ソフトバンクグループ2016年3月期決算説明会

司会者:ただいまより、ソフトバンクグループ2016年3月期決算説明会を開始いたします。それではまず、本日の出席者をご紹介させていただきます。

みなさまから向かって前列左手より、代表取締役社長の孫でございます。代表取締役副社長のアローラでございます。取締役の宮内でございます。続きまして、後列左手より、常務執行役員の後藤でございます。執行役員の君和田でございます。ソフトバンク株式会社専務取締役兼CFOの藤原でございます。

本日の説明会はインターネットや電話によるライブ中継を実施しております。よろしくお願いいたします。

それではさっそく、社長の孫よりソフトバンクグループの連結決算概要および事業概要につきましてご説明いたします。よろしくお願いいたします。

孫正義氏:ソフトバンクの孫でございます。事業を経営するというのは、いろんな困難もあるけれども、非常に楽しい、やりがいのあることだなと日頃思っております。

そういう状況のなかで、とくに昨今は私自身、スプリントの業績を改善するということに相当な時間を集中しております。

おかげさまで、スプリントのネットワークはずいぶん改善してきましたし、スプリントのオペレーションコストもだいぶ削減できました。

またさらに、約1,000項目のコスト削減のプロジェクトを立ち上げておりまして、これが一つずつ、着実にコスト削減に結びついてきていると。

コストダウンには、単に精神論で下げるとか、予算だけで下げるとかいうのではなくて、ビジネスのプロセスのあり方を根底から見直して、無駄を省く、または効率を良くするという努力が必要になりますが、この努力を一歩一歩積み重ねた結果、着実に数字のほうにも現れてきております。

そういう意味では、この1年間大きな進捗がありましたけれども、また次の1年間でも、着実に改善していけるのではないかなという自信が出てまいりました。

そういう意味では、新しい課題を得ると、その得た課題で物事をより真剣に考えるようになると。物事を真剣に考えることによって、それを乗り越えたときには、より強い姿を築けると。最近はとくにそのことを実感するようになりました。

それではさっそく、その内容を説明したいと思います。

1年間の連結業績

連結業績であります。ここにありますように、売上高、8パーセント伸びました。EBITDAは19パーセント、営業利益で9パーセント。

当期純利益はマイナス19パーセントでしたけれども、これは一昨年にアリババが上場したと。そのアリババというのが、毎年上場があるといいなと思いますけれども。

この1年間は大きな上場がありませんでしたので、その反動で純利益はマイナスになっておりますが、このアリババの上場という一時的な要因を外して考えますと、実質的には23パーセントの増益であったと。これがこの1年間の業績でありました。

それでは一つずつ項目を見ていきたいと思いますが、こちらが売上高の内訳ですね。ご覧のようにそれぞれが順調に伸びているということがおわかりいただけると思います。

次にEBITDA、海外ではとくにこのEBITDAが主要な結果の指標として使われますけれども、こちらが19パーセント伸びた、2.4兆円規模になったということであります。

なかでも、このグラフでおわかりいただけるように、スプリントが一番EBITDAの増益に貢献したということであります。

純利益では、今現在スプリントは赤字です。しかし、このグラフを見ておわかりいただけますように、償却前の営業利益で、スプリントは大幅に業績が改善してきていると。

営業利益を見てみましょう。国内の通信、ヤフー、順調に伸びておりますが、この黄色い線はスプリントの国際会計基準における営業利益です。点線のところは、スプリントの米国会計基準における実績であります。

どこが違うのかというと、ソフトバンクは国際会計基準、IFRSの基準で連結決算を行っております。これは前からずっとそうなんですけれども、我々がスプリントを買収したときに、クリアワイヤなど、簿価を計算して、それを一気に買収の入り口で償却しております。これが、よりコンサバに行われたということですね。

米国会計基準におけるスプリントは、事業をそのまま継続しておりますので、そこに計算結果の物差しの違いがありますが、米国で事業を行っているスプリントの業績として、営業利益で9年ぶりくらいに黒字になったと。これはスプリントにとって、大変喜ばしいことであります。IFRSの国際会計基準でも、営業利益の黒字が拡大してきているということであります。

