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株式会社TOブックス500A

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情報・通信業

2026年4月期 第3四半期 決算説明

本田武市氏(以下、本田):株式会社TOブックス代表取締役の本田です。今回、当社の決算説明会をWeb上でのライブ形式で開催するのは初めてです。

そのため、慣れない点や進行上で聞き苦しい部分があるかもしれませんが、今後に向けて成長していきます。まだスタートラインに立ったばかりということで、温かく見守っていただければ幸いです。よろしくお願いします。

ビジネスモデルの概要

まず当社のビジネスモデルについてです。

当社は、IP企業としてビジネスを展開しています。一見、出版社のように見られることもあるかと思います。現状の足元の売上の多くが出版関連によるものではありますが、本質的なビジネスの根幹は、IPを創出し、プロデュースすることにあります。

出版における「紡ぐ」というキーワードには「編み込む」という意味も含まれていますが、その言葉に象徴されるように、編集者が事業の中心となっています。この後さらに詳しくご説明しますが、「紡ぐ」という概念が生むのは小説やコミックスといったコンテンツです。

「紡ぐ」という側面に加え、「届ける」というキーワードで表現されるプロセスが当社の特徴です。プロデュースの一環として、クリエイターが紡いだIPを舞台、アニメ、映画といったかたちでしっかりと届けていくという意味を持ちます。

2つのキーワードを軸として、ビジネスを拡大してきました。このように、IP企業という立場で事業を展開しています。

スライドの「紡ぐ」と「届ける」の円の大きさが異なるのは、私たちの中で市場規模をイメージ化しているためです。

当社は、売上の大半がまだ出版関連です。左側の円が出版市場の規模を示しているとすれば、右側の円はエンターテインメント市場の規模を示しています。実際には、出版市場とエンターテインメント市場の規模には10倍以上の差があります。

ここでお伝えしたいのは、当社がまず出版物としてIPを紡ぎ、それをプロデュースして届けるという2段構えになっている点です。「届ける」というビジネスが当社の事業として大きくなるまでには時間がかかります。現在は「紡ぐ」の部分が中心ですが、しっかりと「届ける」のステップに移行していきます。

魅力的なIP群

当社の成長を支える基盤であるIPについて、あらためてご紹介します。

当社IPは、主にネット発の作品を起点として小説やコミックスとして展開しています。

その中で、特に認知度の高い作品が『本好きの下剋上』です。『このライトノベルがすごい!』というランキングにおいて、過去3回1位を獲得しています。このランキングでは、3回1位を獲得すると殿堂入りとなり、翌年以降のランキングから除外されるルールがあります。

『本好きの下剋上』が殿堂入りした翌年のランキングで1位を獲得したのが『恋した人は、妹の代わりに死んでくれと言った。』です。現在、アニメ化企画が進行中と発表している、非常に成長著しい作品です。

2026年には『捨てられ公爵夫人は、平穏な生活をお望みのようです』が2位を取得しています。このように、当社IPとして展開しているライトノベルは、着実に高く評価される作品を生み出し続けています。

『水属性の魔法使い』は、昨年夏にアニメとして放送され、国内の主要な12のプラットフォームでランキング1位を獲得しました。アニメとしても、視聴者のみなさまから高い評価を得たものです。「紡ぐ」だけでなく「届ける」といった部分においても、当社IPの存在感を強く示しています。

『断罪された悪役令嬢は、逆行して完璧な悪女を目指す』は、小説とコミックスの累計部数が著しく伸びており、今後の成長が期待される作品として挙げています。

IP価値最大化が生む収益サイクル

当社はネットを通じて発掘された作品のコミカライズ化を多く行っています。その後、グッズや舞台などへ展開し、さらにはアニメや映画というかたちで認知拡大を図っています。

当社の代表的なIPは長期にわたり運用され、長くシリーズが続いています。『本好きの下剋上』は、スタートから10年以上が経過しています。『魔術士オーフェン』は、当社を代表する作品として、現在も強い人気を保っています。このように長く愛されるIPを創出することが、当社の強みです。

長くIPが愛されることは、クリエイターと当社の間にしっかりとした信頼関係が築かれることに繋がります。

特に、当社IPに携わりたいと考えるクリエイターの多くはネットを通じて作品を発表し、SNSも積極的に活用しています。そのため、ネット上でポジティブなコミュニケーションが生まれます。ポジティブなコミュニケーションは、クリエイターとユーザーの間にも広がります。このようなやり取りは新たなクリエイターを引き寄せています。私たちの「楽しい」に共感できる新しいクリエイターが集まることで、さらに新しいIPが生まれてきます。このような循環が当社の強みです。

