IRセミナー特別講演「投資家マジ放談〜決算を読み解くAI活用〜」
AI・半導体関連株は今後どうなる?1UP投資部屋Ken氏×塩谷航平氏が語る次の注目テーマと好決算銘柄の見つけ方
投資家マジ放談〜決算を読み解くAI活用〜

塩谷航平氏(以下、塩谷):本日のテーマは「投資家マジ放談〜決算を読み解くAI活用〜」となっています。先日、相場が非常に荒れましたね。
1UP投資部屋Ken氏(以下、Ken):特にアメリカ時間の相場が荒れました。
塩谷:2人でAIの活用について話した後、相場やマーケットについても語りたいと思います。投資家向けの日本株リサーチサービス「PERAGARU(ペラガル)」を運営している私、塩谷と1UP投資部屋のKenさんとの2人で進めていきたいと思います。
Ken:Kenです。よろしくお願いします。
塩谷:相場の話はいったん置いておいて、AI活用についてお話しします。Kenさんは、株クラの中でも特にAIを活用しているイメージがあります。
Ken:株クラは両極端だと思います。株クラでAIを使っている人の中では、私の使用頻度はおそらく並くらいです。使っていない人はまったく使っていませんし、AIを使っていると言う人も、チャットレベルということが多いです。それに比べると、私はかなり使っているほうだと思っています。
塩谷:Kenさんは基本的にエージェンティックにAIを活用していますよね。チャットUIで都度プロンプトを打ち込むのではなく、自動化してさまざまな処理を行っているイメージがあります。
AIで500社の決算を効率分析|決算短信の要約・銘柄スクリーニングを自動化
Ken:例えば、よく閲覧するホームページの記事を、定期的にAIにまとめさせるといった運用をしています。
あるいは「J-Quants API」と接続したり、株価データを取得できるようなモデルコンテキストプロトコル(MCP)など、最近増えているデータ連携できるものを活用したりしています。
例えば、決算期に500社の決算発表があるとして、さまざまな数値が出てきます。その中で、決算が良かった企業だけをAIに分析させ、まとめさせた上で、その定性要因を可能な限り抽出するような使い方です。
定量的に良い数値は、決算速報やさまざまなサイトから取得できます。しかし、その背景を確認するために、決算短信や説明資料を一つひとつクリックして見ていくのは非常に面倒な作業です。
決算発表の中身を確認すると、「あれ? AI関連の銘柄ではなかったのに『AIの需要が来ている』と書いてあるな」ということが時々あります。そのような情報を取りにいくイメージです。
さらに、私の場合はそれを「Googleドキュメント」へ自動出力させています。それを「『TDnet』の要約フォルダ」に蓄積します。「Googleドライブ」はさまざまなサービスと連携できるので、後から「Claude」などを用いて活用しています。
塩谷:決算が発表される全銘柄に対して行うと、かなりトークンを消費しますよね。かなり費用がかかるのではないですか?
Ken:費用はかかります。例えば、前四半期比で変化した数値は「J-Quants」などで取得できるので、速報データを基に数値の変化にパラメーターを設定しています。例えば、前四半期比で営業利益が10パーセント以上伸びていた場合にポイントを加点するというような基準を設けています。その上で、基準を満たしたものだけを読み込んでくるようにしています。
塩谷:それでトークンの使用量を抑えているのですね。興味深いです。
Ken:ただ、私は「Claude」を使っていますが、すべてを読み込みにいけるのではないかと思えるくらい「Claude Haiku 5.5」や「Claude Sonnet 5.5」の性能が非常に向上してきています。
塩谷:「Claude Haiku」でもうまく動作するのですか?
Ken:可能です。
塩谷:「Claude Haiku 5.5」というのはすごいですね。
Ken:少し前の「Claude Opus 4.5」程度の性能があると言えますね。前回のモデルである「Sonnet」と比較しても、特定の指示についてはほぼミスがありませんでした。ミスがないのなら、コストを下げるために「Claude Haiku」を使用します。
塩谷:もし「Claude Haiku」で処理が可能であれば、かなりトークンの節約ができそうですね。
Ken:決算期以外はトークンが余るので、メインは「Claude Opus 5.5」を使用しながら、サブエージェント的に「Claude Haiku」で処理させたり、それではクオリティが少し下がると感じた場合は「Claude Sonnet 5.5」を使用したりと、新しいモデルが出るたびに試しています。
塩谷:おもしろいですね。私は会社として「PERAGARU」というサービスを運営し、そこでAIを活用した開発や企業分析をしています。
私だけでなくエンジニアチームも、フロンティアモデルを含めたAIの活用方法やトークンの節約方法などを日々キャッチアップしていますので、私自身も彼らから学ぶことでついていけている状態です。
Kenさんは自分で株の分析を行いながら、AIについても先ほどのトークン節約のように、非常に高いレベルで取り組まれていると思います。このような知識はどこで学ばれていますか?
