IR向上委員会 4月「IR×AI IR現場の実践知」
【生成AIの使い分けから想定問答の作成方法まで】自分たちで使うからこそ話せること 安心して活用するための法務の視点
スピーカー名
FiNX株式会社 代表取締役 後藤敏仁 氏
弁護士 加茂翔太郎 氏
IR×AI IR現場の実践知

後藤敏仁氏(以下、後藤):みなさま、こんばんは。FiNX代表取締役の後藤です。IR向上委員会4月のテーマは「IR×AI」です。
みなさまもおそらくさまざまなAIを活用されていると思います。AIの使い方は人それぞれレベル感もあり「自分はかなり使っている」という方もいれば、「気になってはいるが、最近たくさん情報が流れ過ぎていて、ちょっと距離を置いている」という方もいらっしゃるかと思います。
そのような中で、「これはどんなふうに使うと、おもしろいのか?」といったアイデアについて、今日はみなさまと意見交換しながら、私の考えも少しお伝えしたいと思います。オンラインで視聴されている方は、「こんなふうに使っています」「私はここをちょっと悩んでいます」などと、QAにどんどんコメントをいただければ、途中で拾っていきます。
本日は弁護士の加茂さんにご参加いただいており、私も非常に楽しみにしています。特に上場企業において、AIをIRで活用することは便利な面が多い一方で、「本当にそのような使い方をして大丈夫なのか?」という点については、ある種のリスクや懸念もあるのではないかと考えています。
現在、私は独立して自分の会社を運営していますが、仮に私が上場企業のCFOの立場にいたとして、部下に「いろいろ便利だから使いたいです」などと言われたとしても、どこまで会社として取り組むべきか判断が難しく、また公の場で言われた時に答えづらいと感じます。そのような点についても、加茂さんにいろいろなお話をうかがえればと考えています。
投資家に伝わる資料をつくりたい!

後藤:最近は東京証券取引所の市場改革もあり、時価総額で悩む会社が非常に多いと感じます。みなさまがさまざまな悩みを抱えている状況かと思います。
「一生懸命やっているが、株価が上がらない」というケースがある一方で、今日のように突然、日経平均株価が6万円にタッチしてしまうというような現象もあったりします。
企業の内側にいるとなかなかピンときづらい部分もありますが、逆に言えば、私はふだんからマーケットを見ている立場なので、その文脈や視点から見ると「確かにそうだ」と感じることもあります。
投資家が関心を寄せているポイントを理解することで、何をどのように伝えれば効果的なのかが変わってきます。これについては、正直なところ、ふだんからマーケットに関するリサーチを続けたり、アンテナを張っていないと、AIに直接聞いてもすぐに適切な答えが出てこない場合が多いのではないかと思います。
こうした点をみなさまと一緒に共有しながら進めていけたらと考えています。初めて参加される方もいらっしゃるかもしれませんので、少しだけこの会について簡単にお話しします。
もともと、IR分野では知見を共有する場が少ない状況です。私も今はIR支援業者という立場にありますが、どうしても業者としての発信に偏りがちです。そのため、業者のポジショントークに留まらず、みなさまが現場でどのような取り組みを行っているのかを共有しながら、少しずつ何か1つでもレベルアップにつながる場として、この会を始めました。
本日は加茂さんにもご参加いただいていますが、一方的に何かをお伝えするのではなく、みなさまが持っている知見を共有しながら、それを全員の共有知として活用できるような場にできればと思います。どうぞよろしくお願いします。
それでは、加茂さんの自己紹介をお願いします。
登壇者紹介

加茂翔太郎氏(以下、加茂):みなさま、あらためまして、弁護士の加茂と申します。私は、2022年末の「ChatGPT」公開当初からAIに触れ始めました。
企業法務の弁護士をしています。AIで弁護士というと、なんとなく「AI法務から入った人なのか」と思われがちですが、私は逆にAIの業務活用からスタートして「これはすごい」と思い至り、趣味として取り組み始めました。ただ、弁護士として、AIを違法なかたちで使用してはいけないと考え、どうすれば適法にAIを活用できるかも研究しているところです。
また、趣味が高じてこのようなかたちで勉強会やセミナーを開催する中で、多くの方に興味を持っていただいています。現在では弁護士業務だけでなく、AIエンジニアリングの分野でも、企業がAIサービスを提供する際に、どのようなプロンプトやワークフローを構築すればよいのかといったアドバイスも行っています。
AI法務としては、企業の法的リスクマネジメントの体制構築や、生成AIの安全かつ効果的な導入に向けたセミナーなどを実施しています。私自身は「Claude」「Gemini」「ChatGPT」などを使用していますが、実はメインで使っているのは「Cursor」です。
よろしくお願いします。
後藤:加茂さんは弁護士という肩書があるので、今日は法務のお話もうかがいたいと思います。加茂さんは法務に限定せず、AIをどのように活用すればよいかといった点にも対応可能で、ふだんから幅広くAIを活用されている方です。そのような内容に興味がある方がいらっしゃれば、ぜひご相談いただければと思います。
登壇者紹介