当社に関する定量情報

スライドに、足元のKPIをまとめています。5つのKPIについては、後ほどご説明します。

TOブックス成長の軌跡

創業からの売上高と営業利益の推移を、スライド下段のグラフにまとめました。

創業以来、売上高は右肩上がりであり、今後も安定した成長を目指しています。直近では事業計画を修正しましたが、売上高は110億円から113億円、営業利益は17億円から19億円と、いずれも最高益を目指す計画を掲げています。

スライド上段のグラフは、「届ける」の中で最も大きな影響を持つテレビアニメの本数について示しています。

テレビアニメの企画・立ち上げから放送開始までは、およそ3年が平均的な制作期間です。

3年というスパンを踏まえ、来年ではなく、さらに先の放送を予定して制作を進めていることをご理解ください。

業績上方修正の発表

先週発表しました業績上方修正の内容についてです。発表済みの事業計画を第3四半期で95パーセント超達成できる状況となりました。それに伴い、今後の展開等を精査し、業績予想の修正を行いました。

『穏やか貴族の休暇のすすめ。』について、1月からテレビアニメの放送が開始され、現在も放送中です。そのテレビアニメの影響に伴う書籍販売の伸びなどを踏まえました。

一定程度のヒットとして捉えていただいてよいと思いますが、どれくらいの伸びが見込めるのか、どこで着地するのかといった点については、依然として予測しづらい状況です。そのため、営業利益や売上に関しては、年次での開示となった点についてご理解いただけますと幸いです。

現状では、社員一同で開示した業績予想を超えることを目指して、日々努力しています。業績予想に留まることなく、さらに上を目指して邁進している点をご理解いただければと思います。

売上高の押し上げ効果の高かったIPと、今後アニメ化を予定しているIP展開

『水属性の魔法使い』はコミックスが第9巻までしか進んでおらず、非常に展開が早い作品です。シリーズ累計発行部数は100万部程度であり、今後さらに伸びていくことを期待しています。

『穏やか貴族の休暇のすすめ。』は、シリーズ開始から8年が経過した作品で、ノベルは24巻、コミックスは15巻刊行されています。累計部数は200万部を超え、着実に実績を積み上げています。4月には小説とコミックスの新刊の発売が予定されており、さらなる展開が期待されます。

『本好きの下剋上』は、4月4日からTVアニメ第4期の放送が予定されています。放送時間は土曜日の午後5時半で、その後6時からは『名探偵コナン』が放送される時間帯です。全国ネットで放送され、当社で最も認知度の高い作品の1つです。

さらに認知度を拡大し、小説・コミックス、そしてそれ以外の展開も含めて、しっかりと成長させていきたいと考えているIPです。

「水属性の魔法使い」「穏やか貴族の休暇のすすめ。」など原作書籍やコミックスの販売が好調で、アニメ化タイトルが増えたため業績が堅調に推移

今期の第3四半期までの決算ハイライトについてご説明します。

スライドでは、昨年の四半期ごとの売上高と利益を対比しました。今回、四半期ベースでの数字を開示するのは初めてとなります。売上高・利益ともに四半期ごとにしっかりと伸ばしてきた結果が、現況の業績につながっています。

昨年比のうち大きな変化として、アニメ化タイトルの増加が挙げられます。当社ではアニメ化タイトルに伴う小説やコミックスの売上を、特に電子書籍分野でしっかりと伸ばすことができたと考えています。

出版領域以外からの収益化にも成功しており、アニメや音声・音響等様々なメディアミックス展開による収益成長

商材別売上高の四半期ごとの推移についてです。

『穏やか貴族の休暇のすすめ。』『水属性の魔法使い』などの電子書籍が前年比18.8パーセントの伸びを記録し、その他の分野においても2桁成長を遂げています。

当社はテレビアニメの音響制作を担っており、自社作品のみならず、他社の作品も含めて音響制作を手掛けています。また、舞台や映画の音響制作にも取り組んでいます。これらの売上に関しては、前年比で12.2パーセントと堅調に伸びました。

各商材における利益率は、株主のみなさまにとって気になる点かと思います。しかし、現時点では売上に占める比率が10パーセント程度であるため、当社ではセグメントを分けていません。