ChatGPT・Claude・Grokをどう使い分ける?投資家の実践的AI活用術

Ken:AIから学んだことが多いです。主に使用しているのは「ChatGPT」「Claude Code」です。「Gemini」や「NotebookLM」も以前は使用していましたが、最近は使用頻度が減り、逆に「Grok Bot」を使う機会が増えました。「Grok Bot」の優れている点は、「X」の巡回が非常に強力なことです。
塩谷:当社のアナリストも「Grok Bot」が最近注目されていると言っていました。
Ken:「X」におけるAI活用は、日本語以外では非常に多岐にわたっています。「このような感じでAI活用に良さそうな情報を、毎日取ってきてまとめてください」といった指示を「Grok Bot」に出して、置いていかれないよう努めています。
塩谷:株の情報ではなく、AI活用方法の情報を取りに行っているのですね。
Ken:複数のBotを活用しています。あるBotはキープレーヤーの発言、例えばイーロン・マスクは「X」での発言頻度が非常に多いのですが、その発言を12時間ごとに日本語に翻訳して取得しています。また、特定の銘柄の決算速報が出た時には、その速報にどのような意見が出ているかを収集しています。このように「Grok Bot」もさまざまな使い方を試みています。
塩谷:おもしろいですね。エージェンティックに動かしているフロンティアモデルを含めたサービスがいくつかあるのですね。「Grok Bot」もあれば「Claude」もあり、「Gemini」も使っていますか?
Ken:最近は「Gemini」はほとんど使っていません。どちらかと言えば「Gemini」はスプレッドシートの更新など事務的な使い方をしていますが、そのような作業も「Claude」で使えるようになってきていると思います。
塩谷:私もやってみます。おもしろいですね。
Ken:ぜひ試してみてください。「Grok Bot」はかなり便利です。
塩谷:少し前まではエージェンティックに動かせないイメージがありましたが、そのようなこともできるようになっているのですね。
Ken:最近「Grok Voice」も新しいバージョンが登場し、レスポンスが非常に良くなっています。メール返信のような、事務的な場面でも十分活用できると思います。

塩谷:さっそく質問が来ています。先ほどの「決算書を要約させる」に関連して、「決算書は過去何年分を読み込ませているのですか?」というご質問です。
Ken:過去3年分くらいは読み込ませていますね。
塩谷:四半期ごとですか?
Ken:四半期ごとに読ませていたと思います。
塩谷:「PERAGARU」では、6年分を四半期ごとに読み込ませています。初回の読み込み時は、現在ほど安くない時でしたので、トークンの消費が非常に多く費用がかさみました。
Ken:そこが最初の課題ですよね。
塩谷:半年前に同じ作業をさせた場合と比較すると、現在では圧倒的にコストが下がっています。
そのような意味で、「今この負荷の高い処理をやるべきか?」と思うことがあります。半年後にはさらにコストが下がる可能性があり、全上場企業を対象にすると費用が40万円から50万円変わる可能性があります。そのような判断も重要だと思います。
Ken:最近3ヶ月は、特にフロンティアモデルはコスト削減に重点を置いたモデルが増えていますね。「Claude Opus」のような良いものも登場しましたし、「Claude Haiku」や「Claude Sonnet 5.5」などもあります。
加えて、キャッシュの部分のコストも、毎回読み込みが発生するためかなり大きいです。ただし、そのコストについても、上位モデルの「Claude Opus」でさえ低くなってきています。
塩谷:最近気になっているのは、私たちのような事業者が使用するAPIの料金と、ユーザーが普通にサブスクリプションで利用する料金とでは、価格帯がぜんぜん違う点です。
Ken:APIのほうが高いですよね。
塩谷:圧倒的に高いです。試算したところ半年前はおよそ30倍違いました。現在は少しAPIが安くなり、20倍くらいの価格差になっています。
この価格差の歪みは、これから徐々に縮小していくと思います。事業者のトークン料金が少し安くなる一方で、個人の料金が上がるような方向性になると考えています。逆に言えば、個人で利用するなら早いほうが良いように感じています。
Ken:確かにそうですね。私は自分自身で「何の業務にどのくらいトークンを使ったか」をダッシュボードに表示する仕組みを、「Claude」と「Codex」を用いて作っています。