後藤:私は、FiNX株式会社の後藤と申します。2022年に独立し、IR支援などを行っています。一方で、投資家としての側面も持っており、非常に真剣にマーケットを見て、株価が上がったり下がったりする理由について日々考えています。
ご存じの方もいらっしゃるかとは思いますが、私は「2倍株リサーチ」というものを実施しています。これは、1年前、半年前、3ヶ月前の株価を比較して調査を行うものです。
1年前と比較して現在でも2倍以上の株価を維持している銘柄には、一定の企業戦略やコーポレートアクションが背景にあるのではないかと考えています。そうした企業が具体的にどのようなコーポレートアクションやIR戦略を採用したのか、経営戦略であったのかなど、さまざまなことを日頃から考えています。
投資の文脈では、自分がまったく内部情報を持っていない分野について、自身の分析を用いて検討してみることもあります。
また、支援する立場としては、「どのような市場のドメインに対して、どのような競争優位性を構築した状態で出ていくと時価総額が上がりやすいのか。それはデータとしてこのような感じになる」といった事例を研究することもあります。
必ずしも近接領域だけに留まらず、市場の関心が高いテーマを取り上げると、比較的良い反応が得られることもあります。そのため、時価総額について悩んでいる企業があれば、気軽にご相談いただければと思います。
AIの特徴を理解して使い分ける

後藤:「IRでどんなAI活用を行っているのか?」ということで、今回はIRがテーマです。まずは、私からどのように使っているかをご紹介したいと思います。
会場にお越しいただいている方々にうかがいたいのですが、「ChatGPT」を使っているという方は挙手をお願いします。「ChatGPT」の使用割合はやはり高いですね。
「Gemini」を使っているという方はいますか? 「Gemini」もけっこう多いですね。「Grok」はいかがでしょうか? 少し減りますね。「Perplexity」を使っているという方は? ほぼいないぐらいですが少しいらっしゃいますね。
他には「NotebookLM」、そしてやはり「Claude」ですね。「Claude」を使っているという方はいますか? 意外と「Claude」は少ないようです。「Genspark」はどうでしょうか? 「Genspark」も少ないですね。
手を挙げられた方の中には、複数の項目で手を挙げている方もけっこう多いと感じました。この資料を作り始めたのは1ヶ月ほど前からですが、その時点から私自身の使い方にも微妙な変化が出ているほど、AIごとに特徴が分かれていると実感しています。
現在の私の利用方法としては、具体的には、リサーチャーパーティ、シンクタンクパーティ、アウトプットパーティでAIを使い分けており、一部ではすぐさまアウトプットまで持っていく手法を用いるケースもあります。
使い分けをする時は、リサーチを「Perplexity」か「Grok」か「Claude」で考えることが今のところ多いです。これには理由があります。
まず「Perplexity」は出典がどこなのかが非常にわかりやすいです。「この原典から引用したものに基づいて、こういうふうに考えます」といった対応を返してくれます。
他のAIツールでは勝手に要約されてしまい、どの参照データを基にこのデータを出しているのかがわからない場合があります。そのため、まずは「Perplexity」をベースにリサーチを進め、その上でデータソースを基に「NotebookLM」や「Gemini」、「Claude」に投入します。
考えるテーマによっては、初めからアウトプットパーティに直接投入してレポートを作成させるケースもありますが、さらに深掘りして検討したい場合には、リサーチャーパーティが出したリサーチデータをさまざまなツールに試しに投入し、良さそうなものを中心に自分の思考をさらに深掘りするといった方法を取ることもあります。
「Grok」をここで挙げている理由は、IRに関連する点で言えば、「Yahoo!掲示板」や「X」の情報をリサーチする際には「Grok」が適していると感じるからです。「X」が提供しているツールであることから、「X」のコメントには「Grok」が最適だと思います。
しかし、「Perplexity」や「Grok」もそれらしい結果を返してはくれるものの、外部向けのレポートや記事作成の際には日本語の調整が必要になるケースがあります。そのため、日本語でのアウトプットにおいては「Claude」のほうが優れていると考え、「Claude」に依頼することが多いです。
一方で、検索から即座に必要な情報を得たい場合には「Genspark」を使用することもあり、「Claude」を最初から活用することもあります。
「NotebookLM」をどのような場面で利用するかというと、私は決算説明資料を作成する機会が多いのですが、スライドのアイデアを考える場面で、そもそもビジネスモデルの構造がどうなっていて、本質的な競争優位性がどこにあるのかを日本語で整理した上で、その結果を「NotebookLM」に投入します。そうすると、「なるほどそういうことだったのか」とピンとくることがあります。
このように「NotebookLM」から得たヒントを基に、最終的に自分でスライド化をするという流れで進めることが多いです。特定のツールだけで完結させることは、IRの文脈では現在のところありません。さまざまなツールを使い分けながら活用することを意識しています。
おそらくみなさまも、それぞれ工夫しながら使っているのではないかと思います。後の話にもつながるかもしれないので、1点だけ私が気をつけていることをお伝えします。
特にリサーチャーパーティ関連の情報はいいとしても、公開されている情報を前提に進めることを重要視しています。お客さまからいただいた内部情報をそのまま「NotebookLM」に投入するようなことはありません。
学習しないモードにはなっていますが、それでも少々疑問が残る部分があり、許可なく第三者用のツールやサードパーティに情報を入力してしまうことが適切なのか、大丈夫なのか気になることがあります。そのため、気になる情報がある際には、社名などをブラインド化する、必要に応じて一部修正を加えるなどの工夫をした上で入力するよう配慮しています。
具体的な社名をそのまま入力するような行為は慎み、一歩踏み込むかたちで情報の取り扱いに注意を払うことを心がけています。
無料診断レポート