国内通信事業は安定的に推移

これが全体の数字ですけれども、ここから一つずつ詳細に入っていきたいと思います。

まず国内の通信事業であります。営業利益、コンスタントに伸びてきている、7パーセント伸びたということであります。売上は安定的に推移してます。

ARPUですけれども、こちらも安定的に推移している、とくに伸びているのはサービスARPUということであります。

ここからどうやってさらに伸ばしていくかということですけれども、我々にとって大きいのがソフトバンク光、こちらが成長のドライバーになってまいりました。

我々がADSLということで、固定ブロードバンド通信で、日本は「先進国で最も高い」「最もスピードが遅い」と言われていたインターネットのインフラに対して、ADSLで「世界一速い」「世界一安い」ということを実現したわけですが、技術はADSLから光ファイバーに移ってまいりました。

この光ファイバーにおいて、我々は収益をあげられる構造になっていないという問題がありましたので、攻め口に非常に困難しているという状況でしたけれども。

やっと光ファイバーのサービスでも、収益が十分に成り立つという事業モデルが構築できましたので、この1年間積極的にこれを伸ばし、業績がその結果、着実にあがってきたということであります。

これは我々にとって、ソフトバンクモバイルがここから安定的に業績を伸ばしていける成長ドライバーになってきたと。

ソフトバンクホークスを含む10球団の試合を生中継

また、コンテンツの差別化ということで、日本ではプロ野球が最も視聴者の多い人気コンテンツでありますけれども、12球団あるなかで、ソフトバンクホークスを含めた10球団が主催している試合を、生中継でソフトバンクのスマホに提供できるということになりました。

私もこれを毎日のように使っておりますけれども、出張先とか海外にいてもソフトバンクホークスの生中継が見られると。国内の出張先、旅行先でも見られるということで、大変重宝しております。夜の食事の最中でも、iPadをテーブルに置いて、生中継を見ながら食事ができると。いつでもどこでも見逃すことがないと。

こういうサービスが、これからスマホのサービスの差別化に役立ってくるのではないかなと思います。

また、我々のスマホのモバイルの根幹的なサービスは、通信が繋がるということであります。いろんな努力の結果、我々は日本で最もデータ、パケットが繋がると。こういうネットワークになりました。

世界中いろんなところに出張しますけれども、日本のモバイル通信のネットワークは間違いなく、世界でトップクラス、1位か2位の国であると私は体感しております。ヨーロッパに行ってもこんなに繋がる国はない。

アメリカはもう事業をやっているからわかりますけれども、このように繋がる状況にはぜんぜんなっていないということであります。これはスプリントだけではなくて、競争しているほかのどの会社も同じ状況であります。

そういう意味では、日本は世界最先端のスマホのネットワークができたと、そこのなかでもソフトバンクモバイルは、いま最もスピートも接続率も繋がるという状況にあります。

ということで、この数年間我々は通信の設備投資を一生懸命行ってまいりました。新しい鉄塔をつくり、そこに新しい設備を備え付けて、ネットワークの改善をしてまいりました。おかげさまで、その設備投資のピークが過ぎました。

その結果、コンスタントに4,000、5,000億レベルのフリーキャッシュフローが稼げるというような状況になってまいりました。

この売上に対するフリーキャッシュフローの比率は、世界でも最もマージン率のいい会社の1つになったんではないかなと思います。これもいろんな努力の結果であるということであります。

スプリント事業の4つの反転戦略

これは国内の通信ですが、次に今までのソフトバンクの最大の問題点と言われてまいりました、スプリントについてですけれども、我々はおかげさまで4つの反転への戦略を集中的に行っております。これが進展してまいりました。純増の改善、多様な調達手段、OPEX削減、ネットワーク改善ということであります。

まず顧客の獲得、純増ですけれども、これまでお客をどんどん失っていたスプリントが、遂に反転して、純増というところにこぎつけるところになりました。

とくに携帯端末ですね。タブレットはほとんど利益が出ない、プリペイドもほとんど利益がで出ない。一番の利益の9割以上はポストペイドの携帯端末、とくにスマホですね。こちらのほうが収益の9割くらいになっています。

このポストペイドの携帯端末がこの何年かで初めて純増に転じたということであります。

またクオーターベースで見ましても、今までこのポストペイドの純増でVerizon、AT&Tの両方を抜いたという経験はなかったんですけれど、初めてVerizonとAT&T両方を抜いたという。抜いたといってもほんのちょっとで、あんまり自慢できる規模ではないですね。

