0パーセント、経常利益37.5パーセントと未達となっております。

未達の主要因は、今回、計画どおり経費は増額しているのですが、売上が計画どおり伸びていないことが原因になります。セグメント別に言いますと、MT事業及びクラウドソーシング事業の売上未達が大きいです。

自社開発は順調ながらも、翻訳業界のパラダイムシフトに対応するべく、戦略の方向転換を急ピッチに展開しております。

ここの部分がわかりにくいとは思うのですが、自社開発は順調に進んでおります。以前から来ていただいている方はご存知だと思うのですが、去年の春からニューラルネットワークを使った機械翻訳の開発を始めております。

その後、ニューラルネットワークのチームを採用して、組織して、現在は9名のニューラルネットワークの技術者がおります。

けっこうレベルが高くて、世でよく知られている海外のシステム系・IT系企業や国内のトップメーカーから、あとはアカデミックなところから採用されています。

この開発は順調にいっているのですが、翻訳業界のパラダイムシフトのところ。我々は去年の春から開発しているのですが、先に世界で最も大きなAI企業によるニューラル翻訳が、去年の秋から暮れにかけて出てきました。

それにより、このニューラルネットワークの翻訳精度がものすごく上がっている。その翻訳精度の飛躍的な伸びで、翻訳業界・産業のあり方自体が大きく急速に変わりつつあるということです。

2018年2月期上半期 連結損益計算書

具体的な数字でございます。売上高は前年比で116.8パーセントということで、16パーセント売上が伸びております。ただしこの売上の伸びには、去年M&Aをした株式会社エニドアの売上も入っていますので、既存のMT事業やGLOZE事業、翻訳・通訳事業などの伸びで見ると微増でしかなく、基本的にはほぼ横ばいというかたちです。

2018年2月期上半期 販管費 前年同期比較

売上高で見ると(前年比)116.8パーセントなのですけれども、販管費がものすごく増えており、前年比142パーセントでございます。こちらは計画比が100.4パーセントですので、計画どおりです。

つまり、今回の大幅な利益の未達は、売上が減ったからではなく、費用だけがどんと伸びたことによる減額。営業利益の前年比減額という感じです。

セグメント別売上高 前年同期比較

セグメント別売上高の前年同期比較でございます。MT事業は1億1,100万円から1億2,800万円。GLOZE事業は2億1,300万円から2億1,800万円。

緑色は去年M&Aをした株式会社エニドアのクラウドソーシング事業で、去年はありませんでしたので、先ほど言いました売上の増加分は、こちら(クラウドソーシング事業)の部分が大きいということです。それ以外の事業は、ほぼ横ばいという状態です。

2018年2月期上半期 セグメント別売上高

セグメント別の売上高でございます。(MT事業が前年比)116パーセント、(GLOZE事業が前年比)103パーセント、(翻訳・通訳事業が前年比)102パーセント、(企業研修事業が前年比)109パーセントとそれぞれ増えてはおりますが、一番大きいのはクラウドソーシング事業です。

セグメント別営業利益 前年同期比較

セグメント別の営業利益でございます。売上は全体的に微増ではあるものの、先ほど言いいました、販管費を増やしているために、全般的な利益で言うと、MT事業やGLOZE事業、翻訳・通訳事業、企業研修事業は下がっている状態です。

2018年2月上半期 セグメント別営業利益

企業研修事業は少し上がっていますけれども、全体に対する利益は小さいということです。大きいのは、クラウドソーシング事業が一番足を引っ張っているというところでございます。冒頭で言いました、パラダイムシフトのところで、一番直撃を受けているのはクラウドソーシング事業です。

MT事業・GLOZE事業 受注高推移

受注高推移もほぼ横ばいです。受注高というのは、売上に転化する前のリアルタイムの受注高ですが、MT事業は微増、GLOZE事業は下がって、合わせてほぼ横ばいという状態です。

