2016年8月期通期 連結業績
岡﨑健氏(以下、岡﨑):CFOの岡﨑でございます。私から2016年8月期の業績および2017年8月期の業績見通しについてご説明をいたします。
2016年8月期の連結業績は、売上収益が1兆7,864億円。前期比6.2パーセント増。減損損失や為替差損などを除いた事業そのものの収益を示す事業利益が1,620億円。同8.3パーセント減。
営業利益が1,272億円。同22.6パーセント減。親会社の所有者に帰属する当期利益が480億円。同56.3パーセント減と、増収減益の結果となりました。
7月14日に発表いたしました業績予想に対して、事業利益・営業利益など、利益目標については達成することができました。
下期6ヶ月間の業績は、売上収益が前年同期比5.8パーセント増、事業利益が同66.7パーセント増、営業利益が同94.3パーセント増と大幅な増益に転じることができました。
売上収益
まず売上収益ですが、1兆7,864億円と前期比6.2パーセント増、1,046億円の増収となりました。
その内訳としては、海外ユニクロ事業が517億円の増収。グローバルブランド事業が332億円の増収、国内ユニクロ事業が196億円の増収となっております。海外ユニクロ事業の売上構成比は36.7パーセントと前期比で0.8ポイント拡大をいたしました。
営業利益
売上総利益は8,649億円と前期比1.9パーセントの増益となっております。売上総利益率は48.4パーセントと同2.1ポイント低下をしております。
販管費は7,029億円と4.6パーセント増。売上販管費比率は39.3パーセントと0.6ポイント低下をいたしております。上期の販管費比率は1.2ポイント上昇したものの、下期は経費削減の効果によって同2.9ポイント減と、大幅に改善をいたしました。
売上収益から売上原価・販管費を除いた事業利益は1,620億円と8.3パーセントの減益となりました。
その他収益・費用の合計は347億円のマイナスでした。これは期首の為替レート1ドル約121円に比べ、期末の為替レートが1ドル約103円と円高になったため、海外子会社の仕入れに関わる一時立替金などで為替差損が110億円発生したこと、J Brandの減損損失が138億円、米国店舗の減損損失が57億円、などが発生したことによります。
これらの結果、営業利益は1,272億円、同22.6パーセントの減益となっております。
金融損益と減益要因
次に金融損益ですが、期首に比べ為替が円高になったことから、外貨建て資産などの換算額が減少し、金融損益はネットで370億円のマイナスとなっております。
この結果、税引前利益は902億円と50.1パーセント減。親会社の所有者に帰属する当期利益は480億円。同56.3パーセント減となりました。
2016年8月期の税引前利益は、前期比904億円の大幅減益となりました。その要因分析としては、為替差益が差損に転じ合計で689億円減少したこと、減損損失が同62億円増加したこと、事業利益が同146億円減少したことによります。
セグメント別実績
セグメント別の業績は8ページのスライドのとおりです。2016年8月期は全セグメントで増収となったものの、営業利益は減益の結果となりました。
国内ユニクロ事業および海外ユニクロ事業は、上期では減益でしたが、下期には増益に転じております。
グローバルブランド事業は、上期では増益でしたが、下期にはJ Brandの減損損失138億円などを計上したことから減益となりました。
国内ユニクロ事業
スライド9ページからは国内ユニクロ事業についてご説明をいたします。通期の売上収益は7,998億円。前期比で2.5パーセント増。営業利益は1.024億円。同12.6パーセント減となりました。
上期の減益幅が大きかったため通期は減益となりましたが、下期では粗利益率・経費比率が改善し、営業利益は前年同期比38.0パーセントの増益と、収益を大きく改善することができました。また下期は7月に発表した計画を上回る増益を達成しております。
国内ユニクロ事業の売上収益は、前期比2.5パーセント増収となりました。これは主に既存店売上高が前期比0.9パーセント増となったこと、Eコマースの売上が421億円。同30.1パーセント増と好調に伸びたことによります。Eコマースの売上構成比は5.3パーセントとなりました。
上期は、暖冬の影響に加え、商品の新しさやニュース性をお客さまへ伝えきれなかったことから、冬物商品の販売に苦戦し、既存店売上高は前年同期比で1.9パーセントの減収となりました。
下期は、ジョガーパンツ、スカンツ、プリーツスカートなどのボトムズや、ウィメンズのブラウスなど、トレンドを取り入れた新商品に加え、エアリズム素材やドライ素材を使ったスポーツキャンペーン商品の売上が好調で、販売に大きく寄与しました。その結果、下期の既存店売上高は4.9パーセントと増収に転じました。
