【N高グループ投資部】投資部員とファンドマネージャー 藤野英人氏のQ&A【中編】
AI時代、投資家はどう生き残るのか?レオス・藤野英人氏が語る勝ち筋とキャリアの変化
2026年3月、レオス・キャピタルワークス創業者の藤野英人氏による特別講義が開催されました。N高グループの生徒から寄せられた質問に対し、AI時代に投資家に求められる視点や今後伸びる領域、若い世代のキャリアの考え方、個人投資家が持つ情報の価値などをテーマに回答。正解を出す力だけでは差がつきにくくなる時代に、何を学び、どのように価値を生み出していくべきかを語りました。3回に分けてお伝えします。
【前編はこちら】
「勝つためのルールは無限にある」レオス創業者・藤野英人氏が語る投資スタイルと資産形成
※後編は後日公開予定です

AI時代、投資家は何を学ぶべきか?
質問者:私はインターナショナルスクールに通う中学生です。企業も成長させられるような投資家になるために、今のうちに学んでおいたほうがよいことは何でしょうか? 進路を決めるうえで、アドバイスをいただきたいです。
藤野英人氏(以下、藤野):すばらしいですね。中学生の段階で、自分が利益を上げるだけでなく、企業も成長させられるような投資家になりたいと考えている。しびれますね。その視点は非常に立派だと思います。
そのような問いが立てられるのであれば、すでにかなりよいところまで来ているのではないでしょうか。進路を決めるためのアドバイスも、あなたにはそれほど必要ないのかもしれません。
とはいえ、これからはAI時代ですから、大きな変化が起きる可能性は高いと思います。何が起きるのかはまだわかりませんが、振り返ってみたときに「あれはとんでもない変化だった」と思うようなことが起きるのではないかと感じています。
ですから、進路を決めるためのアドバイスは、むしろ私のほうがみなさんからほしいくらいです。「今さら進路を決めるの?」と思われるかもしれませんが、私自身、最低でもあと30年くらいは生きるつもりでいます。その30年で何をするのかについてですが、今の運用のあり方が本当に正しいのか、正直まだわからないのです。
もしかすると、運用のような仕事は、あと1年、2年もすればAIにすべて任せられる時代が来るかもしれません。そうなれば、プロのファンドマネージャーが必要なくなる可能性も、十分にあると思います。私は、そのくらい大きな変化が起こり得ると見ています。
だからこそ、ただ指をくわえて見ているわけにはいきません。自分自身も次に何をするべきかを考え、来月から、月曜日だけですが東京藝術大学の大学院に通うことにしました。
そこで学ぶのはアート、より具体的にはアートマネジメントです。美術や音楽をどのように市場につなげていくのかについて、学んでいこうと考えています。
また、Netflixの『超かぐや姫!』のような作品にも良い意味で刺激を受けました。あのような作品を自分でも作ってみたい、本当にNetflixで『超かぐや姫!』のようなものを世に出したいと思っています。
そのため、大学院で学ぶことと並行して、新しい事業にも取り組もうとしています。現在、数名とともに新たな会社を立ち上げる予定です。今のレオス・キャピタルワークスでの仕事を3分の2ほど続けながら、残りの3分の1は芸術やアート、アニメーションの領域に充てていく考えです。具体的には、アニメーションの会社を作る予定です。
これは、今後期待する業界という話にもつながりますが、私はその会社で代表取締役会長となり、自らも投資を行うつもりです。そして、『NARUTO -ナルト-』を手がけた方、ジブリでナンバー3の立場にいた方、さらに『ドラゴンボールZ』の映画を作った方の3名とともに、アニメーション作品を生み出していきたいと考えています。『超かぐや姫!』を超えるような作品を、次々と世に送り出したいと思っています。
