2016年3月期 第3四半期決算説明会
孫正義氏:それではさっそく、決算の内容の説明に入りたいと思います。
連結の業績ですけども。ここにありますように、売上(高)、EBITDA、営業利益、純利益、どれも順調にきました。
当期純利益でアリババ関連の一時益。去年はアリババの上場がありましたので、アリババの上場に伴う一時益がありました。今年はその分はないわけですね。
ですから、その部分を外したら、38パーセント増益と。ですから、ある意味すべての数字において、我々が想定していた以上のペースで推移していると。順調にいっているというふうにうれしく思っています。
その内訳ですけれども、売上の内訳がこちらにある通りですね。
これがEBITDAですけれども。償却前の営業利益、スプリントが著しく改善してきてるというのがおわかりいただけると思います。
先ほど言いましたように、多くの皆さんにとって「ソフトバンクはスプリントで苦しんでると、スプリントが重荷だ」というふうに受け止められていると思いますが、私の中のイメージでは、「スプリント」がソフトバンクグループのこれから稼ぎ頭の1つになると。伸びしろが大きいと。そこが私がワクワクしているというところであります。
営業利益も黒字になってまいりました。
国内の営業利益と解約率
ソフトバンクは2つの事業と言いますか、2つの価値がありますね。1つは、直接自分が経営をしているオペレーション事業。もう1つは我々のグループ会社として資本を持っている会社の価値がどう推移しているかと。この2つであります。
投資資産と言いますけれども、我々は投資を行っているというよりはグループ会社を構築していってるというイメージでおります。ほとんどの企業は我々筆頭株主で、30パーセント前後の株式を持って、その経営陣と深く関わって、一緒に経営戦略を実行していってると私は捉えております。
まず、事業資産の中の国内の通信事業ですね。頭打ちしたとか、いろんな説がありますけれども。しかし、ご覧いただいておわかりのように、着実に1歩ずつまだまだ利益を伸ばしてるということがおわかりいただけると思います。着実に利益を伸ばしていってると。
これは、通信のインフラを持つことによって、その上にさまざまなサービスを乗せられると。したがって、インフラのベースができたと。その上に、インターネット企業であるソフトバンクらしいサービスをこれから上澄みさせていくことができると思っております。
実際に主要回線のARPUですけども、1ヵ月あたりの売上ですが。通信のところは横ばいというか、若干下がってますね。しかし、それ以外のその上に乗せているサービスARPUは着実に増えております。
合計すると、対前年第3四半期と比べても、それなりに安定していると。ユーザーは少しずつ増えておりますので、なおかつ、経営のコスト効率も良くなっておりますから、その分良くなってると。
ただ、我々も課題は認識している点が1つあります。1つは解約率ですね。この解約率に対して我々はもう少し改善すべき点があると自分たちで認識しております。
ソフトバンク光の累計ユーザーが10倍に
その解決策はといいますと、こちらです。「おうち割」。通常、携帯だけのサービスを受けているお客さんに比べて、複数のサービス、例えば光ファイバーだとか、あるいはその他ですね。複数のサービスを受けているお客さんは解約率が約半分ぐらいに減ります。
ということで、我々としてはいかにこの複数サービスを受けてるお客さんを増やすかということで、今回電気の販売も始めますし、光ファイバーとの連携サービス、こちらも提供していくということであります。
とりわけ、この「ソフトバンク光」、こちらのお客さんが、1年間で累計ユーザーが10倍に増えたと。12万ユーザーだったのが120万ということで、10倍に増えたということであります。我々これまで固定ブロードバンドサービス「ADSL」から始まって、ずっとやっておりますけれども、「ADSL」から徐々に光ファイバーに移っていくと。
その時に儲からないビジネスモデルだったら、やっても意味がないんですけれども。やっと利益を出せるビジネスモデルでなおかつ「ADSL」から光ファイバーに置き換わっていくと。こちらのモデルが構築できたと。そこで、いま着実にユーザーを増やしていってるということであります。
ですから、固定のブロードバンドにおいても「ADSL」プラス、この「光ファイバー」。今回ここに載せてない光ファイバーですが、ちゃんと収益を稼げるモデルで拡大できるとこういうかたちができたということであります。