既存店売上高の内訳は、客数で4.6パーセントの減少、客単価で5.8パーセントの増加となりました。下期では客数は同2.6パーセントの減少。上期に比べ減少幅は縮小しており、回復傾向にあります。客単価の上昇は値引率の減少、比較的単価の高いボトムスの販売が好調だったことによります。
なお、デジタルフラッグシップストアについてですが、この秋はEコマース特別商品、特別サイズの拡大など、商品面の拡充から徐々にスタートをしております。また今後アプリの改善やさまざまなサービスを順次開始していく予定です。
翌日配送など配送面のサービス刷新についても、お客さまにご迷惑をおかけすることのないように万全の準備を進めている段階であり、これらを合わせて2017年春頃にはよりいっそうサービスレベルを充実させたデジタルフラッグシップストアを、本格的にお客さまに体感していただけるようになると考えております。
次に売上総利益率ですが、通期で47.7パーセントと前期比1.4ポイント低下をいたしました。
上期の粗利益率は46.0パーセント、前年同期比3.5ポイントの低下となった一方で、下期の粗利益率は50.0パーセント、同1.4ポイントの改善と、計画を上回る水準となりました。
下期の粗利益率の改善は、この春夏シーズンより展開している「毎日お買い求めやすい価格」戦略の定着によって、第3四半期に引き続き、第4四半期においても限定値引率が改善したこと、在庫処分による値引もコントロールすることができたためです。
次に通期の売上販管費比率ですが、売上販管費比率は34.8パーセントと前期比0.5ポイント上昇いたしました。
これは、物流費比率が0.8ポイント上昇したことにより物流費を含むその他の経費比率が0.5ポイント上昇したこと、また人件費比率が上期に地域正社員が増加した影響によって0.2ポイント上昇したことによります。
ただし上期に経費が膨張した反省を踏まえ、下期以降は全社をあげてローコスト経営に徹し、下期では計画を上回るペースで経費を削減でき、下期の経費比率は同1.9ポイント改善することができております。具体的には、広告宣伝費比率が0.9ポイント減少、人件費比率も0.6ポイント減少しております。
下期のその他経費比率は前年並みとなりました。これは、その他の経費に含まれる物流費比率が有明倉庫の賃料および物流改革に伴う一時的な費用の増加によって1.0ポイント上昇した一方で、委託費などの本部や消耗品費・水道光熱費などを大きく削減したことによります。
海外ユニクロ事業
ここからは海外ユニクロ事業についてご説明をいたします。
通期の売上収益は6,554億円。前期比8.6パーセント増。営業利益は374億円。同13.7パーセント減と、増収減益となりました。ただし下期の業績は回復、計画を若干上回り、前年同期比で大幅な増益に転じております。
下期の増益幅が大きかったエリアは、グレーターチャイナ、東南アジア・オセアニア地区、およびヨーロッパです。グレーターチャイナは通期で減益となりましたが、下期は計画を上回る大幅な増益に転じております。
米国は下期には事業利益が大幅に改善したものの、店舗の減損損失、除却損・閉店損を計上したことで、営業損失は前年同期比で拡大をいたしました。
なお通期の売上収益の伸び率は8.6パーセント増に留まっておりますが、これは円高による押し下げ要因が約7パーセントあったことによります。
海外ユニクロ事業の8月末の店舗数は958店舗に達し、前期末比で160店舗の純増となりました。
次に各エリアの業績トレンドについてご説明をいたします。
グレーターチャイナの通期の売上収益は3,328億円。前期比9.3パーセント増。営業利益は365億円。5.5パーセント減と、増収減益となりました。上期は暖冬の影響で減益となりましたが、下期は計画を上回る大幅な増益を達成いたしました。
中国の景気のスローダウンにつきましては、グレーターチャイナの商売に一定の影響を与えたものの、中国大陸におきましては中産階級の人口増が続いていることやユニクロブランドの人気の定着により、景気の影響は限定的でした。
中国大陸では第2四半期から既存店売上高が前年同期比で増収に転じ、経費削減の効果もあって、下期は計画を上回る大幅な増益となっております。
香港と台湾の営業利益につきましては、第3四半期まで減益が続きましたが、経費削減の効果もあり、第4四半期からは若干の増益に転じております。
なおグレーターチャイナの店舗数は、100店舗を出店、7店舗を閉店したことから、8月末で560店舗に達しております。
次に韓国ですが、通期では減収減益の結果となりました。景気のスローダウンの影響と競争激化によって、計画を下回る業績が続いております。下期から経費削減を進めたことによって、第4四半期では若干の増益に転じました。韓国における8月末の店舗数は173店舗となっております。
東南アジア・オセアニアにおける通期の業績は、ほぼ計画どおり増収増益となりました。下期は、各エリアで売上が好調だったことに加え、経費削減を実施したことから大幅な増益となっております。