特にこの1週間で感じたことですが、トークンの使用量はそれぞれのモデルによって異なるものの、させている作業は大きく変わっていないのに、サブスクの使用量が先週と比べて増加しているようなのです。
塩谷さんが先ほど話していた調整のようなものが、若干起こっている可能性があるのではないかと思います。「AnthropicやOpenAIの収益ってどうなの?」という話題もある中で、なにか隠れた売上の上げ方として、あちら側がかなりコントロールできる部分があるのではないかとも思います。
AIによる企業分析が進化|過去の業績予想や経営計画の達成度を評価
塩谷:その可能性はあると思います。公式のアナウンスは出ていませんが、1トークン単位の価格が変動している印象を持っています。
当社も現在、さまざまなAIを活用し、以前は実現できなかった機能の開発に取り組んでいます。その中で、半年ほど前に取り組もうとしていた内容があります。それは、企業が株主に対して提示したマニフェスト、いわば約束として述べたガイダンス、資本政策を含め、そのような過去の発言に対して実際の結果を採点する機能を開発していました。
しかし、先日ログミーのスタッフの方に相談したところ、「すでにログミーにあります」と指摘を受け、開発を断念することになりました。
Ken:私もその話を聞いて少し見たことがありますが、あまり使いこなせていません。
塩谷:ログミー側でも、かなりアップデートを続けているのかもしれません。今、その機能の画面を表示できますか?

塩谷:例えば、フレアス社の訪問マッサージ事業での活用です。ログミーの従来の書き起こし機能では、画面左側に通常の書き起こしが表示されます。画面右側には記事比較機能や業績変化を要約した情報などが表示される形式となっています。

塩谷:私も教えてもらって気づいたのですが、「過去決算で掲げた計画・戦略・予想とその達成状況」というパートがあり、達成度を評価する機能がありました。
Ken:とても良いですね。
塩谷:上場企業側にとっては好まれない機能かもしれませんが、よくこれを提供したなと思います。この機能を見ると、やはりマルチプルが高い企業は達成度が高いことが多いです。
Ken:企業の達成度が高い場合、蓋然性が高いので、多くの人がその信頼性を背景に高いバリュエーションを許容できるということなのでしょうね。企業側にとってはプレッシャーですが、達成度がランキングでわかるようになると便利だと思います。
私は、スコアリングは世の中を動かすと思っています。例えば「OpenWork」のようなサービスにおいてスコアが低い場合、採用活動が難しくなるケースがあるようです。そのため、スコアを上げる目的で、企業は福利厚生を充実させたり、給与体系や人事制度を見直したりするなどの努力を行うという状況があります。
同じようなイメージで、ログミーが提供するこのスコア上で、企業は高い点数を獲得する必要が出てきます。保守的になり過ぎても我々は困ってしまいますが、五角形のグラフのようなかたちでわかりやすく示す方法があれば、有効な手段として活用できるのではないでしょうか。
塩谷:できそうですね。しかも、達成度においてバツを忖度なく付けるところまで踏み込むのも良いのではないでしょうか?
Ken:ぜひ裏でお願いしたいですね。ログミーも社内でAIを活用しながら開発を進め、このような機能も手掛けていると思いますので、意見をどんどん届けていただけるとありがたいですね。
私自身はログミーに登壇する立場ですが、アンケートやチャットを利用して「このような機能が欲しい」など、ユーザーが希望を伝えていくことの価値が、非常に高まっていると感じます。
塩谷:確かに、実装するハードルは低くなっていますね。
Ken:「PERAGARU」もユーザーの意見を見ていて、「このような要望があるが、1時間から2時間の開発で実装できそう」というものは実装します。ユーザーが自分たちの声でサービスを作りやすい時代になっていると思います。
塩谷:ログミーと「PERAGARU」は若干競合するところもあるため、あまり言いたくないのですが、まさにKenさんがおっしゃったように、当社もユーザーからの要望は基本的にすべて拾い、それを集約する掲示板も設けています。これまで拾い上げられなかったユーザー要望も、現在ではかなりの割合で対応できるようになっています。
そのような意味で言うと、ログミーのユーザーは「PERAGARU」の10倍はいると思いますので、そのような取り組みをされても良さそうですね。
Ken:私からも気づいたことがあればお伝えしたいと思います。
AI・データセンター関連株が急落|巨額の設備投資と資金調達リスクをどう見る?