T-モバイルは立派に頑張っているなということで、彼らに負けてはいけないという点は、我々もしっかりとさらに改善しなきゃしなきゃいけないという認識はしておりますが。

とはいえ、これまで圧倒的に負けていたAT&T、Verizonに対して少しとはいえ上にいったということは、一歩ずつスプリントが改善してきている証ではないかと思います。

解約率低下とコスト削減の成果

その重要なドライバの1つは解約率です。今までスプリントのネットワークが悪い、繋がらないということが解約率の一番大きな要因でした。

私自身、CEOのマルセロの下で、チーフネットワークオフィサーということで、現場に直接陣頭指揮で関わっております。

毎日つぶさに細かくスプリントのネットワークの設計とその建設、進捗状況を毎日チェックしてます。

それで毎晩夜23時、24時に向こうのネットワークのエンジニアに電話したり、自分でデータをチェックしたりしながら行っております。

おかげさまでスプリントのネットワークは日に日に改善してきておりまして、それが解約率の低下となってきています。今までネットワークが悪すぎた、レベルが低すぎたので改善するのに役に立ったということです。

おかげさまでその結果、トータルの売上高、これがついに底を打って反転し始めたということであります。

売上の内訳としては、今までは携帯端末を無償で提供して、あるいは大幅な値引きで提供して、そして通信料で稼ぐというモデルだったんですけれども、アメリカのどの会社もみんなそうだったんですが、日本で我々が始めたように割賦販売、あるいはリース販売ということで端末を有償で買っていただく、その分通信料を値引くというモデルに切り替わっております。

会計上どちらで計上するにしても、大事なのはいち顧客が一ヶ月に払う請求書の額が安定的になってきて、ユーザーも安定的になった、したがって売上高がついに底を打ってここから反転しそうだというところになってまいりました。

そうはいっても、売上はだいたい横ばいということですね。何が一番業績の改善になったかということですけれども、それは出るコストを下げるということであります。

いろんな世の中の会社、古今東西会社がつぶれるとか業績が悪くなるというのは、経費が粗利を越えていったときです。

ですから、経費が下がるということが業績に一番直結する。競争がありますから、売上を上げるのはなかなか難しいですね。

ですから、会社を復活させるというときに、まず真っ先にやらなきゃならないのが経費の削減、これが定石でありますが、この定石の部分に真正面から取り組んだということであります。

その結果、1年間で1千百億円の固定費の削減ということができた。

そういういろんな努力の結果、スプリントのEBITDA、償却前の営業利益、これが約2千億円改善できた。増益に持っていくことができた。償却前の営業利益、これが大きな進展であります。

営業利益で9年ぶりの黒字

その結果、営業利益でも、これまで米国会計基準で、もう真っ逆さまな赤字……。「このままいくとつぶれるんじゃないか?」と我々ですら心配したという状況だったわけですが、もうこの何年かぶりで初めて営業利益で黒字。9年ぶりですね。

9年間もずっと赤字だったのかと。恐ろしい会社だな、よくそれでつぶれなかったなと思うくらいですが、9年ぶりに。

少しではありますけれども、少しと入っても300億円ですからね、悪くないですよ。営業利益で300億円の黒字になったと。

まあ改善幅は2000億ですから。これはこれで、「改善幅で2000億円の営業利益の反転というのは、悪くないよね」ということになります。

次に問題視されていたのは、「スプリントの資金繰りが回らなくなるんじゃないか」と世の中の人は大変心配してました。それで我々もいろんな努力をして、結果、スプリントの手元流動性、手元資金が潤沢に積み上がるようになりました。

その結果、目先のお金のためにわざわざ高いものを買う、目先の資金繰りのために何か間違った営業判断をする、そんなことをしなくてもよくなってきたと。

今までは目先の資金繰りが続かないから、高いものでも買うとか現金で買うとか、売上のほうでも無理して行うということがあったわけですけれども、資金繰りが潤沢に回るようになってきたので、コストダウンにもなおさら寄与しやすくなってきたということであります。