固定ブロードバンドでは「ADSL」よりも、あるいはケーブルテレビの回線よりも「光ファイバー」がより次世代であります。最終的な形だろうと思いますが。こちらと我々の高速な無線のサービス、このセットが非常にうまく機能するというふうに見えてまいりました。
ソフトバンクのネットワークは世界一
無線のネットワーク、携帯のネットワークですけれども、まだまだこれを十分にソフトバンクが一番繋がると。通信速度も一番であるということを世の中の人が十分に認識していただけていないと。
これは、我々の伝え方がまだ不足してるのという点を感じておりますけれども。実態として、ソフトバンクの携帯が一番繋がると。一番平均速度も早いというのは事実であります。
これはもう、ここ数年間言っておりますが、実際にソフトバンクの携帯を使ってるユーザーの皆さんで、「ここは繋がらないぞ」というふうに感じる人は、最近皆さんの周りでもほとんどいなくなったんではないかなと。私自身、毎日使っておりますけれども、本当に快適に繋がると。
時々、海外に行きますが、毎月行きますけれども、海外のどこに行っても、日本ほど、ソフトバンクの回線ほど繋がる、しかもスピードも早いという国は私は体験したことがないというぐらい、世界一のネットワークだと自負を持ってるところであります。
ということで、我々は通信のネットワークが、世界でも本当にトップレベルに、おそらく1番だろうと懐いますけれども、ネットワークができたと。
したがって、設備投資のピークは過ぎたということであります。「CAPEX」設備投資のピークは終わったと。この4、5年間積極的に設備投資を行ってまいりました。設備の中でも一番お金がかかるのは鉄塔の建設であります。
この鉄塔の建設が一通り予定していたものが終わったということで。我々は「CAPEX」が済んだら、フリーキャッシュフローとして、現金が会社に蓄積されていくという状況が生まれました。
現に去年の第1四半期から第3四半期までの累計のキャッシュフローが36億円であったのに対して、今回は2300億円、約2400億円のフリーキャッシュフロー。これは設備投資後、税金支払い後の実際に会社に残る現金であります。
これが急激に積み上がり始めて。来年、再来年、その次もですね、今年を上回る規模のフリーキャッシュフローが出てくると我々は自信を深めたとこであります。
ついにソフトバンクが国内の通信は収穫期に入ったと。完全な現金の収穫期に入ったということであります。
スプリント事業の4つの反転戦略
次に、スプリントですね。これが先ほど冒頭に言いましたように、多くのみなさんのイメージと私のなかにあるイメージのギャップが最も大きいとこだろうと思います。
売り上げがどんどん下がっておりました。それが底を打ったと。底を打って反転し始めたというふうに我々は認識しております。
私の目から見ると、スプリントはじゃぶじゃぶに無駄な経費を使っていたと認識しております。私が認識していただけではなくて、最近はスプリントの経営陣もはっきりとそこを認識してそれを改善しようということであります。
ソフトバンクのモバイル。最初のVodafone Japanを買収して、私が経営者として最初に手をつけたことは、固定費の圧縮であります。
そして料金競争で顧客を集める。さらにiPhoneで独占権を取った。3ステップの経営改善による結果を出していったわけですけれども、スプリントはまず固定費の圧縮というところについて着実に明確に固定費をどこで、どんな項目で、どのようにして、どこまで圧縮するかというプログラムを立てつけました。
前回発表した時は、450ぐらいと言ったのではないかと思いますが、今750項目ぐらいの経費削減のためのプログラムが同時並行で走っておりまして。これは、単に根性だけで下げるのではなくて、仕事内容のやり方を変える、そして効率を上げる、効率を上げて経営を良くするということであります。
仕事のプロセスを変える。ビジネスプロセスのリエンジニアリングというやり方で固定費の削減が始まりました。結果、前の調整前のEBITDA、償却前の営業利益ですね。こちらのほうで着実に伸びまして4月から12ヵ月の9ヵ月間、前年対比で41パーセント増益になったということであります。
償却前の営業利益で41パーセント増益。スプリントの株価は、今ボロボロですけども(笑)。しかし、私から言わせれば内容はずいぶん良くなってきはじめたという手ごたえを感じているというところであります。
また営業利益のほうも約マイナス0.8億ドル、これがプラス3億ドルまで(黒字)反転したということであります。日本円で営業利益が300数十億円のところまで黒転したと、これも大きな改善であると考えております。
ということで、スプリント反転のための4つの戦略。これをもう少し解説したいと思います。1点目は純増の改善ということであります。
