創業以来右肩上がりの成長を続ける、Yahoo! JAPAN

孫正義氏:はい、次に国内のヤフーです。アメリカのヤフーはみなさんご存知のように赤字で、苦しんで苦しんでという状況がここ何年も続いております。しかし、たまたま同じブランドを掲げておりますけれども、Yahoo! JAPANは創業以来一回も営業利益が下がったことがない。

ヤフーのアメリカよりも先にYahoo! JAPANは黒字になりました。Yahoo! JAPANはサービスを開始して、1ヶ月目から実は黒字になったんです。ヤフーのアメリカが黒字になる前にYahoo! JAPANは黒字になったんです。ヤフーのアメリカが何回も減益で赤字だというときに、Yahoo! JAPANは一回も減益になっていないんです。なにが違うんだ、と。同じブランドです。

最初のスタートは同じ技術、ビジネスモデルです。なにが違うんだ? 片っぽはソフトバンクが親会社だと、もう片っぽはソフトバンクが親会社じゃない。違いはそのひとつですよ。「ほかになんの違いがありますか?」と、たまには言ってみたいなと。ついに言ってしまいました。

ということです。Yahoo! JAPAN、安心してください。これからも着実に業績は推移していける。同じブランドでも中身が違う。

Yahoo! JAPANには、サーチ検索連動型の広告があります。これがスマホに変わって、スマホでiOSのiPhoneにはGoogleが契約していてiPhoneを開けると自動的にGoogleの検索窓が出てくると。

当然AndroidはGoogleが提供していますから、GoogleのAndroidの上にはGoogleの検索窓が出てまいります。したがって、スマホになったら、検索はYahoo! JAPANは真っ逆さまに落ちるんじゃないかと。

真っ逆さまとはいっていないけれど、あまり伸びてない。少し下がってきている、ここがYahoo! JAPANの課題です。

ただ、幸いなことに下がっている要因の一番は、PCからスマホにトラフィックのそのものが移ってきた。スマホ同士だけで見ると、実はYahoo! JAPANの検索シェアは、スマホのなかでは徐々に徐々に上がってきています。

最初のデフォルトでの設定はGoogleだらけですけれど、ユーザー、日本のユーザーが自らの判断で最初に組み込まれていないヤフーの検索がiPhoneでもAndroidのスマホでも、Yahoo! JAPANの検索が最近使われ始めて、徐々に徐々にスマホのなかにおけるYahoo! JAPANの検索シェアが上がってきているんです。

それよりもうれしいのはディスプレイ広告です。ディスプレイ広告は、PCからスマホにユーザーが移ってきています。画面が小さいから広告効果が薄れる。広告効果が薄れるから、広告収入が上がらない、と。こういうふうに多くの人が思っていましたけれども、Yahoo! JAPANのスマホ、使い方を変えたと。

縦スクロールだけで、ただひたすら縦スクロールすると、どんどん記事が出てくる。どんどんサービスが出てくる。こういうふうにディスプレイの仕方を変えました。

そして記事と記事の間に、インフィード広告というかたちで広告と記事が非常に違和感のないかたちで間に広告が入るモデルが完成しました。

その結果、スマホにおけるYahoo! JAPANの広告効果が著しく上がってきました。単価が8倍とかに上がってきたということで、スマホのディスプレイ広告が最近急激に伸びています。

どちらが利益率が高いかというと、検索連動型の広告はGoogleとかヤフーのアメリカにロイヤリティを払わなければいけない。ディスプレイ広告は、Yahoo! JAPAN自らがディスプレイ広告をした場合はYahoo! JAPANに粗利が100パーセント入る。外に出ていくコストがない。

ですので、この売り上げだけでなく、売り上げのなかにおける利益率は上がってきています。より利益率の高いものが、より伸びているということでYahoo! JAPANの広告における利益が着実に上がってきているということです。

成果を出し始めたアリババモデル

次にショッピングです。eコマースは、ヤフーのアメリカにはないモデルです。ヤフーのアメリカにはオークションもなければ、ショッピングもないという状況ですが、Yahoo! JAPANはショッピング、eコマースで、楽天やAmazonにボコボコに負けていました。

もう私は不満で不満でしょうがなくて、怒り狂っていたと。でもこの2年間で、Yahoo! JAPANのeコマースのモデルをアリババモデルに切り替えろということで、大騒ぎして結果切り替えました。