このAI時代において何が生き残るのかを考えると、「考えること」自体には引き続き価値がある一方で、「答えを出すこと」だけでは価値になりにくくなっていくのではないかと思います。だからこそ、どれだけ良い問いを立てられるかが重要になります。問いの精度をどう高めるかが、ますます大事になるのだと思います。
また、AIによってさまざまな仕事が代替されていく一方で、人間にとっては、遊ぶことや創造することの価値が相対的に高まっていくのではないかとも感じています。その中で、アニメーションは非常に重要な領域になると思っています。
ただ、アニメそのものについて言えば、『超かぐや姫!』をご覧になった方ならわかると思いますが、作り方としてはあえて雑にしているところもありますよね。ストーリーはかなり精密に作っている一方で、絵については、わざとラフにしているところもあれば、非常に精密に作っているところもある。おそらくあれは、AI時代における一つの制作手法なのだと思いますし、今後はそのあり方もさらに変化していくのではないかと考えています。そうした点も含めて、取り組んでいきたいと考えています。
質問に戻ると、中学生であれば、まだ何にでも挑戦できます。だからこそ、私のような年長者に答えを求めすぎないほうがよいと思います。自分ならどうするのかを起点にして、どんどん形にしていったほうがよいのではないでしょうか。実際、今これを聞いているN高のみなさんには、非常に大きなチャンスがあると思います。
なぜなら、これからは、既存の規範に縛られすぎる人ほど厳しい時代になるかもしれないからです。いかに規範の外へ踏み出せるか、そこを決断できる人が勝てる要素を持つのだと思います。それは、起業家としても、投資家としても同じではないでしょうか。
ですから、私の話を聞いて答えを求めるのではなく、自分の好きなことをどんどんやっていくのがよいと思います。しかも、その「好きなこと」は、少し変わっていれば変わっているほど、むしろ価値があるのではないかと思います。
次に伸びるのは、既存の業界ではない
質問者:今後期待する業界について教えてください。
藤野:いろいろあると思いますが、既存の「業界」という枠組みで定義できるものは、あまりおもしろくないのではないかとも感じます。
おそらく、既存の業界の半分ほどは消えていく一方で、もう半分の中から、これまでになかった新しい業界が生まれてくるような気がしています。それも、これまでは仕事とは見なされていなかったような領域です。
例えば、5年ほど前であれば、VTuberが仕事になるとはあまり想像されていなかったと思います。しかし今では、一大産業になっています。そのようなものが、今後非常に数多く生まれてくるのではないでしょうか。
したがって、今後期待する業界は何かと問われれば、それは既存の業界というよりも、これから新たに作られていく領域なのだと考えています。
売り値の考え方
質問者:株を買う際に、売り値を決めてから買いますか?
藤野:あまりそのようなことはありませんね。
投資家の視野は日常の中でどう鍛えるか?
質問者:日常生活の中で意識するべき投資に活きる視点や、視野を広げるためにするべきことは何ですか? また、学生に適した投資手法について教えてください。
藤野:私たちは、既存の立場や価値が大きく揺らぐかもしれない時代を生きています。これは、下剋上が起こる可能性を大いに秘めた状況でもあり、非常にわくわくしますよね。もし私が中学生や高校生だったら、この時代をものすごく楽しんでいたのではないかと思います。
実際に若返ることはできませんが、その代わりに、私は今も中学生や高校生のつもりで行動しようと考えています。つまり、未来が見えないことや、よくわからないことを前提にしながら、新しいことに挑戦するのが重要だということです。
ですから、年長者に進路の話を聞く必要はないと思っています。それよりも、自分で新しいことを生み出していくことのほうが重要です。
個人投資家はプロに情報量で劣るのか?
質問者:プロの投資家に比べると、私たち高校生が得られる情報の質や量は圧倒的に劣っているように感じます。この点をどのようにお考えですか?