先ほど言いましたように、経営の固定費を下げるということですけども、経費を下げてユーザーを失っていったのでは元も子もないですね。しかし、ユーザの獲得で反転し始めた ということであります。
純減純減が続いていたのが、純増というふうに姿、形が変わり始めたということであります。お客さんが増えて、固定費が下げられて、あるいは固定費を下げてもお客さんが増えると。
普通は固定費を下げるとお客を失うんじゃないかという恐怖が常にあるんですね。固定費を下げてもお客さんが増えるという状況が作れたということで、自信をもって経費を下げられる。これ連動してるんですね。
先ほどのトータルのポストペイドですけれども、一番利益がでるのはタブレットではなくて、携帯電話のほう。ポストペイドの携帯電話が一番収益、利益を出せるモデルのビジネスであります。これがほとんどメインのところです。
このポストペイドの携帯のお客さんで純増に転じたと。これは我々にとって非常にいい結果だと思っております。
その原因も、解約率がスプリント、携帯サービス開始以来の低い解約率に改善してきたということであります。
純増もよい純増と悪い純増がありまして。顧客の純増ですね。サブプライムのお客さん、お金を払ってくれないようなお客さんに無理して売ると、数だけ増えますけども、1年後、半年後、解約の嵐になる。
真っ先にマルセロがCEOになって最初に彼が手を付けたのはサブプライムのお客さん対する審査を厳しくすると。実質的に赤字のお客さんを審査を簡単に楽にして、審査を端折って、そういうお客さんをたくさん取ったら解約率も高くなるけども、なにしろ赤字のお客さんをとることになるわけですね。
払ってくれないお客さんを増やしてもしょうがないじゃないかということで顧客獲得の中身を良くした。結果半年後にどんどん解約率が改善したと。
ネットワークの改善
解約率が改善したもう1つの理由はネットワークの改善です。この2つで解約率が改善し、結果純増が増えてきたと。それぞれ項目をきちっとおさえてきた。
また、新しい販売促進のプランも着実にその成果をあげはじめたということであります。ということで顧客が純減していたのが、それに歯止めがかかって、反転し始めたと。これが戦略の1点目です。
2点目はOPEX、経費の削減ですね。すでに8億ドルの固定費削減に成功いたしました。これ約1,000億円規模ですけれどもスプリントとしてはこれを年間ベースに直して2ビリオン、2,000数百億円規模の年間の継続できる、サステイナブルなんですね。
継続して固定費が下がるという項目で年間2,000数百億円レベルの固定費削減ができるようにメドが立ったということであります。
これがその内訳ですね。販管費、売り上げ原価、商品原価、合計で2ビリオン分、20億ドル分の年間の固定費の削減。こちらのメドが立ったということであります。
そういう状況のなかで、なぜスプリントの株価が下がっているかということですけれども、2つ要因があると思います。1つは本当に経費の削減がうまくいくのかと、本当に売り上げの下落に歯止めがかかって利益が反転するのかと、まだ疑っている人が半分いると。
残り半分の人は資金が回らないんじゃないかと心配している。スプリントのキャッシュマネジメントですね。社債の返済の期限が今年の末、来年に出始めますけども、これらの社債払えないんじゃないかと心配している人がいるということであります。
ご心配はわかりますが、当然我々もそれに対する手立てを準備しておりまして、社債の返済、額はこちらに書いてあるような16年度の額があるわけなんですけれども、それの支払いのための財源として、手元流動性。支払いの財源を多様な手段で十分に確保し、用意しているということであります。
つまり多様な調達手段として社債の返済の財源メドが立ったと。これが私が自信を深めている状況であります。
スプリントは全米でダントツの1位になる
4点目。ある意味こっちが本質的な部分で、中長期で考えて大事な部分だろうと思いますけれども、ネットワークの改善であります。
スプリントが1年前、2年前に解約率がぐーんとあがった一番の理由は「ネットワークが悪い、つながらない、遅い」という状況があったわけです。
この2年間一生懸命に設備投資をして、ネットワークを改善しました。おかげさまでやっとスプリントのネットワークの改善の進捗がありました。
1点目は、接続のスピード。ついにスプリントはナンバーワンになりました。通信接続のスピード。お客様の大半はスマホで日常生活を送っているわけですね。とくに「アメリカはスマホのスピードが遅い、しょっちゅう画面に風車がぐるぐるまわってつながらない、という状況がありますが、スプリントはコンスタントに一番速い」と。