塩谷:私たちからも言っていきましょう。このようにAIを活用した機能を実装したり、法人でも、個人でもKenさんのようにエージェンティックにさまざまな活動をしてみたりと、AI活用がどんどん普及していると思います。
AI需要が等比級数的に増えていくため、AIデータセンター関連は引き続き成長が期待できると思っていましたが、10月8日はどのようになってしまったのでしょうか?
Ken:非常に厳しい結果となりました。
塩谷:Kenさんでもそうだったのですか?
Ken:10月8日に少し比率を下げました。もし答えが完全に明確であれば、例えば先ほどの「マルバツ」の話のように蓋然性が高ければ、市場はこれほど大きく動かないはずです。
ポジションのサイズを調整したいなど、さまざまな需要があるかもしれませんが、結局動く理由は、意見が分かれている上に、難解であるといったケースだからと考えています。
塩谷:前例もないですからね。
Ken:前例がない点は、非常に重要なポイントだと思います。
先ほど裏で塩谷さんとも話しましたが、CoreWeaveのケースも同様ですよね。同社は、顧客との契約がある程度決まってからGPUの調達を行っているようですが、あれほど先に大きな資金が一気に出ていくモデルというのは、これまであまり見られませんでした。あったとしても緩やかでした。
わかりやすい例としては、リース会社やレンタル業、不動産業などが挙げられます。しかし、これだけの規模で一気に需要が押し寄せるというケースは、これまでありませんでした。
資金需要が高まり、借り換えも必要とされています。CoreWeaveにおいては、2030年頃に大規模な調達が必要になると予測されています。日本で近いケースとしては楽天がありますが、現在はこのような事例が、世界中でさらに大きな規模で起こっているという話です。
塩谷:CoreWeaveで約5倍の規模です。
Ken:他にも同様のケースがたくさんありますね。
塩谷:IRENも2027会計年度に設備投資として300億ドルを使用するという話があります。
Ken:4兆5,000億円から4兆6,000億円とも言われています。
塩谷:驚異的な数字ですね。Nebiusも100億ドル規模の話をしています。
私が思ったのは、実際のところCoreWeaveの信用不安については、全体から見たインパクトはさほど大きくないかもしれません。しかし、関連するネオクラウド企業の将来的なファイナンス懸念にまで波及している状態だと思います。そのため、CoreWeaveの信用不安や利率15パーセントという状況に対して、さまざまな見方や解釈ができると思っています。
Ken:逆に言うと、資金が奪い合いになって足りないといった状況で、お金が回らなくなったところにCoreWeaveの無担保社債という一番弱い部分の利回りが急上昇してしまったということですよね。
塩谷:金利に対する市場の感応度が高まる中、現在は原油価格が上昇するとデータセンター関連銘柄が下落するという状況が続いています。
まさに原油価格の上昇によるインフレや金利上昇に向けた思惑が、データセンター関連銘柄に影響を与えるという難しい相場になっています。さらに、原油価格の変動は金利だけでなく、イラン情勢や中東情勢の影響も大きいです。
AI関連株のポジション調整|専業投資家のリスク管理
Ken:小型株を扱ってきた方々は、特定の銘柄のEPS(1株当たり利益)の動きを予想して売買を行うといったスタイルが主流でしたが、現在は市場規模が大きすぎてマクロ要因やさまざまな要素が影響しています。
また、金利上昇の要因にはイラン情勢に加え、AI分野への積極的な投資も影響していると考えられます。いろいろな要因がつながり、さらに前例がないために、「どうなのだろうか?」という状況が生まれています。
私はAI需要に対して引き続き強気ではありますが、それでもポジションは調整しようと思いました。資産比で40パーセント、場合によっては50パーセントほど増加していたポジションを減らし、30パーセント前後に持ってきたところです。
塩谷:資産比で40パーセントから50パーセントとは、かなり寄せましたね。30パーセントに落としたタイミングは8日の暴落の後ですか?
Ken:8日の前場からです。
塩谷:後場の下げの前には少し減らせたということですか?
