アメリカン・エキスプレスの大きな特色

広瀬隆雄氏(以下、広瀬):これから個別銘柄の話をします。まず最初の銘柄ですけれども、アメリカン・エキスプレス。

これは世界最大のカード発行会社です。1.1億枚。決済額でいうと1兆ドル。ということで、非常に大きな会社ですよね。

「ほかの銀行と銀行のクレジットカードとどこが違うんだ?」ということなんですけれども、自社で決済ネットワークを持っているという点、これがユニークだと思います。

その意味では、VISA、ティッカーシンボル「V」、それからマスターカード、ティッカーシンボル「MA」、そういったところと似ていますよね。ただ、アメリカン・エキスプレスは、そういう決済ネットワークだけを持っているんじゃなくて、クレジットカードで与信、つまり消費者に対してお金を貸すこともやっていると。

だから、銀行の持ってる機能と、それからカード会社の決済ネットワークの機能と、それの中間、両方を折衷型で持ち合わせているのが、アメリカン・エキスプレスだということですよね。

世界を飛び回るエグゼクティブが顧客

アメリカン・エキスプレスカードのほかのクレジットカードとの大きな違いは、出張費の精算ですよね。それが占める割合が40パーセントということで、非常に大きいです。

これはなにを意味するかというと、忙しく世界を飛び回るエグゼクティブ、それの会社での出張費用の精算、それがアメックスカードのお得意の顧客だということなんですよね。

だから、典型的なMasterCardのトランザクションボリューム、つまり、決済金額というかカード使用額。それの4倍もカードを切ってるわけです。アメリカン・エキスプレスのユーザーというのはね。

消費者のビジネスもあるんだけれども、それは比較的小さいということですよね。だから、2017年に金利が上昇していくと、銀行というのは短期市場からお金を引っ張ってきて、それを長期で貸し付けて、その2つの利ざやで儲けるというビジネスモデルなわけですけれども。

そうすると、クレジットカードによる与信、それもそういったスプレッドの拡大の恩恵を受けて業績がよくなるわけだけれども、その部分がこの31パーセントの部分ですよね。

だけども、出張費用の精算というのはすぐにやるので、これはいわゆるチャージカード、つまり、旅行を便利にするためのカードであって、借金するためのカードじゃないわけでしょ。

だから、僕がなぜアメックスが2017年に業績がよくなると考えているかというと、それは、出張回数が多くなってトランザクションのフィーが多くなるから、それでよくなると考えているということです。だから、銀行のスプレッドビジネスとはちょっと違うということが言いたいわけです。

じゃあ、そのクレジットカードのスプレッドビジネスのほうはアメリカン・エキスプレスどうだったんだよということなんですけれども、実は2015年・2016年と大きく落ち込みました。

これはどうしてかというと、コストコ(Costco)というメンバーシップクラブがあるんだけれども、そのコストコカード、昔はアメックスがやってたんですよね。だけれど、意見の食い違いでキャンセルされちゃった。

そのコストコカードを失ったのが原因で、クレジットのビジネスは、2015年、−18パーセントだったということですよね。これは来年にかけて、もうほぼ悪影響はなくなると思います。

これがアメリカン・エキスプレスの1株あたりの業績ですけれども。

このグラフ見て、僕がまずわっと目に飛び込んでくるのは、ここですよね、CFPS。これはなにを意味するかというと「Cash Flow Per Share」。つまり、1株あたり営業キャッシュフローですよね。

その数字が10.94ということで、非常に大きい。つまり、American Expressのビジネスというのは非常に儲かるビジネスなんだということが、このグラフからわかるんじゃないかなと思います。

それと、さっきコストコカードを失った云々という話をしましたけれども、だから、売上成長的にはけっこう苦しかったんですよね。

「じゃあなんで一応数字的にはピシッと数字作ってきてんだよ?」ということなんですけれども、それは自社株買戻しですよね。だいたい発行済株式数の7パーセントぐらいを買戻ししています。

だから、それがこのグラフをきちんと作ってきた理由ですよね。

なぜ今、ウランに注目するのか

次の銘柄。カメコ(Cameco)、ティッカーシンボル「CCJ」。

これカナダの会社です。でも、トロント証券市場とNew York Stock Exchange(NYSC)と、両方に上場されています。だから、みなさんがトレードするときには、普通のアメリカ株と同じようにニューヨークで買ってぜんぜん問題ないです。ティッカーシンボル「CCJ」だよね。

世界最大のウランの企業です。生産高2,840万ポンド。マッカーサー・リバー(McArthur River)と呼ばれる非常に有名なウラン鉱山を持っています。

なぜ今、ウランに注目するんだということなんですけれども。東日本大震災のあとで福島の原発の事故があって、それで「原子力発電所大丈夫かな?」ということに対する不安というのが出ましたよね。

その関係で日本では今、54基ある原子炉のうちの3基か4基だけしか動いてなくて、ほか全部止まってるわけですけれども。

それで、世界的に原子力発電に対する見直しがあるんじゃないかということが言われたわけですよね。だけれど、もうあれからかれこれ5年ぐらい経って、それであの事故の評価というものが世界的にだいたい確定してきたと思うんですよね。

