2017年3月期 通期決算総会

宮本教子氏:こんにちは、みなさま。宮本でございます。さっそくですが、2017年3月期の日本郵船の通期決算についてご説明いたします。

2016年度を振り返ると、上半期は本当にパーフェクトストームに翻弄されました。しかしそんな中、当社は、例えば2Qでは約2,000億円の減損を計上したり、10月末に定期船事業の3社統合の発表などをして、打てる手は打ってきました。

下半期は市況がようやく大底から脱して、緩やかな回復を示してきていると思っています。ただ、みなさんがもしかしたら期待されていたようなV字回復というのは、2016年度は残念ながらいかなかったのですが、2017年度の黒字回復に向けての準備というのは整ったと思っています。

通期決算(サマリー)

では、4ページをご覧ください。2016年度、2017年3月期の実績です。売上高1兆9,238億円、前年比で15パーセントの減収となりました。営業損益は180億円の損失計上ということで、前年は489億円の営業利益でしたので、670億円の大幅な減益となっています。理由の一番大きなところは、市況の低迷です。

経常損益は通期でプラス10億円で、なんとかかろうじて黒字を確保することができました。一方、親会社株主に帰属する当期純利益に関しては、4Qでも特損計上しています。後で説明いたしますが、結果として合計2,657億円の損失計上という、大変遺憾な結果になりました。

この結果、期末配当は無配というお知らせをしていますが、今のところ引き続き無配の予定にさせていただいています。

売上高は前年比15パーセント減少と申し上げましたが、円高もありますが、やはり一番の要因は市況の悪化です。さらに市況悪化に伴って、不採算船等を処分しているので、運航規模が縮小していることもその一因です。

また、この表には出てきていませんが、今回数字見ていただきますと、営業損失180億円で、その後、経常利益10億円ということで、190億円持ち上がっています。営業外損益がネットで190億円の利益勝ち、ということです。

いつも代替投資や、営業外損益に関しては、利益が多くなるんですが、今期は3Qですでに開示している通り、不動産事業で一時収益が85億円ほど発生したのに加え、この4QでもNCA(貨物航空運送業者)がボーイングに発注していた機材を2機キャンセルしました。

期中にキャンセルしたその結果の為替益が40数億円発生しているので、これが営業外利益を 膨らませた要因となっています。結果、経常利益がなんとか黒字になった、というところです。

一方、特損ですが、本日、決算と同時に別途開示をしておりますが、独禁法関連費用の引当としまして、約174億円を特別損失に計上しています。これは新たに出てきた事案ではなくて、2012年9月に日米同時に調査が始まりました。それと同じ案件で、自動車船事業の競争法違反に関して、欧州委員会からその当時からずっと調査を受けてきました。そのものでございます。

関係する会計基準に照らし合わせまして、今回、この時点で引当を立てるのが適当であると私どもは判断し、今回の特損計上になりました。みなさまには独禁法関連では非常にご迷惑をおかけしていることをお詫びしますとともに、当社内では再発防止に向けて、従業員へのコンプライアンスの徹底と、しっかり事件を風化させないで再発を食い止めるという活動をしておりますことを、ご報告いたします。

さらに特損で3ページ目に少し書いてありますが、この4QでNCA関連で契約損失引当金というのを、70億円ほど特別損失に計上しています。

こういった3Q時点で予測をしていませんでした特損がありましたので、特損は前回予想に比べ、少し拡大をしています。その結果、当期純損失も拡大をすることになっています。

前年同期比(セグメント別)

続いて5ページ目、セグメントの数字を見ていきたいと思います。定期船事業について終わった期は、127億円の経常損失でした。その前の期が3億円の経常損失止まりでしたので、大幅な減益となっています。

やはりこれは1昨年の秋口から急速に低下した運賃、とくにスポット運賃が17年3月期の1Q、2Qまでずっと低迷していた結果、17年3月期の年間契約の運賃にも影響を与え、年間契約の運賃が相当下がってしまったことによる損失の部分が大きくなっています。

続けて航空運送事業は、今期は26億円の経常利益でした。上期は大変不調で赤字が続いていましたが、下期にかけて改善が示されています。ただ、4Qに関して言いますと、先ほど申し上げた為替益というのが入ってますので、これがなければ、実力ではまだ今期、終わった期は損失計上であった、というところです。

続いて物流です。物流は76億円の経常利益、16年3月期が118億円でしたので若干減益となっています。航空貨物・海上貨物、いずれも物量は伸ばしたのですが、それに収益が追いつかなかったということで、とくに航空貨物取扱事業が不振であった、と聞いています。

あと不定期専用船です。ここは16年3月期が465億円の利益計上であったのに対し、終わった期は41億円の損失ということになってしまいました。

ここはドライバルカーとリキッドと自動車と、3つ合わせ入っているわけですが、ドライはまず、やはりパーフェクトストームと言われるような、史上最低水準の市況が2Qまでは少なくとも続いたこと。