Ken:影響を受けてはいますが、なにもしないよりはマシでした。ただ、日経平均と同程度のダメージを受けました。
塩谷:その後、9日に少し戻した時には特に動かさずということですね。
Ken:動かさずにいました。ただ、半導体以外のアイデアで、少し小型株を増やそうかと考えています。自分の資産比で3パーセント程度しか投資できないところには、最近は投資していなかったのですが、そのような分野にも少し資金を振り分けたほうが良いと思っています。最近はAI以外の動きも好調ですよね。
塩谷:雰囲気が変わりましたよね。
Ken:そのため、少し考え方を変えたというイメージです。製造装置も売上が大きく伸びているため、中長期的には大きな成長が期待できるのではないでしょうか。
塩谷:Kenさんはもともと中小型株を主に見ていたので、ある意味、主戦場に戻ってきたような感覚でしょうか?
Ken:AIをメインにしすぎていた部分を見直し、バランスよく取り組んでいます。
変化率や今後の需要を考えると、AIは非常に大きな可能性を持っています。化学系では依然としてマルチプルが低いと思われる部分も多く、そちらに集中して投資していました。しかし、これだけ値動きが激しいと、やはりストレスも大きいです。
塩谷さん、今後の見通しについてはいかがですか?
塩谷:先ほどお話ししたように、来週あたりはかなり不安定な状況に陥るのではないかと思います。
この不安定な状態が深刻化した場合、先ほど触れたようなネオクラウド企業のファイナンスに波及すると危険ですが、再編などで収束しやすいと思うのです。最も懸念されるのは、まさに「Too Big to Fail」の領域です。フロンティアモデルを開発しているOpenAIやAnthropic、ハイパースケーラー側がもし破綻してしまえば、すべてが終わる可能性もあります。
Ken:おっしゃるとおりですね。
塩谷:そのような中で、OracleとAnthropicは、まだ十分な資金調達ができていない状況です。彼らのファイナンス面で懸念が生じれば、これまで考えていたストーリーを全面的に見直す必要が出てくるかもしれません。そのため、来週はそのような懸念がないかをできる限り調査したいと思っています。
Ken:そうですね。現在、サイバー攻撃などが増加する中で、その危険性がしっかり払拭されるまでは上場が適切かどうかという話も、確かAnthropicかOpenAIのどちらかで言及されていたと思います。
その部分がリセットされる状況になれば、経済が深刻な影響を受けることは誰もが理解していると思います。したがって、どこかが助けるというかたちにはなるのでしょうが、そのような時はマーケットが過剰に下落しがちです。
塩谷:過剰に反応する傾向がありますね。当社はリサーチ会社ですので、このような点を考慮してレポートにまとめる必要がありますが、実際に自身で投資するとなると、ある意味で「考えても仕方がない」という部分もありますね。
Ken:おっしゃるとおりですね。そのため、投資を行う我々としては、ポジションサイズや分散投資によって適切にリスクをカバーしていく必要があると考えています。
塩谷:中小型株も増やそうかという話ですね。非常に実践的です。
Ken:AI銘柄を買っている層は似通っているため、売る時も一気に売ってくる傾向があります。また、AI関連のファンドも増えていますが、厳しい状況に陥っているところもあるようです。
参入している投資家層を他の銘柄に分散させることで、リスクを抑えられるという考え方もあるでしょう。日本の小型株やバリュー株は、ほぼ日本の個人投資家だけで取引していますので、そのような視点で考える余地もあると思います。
次に注目する中小型株・IP・人材関連銘柄
塩谷:投資家層の属性を分散させるというのはおもしろい考え方ですね。
もう1つ気になったのですが、中小型株の割合を少し増やす場合、テーマは何にしますか? 中小型株と言ってもさまざまですが、SaaSやIPなど、どのようなテーマを増やしますか?
Ken:IP系は検討してもいいと思っています。反対側の受け皿として機能していることはチャートからもわかりますし、あるいは、コンサルティング業などは今も注目しています。
塩谷:10月9日は非常に強かったですね。
Ken:非常に強かったです。人材紹介業もまだ好調なのではないでしょうか。
例えばベイカレントは採用は順調ですが、採用費が想定を超えると書いてありました。採用コストは上がっていますので、それに伴い人材紹介会社は利益を出せているはずです。したがって、もう少し期待できるのではないかと思います。
ただ、株価もけっこう上がってきているので、ある程度の水準には達しているところもあります。例えばジェイエイシーリクルートメントも高値を継続しています。
塩谷:同社は海外転職も関連しますので、また少し文脈が変わりますね。
Ken:ムービン・ストラテジック・キャリアの株価も、ほぼ高値圏にありますね。今回は半導体の比率を増やしすぎた点が反省点です。今後は個社要因も注視していきたいと考えています。
半導体関連株は好決算でも売られる?キオクシア・東京エレクトロンの決算をどう見る

塩谷:一方で、10月末にはキオクシアや東京エレクトロンの決算があり、数字は非常に良いと思われますが、これについてはいったんスルーしますか?