後藤:最近よく行っているのが、無料診断レポートです。「IR資料をちょっと見てほしい」というお客さまは、全部無料なのでいつでもお声がけください。最近では、私のエッセンスを詰め込んだ上でのレポート診断が「Claude」でほぼ自動化できるようになりました。
この診断は非常に優れた結果として出てきます。例えば、どこに改善ポイントがあるのか、資料のスコアリングまで可能になっています。完璧ではありませんが、すぐに出すレポートとしては、それなりの精度があると感じています。
問題は、診断レポートが出た後に自分たちがどのようなアクションを取っていくかということです。AIはアクションまでは対応してくれません。とはいえ、最初のヒントとなる部分までは、十分な成果を提供してくれます。
診断レポートの構成としては、まず、エグゼクティブサマリーがあり、どのようなビジネスモデルでどのような特徴があるのか、企業概要や市場でのポジショニング、同業他社との指標を比較するテーブルなどが作成されます。
この比較テーブルは非常に優れており、「PERや営業利益率は、ユニバースの中でどれぐらい乖離率がありますか?」「どの指標が他社よりも強くて弱いのですか?」といったデータを基に、テーブルをすぐに生成してくれます。自分でリサーチを行うと大変な作業ですが、これがすぐに出力されるのは大変便利です。
さらに、「投資家の訴求ポイントはどこにありそうですか?」「従業員1人当たりの営業利益率はどうですか?」「業界平均との乖離率はどうですか?」「事業ポートフォリオ別に分析した時に、どこが強くてどこが弱いですか?」などをすべてレポートで出してくれます。「ChatGPT」でも聞けば同様に出してくれるのかもしれません。
口コミ調査レポート

後藤:これは「Grok」と「Claude」を混ぜて書いていますが、すべてを記載することはできないため、プロンプトの一例をスライドに提示しています。書ききれない部分も多く、見づらいと思いますが、参考程度に見ていただければと思います。実際には約5倍から6倍、場合によってはそれ以上の内容があります。
まず、プロンプト自体を「Claude」で動作させており、「Claude Code」の「Agent Teams」を使用しています。「Agent Teams」は専門家にさまざまな内容を同時に投げかけるような感覚で活用可能です。
また、「Agent Teams」に対応するプロンプトについては、多くの方が試されているかもしれませんが、AIを活用して最適なプロンプトを作成し、高い精度で結果を出せるようになっています。そのため、一度で良い結果を得られる仕組みが構築されています。
事例調査:内容の理解

後藤:「NotebookLM」の活用例をスライドで示しています。私がこれを作成したのはつい最近の4月17日になります。スライドは少し難しそうに思えるかもしれませんが、新株予約権といったMSワラント系のよくある話題です。
MSワラントのような複雑なファイナンススキームについては、ファイナンスした際に30ページにもおよぶような非常に長い開示文書が作成されることがあります。私はまずそれを、最初に「NotebookLM」に投入します。この文書はすでに公開されているものなので、そのまま投入しても問題ありません。
情報を投入するとインフォグラフィックで1枚にまとめられ、「そういうことなんだ」と、なんとなくその構造が理解できます。
記載内容をサマライズして把握することで、「ここからどうやって図解の資料に持って行こうか?」「ここは総額10.7億円を強調して書くべきなのか、それともどこにフォーカスポイントを置いて、どんなふうに見せようか?」といったことを軸に考えることも可能になります。
「NotebookLM」の難点は、すべてがPDF形式で提供されるため、そのままスライドに使用するのが難しいことです。図のイメージやイラストが、AIによる作成だという特有の雰囲気を持ち、直接使用するには使いにくい印象があります。
そのため、私は「NotebookLM」を基に「Canva」を使用したり、あるいは「Gemini」に画像生成をiPhoneで直接依頼して作らせてみるなど、少しずつ工夫を重ね、最終的には自分で仕上げることが多いです。
IR資料を作る際、全体の6割から7割を占める重要な作業はリサーチだと感じています。アウトプットに悩むこともありますが、実際にはかたちが決まってしまえば作業は比較的単純です。そのため、リサーチが非常に大切だと考えています。
ここからは、加茂さんがどのように活用されているのか、お話をお聞きしたいと思います。
検索して、分析して、まとめる。情報整理と言えば、NotebookLM。

加茂:私がどのようなものを使っているかという点について、弁護士業務など他の業務の使い方をみなさまにご紹介しても、IRでは使いづらいと感じる部分があるかと思いましたので、IR文脈に加えて、このような使い方も可能ではないかという点をお伝えできればと思っています。
AIを活用する際に、よく「どのモデルを使ったらいいですか?」と聞かれますが、私は、基本的に「まずはとりあえずなんでもいいので使ってください」という話をしています。
正直なところ、実際に使ってみないとわかりません。「言われたから使ってみたけどそんなものか」という印象になります。ぜひみなさまに活用していただき、それぞれのAIの個性をどんどん感じ取っていただくことで、「これはこちらで使うといいね」という感覚が理解できるようになると思います。
AIの能力は、情報を収集し、それを分析して、表現するという3つの段階を基本としています。
最近では、より高度な機能として、エージェントという機能が登場しています。エージェントは、情報収集、分析、表現という3つのステップの前段階として、計画を立てる機能を備えています。計画を立案し、「これが効率的ではないか」といったかたちで効率的なプランを提案します。その計画を実行に移し、さらに検証を行うといった役割も果たします。
エージェントになるとプロセスが5ステップになったり、先ほど「Agent Teams」の話がありましたが、エージェント機能を持った存在が複数登場します。
複数のエージェントが登場すると、おのおのが適当なことを言っては困るため、プロジェクトマネージャーのような役割を果たすエージェントが現れ、全体を集約し、一括で報告するような仕組みが構築されつつあります。これが最近のAI事情です。
その中で個別の話を申し上げると、まず「NotebookLM」は非常に優れたAIで、使い勝手のよい部分があります。どのような機能があるかというと、検索し、分析し、まとめてくれるというのが「NotebookLM」です。
「NotebookLM」の紹介

