決算サマリー

藤中茂氏:本日はみなさまお忙しい中、また足元の悪い中、ご出席をいただき誠にありがとうございます。

それでは株式会社イワキの2017年度3月期決算説明会をはじめます。株式会社イワキ社長の藤中です。よろしくお願いします。

本日、お話する内容は3項目です。最初が2017年3月期の決算概要。2つ目が今後の戦略。そして3つ目が2018年3月期の業績見通しです。

まずは2017年3月期の決算概要です。左から2016年3月期の実績。真ん中が2017年3月期の実績。右側が昨年11月9日に発表した2017年3月期業績の予測値です。

2017年3月期連結の売上高は前期比1.3パーセント増の251億4,600万円でした。営業利益は為替の環境や売り上げた製品、あるいは市場の構成、ミックスの影響で前期比4.4パーセントの減で、14億6,500万円。営業利益率5.8パーセントの結果でした。

経常利益はアジア地域の関係会社の投資利益が膨らみ、前期比7.3パーセント増の21億3,600万円でした。

結果、親会社株主に帰属する当期純利益が16億9,000万円。1株当たり当期純利益が225円93銭でした。業績の分析に関しては、後ほど述べます。

なお、為替レートに関しては、想定レート1ドルが98円。1ユーロ108円のところ、期中平均では1ドルが108円81銭。1ユーロが120円30銭でした。

決算のポイント

業績の分析、決算の主なポイントです。売上に関しては、人工透析装置や血液分析装置に搭載されるポンプの売れ行きが堅調で、当社では医療機器市場と呼んでいる市場向けでは、前期比11.5パーセントの増でした。

また韓国・台湾などアジア地域では、半導体液晶パネル製造や電子部品を含む表面処理装置でのユーザーの設備投資が拡大し、地域別ではアジア地域が前期比17.2パーセント増です。

営業利益が前期比4.4パーセントの減少となっているのは、全般的に為替の影響があった他は、売上の製品ミックス。とくに半導体製造向けのアレルギーの幅が若干少ない空気駆動ポンプの増加や、年度後半の海外の関係会社への売上の増加が影響を受けたためです。

加えて、新製品投入時にありがちなクレーム関連処理費用の増加が、製品原価を押し上げた結果です。

経常利益は、アジア地域での関係会社の半導体液晶市場や電子部品を含む表面処理市場の好調による投資利益がふくらんだ結果です。

増減益分析

増益減益の分析です。左側2016年3月期の営業利益15億3,300万円からはじまり、売上の増減、原価率の変動などにより、プラスの1億8,500万円。

売上総利益に対する為替の影響が、マイナスの4億2,400万円。販管費に対する為替の影響がプラスの1億7,200万円。販管費や研究開発費の増加の影響がマイナスの200万円となり、最終的に2017年3月期の営業利益は4.4パーセント減の14億6,500万円でした。

品目別売上高

品目別の売上高です。品目ごとの売上高占有率は、例年ほぼ同水準で、主力のマグネットポンプと定量ポンプが幅広い市場で販売され、占有率がそれぞれ35パーセントと18パーセントで、この2品目で売上の半分以上を占めています。

品目別売上高、前年度比較は、マグネットポンプは汎用性の高いことから、数多くの市場で販売をされ、3.6パーセントの増加。

半導体製造装置内に組み込まれる空気駆動ポンプは市場の活況を反映し、12.2パーセントの増加です。反面、大きく減少したのが回転容積ポンプのマイナス6.5パーセントです。

今季、折り込み済みですが、主な要因は、家庭用燃料電池に組み込まれるポンプが大口顧客にて競合負けしたことがあげられます。

また、システム製品もマイナス7.8パーセントと落ち込んでいます。ただし、売上の物件数で言うと、2016年3月期の5,765件から2017年3月期は6,522件と件数そのものは13パーセント増加していることから、物件の小粒化の影響があったと考えています。

市場別売上高

市場別の売上高です。市場別の売上高占有率も、ここ数年大きな変動はなく、水処理、半導体・液晶、医療機器、この3つの市場で半分以上の約53パーセントを占めています。

その他の市場で4分の1超の27パーセントとありますが、その他の市場が大きいのが当社の特徴で、食品製造機器の市場や冷却機器の市場。あるいはレアメタルリサイクルの市場など、数多くの細かな市場を対象にしているというのが、ここに表れています。