Ken:買い増すことはないと思います。数字が良い銘柄は決算を跨ぎますが、地合いが良いのに下がっていた場合は、決算を跨ぐ際のリスクリワードが良い銘柄も多いのではないかと考えます。
塩谷:なるほど。このような事象が起こる前ですが、ローツェの決算に対して、あのような反応でした。同じような展開になる銘柄もあるのではないかと思います。
Ken:製造装置は全般的に良い印象ですし、それに伴い部材関連も良いと思います。小型株では、アドテックプラズマテクノロジーの決算もかなり良かったですよね。おそらくどこも前倒しで来ているという話です。
塩谷:決算発表後に株価がしっかり上がりましたね。
Ken:不安定な局面では、ローツェなども株価が全値戻ししていますよね。ふだんであれば、これだけ受注が増えた場合は「今後どうなるのか?」と期待して次の決算をまたぎ、中長期で保有したいというポジションになると思います。
しかし、マクロ要因などで不透明感が出てくると、半導体関連のポジションをすべてゼロにすることは少ないかもしれませんが、ポジションの規模を縮小せざるを得なくなります。その結果、株価は下落してしまうことが考えられますよね。
塩谷:弱含みの方向ですね。そのような見方の投資家が多いと、決算前にわざわざ買いに動かないのも当然でしょうね。
一方で、グロース株はどうでしょうか? 私にとって象徴的なのはプログリットです。SHIFTやベイカレントはグロース株と呼ぶには異論がありそうですので大型グロース株に分類すると、決算をしっかり出した企業は値持ちが良いまま株価も上昇しています。
プログリットは「『ChatGPT』の音声モードでいいよね。『Duolingo』も駄目だし」といった空気の中、まさにAI代替の筆頭というイメージの企業です。今回のガイダンスでは増益率が前年比で15パーセント程度とやや物足りない印象がある中でも、決算後の株価反応が良好で、その後も安定していました。
今回の決算期ではグロース株のほうが決算に対する反応が良かったのかもしれませんね。
AIによる代替リスクは?プログリットの決算から考える人間によるサポートの価値
Ken:プログリットもそうですが、人間は管理されることが重要だと感じます。そのような使い方ができる人がまだ少ないのかもしれません。
AIを使うことで話しやすく、恥ずかしさもなくなりますが、「それで、できますか?」という話です。私も最近パーソナルジムに通い始めましたが、人がいることによって「やろう」となり、当日キャンセルは迷惑をかけると思うため、行きたくなくても行きます。そのような需要があると考えます。
例えばフィジカルAIが登場するなど、最終的にそこまでAIが管理するようになればいいと思います。
また、使う側の話になりますが、例えば英語力を向上させたい場合、人間側が「このようなシチュエーションで会話をして」とAIに指示を出します。AIの能力は非常に高いので、人間側が目指すゴールをAIに明確に示すことができれば、使い方も変わっていくのではないかと思います。
例えば現段階では「バグを1個ずつ潰していってください」のような指示を出しますが、それを「バグが起こらないようなシステム運営をしてください」という指示に変えるイメージです。
今は前者の使い方、つまり、一つひとつ指示を出している状況です。例えば筋トレでも同じことがいえます。「健康でいたいので、健康管理をしてください」と指示することで、そのゴールに向けてAIが「筋トレも必要ですね」「食事管理も必要ですね」と提案してくるような変化が、あと1年以内くらいには起こると思います。
そうなっていくと、トータルサービスの提供に対する需要が変化する可能性がありそうです。なぜ人間が「バグを1個ずつ潰していってください」と指示を出すのかと言うと、まだ人間が「AIよりもレベルが高い」と思っているためなのです。
塩谷:なるほど、それはおもしろいですね。
Ken:私はAIにブラウザゲームをやらせることがありますが、これまではキャラクターの「筋力」という能力を上げるために、「敵を何体倒してください」と指示していました。
しかし、「最強のキャラクターを作りたいです。何を行ったらいいか逆算して自分で考えてください」と伝えると、効率を考えながら進めることもできるため、おそらく私以上の結果を出してくれるわけです。
塩谷:AIが行うということですね?