加茂:これが「NotebookLM」の画面です。チャット機能を使って、Webで新しいソースを検索することができます。最近この機能がアップデートされ、「DeepResearch」も併用できるようになりました。
例えばここに「トビラシステムズについてIR観点で情報をまとめて」と入力すると、先ほどお伝えしたとおり、計画を作成します。一生懸命情報を収集するという過程に進み、「このまま席を離れても大丈夫です」と表示されます。
後藤:最近はこのような仕組みになっているのですね。
加茂:ここですでに多くの情報を集めています。少し時間がかかりますので、「キユーピー3分クッキング」方式で、作業後の画面を映します。

加茂:すでに1ステップは終了し、こちらが集約された内容です。画面の左側に「ソース」が配置されており、それを画面中央の「チャット」で集約して示しています。
画面右側の「Studio」が優れており、ポッドキャストのように音声で解説してくれたり、スライドを作成したり、動画解説やマインドマップの作成、フラッシュカードの生成などが可能です。

加茂:例えば、マインドマップを使用すると構造がひと目でわかるため、有用です。画面のように、中期経営計画の内容が構造化されている状況です。

加茂:スライドを作る際、「Nano Banana」というツールは、非常にきれいでおしゃれな見た目のスライドを自動で作成してくれます。
ただし、先ほど後藤さんがおっしゃったように、現在は編集が十分に行えないかたちで出力されるのが課題です。編集は難しいものの、「5分後にプレゼンしなきゃ」というような時には、一気に作って報告を行うような使い方も可能になる状況です。
後藤:基本的にビジュアルがわかりやすくて、図解のアウトプットに優れているのは、「NotebookLM」だと私は思います。「Genspark」と「Claude」では、こうした図解はあまり見られません。視覚と文字が中心となることが多く、やはりGoogleは非常に優れていると常々感じています。
非常に参考になるため、私もこれを活用しつつ、「なるほどこういう世界地図を書いて、こんなふうにすればかっこいい」と、ヒントにしながら自分で作成するという方法を取っています。
加茂:文字はきれいに表示されますが、若干潰れてしまうことがあるので注意が必要です。

加茂:また、IR業務の文脈では「IR面談でどのようなことを聞かれるのか?」といった想定問答の作成が必要になるかと思います。その際には単語帳(フラッシュカード)機能を活用して、想定問答集のようなものを作成することも可能です。
応用的な使い方ですが、例えばカスタムプロンプトに「投資家の立場でIR面談で会社に突っ込みたいと思うポイントを質問にして、同社のIR担当者の立場で回答を作成してください」と入力し、単語帳を作るかたちで進めていきます。
そうすると、画面にあるように投資家目線で「2026年10月期は売上高20パーセント増の計画ながら、営業利益が12.7パーセントの減益予想となっている合理的な理由を説明してください」といった非常に的確な突っ込みが入ります。
さらに、IR担当者の立場では「中期計画2028の達成に向け、41名の純増に伴う積極採用がある」「オフィス移転による一時的な重複家賃・移転費用を将来の成長に必要な先行投資を織り込んでいる」というような回答を作成してくれます。
想定問答の作成は、まず何を問われるかを想定する必要があるため大変だと思いますが、それを一気に作成してくれます。活用していくと非常に便利です。しかも、かなり的確な指摘をしてくれるので、少し怖いくらいです。
後藤:こうしたアイデアは私にはなかったので、非常にすばらしいと思います。
資料を作成する際には、投資家が何を聞いてくるか、あるいは投資家に伝わりづらいことを中心に表現する必要があると考えます。そもそも投資家がどのような視点で質問してくるかを把握できてさえいれば、よりよい資料が作れる気がします。
加茂:AIに考えさせて、自問自答させるといった使い方ができると、かなり上級者だと思います。これが「NotebookLM」の使い方です。
「分析して」ではなく、「この人になりきって語って」。

加茂:調べて分析し報告するのはAIの基本的な機能ではありますが、他にも似たような事例として、表現の対象を自分に向けたいという位置づけや、ペルソナを活用することで、より詳細な分析が可能になる場合があります。