途端に、Yahoo! JAPANのeコマースが今、日本でもっとも伸びているeコマースになりました。主要なeコマースのサービスのなかで、間違いなくAmazonよりも楽天よりも伸びているeコマースがYahoo! JAPANです。

年間62パーセント取扱高が伸びているということであります。もちろん今はまだ、先行投資していますから、ここから上がってきてる利益はまだマイナスですけれども、最初はだいぶ赤字だったのが最近急激に改善してきていますので、ここから先、非常に楽しみだということであります。

したがって、一番大きな広告ビジネスがモデルとしてよくなった。我々が狙っていた不満だったショッピング、これが急激に伸びている。さらにこれから、ペイメントだとかヤフーのさまざまなサービスが立ち上がってくるということでYahoo! JAPANも非常に楽しみな会社になってきたということであります。

ここまでが、我々の主要な事業会社です。ソフトバンクモバイル国内、それからスプリント、Yahoo! JAPANであります。

海外への投資は、まさに今が好機

ここから先はソフトバンクの車の両輪であります、もう一つの事業のかたちです。1つは自らが支配し、コントロールし、オペレーションする会社。

もう1つは投資をして、グループ企業としてポートフォリオマネジメントする。我々が世界中のすばらしい起業家たちとパートナーシップを組んで、戦略的パートナーになって、彼らとともに成長させるという投資事業の部分であります。

ここに大きなチャンスがやって来ています。なぜかというと、世界的に新興市場で新たな世界的な起業家が続々と生まれつつある。今までの過去は、新しい起業家というと、ほとんどシリコンバレーという状況でした。それから、日本に移りました。日本から中国に移りました。中国からさらに今はインド、アジアいろんなところに続々と次のジャック・マーが生まれつつあると私は感じております。

また、新しいモデルとしてモバイルとクラウドこれがいろんなかたちでミックスすることによって、ビジネスチャンスが生まれてきました。ITインフラ、AI、テクノロジー、こういったいろんな角度で見て、チャンスが来ていると思います。

一方、投資家のセンチメントはどうかということですけれど、投資家は中国の株式市場がごたごたしてるとか、ヨーロッパがごたごたしてる、日本も為替が最近は雲行きあやしいな、ということで投資する側、我々の競争相手として投資する側のセンチメントが曇ってきています。

これはチャンスであると。ソフトバンクは、インターネットのスタートのころから、積極的に投資をしてきましたけれど、2000年のネットバブルが崩壊したときに、ソフトバンクの株価も100分の1になりました。

私は、その100分の1になって、ソフトバンクが大赤字になったときに1人叫んでました。「今こそが投資の最大のチャンスだ」と言っておりましたら、「なんでお前はそこまで懲りないやつなんだ」と。「どれほど怪我したら懲りるんだ」と言われておりましたけれども、今振り返ってみても間違いなくあのときが、本当は最大の投資のチャンスでありました。

そういう意味でこの1、2年、投資家の人々の気持ちがやや揺らいでいる。でも、テクノロジーはどんどん進化してる。市場はどんどん広がってきている。特にアジアでですね。私は大いなるチャンス到来だと思っております。

ということで、我々は信念を持って大規模に投資する。長期的なパートナーである。それから資金調達も自らが手元に2兆円持っています。上場株式としての株もたくさん持っています。また、グローバルでいろんな体験をして、グループのシナジーをどんどん出せるという状況が来ましたので、我々のグループ戦略というものが「ソフトバンク2.0」ということでニケシュも我々の経営陣に加わって、これを本人を横にしていうのもなんですけれども、ラッキーだったと。

本当によかったなと心から私は思っています。というわけで、ソフトバンクはついにこれから世界的な企業になっていく。「今までは練習ラウンドだった、これからが本番だ」と私は燃えに燃えまくっています。

まだまだ安すぎる、アリババの“潜在能力”

具体的な投資の成果、進捗を今日ご報告したいと思います。

まずeコマースのグループです。アリババご存知だと思いますけれど、今年ついに世界最大の流通事業者でありますウォルマートを流通売上総額、取扱高総額でついにウォルマートを抜いたと。