東南アジアにおきましては、各国で地元でのユニクロブランドの浸透が進み、通期でも大幅な増益を達成しております。
オーストラリアでは6店舗を出店し、期末の店舗数は12店舗と、急速に店舗網を拡大したことから、前年並みの若干の赤字を計上しております。
なお2016年9月には東南アジア初となるグローバル旗艦店「オーチャードセントラル店」をシンガポールに出店し、ユニクロの知名度アップに貢献しております。東南アジア・オセアニア地区の8月末の店舗数は144店舗となっております。
米国の通期の事業利益は前期比で改善いたしましたが、店舗減損損失57億円、および5店舗の閉店に伴う除却損・閉店損17億円、この2つの合計74億円を計上したことによって、営業損失は前期比で拡大をいたしました。
上期は暖冬の影響による売上不振や在庫処分を進めたことで粗利益率が悪化、事業利益ベースの赤字幅は拡大いたしましたが、下期は粗利益率・販管費比率が改善したことによて事業利益は計画どおり前年同期比で大幅な改善となっております。
米国の8月末の店舗数は45店舗となっております。
ヨーロッパはほぼ計画どおりの増収増益となりました。とくにロシア・英国・フランスの増益が寄与しております。
今期は2015年10月にベルギーに初出店、2016年3月に英国のグローバル旗艦店をリニューアルオープンし、欧州全域で着実にユニクロのプレゼンスを高めております。
ヨーロッパにおける8月末の店舗数は36店舗となっております。
グローバルブランド事業
セグメント別、最後でございますが、グローバルブランド事業についてです。グローバルブランド事業の売上収益は3,285億円。前期比11.3パーセント増。営業利益は95億円。34.0パーセント減と、増収減益となりました。
J Brand事業の減損損失などを計上したことで、営業利益は減益となりましたが、事業利益では増益となっております。なお事業利益は計画に対して若干下回る結果となりました。
ジーユー事業の売上は1,878億円。前期比32.7パーセント増。営業利益は222億円。34.8パーセント増と、計画どおり大幅な増収増益を達成することができました。
ニット、ロングT、スカンツ、ワイドパンツといったウィメンズのトレンド商品の販売が好調だったことにより、上期に引き続き下期も既存店売上高は2桁増収となりました。
8月末の店舗数は、国内で340店舗、海外では上海および台湾で10店舗まで拡大をしております。
セオリー事業は、売上は前年並み、営業利益はほぼ計画どおりの増益となりました。
コントワー・デ・コトニエ事業は、営業利益は計画を若干下回る減益、赤字となっております。プリンセスタム・タム事業は計画を若干下回り、赤字が継続しております。J Brand事業は赤字が継続し、減損損失138億円を計上いたしました。
B/S(貸借対照表)
ここからはバランスシートについてご説明をいたします。
2016年8月期末のバランスシートのご説明でありますが、資産合計は1兆2,381億円と、前期末比744億円増加いたしました。これは流動資産が501億円増加したこと、および非流動資産が242億円増加したためです。
負債は、社債を発行したこと、デリバティブ金融負債が増加したことなどによって2,515億円増加し、6,404億円となっております。
資本合計は、主にデリバティブ金融資産の減少によって1,771億円減少し、5,976億円となっております。詳細ついて次のスライドでご説明をいたします。
まず流動資産が501億円増加した要因についてですが、現金および現金同等物は3,854億円と、前期末比で302億円の増加となりました。これに加えて3ヶ月超の定期預金など流動性の高いその他の短期金融資産が1,842億円と同1,616億円増加しております。
これは2015年12月の社債発行に伴い現金が増加したこと、および営業キャッシュ・フローが増加したことによります。
たな卸資産は2,700億円と100億円増加しております。このうち国内ユニクロ事業の在庫は38億円増加しておりますが、とくに問題のない水準です。
海外ユニクロ事業の在庫は13億円減少いたしました。これは為替の影響および、韓国、香港など一部のエリアで在庫をコントロールしているためです。
グローバルブランド事業の在庫は73億円増加しております。これはジーユー事業の事業拡大に伴って在庫が拡大したことによります。
デリバティブ金融資産は資産側で5億円と1,569億円減少いたしました。これは保有するう為替予約の平均レートが期末の為替レートより円安となったことにより、デリバティブ金融資産が負債に転じたためです。
国内ユニクロ事業などでは、長期的なヘッジ方針にしたがって為替予約を継続的におこなっております。なおヘッジ会計を適用していることから、このことの当期の損益への影響はございません。