加茂:例えば、トビラシステムズの2028年中期経営計画を「Claude」に投入し、さらに「この中期経営計画について投資家と面談することになったので、いろいろな投資家のペルソナを想定して、ナラティブに面談で指摘されそうなポイントを挙げてください」と入力します。
ここでは「ペルソナ」や「ナラティブ」がキーワードとなります。
投資家といっても、機関投資家、個人投資家、ESG投資家などさまざまな投資家がいて、それぞれ考えている視点が異なります。質問が抽象的だと臨場感に欠けるため、より具体的で臨場感のある質問を可能にするために「ナラティブ」を追加します。そうすると、ペルソナをかぶったAIがその投資家になりきり、ナラティブに質問してくれます。
さらに、AIは忖度することもあるため、「本音で語ってね」と入力すると、ペルソナの人が本音で語りそうな内容を引き出すことができます。人間相手に模擬面談を行うと気を使われる部分がありますが、AIであれば忖度なくビシビシと指摘をしてもらうことが可能です。
(今回出力された)機関投資家のペルソナに関しては、ナラティブ性がやや弱いと感じます。「前回外した根本原因の分析が甘いのではという疑念を持たれます」など、表現が少しナラティブ性に欠けますね。「このタイプが問うのは計画の信頼性そのもの」「グロース投資家はこういうところを気にします」「バリュー投資家はこういうところを気にします」といった内容が記載されます。
ナラティブ性がやや弱く提示されているように感じる場合は、「ナラティブというのは実際にセリフのかたちで出力してください」と追加で入力します。臨場感を出すためには、実際の面談場面でのセリフを具体的に提示したほうがいいと思います。
「穏やかな口調ではあるが、質問の芯は鋭い機関投資家A氏」として、「中期経営計画2028を拝見しました。まず率直におうかがいしたいのですが、前回の中計は2021年公表ですね。あれは当初計画比96パーセント、営業利益にいたっては70パーセントで着地されました。気になるのは、前回未達の最大の要因がビジネスフォン向けで、9.5億円に対して5.6億円、59パーセントの達成率だったわけです」などと出力されます。
指示を出した本人が、だんだん冷や汗をかいてしまうような語り口でペルソナに詰められていきます。AIに詰められる経験をぜひみなさまにも試していただきたいです。
こうした取り組みが何に良いかというと、新人のIR担当の方の訓練になります。例えば、これに音声入力や出力を応用すると実際のロールプレイのような状況を作り出すことができ、非常におもしろい方法だと思います。
後藤:長いプロンプトを入力するわけではなく、わりとシンプルな指示で結果を出すという感じですよね。
加茂:そうですね。「台詞で語ってください」という指示についても、「本音で語って」「ちょっと厳しめに言って」といったトーンの調整も可能であることが、AIのすごいところです。
ちなみに、今回は「Claude」で実行しました。各社が公表した公開情報をAIに読ませることで、投資家のみなさまが考えていることと同じ目線に立って対応することが可能になります。
AIを投資家にして、IR面談の予行演習。想定問答の作成にも便利。

加茂:少し先走りましたが、IR面談の予行演習も実施することができます。先ほどは「セリフで語らせて」と指示しましたが、「面談の予行演習をしてください。初めに挨拶から」と指示すると、挨拶から対応してくれるようになります。

先ほどの「機関投資家A氏」が名刺交換を済ませた後、実際の会話のように質問をしてきます。そこから反応を入力すると、また別のテーマに話が展開されていくという流れになります。
例えば、質問に回答せずに「すみません」と入力すると、それでは許されないような会話の状況になります。こうした予行演習を行うことができます。
実はこの資料も、AIに作らせています。

加茂:AIを活用することで、HTML形式のセミナー資料を作り、画面上で動きを出すことも可能です。ホームページを操作するような感覚でセミナー資料を動かすことができます。
スライド資料ももちろん良いのですが、特に法律の話などでは、2割から3割の方が説明中に眠ってしまうケースもあります。このような場合には画面がスクロールできたり、トグルで説明項目の開閉ができたり、操作に応じて動きが出る資料を使うことで、集中力の維持につながるのでおすすめです。
この資料は「Claude Design」という最近リリースされたモデルを使用して作成しました。私はデザインの素人ですが、このモデルを用いることで比較的見た目のいいスライドに仕上がっています。
ただし、課題もあります。「Claude Design」だけで編集することが非常に難しく、作成したスライドの細部を修正するのに手間がかかっています。また、トークンの消費量が多く、すぐに上限に達してしまうという状況です。
後藤:ちなみに、会場のみなさまは「Claude Design」を使ったことがある方はいらっしゃいますか? さすがに先週リリースされたばかりなので、まだいないですね。
加茂:最新の、鮮度の高い情報をお届けしています。
便利さの裏側にある、4つの落とし穴。

加茂:私は弁護士でもありますので、法律の話もさせていただければと思います。
後藤:ここはやはりモヤモヤしていた部分であり、しっかりと考えておきたいというテーマですので、私も楽しみにしていました。
加茂:IR文脈でAIを利用する場合、大きく4つの法的注意点があります。インサイダー取引に関する問題、個人情報に関する配慮、営業秘密や機密情報に関わる点、最後に生成された情報の正確性、いわゆるハルシネーションリスクです。これらについて少しお話しします。
未公表決算を、AIに分析させてもいい?