これはアメリカでも第三者の調査機関として著名なニールセンによるスピードテスト。こちらでスプリントがコンスタントに一番になり始めたということであります。
次に音声ですね。音声でも喋っている時に、電話がプツッと切れちゃう。電話に繋がらない。こちらに対して0.9パーセント位電話をかけている時に切れていたということですが。こちらも1年間で半分以下に減ったと。0.4パーセント、これは他社と比べてもかなりいいという状況まで比較論で見ても改善したと。
もう1つの第三者機関であります、ルートメトリクス。こちらにおいても、スプリントの調査結果の表彰回数が、51本受けていたのが211本ということで。こちらスプリントの携帯電話サービス事業開始以来おそらく最大の受賞をし始めたということであります。ということでスプリントの接続率。
もう1つ我々のほうで内部の調査結果がありますけども、こちら全国ベースで見ても2位ということで、全国ベースの接続率、繋がるか、繫がらないか。これが2位ということで、とくにニューヨークシカゴでは1位になったということになります。
ということで、ついに改善の結果が出始めたということになります。一番の売り物はネットーワークですね。
携帯電話の端末は各社同じようなものを売っているわけです。各社ともにiPhoneを売り、各社ともにサムソンのギャラクシーを売り、同じような端末を売っているわけですから。一番の商品はネットワークそのものです。
ネットワークがついに1位、2位になり始めたということです。じゃあ、今のレベルで満足しているかと言われると、私は日本のソフトバンクのネットーワーク接続率だとか、通信速度を毎日体験していますから、その状況からアメリカを見ているとどこが1位でも2位でもどちらにしろ品質は悪いと、もっともっと改善できると思っています。
そこで私自身がチーフネットワークオフィサーということで自ら名乗り出て、自ら意思決定して、スプリントのネットワークの設計と運用の総責任者をやっております。
毎日夜10時から1時、2時までソフトバンクの技術者およびスプリントの技術者と土曜も日曜も祝日もほぼ毎日、具体的なスプリントの設計に携わってやっていますが、これがもう楽しくてしょうがない。
今日も朝からやっておりまして、昨日も夜からやっておりましたけども、これは趣味の世界ですね。非常にネットーワークが詳しく見えてきて、おもしろくてしょうがない。
間違いなくスプリントのネットーワークは全米1位になります。ダントツの1位になります。ということが私の中で見えてきて、手応えを感じ始めたということでここは自信作としてやっていきます。
したがってまとめると、4つの反転のための基本的な戦略ですね。顧客の獲得の改善、経費の削減による改善、それから資金調達の改善、そして最後にネットーワークの改善。
この4つの項目において、それぞれ私は自信を深めてきたと。いつもこうやって強がりを言っているんじゃないですよ。1年前の今日を思い出してください。私は正直にスプリントは長くて苦しい戦いになるとはっきりと正直にみなさんに申し上げて、その3ヵ月後の決算発表でも多くの質問を受けて、苦しくて長い戦いになると。
正直に、私は去年の今頃はスプリントを売っぱらいたいと思ったんです。売っぱらいたいと思ったということを3ヵ月前の決算発表でも正直に申しました。
買ってくれる人が誰もいなかったということで、仕方なしにT-モバイルの買収、合併というはじめに思い浮かんだ基本戦略が成り立たないという判断だったら売るしかない。
けど買ってくれる人がいない。だったら仕方ない、自分で改善するしかないということで、腹をくくって、背水の陣を敷いて、言い訳なしに自分自身で直接取り組むということやり始めて、逃げも隠れもしないという覚悟の中で解決改善の糸口が見えてきたということと、私が自信を深めたということを今日は報告させていただいているということであります。
結果、スプリントも正式に発表しました。この15年度のEBITDAが77億ドルから80億ドルへと年間を通じても上方修正するということを正式に発表させていただいたと。
さらに若干早めではありますが、来年分の見込みを発表させていただいたと。つまり1回だけ改善したというわけではなく、傾向として、方向として自信を深めたということを発表させていただいたということであります。
調整前の営業利益、償却前の営業利益で約1兆円規模の物を出せるということが見えてきたということであります。ということで一番懸念のスプリントについて報告させていただきました。