市場の現状と見通し①

わかりにくい部分で、「パラダイムシフトって何なんだ?」というところですが、今、ほとんどの翻訳は人間によって行われております。

機械翻訳はほんの一部でしかなく、今後の将来に向けて、だいたい10年の期間で見ていましたが、徐々に機械が果たす役割の比率が大きくなって、最終的には逆転して、翻訳はほぼ機械がやって人間は少しだけやると。

この流れが今まではゆっくり進行していたのですが、今、NMT(Neural Machine Translation)が出てきて、今年一気に加速しました。本当に一気にです。産業革命のように10年20年もかけてではなく、この1年の間に一気に起こりつつあるという異常事態です。

市場の現状と見通し②

このニューラル翻訳というのは、いわゆる破壊的イノベーションです。既存の業態を破壊していく側面を持っていまして、イノベーションによる市場破壊があるということです。

どのような部分が破壊されるかというと、まず無料翻訳サイトに出してもかまわないような原稿。読んで概要を知りたいだけの原稿。産業翻訳レベルの精度が要求されない翻訳です。

産業翻訳レベルというのは、弊社でいうところの翻訳事業です。ニューラル翻訳をやっているところはダンピングどころの話ではなく無料ですので、(産業翻訳レベルの精度が要求されない翻訳が)バッサリと消えつつあるということです。そこで問題になってくるのは、今後、翻訳市場全体が消えていくのではないかという疑問です。

市場の現状と見通し③

「このままいったら人間はいらなくなるのではないか?」とか、「産業翻訳は大事だから機械なんかに任せられない。やっぱり人間が残るよ」など、いろいろな意見はあるのですが、実は答えが出ています。

なぜ出ているかというと、この水色のグラフは、ニューラル翻訳が出る前の統計的機械翻訳、業界内ではSMTと言いますけれども、そちらの翻訳の精度です。

黄色のグラフがニューラル翻訳で、これだけグンと伸びたということで世間が騒いでいるわけですが、実は欧米言語間では、もともとかなりの高水準だったんです。

それに対してアジア言語は、今回ニューラル翻訳によって伸びたんだけれども、実はもともとの欧米言語の水準に近づいただけなんです。

ということは、欧米言語、グローバルの翻訳市場がどうなったかを見れば、これから日本の翻訳市場がどうなるかが見えると。この10年間で、世界で起こったことが日本で起こるということです。

市場の現状と見通し④

こちらはグローバル翻訳市場の推移でございます。どうなったかというと、実は伸びているんです。だいたい年率数パーセントで伸び続けていると。自動翻訳がこれだけ実用化レベルまで到達しているのに、なぜ伸び続けたのかというと、実は伸びてはいるんだけれども、内容がガラッと変わっているんです。

どう変わったかというと、翻訳をするときに人間が1から翻訳するのではなく、まず先に自自動翻訳をかけて、その後でカスタマイズをしたり、人間が修正したりと手直しをする。

それによって一定のクオリティで、ものすごく安く、ものすごく早く、膨大な分量の翻訳が実現可能になっているということです。

市場の現状と見通し⑤

先ほど「イノベーションによる市場破壊」と言いましたけれども、その裏で新たに生まれた市場がこのようになっています。

欧米ではこの10年でどうなったかというと、かつての翻訳というのは(費用が)高い、時間がかかる、面倒くさいということで、すごく限られた特殊なときにやる贅沢品でした。

それがこの10年で、逆に翻訳をやるのが普通になり、ものすごく分量が増えました。企業にとっては、贅沢品から日用品になったということです。

ちなみに機械翻訳をかけたあとに、人間がおかしいところを修正する作業をする人は、実はポストエディターという職種になっています。「後編集家」とでも言うのでしょうか。

驚くべきことに、ポストエディターという職業として、ISOの国際規格になってしまっています。そのぐらい普及しているということです。Webサイト、EC、クラウドサービスの翻訳を中心に爆発的に需要が伸びたということです。