Ken:「最強のキャラクターは筋力を上げるだけではなくて、実は俊敏性や魔法防御能力なども上げる必要がある。効率を考えるとこのような鍛錬の仕方が一番効率的」というようなことを、人間より高いレベルで実現できます。ある意味、私たち自身がAIに制限をかけている部分もあるのかと思います。
塩谷:指示を出す側が制限をかけているのですね。
Ken:これはプロンプトの問題とはまた別の話です。それを意識することが当たり前になると、AIに任せられる部分はさらに広がると思います。
塩谷:コーチングも含めて、AI側が指揮をとっていくということですね。
Ken:「その後どうなりたいか」という理想形を入力するのが良いとは、Anthropicの開発者も言及していますね。
塩谷:そうなってくると、また状況が変わりそうですね。確かに、今のお話を聞いて思ったのですが、「PERAGARU」のKPIをAIで自動管理しています。毎週月曜日に、KPIにおいて改善できる点や目標未達の部分について厳しくフィードバックをするようAIを設定していました。しかし、最近はAIのフィードバックが厳しすぎて見るのがつらくなり、エージェントを終了させました。
しかし、相手が人の場合は申し訳ないので、終了させることは難しいですよね。そうすると「コーチングし続けてもらう」ことに価値があるという場合もあるかもしれません。
現在セキュリティ関連の中小型株で盛り上がっていますが、いかがでしょうか?
セキュリティ関連株はどこまで上がる?AI時代に恩恵を受ける企業の見極め方
Ken:セキュリティは、現状、セクター全体としては上昇していますね。しかし、恩恵を受ける企業とそうではない企業が明確に分かれると思っています。私は空売りをほとんどしませんが、したいと思う時もありますね。
セキュリティ関連では、直近でベイカレントのプロジェクト一覧が開示されていましたが、AI関連と同じくらいセキュリティ関連が多いと感じました。
塩谷:変化がすごかったですよね。
Ken:表現が適切かはわかりませんが、AIがこれほど進化すると、セキュリティ面については少し軍事的なミサイルのように思えます。強力なミサイルが登場すれば、それに対抗できる防衛能力を持つミサイルを作らざるを得ません。そのように開発が止められなくなるという点が、これまで以上に鮮明になってきたように感じます。
塩谷:アメリカでは、セキュリティ関連でも選別が始まっている印象があります。クラウドストライクやオクタは非常に強いですが、それ以外はむしろ株価が下がってきているところもあり、同じトレンドが国内でも起こりそうですよね。
Ken:そうですね。ヒアリングしてみると、決算が明けても問い合わせは増えていないという会社もあります。
塩谷:その銘柄はどこか気になりますね。コメント欄で「Kenさん、いつもお世話になっています。ありがとうございます」と感謝のコメントがたくさん来ています。「1UP投資部屋」はメンバーシップも展開しているのですね。
Ken:2年前くらいに始めました。私たちが「アフタートーク」といって雑談を配信したり、オフ会の優先案内があったりします。
塩谷:今回のオフ会は公募がほぼなかったのは、メンバーシップ枠で埋まってしまったためですね。私もメンバーシップに参加しようと思います。
Ken:セキュリティ関連は息の長い相場になる可能性がありますが、やはり大手企業の強さが目立ちます。
塩谷:秘密鍵に関する議論など、高難易度のセキュリティ分野では、私が調べた限りでは日本には主要メーカーがありません。そうなるとクラウドストライク一強というイメージです。
その導入コンサルティングを行っているマクニカホールディングスや、よりピュアに取り組むテクマトリックス以外の企業に大きな恩恵はないのではないかと思います。しかし、他の銘柄の株価も非常に上昇している状況です。
Ken:別の動画でも述べたのですが、AIがこのように高度化し、今後ますます高度になっていく中で、仮に日本に「戦えます」という中小企業があったら、大手セキュリティ会社が迅速に買収している可能性が高いと思います。
中国のオープンウェイトモデルがけっこう使われているという話がありますが、それと対等に戦える企業があるとすれば、とんでもない技術力です。ただ、そのような企業は日本にはないですね。

塩谷:確かにそうですね。日本で唯一優位性があると思うのは、カウリスが行っているような、電力事業者のデータベースを利用するといった動きです。あれは海外ではあまり見られないアプローチです。
Ken:空き巣対策とかですよね? 少しアナログ的なアプローチですね。
塩谷:そのような施策は、日本独自のスキームでおもしろいですね。
Ken:カウリスの社長である島津さんの行動力でかたちになった力技のような印象があります。
塩谷:究極のアナログが最先端技術になったようなイメージです。
Ken:インターネットとはまた少し違いますよね。そのような分野は非常に強みがあると感じますね。
塩谷:カウリスの株価も上がっていますか?