加茂:まず、「未公表の決算資料をAIに分析させていいか?」についてです。これは、みなさまが最も気になっているのではないかと思います。
これは結論から申し上げると、それ自体が直ちに違法というわけではありません。インサイダー取引規制について説明すると、未公表の重要事実がある場合に株式の売買などをしてはならないという規制です。したがって、情報をただ伝達するだけで直ちに違法とされるものではありません。
もう1つ重要な点として、売買などを勧奨する行為があります。つまり、インサイダー情報を抱えた状態で「この株を買ったほうがいいよ」などと発信してしまうことは、インサイダー取引規制違反に該当します。この点が今回の文脈では関連性が高い部分かと思います。
AIに情報をインプットする場合、例えばOpenAIやGoogle、あるいはAnthropicのようなAIプロバイダーの企業に情報を提供することが、「伝達」に該当してしまうリスクは確かにあります。しかし、例えばOpenAIに「この株を買ったほうがいい」と情報を渡すかたちではないため、その行為自体がインサイダー取引規制違反になるかというと、そうではないように思われます。
他方で、各社には情報管理規程等が存在するかと思います。そのため、法律の話というよりは社内規程との関係で情報管理規程に触れてしまうリスクがあるのではと考えます。結論としては、各社ごとに異なる対応が求められるかと思います。
上場企業について申し上げると、特にインサイダー情報をAIに入力することはあまり望ましくないのではないかと思います。とりわけ公表前の重要事実に関しては、万が一それが公表されたり、どこかで漏洩したりした場合には、説明がつかない事態が生じる可能性があります。そのため、そうした情報はAIに入力しないことを原則とするほうがよいと思います。
ただし、今後の情勢変化によっては、データセキュリティを十分に確保した上で、どのレベルの機密情報を扱うかについてさらに精緻化されていくことが見込まれます。その段階においては、適切な限度内で活用していただければと思います。
私自身はAIの活用を推進する立場にありますが、たいていの場合、弁護士に相談すれば「それは入れないほうがいい」といった慎重な対応を推奨されることが多いかと思います。ただ、この話題は一概にゼロか100かという議論ではなく、ある程度のグラデーションが必要なテーマだと考えています。
後藤:このテーマは非常に興味深いと感じています。グラデーションの話で言えば、情報を入力したとしても直ちに問題となるわけではないという考え方がある一方、「現場実務で普通に使っちゃってます」という意見もよく聞きます。
具体的なケースとして、「個人で無料のものを使っています」というように、部下が勝手に対応してしまう状況も見られるのではないでしょうか?
加茂:無料のAIの場合、設定により学習データとして利用されてしまうケースがほとんどです。一方で、無料であっても学習に利用されない設定にできるものもありますが、デフォルトでは利用されてしまうものが多い状況です。
そのため、法律の解釈によっては情報が伝達されたとみなされるリスクが高くなるため、基本的に無料のAIの利用を避けるべきであると考えます。これは禁止したほうがよいでしょう。
後藤:「AIは使いたいけれど、予算が厳しくて、『Claude』などを個人的に有料で契約している社員がいる」といった場合はどうでしょうか?
加茂:各従業員が個人のアカウントを使用しているということでしょうか?
後藤:会社のアカウントではなく個人のアカウントです。「会社はMicrosoftはOKなんですけど『Claude』などは駄目なんです」というようなケースがよくあると思います。「本来使用したいものではなくて使いにくいので、個人で有料で使っているんです」という例もあると思います。
加茂:それは、いわゆる「シャドウAI」として議論される問題です。かつて「シャドウIT」と呼ばれた現象に似ていますが、従業員が自身のアカウントで会社の機密データを取り扱ってしまうといったケースを指します。これ自体は違法かというと、直ちに違法ではありません。
ただし、会社のデータ管理との関係ではやはり問題があります。会社のデータは会社の資産であるため、勝手に従業員の私的な場所に流出してしまうと、会社としてデータを追跡することが困難になります。また、データが万が一流出していたとしても、それを確認することができないため、特に上場企業などにおいては大きな問題となります。
したがって、AIを禁止するのではなく、「このAIを使っていいよ」というかたちで従業員が使いやすいAIを提供することが重要です。それをホワイトリスト化し、ルールを策定した上で使用を許可します。それ以外のAIの使用は禁止して会社データの取り扱いを制限することで、現時点ではバランスのとれた管理が可能になると考えます。
後藤:非常に良い方針だと思います。会社として許可されたものは使用可能とすれば、リストにないものを「なんかおもしろいな」と思ったとしても、「それはちょっと俺は聞いたことないから駄目だな」と言えますね。
特にIR部門では機密情報を扱うことが多いため、このような管理方法が健全だと個人的には感じます。
株主名簿・面談メモをAIに整理させてもいい?

加茂:続いての議論は、「株主名簿・面談メモをAIに整理させていいか?」です。これは、いわゆる個人情報の話となります。
株主名簿には個人の名前や住所、保有株式数などが記載されており、これは個人情報に該当します。実は面談メモや議事録も、法律の解釈によっては個人情報と解されてしまいます。
個人を識別できる情報が記載されている場合、それが個人情報とされます。例えば、個人の名前や会社名が記載されており「あの人のことだね」と識別できる場合、それは個人情報に該当すると解釈されます。
この場合、AIにその情報を読ませる行為が、個人データの第三者提供に該当するかどうかが1番の問題となります。すなわち、「個人データをAIプロバイダー、OpenAIなどに渡してしまうのが第三者提供になるのではないか?」という問題が発生するということです。
「クラウド例外」という考え方があります。これは少し専門的な話ですが、クラウドサービスにデータを提供する場合、一定の要件を満たせば、自分の倉庫を利用しているようなもので、それ自体は問題ないとされています。いちいち本人の同意を取らなくてもよいという考え方です。
しかし、生成AIの利用局面において、この理論を用いるのは適切ではないだろうという意見が多く、主流の考え方となっていると言えます。したがって、「クラウド例外」を適用することは難しいのではないかという点を、みなさまも頭に入れておく必要があります。
後藤:「クラウド例外」とは、例外的な措置という意味ですか?
加茂:おっしゃるとおりです。「クラウド例外」とは、預けた先が「個人データを取り扱わない」と契約で明示し、実際にその措置を取っている場合、第三者へのデータ提供には該当せず、自分の手元にあるのと同じ、または自分の倉庫に預けているのと同じ状態とみなされるという考え方です。
他にも、越境移転規制というものもあり、これは単なる第三者提供に留まらず、データを外国にある第三者へ提供する際には、より厳密な手続きが求められます。本⼈の同意を得ることが必要な場合や、同意を得なくていい場面の条件、適合体制の確保が必要とされる場面などが該当します。
多くのAIプロバイダーがGoogleやAnthropicなどの海外事業者である状況を踏まえると、この点についても論点になることを念頭に置きつつ、深い議論にまで発展する可能性があるため、これを詳しく話し始めると1時間では到底終わらないほどの内容になります。
「個人データの取り扱いを委託している」という考え方に基づいて進める方法が、最も一般的な整理の仕方と思われます。その際にキーワードとなるのが「DPA」です。
DPAとは「Data Processing Addendum」や「Data Processing Agreement」と呼ばれ、主にデータの取り扱いについて、AIプロバイダーとの間で取り扱い方法を契約で定めるための様式を指します。その仕組みをきちんと整えていることが望ましいとされています。ただし、この話題についてはかなり深い内容になります。
後藤:これは難しいですね。結局、株主名簿をAIに利用させることはあまりないように思いますが、面談メモについては、かなり利用しているのではないかという気がします。こうしたテーマに自分たちで対応するのは、非常に難しい課題だと感じました。
加茂:「こういう場合はどうだ」「ああいう場合はどうだ」など状況による違いもあるため、一概には言えません。このように、AIと法律に関する話題では、非常に悩ましく、一概には言えない部分があるという点をご理解いただきたいと思います。
中計・統合報告書のドラフトを、AIに作らせてもいい?