藤野:そのようなことはないと思います。おそらく今は、機関投資家や政府と高校生との間に、情報面で大きな差はないのではないかと思います。
もちろん、実際のプレイヤーにどれだけ近いかは重要です。政府や企業の現場で、何かを動かそうとしている当事者と直接接することができるのであれば、そこで得られる情報の質や量は圧倒的に違います。しかし、そのような立場にない限り、ファンドマネージャーであるというだけで、高校生と得られる情報が大きく違うわけではないと思います。やはり、それだけAIのテクノロジーの進化が大きいのだと思います。
AI時代、投資家に必要な「毎日の習慣」とは
質問者:藤野さんが投資家として毎日欠かさずしていることを教えてください。
藤野:今、大事なのはアンラーン、つまり「忘れる」ことではないかと思います。私は仲間にもよく、人間がAIに対して勝てる要素があるとすれば、それは忘れることだと話しています。
どれだけ過去の前提を手放し、新しい秩序や新しい環境の中で、新しいものを積み上げていけるのかが重要なのだと思います。その意味で、私が毎日欠かさず意識しているのは、とにかく日々違うことをするということです。
また、起業家や経営者にはできるだけ多く会うようにしています。0から1を作っている、非常に個性的な人たちです。その人たちのアイデアや、何を考えているのかということを、一生懸命聞くようにしています。
投資家として今後生きることを考えると、上場株の世界では勝てる余地が小さくなっていく可能性があります。一方で、未上場企業やスタートアップには十分なデータがないため、AIでもまだ読み切れない部分があると思います。その意味では、AIと同等の条件で戦えるのは、起業の世界なのかもしれません。
以前スタートアップのピッチイベントで審査に関わった際、プレゼンの内容をAIにも解析させて、有望な企業を見てもらったことがあります。日本経済新聞社が主催する社会起業家やスタートアップ向けのピッチイベントで、合わせて32社の審査をしたのです。
生々しい話になりますが、その際、審査をしながらプレゼンをPCで録音し、その音声データをAIに解析させました。そして、32社の中でどこが有望かをAIに判定させてみたところ、審査員の見立てとAIの評価がほぼ一致していて、驚きました。
つまり、スタートアップ企業を見るという場面においても、長年経験を積んできた起業家や経営者とAIが近い答えを出す段階に来ているということです。「これはすごいことが起きているな」と思いました。
そのような中で何が重要になるのかといえば、前の質問にもあったように、「企業も成長させられるような投資家になりたい」ということに尽きるのかもしれません。単に投資するだけではなく、企業と一緒に成長するところまで踏み込まなければならない時代になってきたのだと思います。
20年、30年持てる日本株はあるのか?
質問者:中学生です。今から20年、30年先を見据えて保有できる日本株を探すとしたら、何を意識して探したらよいですか?
藤野:わかりませんね。20年、30年にわたって勝ち続ける日本株は、ないかもしれません。
どちらかといえば、特定の銘柄を長く持ち続けることを前提に考えるよりも、世の中の変化を柔軟に見る力のほうが重要なのではないかと思います。
IRに消極的な企業への投資判断
質問者:中小型株を調べていて、ビジネスモデルはすばらしいのに開示情報が乏しい企業に出会いました。情報が少ない場合、藤野さんは投資に踏み切りますか? また、そのようなIRに消極的で個人投資家に冷たいとされる企業は、今後の市場環境の変化の中で淘汰されていくと思いますか?
藤野:一般論として言えば、IRに消極的で個人投資家に冷たい企業は、株価も上がりにくく、うまくいかないことが多いと思います。
ただし、すべてがそのように当てはまるわけではありません。あえて多くを語らないことが、結果として成果につながっている会社もあると思います。あまり一概に決めつけすぎないほうがよいのかもしれません。
成功する経営者の共通点
質問者:たくさんの経営者に会ってきた中で、伸びる人に共通する口癖や雰囲気はありますか?
藤野:伸びる人というより、成功する人に共通しているのは、諦めないことだと思います。結局のところ、諦めない人が勝つのだと思います。いわゆるグリット、つまりやり抜く力は非常に重要です。
AI時代、若い世代の働き方はどう変わるのか?
質問者:日経平均10万円も視野に入ると予測され、日本企業の成長可能性を信じている一方で、若者の「労働嫌い・会社嫌い・投資嫌い」という負のスパイラルを危惧されていると思います。この状況を打破し、若い世代がわくわくしながら働けるようにするために、社会や企業はどのように変わるべきでしょうか?