そのため、分けていないセグメント内の利益率については、現時点ではお答えできない状況です。この点については、ご了承いただけますようお願いします。

今後、これらの売上がしっかりと伸び、全体売上の半分程度が出版物以外になるなどの状況が実現すれば、セグメントを分け、KPIとして開示していく予定です。そのような未来にご期待いただければ幸いです。

主要IP数は編集体制の強化と生産性向上に伴い増加傾向

IPを「紡ぐ」のは編集人員です。編集人員が着実に増加しており、主要IP数も増加しています。主要IPあたりの売上高についても、一定の規模で継続して増加しています。

主要IPあたり売上高の推移については、昨年分までを通期データで示し、本年分については第3四半期までの実績との比較とします。

2025/4期は、翌期以降に放映予定であったタイトルを含むアニメ制作売上を中心に、収益性の低い売上計上が重なったため売上原価が増加

売上原価についても着実に圧縮できており、売上原価が売上の伸びに対して抑えられています。スライドのような取り組みを積極的に継続している点をご確認いただきたく、開示しています。

新興ヒットIPの積み上げ

今後期待できるIPはまだまだあります。『ヒロイン?聖女?いいえ、オールワークスメイドです(誇)!』『バッドエンド目前のヒロインに転生した私、今世では恋愛するつもりがチートな兄が離してくれません!?』『ゲーム世界転生〈ダン活〉』の3作品がアニメ化を発表しています。

現在100万部に到達しているのは『バッドエンド目前のヒロインに転生した私、今世では恋愛するつもりがチートな兄が離してくれません!?』のみですが、今後の伸びにぜひご期待ください。

今後の自社IP展開予定

情報解禁済みの自社IPのメディアミックス展開をまとめました。

4月の『本好きの下剋上』の第4期アニメを皮切りに、5月には『穏やか貴族の休暇のすすめ。』の朗読イベントが予定されています。こちらは、第3四半期の売上の大きな柱となった作品です。

朗読イベントは一般的にはなじみが薄いかもしれませんが、アニメの声優が舞台に立ち、朗読を通じてストーリーを盛り上げる内容で、当社では人気のあるイベントです。今後も続々とアニメ化を発表していく予定ですので、ご期待ください。

先ほどお伝えしましたとおり、アニメ制作には企画から3年の時間を要するとお伝えしましたが、現状発表済みのもの以外でも、3年の期間内でどれだけ制作が進行しているのか、今後お見せできるかと思います。

「本好きの下剋上」展開に関するトピックス

『本好きの下剋上』の取り組みについて、あらためてご紹介します。

4月4日から日本テレビ系列で夕方に、4月6日からTOKYO MXで夜にアニメが放送される予定です。関東圏にお住まいの方は、土曜日だけでなく月曜日にもご覧いただけます。

全国でポップアップショップも開催中です。

それとは別に、「SHIBUYA TSUTAYA」が展開する「IP書店」に『本好きの下剋上』のコーナーが設けられています。4月28日から京都にも新たな「IP書店」が誕生するとのことで、そちらにもコーナーを設置する予定で準備を進めています。

ミュージカルについては、先日キャストを発表しました。今回は、STARTO ENTERTAINMENTから元・光GENJIの内海さんなど、すばらしいキャストのみなさまにご登場いただく予定で、非常に期待が高まっています。

今週末の「AnimeJapan 2026」にも『本好きの下剋上』を出展します。3月28日、29日に開催されますので、お時間のある方はぜひお越しいただければと思います。

IP展開に関するトピックス

『本好きの下剋上』以外のIP展開についてご説明します。

スライド左側に自社IP、右側に他社IPと分類しています。

朗読イベントはなかなか馴染みがありませんが、当社にはリアルな場を作るチームが社内にあり、その力を活用して舞台だけでなく、こうしたイベントにも積極的に取り組んでいます。

当社は、女性読者が多いタイトルや女性編集者が多い点も特徴の1つです。3月1日に創刊した女性向けレーベル「Celica(セリカ)」もぜひ店頭などでお手に取っていただければと思います。

他社IPである映画『モブ子の恋』は6月5日から公開予定です。映画『氷血』は夏公開予定で、いずれも商品化権を当社で運用しています。『モブ子の恋』については、映画を立ち上げたのが当社であり、制作幹事を務めています。