市場別売上高の前年度比較で言いますと、半導体・液晶が4.6パーセントの増加。医療機器は人工透析装置や各種医療用検査装置に組み込まれるポンプの売上高が堅調で、11.5パーセントの増加でした。

化学市場では前期比9.2パーセントのマイナスとなっています。当社にとっての市場が難調で、かつ物件が小粒化したことが要因と考えています。

さらに大きく落ち込んだのが新エネルギー市場のマイナス32.6パーセント。これは先ほど申し上げた品目別の回転容積ポンプの落ち込みで、家庭用燃料電池向けの減少の結果です。

地域別売上高

地域別の売上高をまとめました。海外の売上高比率が36.6パーセントで、これも前期2016年3月期と大きな変動はありません。韓国・台湾などが含まれるアジア地域が、半導体・液晶市場の活況の影響を受け、前期比17.2パーセントの増加となっています。

こちらのスライドでは、それ以外は伸び悩みと記載はありますが、確かにアメリカおよびヨーロッパではマイナス成長になっていますが、これは主に為替の影響です。

現地通貨ベースでは、売上高、欧米ともに6パーセントから7パーセントのプラス成長で、アメリカにあるイワキアメリカ、ドイツにあるイワキヨーロッパともに、売上高の最高記録を更新した1年でした。

要約貸借対照表

要約の貸借対照表です。数字の羅列になってしまいますので、個別のコメントはしませんが、大きな変動はありませんでした。

キャッシュフロー計画書

キャッシュフロー関連です。営業活動によるキャッシュフローがプラス。投資活動および財務活動におけるキャッシュフローがマイナスで、最終的な現金および現金同等物の期末残高が、前期より6億8,500万円増加し、61億1,100万円でした。

設備投資額・研究開発費、減価償却費は前期と大きな変動もなく、ご覧のとおりの数字です。

10年ビジョンの概要

今後の戦略です。当社では2025年を最終年とするイワキグループの10年ビジョンと言うものを2015年に策定し、それ以降の各種方針、戦略計画の基礎となる考え方としています。

定量的には2025年3月期の連結売上高を国内200億円。海外200億円の合計400億円とし、売上高営業利益率を10パーセントにする計画です。

定性的にはオールイワキで世界ナンバーワンを提供すると書いてありますが、ナンバーワンを提供できる企業になろう。製品もそうですが、サービスも含め、ナンバーワンを提供できる企業になろうとしています。

2025年3月期までの9事業年度ありますが、これを3つに分け、2019年3月期までを種まきの時期。収益基盤を再構築する期間と定めています。

第一期 中期経営計画の主な基本方針

2019年3月期までの中期経営計画の主な基本方針です。ここでは4点あげてあります。

まず1番。強化市場への経営資源の優先投入です。当社では医療機器市場、新エネルギー市場、水処理市場の3つの市場。強化、注力すべき市場と定めています。

医療機器市場では、人工透析装置や生化学分析装置に搭載されるポンプ。あるいは、ニッチですが内視鏡洗浄装置に搭載されるポンプおよび、殺菌剤の濃度管理をする機器等。国内では安定的な成果をあげている製品の海外展開を強化します。

新エネルギー市場では大型蓄電設備で使用されるポンプシステムや車載をはじめ、各種リチウムイオンバッテリーの製造工程で、薬液の注入用途のポンプがあり、こちらで売上の拡大を図ります。

水処理市場では上下水・排水処理だけではなく、当社の得意としている薬液注入と水質や薬液の濃度を管理する機器を組み合わせ、医療用の水処理や、食品製造用の水処理など、市場をまたいだ数多くの水処理のニーズに対応しています。

2つ目は顧客対応力を強化し、ソリューションビジネスを展開。お客様の化学プラントや、化学製品の製造ラインで使用されるケミカルポンプという機械は定期的なメンテナンス、あるいはオーバーホールを必要とするものが数多くあります。

現在のメンテナンス関連の売上は、大きなものではありませんが、長期間安心して当社製品を使用していただくためにメンテナンスの品質を向上させ、お客さまの困ったことや相談事にお答えできるサービスの提供を拡大していきます。

3つ目に新規事業のビジネスモデル構築です。具体的な例で言いますと、小型魚類飼育水槽システムがあります。

水族館やいけす、あるいは個人用の観賞魚、熱帯魚用の水槽など、当社は以前より魚を買うための海水の循環や、水質管理。温度調節のための製品を数多く取り扱っており、魚を飼育する、言い換えると、魚を飼育するための水質を制御するノウハウを持っています。