あと、リキッドに関しまして、その前年はVLCCの市況は大変好調でしたが、この17年3月期はVLも若干荷況が落ちました。さらに、石油製品船、LPG船などが、市況低迷した結果、非常に悪かったということです。

さらに3点目として、自動車船事業において、資源国向けの輸送台数の不調で、3つ合わせて大幅減益ということになっています。

ドライ市況は、足元の3Q以降は回復基調にありますので、18年3月期はもう少し期待はできると思っています。

不動産事業は、 終わった期124億円ということで、先ほど申し上げた3Qでの一時収益があるので、大幅増益ですが、それを外すと例年並というところです。

2018年3月期通期業績予想

では続きまして、7ページです。2018年3月期の通期業績予想についてご説明をします。2017年度で、キャッチフレーズのようなものを社長と一緒に考えてまいったんですが、天気予報で言いますと、曇りのち晴れの、曇りの部分が2017年度かなと。

つまり、晴れというのが本格回復だとすると、それの一歩手前。2017年度はまだまだ過渡期にいるという位置づけです。

市況は、全般的に、緩やかに回復に向かっておりますが、その水準として、まだサステイナブルではなく、再投資ができるような水準には至っていないというところです。

通期業績予想(サマリー)

8ページで数字をご確認ください。売上高は、18年3月期の予想で通期2兆80億円。対前年比4パーセントの増収を見込んでいます。営業損益は、245億円ということで営業利益の計上を予定しており、大幅増益となっています。

また、経常損益に関しまして、230億円でこちらも利益確保。親会社株主に帰属する当基純利益に関しまして、辛うじて50億円の黒字確保の予定です。為替前提は108円。バンカー前提は340ドルです。

売上高が2兆に戻りますが、定期船事業が本体にある最後の年ですので、2兆円企業と言われるのも、今年まで。来年2018年度以降は、コンテナ船が外出しされますので、収入が減ってしまう年になります。

一方、この新しい期は営業損益から経常損益にかけて、15億円減っています。通年とは違いまして今期は、営業外でネットで損失を計上しています。

その中身といたしまして、支払利息の増加など、金融収支の悪化というのもありますが、定期船事業の統合費用を一部織り込んでいるためです。また、特利損は現時点では、特に昨年やったような大きなものは予定していません。

当期純利益50億円を通期で想定しておりますが、まだまだ市況がどうなるか不透明であること、また、急な市況の変動にも耐えれるような内部留保はやはり必要だという観点があるので、配当につきましても、中間は無配を予定しております。期末については、未定とさせていただきます。

通期業績予想(セグメント別)

9ページです。またセグメント別の数字を少しご覧ください。定期船は、終わった期が127億円の計上損失であったのに対し、今期は、なんとかプラマイゼロですが、黒字を確保できればと思っています。

増益要因といたしまして、年間契約の運賃が、昨年よりは高く決めることができたこと。あと、アライアンスによってスペースが増える分、積高が増えることです。

また、3社のコンテナ船の統合事業についても、準備が着々と進んでおり、今年7月1日の新会社設立、来年4月1日のサービス開始に向けて、着々と準備が整っています。そして先ほど申し上げた通り、営業外費用として、統合費用を織り込んでいます。

セグメント別状況(一般貨物輸送事業)

前提につきまして、11ページを少しご覧いただきたいんですが、上の箱が積高、下の箱が運賃になってます。まず上の箱の積高の方を見ていただきたいのですが、通期積高84万TEUで、対前年比9パーセント増です。パナマ運河の拡張で、投入船舶の大型化などが進みまして、スペースが一割強増えた結果、積高も増やしました。

また、昨年の夏に破綻した、韓国の韓進(ハンジン)海運の荷物の取り込みなどもできています。欧州コールは、49万8,000TEUということで、若干減らしていますが、これは、G6という我々が入っているアライアンスで、運賃がやはり低調なので、サービスそのものを通年で停船していた部分などがありました結果、詰めるスペースが減って積高も減ったというところで、集積率はほぼ満船に近い状態で、貨物は推移しています。

18年3月期の予想につきましては、いずれも北米・欧州いずれも、大幅アップになっています。これは新しいアライアンス「ザ・アライアンス」というのが、今年の4月から運行を開始しておりますが、こちらでサービスの組み換えや、大型船の投入などがあり、スペース、各所に割り振られているアロケーションが大幅に増加しています。

それに伴い、積高も増加をさせるという予想にしています。運賃下げればいくらでも荷物取れるのですが、当社の場合は、イールドマネジメントをやっておりますので、荷物を増やすにしても、必ず利益が出る水準で増やしていくということは、守っていきたいと考えています。

下の箱、運賃をご覧ください。2017年3月期の実績は、通期で北米が71、欧州が46でした。欧州は、ほぼ期初から期末までにかけて、少しずつ改善していっている図です。