『氷血』では元・Kis-My-Ft2の北山さんが主演を務めています。この作品も商品化権を当社が運用しています。北山さんは非常に人気のアーティストですので、当社がグッズを展開することになります。当社の「届ける」という機能を最大限に活用して展開を進めています。

好調な業績進捗により業績予想を上方修正

別の角度から、業績予想の修正内容をスライドにまとめています。

売上高、営業利益、経常利益を含め、前年比で2桁の成長を実現しています。この成長を確実に継続できるよう、日々研鑽を重ねていきます。

成長戦略

成長戦略についてです。

当社はスタンダード市場に上場しましたが、同市場に上場されている他の企業と比較しますと、当社は社歴が短いほうだと思います。そのため、経営陣も若く、しっかりと成長していく必要があると考えています。

成長の方向性を4つのポイントにまとめています。「メディアミックス戦略の深化」「安定的なIP創出」「他社IPの活用」「海外展開の加速」です。

メディアミックス戦略の深化と他社IPの活用は、「届ける」機能の深化です。安定的なIP創出は「紡ぐ」機能の進化です。海外展開の加速は「紡ぐ」力と「届ける」力の掛け合わせです。これが当社の成長戦略です。

メディアミックス戦略の深化~主要IPの価値最大化~

メディアミックス戦略の深化についてです。

アニメについては、4月から『本好きの下剋上』が夕方の時間帯で放送開始となりますが、深夜や夕方といった枠にとどまらず、さらなる展開ができるのではないかと思います。アニメーションには2DやフルCG、ショートアニメなど、さまざまな形態があります。当社が取り組めている部分はまだ限られているため、積極的に他形態にも取り組んでいきたいと思います。

舞台についても、大規模なものは『本好きの下剋上』を中心にごくわずかであるため、今後は取り組みを強化していきたいと考えています。当社の舞台は主に2.5次元と呼ばれるものがほとんどですが、ごくわずかながら文芸的なストーリーを扱った舞台も手がけています。これらについても、引き続きしっかりと取り組んでいきたいと思います。

まだまだ課題は多いですが、一つひとつに真摯に取り組むことで、当社の成長をさらに加速させていきたいと考えています。

メディアミックス戦略の深化~製作委員会へのコミットメント~

当社のメディアミックス戦略についてです。

先ほど他社IPのご紹介の際、北山さんのグッズの商品化についてお話ししましたように、製作委員会を組むということは、さまざまな案件に関与していくことを意味します。

当社では、いわゆるアニメ化において単なるライセンスアウトにとどまらず、プロデュースというかたちをとっています。

3本に1本の割合でプロデュースする作品があり、自分たちの手で作品を届けていくというビジョンと戦略に基づいてアニメ展開を進めています。そのため、プロデュースする作品については、アニメとしての売上や利益の拡充が今後必須の課題であると認識し、取り組んでいきます。

安定的なIP創出~人材・施策~

安定的なIP創出についてです。当社は「紡ぐ力」の拡大を目指しており、確実に実現していきたいと考えています。そのため、当社では未経験者の採用、特に新卒採用に力を入れています。未経験者が早期に戦力化できるよう、さまざまな内製機能を備えています。

なお、86点の主要IPを紡いできたのは、当時未経験者だった人たちです。主要IPが生まれるまでには、通常1年から2年ほどかかります。新しいIPが生まれても、すぐに主要IPになるわけではなく、少し時間が必要です。

つまり、現在57人いる編集人員が生み出す主要IPは、2027年から2028年の話になるということです。それを見据えて私たちは取り組んでおり、これが成長していく自信につながっています。その点もあわせて、今後の動きに注目していただければと思います。

他社IPの活用~「届ける」機能のレバレッジ~

他社IPの活用です。

スライドは、先ほどお伝えした部分です。

他社IPの活用~プレゼンス拡大に向けた中長期ビジョン~

他社IP活用の現況についてです。

『氷血』や『モブ子の恋』についても先ほど触れましたが、現時点では限定的な展開にとどまっています。今後さらに大きく「届ける」力を高め、伸ばしていくことが、当社にとって重要な課題となっています。

アニメに限らず映像制作には時間が必要であり、通常2年から3年ほどかかるものです。当社のスタッフは、2年後、3年後の仕事を見据えながら取り組んでおり、今後にご注目いただければと思います。