非流動資産は同242億円増加しております。これは繰延税金資産が333億円増加した一方で、2016年8月期末にJ Brandなどの減損損失を計上したことなどによって、無形資産が160億円減少したことによります。
負債は2,515億円増加しております。これは2015年12月に総額2,500億円の社債を発行したこと、デリバティブ金融資産が722億円増加した一方で、繰延税金負債が434億円減少したことによります。
キャッシュ・フロー
次に2016年8月期のキャッシュ・フローについてご説明をいたします。
営業活動によるキャッシュ・フローは987億円の収入となりました。これはユニクロ事業をはじめとする各事業の利益貢献902億円によるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは2,459億円の支出となりました。支出の主な内訳としては、定期預金の増加が1,865億円、有形固定資産の取得で341億円、システム投資などによる無形資産の取得で94億円となっております。
定期預金が1,865億円増加した主な要因は、2015年12月に社債発行で調達した現金の一部と余剰資金の一部を3ヶ月超の定期預金として預入をしたためです。
定期預金は前期に比べ大幅に増加いたしましたが、この資金1,865億円については実質的には流動性が高い資金であるといえます。
なお2016年8月期の設備投資は523億円。内訳としては、国内ユニクロ事業で45億円、海外ユニクロ事業で268億円、グローバルブランド事業で84億円、システム投資などで126億円となっております。
財務活動によるキャッシュ・フローは2,014億円の収入となりました。主な内訳としては、配当金の支払額367億円の支出に対して、社債発行による収入2,493億円になります。
以上の結果、2016年8月末における現金および現金同等物の期末残高は3,854億円となり、これに定期預金などその他の短期金融資産1,842億円を加えた、流動性が高い金融資産は5,696億円となっております。
2017年8月期通期業績見通し
ここから2017年8月期の通期の業績予想についてご説明をしてまいります。
売上収益は1兆8,500億円。前期比3.6パーセント増。事業利益は1,800億円。同11.1パーセント増となる見込みです。
その他の収益・費用は、店舗の除却損・閉店損など50億円の費用を見込んでいるため、営業利益は1,750億円。同37.5パーセント増を見込んでおります。
金融収益・費用につきましては、前期ではネットで370億円のマイナスとなりましたが、今期の予想には、期初の為替レート103円を前提として、現段階におきましては為替の換算差損益を見込んでいないという状態です。
親会社の所有者に帰属する当期利益は1,000億円。前期比で倍増となる見込みです。
次に各事業の業績トレンドを申し上げます。まず国内ユニクロ事業ですが、通期で増収増益を予想しております。
既存店+Eコマースの売上高は約2.0パーセントの増収を見込んでおります。この内訳としては、店舗の既存店売上高をほぼ横ばい、Eコマースは約4割の増収と考えております。
粗利益率は、「毎日お買い求めやすい価格戦略」を継続することによって、前年並みを予想しております。また引き続き経費削減を行い販管費比率を改善させることで、通期の営業利益は若干の改善を見込んでおります。
海外ユニクロ事業の売上は若干の増収、営業利益は大幅増益を予想しております。海外ユニクロの売上が若干の増収にとどまる要因としては、連結取込為替レートが円高によって1割強の押し下げ要因となると考えているためです。
エリア別の業績トレンドとしては、グレーターチャイナ、韓国が為替の押し下げ要因によって若干の減収。営業利益は増益を見込んでおります。東南アジア・オセアニアは増収増益。ヨーロッパは出店が拡大するため営業利益は横ばい。アメリカとカナダを含む北米の赤字幅は大幅に改善することを見込んでおります。
なお海外ユニクロ事業において、米国などでの店舗閉店やスクラップ&ビルドに伴う除却損・閉店損を合計で約35億円見込んでおります。
グローバルブランド事業は増収。営業利益は大幅な増益を予想しております。ジーユー事業は約40店舗の出店を計画しており増収増益を見込んでおります。セオリー事業は増収増益。コントワー・デ・コトニエ事業は黒字回復を目指します。プリンセスタム・タム事業、J Brand事業は前年並みの業績を予想しております。
最後に配当金についてご説明をさせていただきます。
2016年8月期の配当金は、期末配当金165円を含み、1株あたりの年間配当金350円を予定しております。2017年8月期の配当金につきましては、中間配当金175円、期末配当金175円、合わせて年間で350円。前期と同額の配当金を見込んでおります。
以上で私からの説明を終わります。ありがとうございます。