この何十年の世界の歴史のなかで、ずっとナンバーワンだったウォルマートを初めて抜いた企業がアリババであります。しかも、ほとんどまだ中国でしかやっていないにも関わらず、世界のウォルマートを抜いたと。しかも伸び率を見てください。片方はフラットです、もう片方はまだまだ昇り龍であるということです。手数料収入、あるいは広告収入こちらも急激に伸びてきています。

日本円で2兆円ですね。取扱高はもう日本円で50兆円、60兆円という規模です。

50兆円、60兆円ですよ。それがさらに年率3割くらい伸びているわけです。年間15兆円くらい取り扱い金額が伸びているわけです。

そんな企業が世の中にありますか? Amazonよりもはるかに大きいんです。Amazonよりもはるかに利益が大きい、取扱高も大きい、成長率も大きい、なんでAmazonよりも時価増額が小さいんだ? みなさん、一度よく考えてほしい。買うなら今だ、ということです。

モバイルの取扱高が急激に伸びております。eコマース、モバイル、スマホのちいさな画面でモノを買うのかという疑問に対して、アリババは答えを出しました。

スマホになって、取扱高はさらに伸びていると。スマホの伸び率はさらに大きいということです。

純利益もAmazonと比較して比べものにならないくらい儲かっているということであります。

投資家に対するプレゼンテーションが下手なんじゃないかとか、片っぽが上手すぎるんじゃないかとか、いろいろありますが、私に言わせれば、間違いなくAmazonよりアリババのほうが価値があると思っています。

もちろんこれは市場が評価することですけれども、今から10年後20年後の結果は楽しみですよね。いずれにせよ、どっちが上かは、いいじゃないですか。Amazonが上か、アリババが上か、ともかくどちらも伸びています。少なくともウォルマートよりもはるかに伸びている。どちらも伸びている、どちらも価値のある会社になってきた、これだけははっきり言える事実であります。

インド市場、海外eコマースへかける期待

では、アメリカのAmazon、中国のアリババで終わるのかということですけれど、私は歴史は繰り返されると思っています。インド、中国と変わらない人口を持っているインドが、ここから10年間、ここから20年間、急激に伸びると私は信じています。

10年前、15年前に「今からは中国だ」と私が叫んでいたときに、世の中の多くの人は「彼はなにを言っているんだろう?」と大きなクエスチョンマークで言っていました。

今日、その結果は示されました。私はインドが同じくこれから伸びると信じています。

このインドで、eコマースで、90パーセント伸びてる会社、それがSnapdealであります。インドのアリババ、それがSnapdealであると。そういうことで、この会社を早い段階で見出して我々が筆頭株主になれたというのは非常に喜ばしい。

韓国でも、今300パーセント伸びています。韓国のeコマースで、ナンバーワンになりました。ものすごい勢いで伸びてます、ということで、Coupangも非常に楽しみな会社であります。

また、インドネシアのTokopedia、これも急激に伸びてます。250パーセント伸びてる。2.5倍じゃないですよ。250パーセント増ということですから、3.5倍ということですけども、もっと伸びてる。

また、インドで最大の実質的なホテルチェーンになったのが、OYOです。最大です。創業者19歳。今21歳?

Is he twenty one years old now?

twenty two! 22歳になる。

19歳で創業して、3年で、21歳。すでに、インド最大のホテルチェーンです。ホテルチェーンといってもホテルを持ってるわけじゃないですよ。OYOのブランドをつけて、全部OYOのブランドのホテルにして、携帯で顧客のブッキングをする。つまり売り上げを立てていく。また、チェックアウトする。

ということで、OYOが、インドで最大のホテルチェーンであります。これは非常に楽しみな会社であります。

アジア版“Uber”も急成長中

ここまでがeコマース。次にトランスポーテ―ション。

今、未上場の会社で、世界最大の評価価値を得ているのがUberです。Uberはインターネットを使ってビジネスモデルを変えました。

これまで個人企業であったタクシーの運転手。あるいは中小企業として10台から100台タクシーをオペレーションしてるというタクシー会社がありました。顧客を得るのに、道をただぶらぶらと運転してお客を探す、あるいは道路でただじっと待ってお客が来るを待つ、という状況だったのに対して、インターネットの力を使って顧客を獲得する、車をデリバリーする、こういうようなモデルを作りました。