加茂:続いて「中計と統合報告書のドラフトを作成する際に、AIに作らせていいのか?」についてです。
それ自体には特に問題があるわけではありません。問題視されるのは、未公表の内容や秘密情報が含まれる場合です。
1点目は、自社の営業秘密が含まれている場合、その営業秘密性が失われるリスクです。営業秘密とは、不正競争防止法上で保護されている情報ですが、それには秘密管理ができていること、非公知性があること、有用性があることなどが条件であり、その中でも秘密管理性、すなわち「ちゃんと会社として秘密に管理していたか」が問われます。
それが崩れる可能性があるため、営業秘密をAIに読み込ませることについては各社で注意が必要です。
2点目は、受け取った情報がNDA(秘密保持契約)の下で秘密情報として扱われている場合、その情報をAIに取り込ませてよいのかという議論があることです。
これには2つの側面があります。1つは秘密の開示に該当してしまうのではないか、つまりOpenAIなどに秘密を開示してしまったと評価される可能性がある点です。もう1つは、NDAに含まれていることが多い目的外利用との関係で問題となりうる点です。
NDAに関する問題は非常に深い議論が行われており、結論がまだ出ていません。機密については解釈の余地が広いためです。本当に見せてはいけない機密情報もあれば、大きな問題とならない情報もあり、そこにはグラデーションがあります。このため、各社や各弁護士が頭を悩ませながら最適な方法を模索しているところです。
後藤:「中計・統合報告書のドラフトをAIに作らせる」という例で言えば、ドラフトのベース資料を投資家に刺さる表現に書き直しても、すぐには刺さる表現にはなりません。今日は法律の観点から話していただいていますが、ここは非常に難しい点で、そもそもマーケットの向こう側には人間がいて、昨日の自分と今日の自分も少し違うということもあります。
相手は人間ですので、確率論ではそのようなケースもありそうですが、マーケティングと同じで、擦り合わせすぎると刺さらなかったりすることがあります。そもそものこの問い自体が適切でない場合もありますので、これは少し覚えておいていただきたいです。過去の参考事例をリサーチベースで活用するのは良いと思いますが、こうした使い方をしている場合は注意が必要だと思います。
加茂:AI自体はあくまで作業を代行するツールであり、何を伝えたいか、どのように見せたいかは人間が考えるべきことだと思います。また、法律の話でいうと、著作物に該当するのかしないのかという議論もありますが、今回は深く触れずに進行します。
後藤:著作物の議論は深いですね。
加茂:例えば、私が作成したこのスライドに著作物性があるかと言われると、おそらくないのではないかと思われます。これをみんながばらまいてしまい、私が「心外だ」として差し止め請求や損害賠償を請求したとしても、おそらくそれは認められないだろうと思います。しかし、これを人間がきちんとデザインして作成した場合、それは認められる可能性があります。
後藤:著作物は難しいですね。
AIに作らせた開示資料、そのまま出して大丈夫?