その結果、ネットワークも、設備投資、この間我々がソフトバンクが買収してから設備投資も積極的に行いました。解約率が下がったのは、ネットワークの改善が一番大きかったわけですけれども、ニールセン、我々自身ではないですよ、第三者のニールセン、テレビの視聴率調査で有名な会社ですね。

このニールセンがスピードテストを全米で行って、ものすごい回数行って、その結果全米での接続スピードがスプリントがナンバーワンだと、Verizonが2位だ、3位がAT&Tで、4位がT-モバイル。

こういう調査結果がここ最近毎日出るようになってまいりました。これは全米だけでなくて、主要な場所であるニューヨーク、シカゴ、ヒューストン、こういうところでもスプリントがコンスタントに最近1位になってきた。

まだ世の中の人々は十分にこのことを評価いただいておりません、まあ「また嘘じゃないか」と思われている。

しかし、ソフトバンクのネットワークでも、みなさんほんの2〜3年前までソフトバンクのネットワークが繋がらないと、僕も散々いろんな人に言われました。Twitterでもぼろくそに書かれた。

「今に見てろ、絶対一番繋がるようにしてみせる」ということで、コミットしてやってまいりましたけれど、それでもなかなか急には信じてもらえない。スプリントもそういう状況です。

2年間で4000億の業績改善

しかし実態として、科学的な調査の結果、スプリントのネットワークが改善してきたというわけであります。ということで、解約率が下がる、経費が下がるにしたがって、今年のEBITDAがもう1回、約2,000億円規模増益できる、さらに増益できるメドが立ちました。

これが先週、スプリントが正式にアメリカでアナウンスした業績予想であります。去年1年間で約2,000億業績が改善した。もう1回そこからさらに2,000億、つまり2年間でEBITDA、償却前の営業利益が2年間で4,000億円の業績改善。

これ言うのは易しいですけれど、そう簡単にはできないですよ。我々はそれをソフトバンクの傘下に入ったスプリント、それまではマイナスとか横ばいだったのが、この2年間で急激に改善してきているいうことがおわかりいただけると思いますし、そういう見込みを、自信を持って公言できるというところまできた。

もちろん、結果はここから1年間で出していかなきゃいけない、それを我々は証明していくという責任があります。

実行責任がありますけれども、少なくとも去年の1月、2月、3月の頃は私は「遠くて苦しくて長い戦いになる、先はまだ見えていない」ということを正直に申し上げました。

正直に、「苦しくて長い戦いになる」「スプリントを改善するのは、T-モバイルの買収合併が、夢が途絶えた後は苦しくて長い戦いになる」と正直に申し上げました。

その正直に言った私が、今自信をもって、「着実に、EBITDAで4000億円規模の改善が2年間で見込めるところまできた」ということは、大いなる前進であると少しは評価いただきたいなと思います。

ソフトバンクモバイルのときも最初は大変だったんですよ。営業利益が真っ逆さまに落ちていたわけです。真っ逆さまに落ちていたのをV字回復させたんです。

今やソフトバンクモバイルは、世界でも有数のフリーキャッシュフローを稼げる会社になりました。スプリントも見ててください。私のプライドにかけて、もう一度V字回復を実現させてみせようではないかという決意でありまして、その見通しがこうやって公言できるところまできたということであります。

「海外で業績の悪いソフトバンク」の汚名返上

ということで、スプリントが正式にガイダンスとして発表したのが、調整後のEBITDAで9.5〜10ビリオン、営業利益で1〜1.5ビリオン、約1000〜1600億円、キャッシュCAPEXが3ビリオン、調整後のフリーキャッシュフローで今までずっと赤字、借金が増える一方だった。

これがついにここから借金が減っていくという段階を迎えることができたということであります、これがスプリントであります。

最近のソフトバンクについて、みなさんいろんなかたちで、新聞記事であるとか雑誌記事であるとかコメント書かれるときには、「スプリントで苦しんでるソフトバンク」「海外で業績の悪いソフトバンク」と。枕詞が大抵そういうことになってますけれども、1年後を見ててください。

みなさん自身も「枕詞を少し変えようかな」という気持ちになってくるんではないかな。

(会場拍手)

ありがとうございます。1年後はみなさん自身がそのように思い始める。今は私が口から泡を飛ばして言っておりますが、1年後はみなさんが自分でそう書きたくなるような気がしております。