藤野:なかなか簡単には変わらないと思います。ただ、これから起きることとして、第二就職氷河期のような時代が急速に訪れる可能性があると感じています。
みなさんも海外の事情をご存じだと思いますが、米国や中国では、高学歴でも就職環境の厳しさが目立ち始めています。具体的には、ハーバード大学や北京大学を出ても希望する就業機会を得られず、フードデリバリーの仕事を請け負って生活している人がすでに数多くいる、という現実が起きています。
一方、日本は少なくとも昨年までは、高卒・大卒を問わず、就職希望者の大半が就職できる、国際的に見てもかなり恵まれた雇用環境にあったと思います。
その背景には、日本の雇用や解雇に関する規制が強く、企業が簡単に人員整理をしにくい事情があります。米国などでは、合わなければ比較的早く人員整理が行われる環境とは異なり、日本では一度雇用した人を簡単には切れません。その結果として、企業の中に生産性の低い人材も抱え込みやすい構造になっているのだと思います。
そのため、AIの時代に入り、効率化を進めようとしたとき、日本では既存人員を減らすよりも、新卒採用を抑制する方向に向かいやすいのです。就職氷河期が起きた背景にも、日本の雇用環境が大きく影響していたと思います。今後、AIの普及がさらに進めば、同じようなことが再び起きる可能性はあると思います。
では、みなさんにとってそれがネガティブなことなのかというと、会社に所属している場合でも、AIによって仕事が効率化され、その仕事自体の価値が薄れていけば、結果として売上は減り、余剰となった人たちの仕事も減っていくため、給料がなかなか上がらなくなる可能性があります。
つまり、既存の企業に勤めていればすぐに解雇されるわけではないとしても、給料は上がらず、じわじわと苦しくなっていくような時代が来るかもしれないということです。もちろん、必ずそうなるという話ではなく、AIの普及によってそうした方向に進みかねない兆しが現れつつあるということです。
ただ一方で、新しいイノベーションによって時間的な余白が生まれれば、それに応じて新しいビジネスも生まれてくるはずです。そして、そのような新しい事業は、どちらかといえば若い人たちが生み出していくものになっていくのではないかと思います。
ですから、未来を予測する側に回るよりも、未来を作る側に回ることが非常に重要です。何が楽しいのか、何がおもしろいのか、そのような価値を自ら生み出すことが、とても大事だと思います。
そのようなことができる人はこれから非常にうまくいくのだと思いますし、逆にそれができなければ、厳しい時代になるのかもしれません。高偏差値の学校から有名大学に進み、そのまま大企業に入るという従来型のルートが、今後は以前ほど機能しなくなる可能性があります。
それよりも、例えば屋台をやっているとか、世界を見て回った経験があるとか、そのような型にはまらない経験を持つ人のほうに価値が生まれてくるのではないかと思います。
AIは投資と社会をどこまで変えるのか?
質問者:AIが投資や社会に与える影響について、どのように考えていますか?
藤野:AIに関する質問が多く寄せられていますね。
自動売買は今後さらに進んでいくでしょうし、AIなしではできない時代になっていくと思います。実際、それだけAIによる社会変革のインパクトが大きく、AIについて考えざるを得ない状況にあるということです。
みなさんもAIを積極的に使っていると思いますが、まずは徹底して使ってみることが重要です。これからは、AIを使っている人と使っていない人との差が一気に広がる時代になると思います。
その一方で、「いかにAIと正面から戦わないか」ということも重要です。AIにできないことを、自分たちがどれだけ担えるのかが問われるのだと思います。そう考えると、予測する、調査する、分析するといった行為そのものの価値は、大きく低下していくのではないでしょうか。
それは、ある意味では自分の仕事の否定でもあります。予測し、調査し、分析することこそが、私の仕事だからです。だからこそ今、自分自身にとって大きな問いになっているのは、それらをAIに奪われたとしても、運用会社として、また1人の経営者として、どう生きていくのかということです。
その問いに対する答えは、まだ出ていません。ただ、その模索の一環として、来月から週1日だけ東京藝術大学に通い、自分の時間の一部をアニメーションの事業にも振り向けていこうと考えています。
また、「FLOWフッシーの会」というオンラインサロンも立ち上げました。私はよく「フッシー」と呼ばれているので、この名前にしました。
オンラインサロンは、人と人がつながる場です。オンラインでもリアルでも集まることができますが、AI時代に何が生き残るのかを考えると、結局は人間の集団やコミュニティそのものに価値が出てくるのではないかと思っています。だからこそこのような場を作りましたし、サロンのメンバー同士が交流することが大きな価値になると考えています。
私自身、AI時代に生き残るために、芸術分野への挑戦、アニメーションへの挑戦を進めながら、AIを運用にも活用していく一方で、そのようなコミュニケーションの場を大切にすることで、一定の生き残りを図っていこうとしているのです。
※後編は後日公開予定です