加茂:最後は「AIに作らせた開示資料、そのまま出しちゃって大丈夫?」という、いわゆるハルシネーションの問題です。
これに関しては、品質管理はまだ人間が担うべきだと私は考えています。そのため、AIが生成したものであっても全面的に依拠するのではなく、必ず読み直すことが重要です。性能が向上しているとはいえ、意外に些細なミスをしている場合もありますので、それをきちんと確認していただければと思います。
後藤:IR担当者のみなさまは、さすがにこうしたミスは犯していないだろうと思いますが、いずれは事故が起こるのではないかと思っています。現代的な開示ミスのようなものがそのうち発生するだろうという予感があります。
また、些細なミスが出る可能性もあり、それがどのようなかたちで表れるかわからないものの、そのまま進めているわけではないと信じています。
加茂:法律の話で言えば、アメリカではすでに有名な事例ですが、架空の裁判例が提示されたケースがあります。「やる人はやる」という状況になっています。
そのような中で、AIが作成したものをハルシネーションチェックするという作業は非常に骨が折れます。人間の間違いは人間なら気づきやすいのですが、AIの場合、間違いが巧妙であるため、これが一番疲れるポイントです。
ハルシネーションを避けるための観点として、引用を適切にさせたり、引用を含めた出力を行わせたりすることで、間違いを減らすことができます。一度AIに検証させ、ハルシネーションもチェックさせるようにします。また、別のAIにチェックさせるといったテクニックもありますが、できるだけ自己管理による運用を目指すということです。
後藤:これは非常に重要なポイントだと思います。さすがに開示資料をそのまま使うことはないと思いますが、社内で何かを検討する時の資料程度であれば、AIにさっと作らせて「こんなアイデアがあります」として出すこともあるかもしれません。しかし、この場合、内容によっては先ほどのような事態が起こります。
例えば、私の関わっている領域では、「市場規模はどうなんだろう?」「その市場に対しての参入プレーヤーは誰がいて、競争優位性はどこなの?」といった会話をよくします。この市場規模の推定は厄介で、時には非常に適当に出されたデータがたまたまノートに書いてあった内容と一致してしまい、「なんの根拠もない」と冷や汗をかくことがあります。
そうした理由から、私はそのような場面で「Perplexity」を使うようにしています。「Perplexity」は原典が明確で、「これは総務省のもので、ちゃんと書いてある」となれば提示することも可能ですし、「いやいや、これは怪しいぞ」というものは使用を控えたほうがよいと考えています。そのあたりをきちんと整理することが重要だと感じています。
「Perplexity」に限らず、最近ではさまざまなツールが原典を明示でき、プロンプトによっては原典付きで生成結果を出すことが可能になっています。しかし、他社で成功した事例だとして、あたかも正しいかのような回答が返ってくる場合があり注意が必要です。これは非常に驚かされる場面でもあります。
法律を全部覚えなくて大丈夫。この3行だけ、持ち帰ってください。

加茂:本日はさまざまな法律についてお話ししましたが、3点お持ち帰りいただければと思います。まず、情報を扱う際、特に先ほどご説明した3種類の情報に関しては、対応前に一度立ち止まって慎重に確認していただきたいということです。「入れる前に止まる」です。
次に、「出てきたら検証する」、ハルシネーションの対策については必ず人間の目できちんと確かめて行うべきということです。出力結果に関する責任や、レピュテーションリスクを自分が負うことになりかねない点には十分ご注意ください。
最後は「迷ったら、聞く」ということで、AIに関する法律の話は非常に難解で、法律が加わるとさらに複雑になる場合があります。そのため、個別の判断が難しい場合には、弁護士や専門家に相談するのがよいでしょう。
後藤:AIによって便利な世の中になっていると感じていますが、今日の話を聞いて、「そうか、いろいろなことを考えないといけないんだな」と思います。
さまざまなAIの使用が進む中でトークンを使い果たし、「今日はもう作業できません」となってしまうこともありますが、私はそこに至る前に、自分自身が疲弊してしまうこともあります。「あっ、今日はもう駄目だ」というような、毎日そんな状態です。
ただ、ありがたいことに、私の周りにはさまざまな分野でAIを活用するスペシャリストが多くいます。最近あらためて思うのは、それぞれの道のスペシャリストがいるAIチームに相談するほうが、結局はすべてを自分でやるよりも早いのではないかということです。
法律に関しても相談することはできますが、適切な質問の方法が私にはわかりません。それぞれにスペシャリストがいると思いますので、自分でがんばりすぎずに素直に聞くのも1つの方法だと思います。
質疑応答:AIごとの特性と活用方法について
後藤:みなさまから届いた質問をご紹介します。「企業やサイトのLLM対策を複数のAIに読ませて評価してもらうと、けっこうバラバラな回答になる」というご質問です。
このような状況はよくあります。AIに関しては、聞き方次第で回答が変わる部分があり、AIの反応や特性が多少異なる場合があると考えています。丁寧な聞き方をする場合は、先ほど加茂さんが話していたように、ロールを与えてAIになりきらせて語らせるといったアプローチがあるかと思います。
この「なりきった状態」は、さまざまなAIで「Skills」や「My Gem」「Gems」「My GPTs」といった名称で呼ばれています。このような設定を事前に作成しておくのは、非常に有用な手法だと考えています。私もさまざまなAIに対して「こういう人になって」と、あらかじめ決め打ちで設定しています。
さまざまなAIにいろいろと質問する中で、狙いに近い結果を得るためには、どのAIが最適かを検証するのがよいと個人的には思います。
加茂:AIごとに性格のようなものが少なからずあると感じています。2026年4月23日現在時点での印象では、「ChatGPT」は優等生的な部分があり、以前より日本語能力は改善されてきていますが、いまだに少しクセが残っているように思います。
「Gemini」は陽気な性格で、西海岸の風を感じさせるような回答をしてくれます。「Claude」は非常に真面目で日本語も丁寧なため、確かな信頼感があります。「Grok」はおもしろい要素を持ち、やんちゃながらも優秀という雰囲気です。
これらのAIに触れてみて、ご自身の目的や性格に合ったものを選ぶのもよいかと思います。
後藤:さまざまな現場での活用方法があるのではないかと思います。「僕はこんなふうに使っていますよ」「私はこんなアイデアがありますよ」という方がいらっしゃれば、情報交換をしながら、より良いAIの使い方を研究していけたらおもしろいと思います。
お時間となりましたので本日はこれで終了となります。みなさま、ありがとうございました。
加茂:ありがとうございました。