近年、遺伝子の研究や排水の毒性の評価のために動物実験を行うわけですが、これまでマウスやラット等を使っていたところに変わり、ゼブラフィッシュなどに代表される小型の魚類を使用する例が増えてきています。

当社提供するハードウェアとしては、小型魚類飼育水槽システムですが、これに加えソフトウェアとして、健康な魚を数多く飼育するための環境を整えるノウハウの提供といった、コンサルタント的なビジネスの構築を目指します。

4つ目が海外展開の方針です。ポイントは、これまでの国ごとのマーケティングや物流ではなく、ヨーロッパ地域、アセアン地域、南北アメリカ地域といった国を跨いだもう少し広い地域での顧客対応能力を強化するということです。

昨年より、戦略地域での統括マーケティングマネージャーの選任に加え、営業面だけではなく、生産や物流などのロジスティック、いわゆる平坦面での強化効率化を進めています。

第一期 中期経営計画の主な具体的方針

2019年3期までの中期経営計画の主な活動をまとめました。国内ではここ数年継続しています競合のリプレイスや、メンテナンス部隊を活用したソリューションビジネスの提携に力を入れるとともに、市場要求への対応。主には製品の短納期化による受注の取りこぼしを防ぎます。

海外では各地域の特性で有力市場それぞれ異なりますが、先ほど申し上げた強化市場を柱に、売上の拡大を図ります。

カッコして新規事業とあるのは、アクアティック事業で、ハードウェアとしては先ほど申し上げました小型魚類飼育水槽システムですが、日本のイワキと、アメリカにあるイワキアメリカという会社とプロジェクトを組んでいます。

そして製品開発や営業活動で協業し、日米だけではなくヨーロッパなど他の地域でもグローバルに展開をする予定です。

大型投資は、ヨーロッパの子会社でのノックダウン生産設備の増強・更新。中国生産委託会社の拡大。短納期化のための物流の強化が計画されています。

中国での生産委託に関しては、後ほどもう一度ご説明します。

M&A関連、当社のビジネスの範囲内。周辺の領域におき、事業拡大に資するのであれば、業務提携や買収などもこれまで以上に、柔軟に検討を行う計画です。

今後の事業展開で成長の鍵になるポイントを3つほど説明します。

テクノエコー株式会社

1つ目はスライド16枚目の、昨年12月に株式を取得しましたテクノエコー株式会社についてです。

残留塩素計という、少し聞き慣れない計器ですが、テクノエコー社は水道水やプール、温浴施設などで、水やお湯の中に含まれます滅菌材の濃度をモニターするための計器の専門メーカーです。

専門的な技術力は高いものの、小規模な会社で、これまで自販力が若干弱かった面がありますが、今後は当社イワキの国内海外の販売ネットワークとサポート体制を通し、拡販を目指します。

また、テクノエコー社の薬液濃度モニターの技術と、イワキのポンプによる薬液の注入。技術的には非常に親和性の高い組み合わせで、当社の強化・注力市場の水処理市場において、シナジー効果を生むものと期待しています。

例をあげると、スライド真ん中の方に介護風呂とあるのは、たまにデジオネラ菌による感染症等がニュースになったりしますが、これを防ぐために、滅菌処置と薬液の濃度管理を行っていくのが、定量ポンプと残塩計です。

最近では東京オリンピック2020年を控え、ホテルの建設ラッシュで、ホテルの大浴場でも滅菌材の処理の仕事が増えています。

また、医療機器の分野でも滅菌処理というものは付きもので、内視鏡の洗浄、あるいは逆浸透膜の滅菌など、需要は広がるものと考えています。

中国戦略

今後の事業展開の鍵、2つ目が中国の戦略。主に調達と生産委託に関してです。

昨年、中国深センにイワキ貿易という部材調達とポンプの生産委託の窓口となる会社を設立し、活動が始まっています。

調達面ではコストが上昇傾向にあるとはいえ、まだまだ安価かつ良好な品質の部品部材の調達は可能で、これらの部材を日本に供給して、当社製品の製造原価を低減するのが大きな目的です。

生産委託面では、ポンプやコントローラーを最後まで組み立てられる委託先を活用し、市場として規模の大きい中国市場に供給する、いわゆる地産地消型で流通経路を簡略化し、納期短縮と中間コストの圧縮を図る計画です。