北米の方は、1Qまでは比較的良かったのですが、2Qで落ちてます。これは、2Qから2016年度の終わった期の年間契約の荷物が出てきているんですが、去年の年間契約は、非常にマーケットが悪かった時のスポット運賃に引きずられて、かなり下がってしまった。結果、平均運賃も当社の場合、かなり下がって、それがほぼ3月いっぱい繋がっているというところです。

ただ18年3月期はおかげさまで、その年間契約の運賃が、交渉がうまくいきまして、値上げが獲得できるので、北米は3ポイント、欧州は7ポイントアップで予定をしています。

通期業績予想(セグメント別)

戻っていただいて、9ページです。航空運送。航空運送の今期の予想は、10億円ということで、昨年の26億円に比べますと、若干減益となっていますが、昨年の特殊要因である為替益を除きますと、去年は赤字だったので、実力ベースで増益で、なんとか黒字にするという図です。

セグメント別状況(一般貨物輸送事業)

これについては、12ページをご覧ください。真ん中辺りの輸送量、こちらを9パーセントアップさせます。また、イールド指数についても、去年が75に対して今期80ということで、7パーセントほどアップさせます。やはり、貨物専用機の特性を活かした、賃率の高い貨物を集荷に努めまして、なんとか積高と運賃、双方のアップを図って、収益の改善を目指していきます。

通期業績予想(セグメント別)

また戻ります、9ページです。物流事業は今期85億円の経常利益ということで堅調に推移して若干の増益となっています。次の不定期専用船、終わった期は41億円の赤字でしたが今期は125億円の黒字になる予定です。

ドライバルク市況は終わった期の3Q以降、回復傾向がまだ続いておりますが、目覚ましく回復というほどではない、ということで先ほども申し上げた通りまだまだ再投資可能な水準ではない。

ただ世界経済は順調に成長しているとみており、また足元、中国がとりわけ良い数字が出ているので、今年秋口ぐらいまでは荷況、市況ともに回復基調で進んでいくのではないかと考えています。

セグメント別状況(不定期専用船事業)

こちらの市況の前提に関しましては14ページご覧いただけますでしょうか、例えばCape(ケープ)サイズですと上期15,500ドルで見ています。足元から比べると少し高い感じですが通期でも14,750ドルぐらいということで昨年よりははるかにまし、ただしこれでもまだブレイクイーブンには若干届かない、という水準です。

一番下のVLCC、タンカー、こちらはほぼ通期ですと昨年並みの水準で推移すると思っています。次に15ページご覧ください。

セグメント別状況(不定期船用船事業)

自動車船の積み台数の想定になっています。17年3月期の実績は336万台ということで、対前年度で9パーセント落ちました。これは2016年の1月ぐらいから資源国向けの輸送が急速に減ってまいりましてその結果通期で10パーセントほど荷量が減ったということです。

18年3月期はあまり輸送需要が戻らないと考えているので昨年並みの340万台を想定しています。こちらでは荷量が減ったことによる余剰船の閉船ですとか航路再編、航路廃線の工夫で収益力のさらなるアップを図ることと、自動車物流事業が当社の強みですので、ここをさらに新しい拠点を拡大させて利益も積み増していくという戦略です。

4.財務戦略

最後に16ページで財務戦略をご説明します。17年3月期末は有利子負債9,453億円でほぼ1年前の16年3月期末程度に抑えることができました。ただ終わった期は期中に現存しておりますので自己資本が既存して5,334億円と減っています。

また市況低迷で営業利益が減りましたのでフリーキャッシュフローは遺憾ながらネガティブな数字になりました。18年3月期の予想ですが有利子負債は1兆円程にとどめたいと思っています。

また18年3月期もLNG改良事業を中心に安定的に長期的に利益が見込める分野の投資が続きます。さらに3社、定期船の統合会社などの出資金などのキャッシュアウトも今期出てまいりますので引き続き今期も投資キャッシュフローはキャッシュアウトが多い年となっています。

今年度においてフリーキャッシュフローは厳しい状況ですが、来期からは今まで投資をしてきたキャメロンの例えば液化プラントプロジェクトを稼働するであるとかLNG船の竣工来期以降続々と出てくるのでキャッシュインも増えてきます。

今期までが非常に厳しいのですが来期以降は楽になってくると考えています。最後に運航規模ですが、一番下の列をご覧いただきますと1年間で20隻減らしています。

3月末のスナップショットなので凸凹がありますが、やはりケープサイズ、パナマックス後期は自動車船が大きく減らしています。

最後に今期の経営課題として二つ程あり、1つはビックイベント3J、定期船の3社の統合を遅滞なくスムーズに進めていくことが非常に大事だと考えています。

さらに当社は今後一年をかけて新しい中計を練っていきます。そして来年の3月ぐらいに新しい中計を発表できればいいと考えているので、他の二社さんは本日発表されていると思いますが当社は一年お待ちいただくことになると思います。

以上で説明を終わります。ありがとうございました。