これが急激に伸びて、今、未上場ですけども、60ビリオンというような、6兆円7兆円という評価価値を得るまでになった。

それに対して、我々のグループ企業OLA、これはインドでナンバーワンのUberのような会社になりました。

配車をするのに待ち時間が半分になった。「車来てくれ」と言って待つ時間が半分になった。それだけ登録している車の数が増えて、ネットワーク効果が大きくなって、急激に伸びています。

もう1つは、シンガポールだとかインドネシアだとかタイだとか、そういう東南アジアで同じモデルでやっているGrab。Grabタクシーですね。この会社も前年対比5倍という勢いで伸びています。

また、中国でも、ついに中国の乗車数だけで世界のUberを抜いた。前年対比20倍。むちゃくちゃな数で伸びている。この会社に我々は大きな将来の成長を期待しています。だから、Uberを中国だけで抜いた会社がソフトバンクのポートフォリオになる。

インドで圧倒的ナンバーワン、中国でも圧倒的ナンバーワン、東南アジアでもナンバーワンのトランスポーテーションの会社が全部ソフトバンクグループだということになります。我々はすでに、世界のUberを乗車数で完全に上回っているという状況であります。

世界で最大の投資リターンを上げたVCとしてのソフトバンク

ここまでがトランスポーテーション。次にゲームです。

スマホの時代になるとゲームは変わる。それまでは任天堂だ、Xboxだ、ソニーのプレイステーションだと言われてたものが、必ずスマホの時代にはスマホのゲームカンパニーのほうが大きくなる。利益も大きくなるし、ユーザーも大きくなる、と3~4年前に私は思いました。

結果2社だけスマホのゲームカンパニーに投資しました。1社は日本一になりました。もう1社は世界一になりました。2社だけ投資して日本一と世界一。悪くないですよ。ねえ。

みなさんいろんな会社がいろんな投資をしますけども、我々ソフトバンクのこのインターネット企業における投資のトラックレコードは、40数パーセントのIRRです。

毎年平均で40数パーセント伸びてる。そんなベンチャーキャピタルが世界中ありますか。そんなプライベートエクイティカンパニーが世界中ありますか。特にこの規模でありますか。世界で1社もない。そのことをもう一度再認識してほしい。

最近、ソフトバンクがなにか退屈な会社になっている。ソフトバンクっていうと、スプリントで苦しんでる。そういうイメージばかりが、もわーっと蔓延しているように思いますが、世界で最大の投資リターンをあげたベンチャーキャピタルとしての能力。プライベートエクイティとしての能力。これはますます今、ソフトバンク2.0で「ここからがスタートだ!」と燃え上がっているソフトバンクだということをもう一度思い出してほしい。

ゲームカンパニーでも、Supercellが、今まで『クラッシュ・オブ・クラン』が世界一でした。そのSupercellが新作を3月に出しました。

自らの世界一を抜いて、新作がもう1回さらに世界一になりました。すごいです。今まで4作品しか出してないけども、4作品とも世界でトップレベルにいっている。

GungHoもそれなりに頑張ってる、ということであります。ということで、ここまでがゲームです。

さらに、メッセンジャー。日本でいうLINEのような会社ですね。インドで今、2位になりました。これが急激に伸びた。こちらも我々が40数パーセント株を持っています。

次にフィンテックです。今フィンテックでもっとも業績を上げているのがSoFiです。こちらも我々が筆頭株主になったということでございます。

ということで、我々のオペレーションカンパニー、事業会社としての国内のソフトバンクモバイル。スプリントも改善してきた。Yahoo! Japanも毎年増収増益。それに対して、今度は投資事業。ベンチャー投資事業、インターネット事業。そちらも世界でトップのトラックレコードの業績をあげている。

したがって我々は、自社株買いを先日発表させていただいて自社株買いを進めております。自社株買いをすると株式数が減りますので、配当の総額を同じにして、実質増配ということをアナウンスさせていただきました。

結論として、我々は国内の通信がフリーキャッシュフローを毎年コンスタントに、4,000億円、5,000億円という規模で、フリーキャッシュを稼げるレベルになっている。スプリントが反転してきた。そして投資事業は順調に伸び盛り。

その3つの項目で、我々ソフトバンクはこれからが伸びの本番になるということで、さらなる成長をお約束していきたい。ありがとうございました。