アクアティック事業

今後の事業展開の鍵、3つ目がアクアティック事業の展開です。

これまで何回か話出てきていますが、ハードウェアとしては、主に小型魚類飼育水槽システムを用いる事業で、日本のイワキとイワキアメリカがプロジェクトを組み、日米だけでなく他の地域でグローバルに展開をする計画です。

とくにアメリカでは、同じ事業を行っておりました大手の業者、競争相手が事業から手を引いたということもあり、プレーヤーの隙間ができているということで、昨年度はチャンスと考え、人材の先行投資も行っています。

2018年3月期 業績予想

今期2018年3月期の業績見通しです。売上高、前期比5.5パーセント増の265億1,700万円。営業利益では前期14.1パーセント増の16億7,200万円と予測をしています。

経常利益、前期スポット的に発生しました、投資有価証券の償還による為替差益がないことや、持分法による投資利益を若干保守的に見積もってることなどが要因で、前期比7.8パーセント減の19億6,900万円と予測をしています。

結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比14.2パーセント減の14億5,000万円。1株当たり当期純利益193円82銭が今期現時点での予測です。なお2018年3月期の想定為替レートは、1ドルが113円。1ユーロが120円としています。

2018年3月期予想 増減益分析

増益減益の分析です。左側2017年3月期の営業利益14億6,500万円からはじまり、売上の増減と原価率の変動などにより、プラスの7億1,100万円。

売上総利益に対する為替の影響がプラスの7,300万円。販管費に対する為替の影響がマイナスの3,500万円です。販管費や研究開発費の増加の影響がマイナスの5億4,200万と大きくなっています。

これはアクアティック事業のところで、人材の先行投資と簡単に申し上げましたが、アメリカにおき、アクアティック事業の分野のエキスパートを4名ほど雇用し、当初計画にはなかった人件費の、前倒し採用の影響が大きく出ています。

最終的に2018年3月期の営業利益は、14.1パーセント増の16億7,200万円が予想です。

前提

前提となる市場環境の想定です。左側が、当社の主力の市場で、国内と海外の市場環境を簡単にまとめてあります。

市場環境で、青い文字で記載しているのが、当社にとってのプラス材料。赤い文字が当社にとってのマイナス材料を示しています。

まず水処理市場は国内海外ともに堅調と想定しています。水処理市場の国内で温浴施設等の需要とあるのは、主に先ほど申し上げましたホテル等の大浴場での滅菌剤の注入と濃度管理を示しています。

2020年東京オリンピックを控え、ホテルの建設ラッシュが始まっており、先ほどお話をしましたテクノエコー社の残塩計とイワキのポンプの組み合わせで、これに対応します。

水処理、海外ではアジアを中心に排水処理設備の投資拡大とあるのは、中国はじめアジア各国が工業化と経済成長を果たしますと、次に環境保全に力を入れはじめるという、日本の1975年代以降と同じ流れです。

公害対策や排水処理では、ケミカルポンプの出番が数多くあり、追い風になると想定をしています。

医療機器市場の海外では、中国ローカルの生化学分析、免疫分析と装置メーカーが、技術力を向上させており、当社ではこれら中国のローカルの装置メーカーと装置の試作段階からお付き合いさせていただいていることもあり、プラス材料と判断をしています。

それから新エネルギーの海外におき、風力発電の欧州需要拡大とあるのは、日本ではあまり多くは見ませんが、ヨーロッパにおいては風力発電が非常に盛んです。

発電機内部の変圧器を冷却するという用途で当社のプロセスマグネットポンプが、数多く使用されているということで、プラス材料としています。

半導体・液体市場では、現在では堅調な市場を継続していますが、海外では下期以降、若干不透明な状況もあります。海外ではマイナス材料としています。

2018年3月期の業績予想で持分法による投資利益を保守的に見ている要因の1つです。

株主還元

株主還元、配当性向の基本方針です。株主様への還元とし、配当性向30パーセント程度は安定して出し続けるというのが基本方針で、現在のところ2018年3月期については、年間59円。配当性向30.4パーセントを計画しています。

私からの説明は以上です。簡単ですが、ご清聴ありがとうございました。

今後とも株式会社イワキに対し、ご支援ご理解のほど、よろしくお願いします。ありがとうございました。