世界の原子炉の数は減っていない

端的に言えば、あれはたまたま津波に見舞われたと。日本が島国だったという特殊事情が重なってああいう事故になったんだと。だから、「世界のほかのところでは、原発やってても大丈夫なんじゃないか?」ということが結論になったわけですよね。なので、世界の原子炉の数自体は減っていません。それが1つ言いたいこと。

それから、「将来はどうなんだ?」ということなんですけれども、2025年にかけて、つまり、向こう10年間で現在450の原子炉は約500基、もっと正確に言うと、497基になると見込まれています。

原子力発電所というのは、計画を立ててから、設計・施工・完成・火入れ・稼働、そういったプロセスを経るまでに、10年とか15年とか、そういう長い助走期間が必要なんですよ。

だから、将来の原子炉の数がどうなるかということは、もう今からだいたいわかります。リードタイムが長いビジネスなんでね。

今現在、すでにこれだけの原子炉が建設されています。

要するに、アジアですよね。中国とかそれからインドとかね。そういうアジアでの電力のニーズ、それが今後も増えるということですよね。

ウランの消費量とそれから供給なんですけれども。これ歴史的にはだいたいほぼぴったり一致して伸びてきたんですけれども、ここへ来て、消費量とそれから供給の見通しがものすごく乖離し始めているんですよね。これが僕がカメコに注目する究極的な理由はここなんですけれども。

消費のほうは、さっき言ったように、もう原子炉建設計画が動き始めているので、消費量は当然増えるわけですよ。だけれども、供給のほうは、今、日本の原子炉がたくさん休止してる。それで瞬間風速的にウランが余っている。その余ったウランがスポット市場に出回って、スポット価格を押し下げているんですよね。

スポット価格がすごく下がっているので、ウランの生産会社は新しいウラン鉱山を開くことができないということで、供給のほうが細ってくるのは、今、稼働しているウラン鉱山、それを食いつぶす以外ないので、それで供給のグラフが下がってるわけですよ。

ウラン価格はどのように推移していったのか

じゃあ、そのウラン価格っていったいどういうふうに推移してんだということなんですけれども。

まず言いたいのは、ウランというものは、需要家、つまり原子力発電所ですよね、そのニーズにピッタリ合わせて、要求された燃料をおあつらえ向きで、つまりテーラーメイドの背広みたいに、「あそこの原子炉向けの燃料はこれ」といったかたちで、きちんとしたスペックでもって納品しなきゃいけないんですよ。

だから、契約の大部分は、つまり80パーセントぐらいは、長期の、つまり10年契約とか20年の提供契約、そういったような長期契約でボリュームと価格を決めてしまう。そういうやり方で約定します。

だから、カメコの販売価格というのは長期価格なんだけれども、それはどういうふうに推移してるかというと、こんな感じですごく安定的に推移してるのがご覧いただけると思いますけども。

その一方で、スポット価格はどうなってるかというと、今、ぐわーっと下がってきてるわけね。事故があったあとで下がって。それで、ちょっと持ち直しかかったけれども、また下がった。

ということで、スポット価格は今すごく崩れてるわけですよ。ものすごく崩れいている。だけれど、全部の取引に占めるスポット比率というのは、通常では10パーセントぐらいです。現在はスポット比率は20パーセントぐらいになっています。

それはどうしてかというと、スポットのほうがめちゃくちゃ安いんで。そうすると、新規の長期契約を結ぶのをなるべく先送りにして、今、スポットで安い値段で仕入れて、それでそれを使えば、その価格差がポケットに入れることができるわけですよね。原子力発電をしてる会社は。だから、スポットの比率がちょっと増えているということです。

でも、将来的には、今後、スポット供給が少なくなってくると思うので、そうすると、スポット価格はこういうふうに上がっていくと思うんですよ。

グラフに出てませんけれども、2007年はスポット価格はいくらだったんだというと、140ドル、135ドルとか、そのくらいだったんです。

そのときに、カメコの販売価格はいくらだったかというと、49ドルぐらいだったんですよ。

つまり、カメコの販売価格というのは、スポットがめちゃ安だろうがめちゃ高だろうが、ずっと横ばいで一定だということが言いたいわけです。それは今後も変わらないと思います。

今、CCJの株価を見ていただくと、すごく突っ込んでるんですね。なぜすごく突っ込んでるかというと、「あ、今、スポット価格がこんなに下がっているので、そうすると、カメコの販売価格も実勢に合わせて下にさや寄せする以外にないよね」というふうに、よく勉強していない投資家はそういうふうに勘違いするわけだよね。

ところが実際は、ほとんどの納品、9割ぐらいの納品がこの値段でなされていて、この値段で納品されているのは1割ぐらいしかないわけですよ。

だから、「tail wagging the dog」という表現が英語にありますけれどもね。犬が尻尾を激しく振ってると、みんなその尻尾の動きのほうに目を取られちゃって、それが本ちゃんだと勘違いするんだけれども、それはそうではないということが言いたいわけですよね。

これがカメコの業績です。これはカナダの会社なので、カナダドルで書いてありますけれども、米ドルに直す場合には、これに0.76かけてください。