Ken:かなり上がっていますね。私は以前、カウリスの取材をしたことがあり、どこかで投資したいと思っていたところ、いきなり株価が動いてしまい、入るチャンスを逃してしまいました。
サンリオ・任天堂などIP関連株に注目|AI普及がエンタメ市場の追い風に?
塩谷:セキュリティ関連も注目されていますし、それで言うと、先日はIPやゲーム関連の銘柄が強かった印象です。
サンリオや任天堂はもちろん、小型株ではブシロードやセガサミーホールディングスなども動きがありました。このトレンドは続くのでしょうか?

Ken:エンターテインメント業界は依然として注目されると思います。AIを使って効率化が進んでいくと、ほんの少し暇な時間ができることがあると感じます。そのような可処分時間が増えると、エンターテインメントがますます重要になると考えます。
人間は、暇な時間があると寂しさを感じることがありますよね。細かいところでは、私はコーエーテクモゲームスの『信長の野望』などのゲームをよくプレイしますが、グラフィックが再利用されているところが特徴的だと感じます。
10年前から変わらない武将がいたり、子どものグラフィックのまま70歳になる武将がいたりします。子ども時代が有名な武将が、ゲーム内で歳を取る中で、グラフィックに変化をつけることにコストをかけても売上に大きく影響しないと判断されたためだと思います。ただし、このような細かい部分の改善はユーザーとしてはうれしいものですよね。
アップデートを含む新しいダウンロードコンテンツ(DLC)がこれまで1本だったのが2本、3本と出せるようになるなど、アフターケアのところで充実度がさらに向上していくのではないでしょうか。
「PlayStation 5」も現在はダウンロード版が主流で、アップデートによって大きく変化しています。そのような観点もAI活用としてはありだと思います。
塩谷:セガサミーホールディングスがログミーのイベントか何かで話していましたが、海外で「Netflix」などのストリーミング配信で日本のアニメが紹介されることが大きな追い風となり、展開がしやすくなっていると聞きました。
Ken:『ソニックシリーズ』もまさにそのようなケースでしょう。私たちはデータセンター関連ばかり注目していますが、実は裏側では細かな時代の変化がたくさん起きています。
エンターテインメント、IP関連で、新しいアイデアで勝負できる企業も多くあるのではないかと思います。私はどちらかというとアイデア勝負のようなところがあります。
塩谷:ストーリー作りが非常に優れていますよね。
Ken:AIに張りすぎなくても、それなりのパフォーマンスを出せるのではないかと思います。
塩谷:今年も残り2ヶ月半程度ですが、これほど激しく動いた相場は、正直初めての印象ですね。
Ken:本当に疲れますね。
塩谷:このようにさまざまなテーマについて話すのは楽しいですし、Kenさんに聞きたいことが毎回たくさんあります。定期的に開催したいですね。
Ken:話しやすくていいですね。カメラは回っていますが、ふだん私たちが話していることとあまり変わりませんね。
塩谷:私たちは月に1回程度、Zoomで銘柄会議のような場で話をしていますが、今日はその延長のような感じで話せました。本日はありがとうございました。
Ken:ありがとうございました。
登壇者プロフィール
塩谷航平氏
株式会社hands代表取締役。2013年に野村證券へ入社。2018年に株式会社handsを創業し、投資家向け日本株リサーチサービス「PERAGARU」を提供。オルタナティブデータを駆使し、中小型株を中心に多様なセクターの企業分析を得意とする。
1UP投資部屋Ken氏
専業投資家。2020年に大学卒業後、専業投資家に。1日の大半の時間を投資に費やす。投資手法は、中長期で1.5倍〜3倍になると思えるような銘柄に投資。投資以外では、YouTubeチャンネル「1UP投資部屋」を中心に情報発信。