海外展開の加速

海外展開についてです。

こちらは「紡ぐ力」と「届ける力」の掛け合わせによるものです。

昨年10月に、TAMA STUDIOという会社の株式を取得しました。現在、TAMA STUDIOは出版のみを業務として行っています。

同社の社長が「STUDIO」という名前にこだわった理由は、単に出版にとどまらず、当社とともにメディアミックスやエンターテインメント領域を広げていきたいとの考えからです。そのため、「STUDIO」という名称が採用されています。

現時点では、TAMA STUDIOは書籍のビジネス展開に限られていますが、今後はそれ以外の領域にも拡張する意思を持った会社です。

北米の展開については漫画市場が拡大しており、当社は「MANGA PLAZA」や「MANGA MIRAI」のような電子コミックスサイトに作品を提供しています。市場拡大への対応としてスピードアップを図り、出版展開を積極的に進めています。

長期的には、メディアミックスなどの分野にも取り組む予定で、現在その準備を進めています。それらについては発表可能な段階になり次第、お知らせしていく方針です。

私からのご説明は以上です。

質疑応答:配当についての方針と今後の見通しについて

鳥海裕喜氏(以下、鳥海):「配当について、4月の権利付最終日前には、配当額の発表はあるのでしょうか? それとも、本決算発表時に公表するのでしょうか?」というご質問です。

配当に関しては、現時点で具体的な配当額や実施時期について決定している事項はありません。したがって、4月の権利付き最終日前に公表するのか、本決算発表時に公表するのかについては、現時点では回答を差し控えます。

当社としては、届出書に記載のとおり、安定的な配当の実施に取り組んでいきたいと考えています。年1回の配当方針について記載していますが、こちらに変更はありません。今後の配当については、業績の動向や成長投資とのバランスを総合的に勘案し、公表します。

質疑応答:海外市場展開における地域別の戦略と課題について

鳥海:「日本のみならず、東南アジア、中東、北米での海外進出に関して期待が持てますが、それぞれの地域、国の特徴など、日本と異なる点や傾向があれば教えてください」というご質問です。

本田:海外と一括りにまとめていますが、ご質問のとおり、地域ごとにさまざまな特徴があります。

いわゆる横文字でお話しするのがあまり好きではないのですが、「ディシジョンリスク」という表現があるかと思います。その観点で考えると、まずはアジアです。

アジアに関しては、宗教が国ごとに異なっていることや、いわゆる資本主義ではない社会主義の国として、ベトナムなども存在します。そのような国や地域における宗教や社会政策の問題に対応するかたちでの展開を模索する必要があります。その第一歩として、タイ市場においては、TAMA STUDIOとタッグを組みました。

北米に関しては、電子書籍サイトが増加している一方で、依然として紙媒体が強い市場です。そのため、紙での展開が重要となるのは当然ですが、映像展開にも注目しています。例えば、「Netflix」のようなプラットフォームを活用した、ローカライズされた映像展開が進んでいます。

北米市場は世界で最も大きな市場であり、ここでの成功は国内市場の売上を大きく上回る可能性があります。そのため、いかに市場に適した展開を行うかが鍵となります。北米には約3億人の人口があり、国土も広く、紙媒体の展開にはさまざまな課題があります。これらを踏まえ、最適な解決策を模索しながら取り組んでいます。

国内外を問わず共通するのはパートナーの重要性です。地域ごとに特徴はありますが、信頼できるパートナーを見つけることが最も大切です。それぞれの地域で、我々と近い業種である出版やエンターテインメントビジネスを手掛けている信頼できるパートナーを見つけるためには時間がかかります。

私自身、1998年からこのビジネスに携わっています。北米の展開に際しては、アメリカの映像関係者や出版関係者、さらに今回のTAMA STUDIOの社長やスタッフと長い付き合いを築いてきました。

時間をかけて人間関係を築き、お互いに安心できる環境を整えることで、宗教や資本関係といった課題を克服していきます。私は、このような人との関係を非常に大切にしています。

質疑応答:テンプレートものの飽きと購買行動について

鳥海:「異世界転生ものはテンプレートすぎて海外でも飽きられ始めていると聞きますが、将来性はあるのでしょうか?」というご質問です。

本田:「テンプレートものは飽きられている」と言われてからもう10年が経ちます。飽きられていると言われながらも、多くの方にご覧いただいています。

この仕事をする中で感じることですが、ホラー映画も同じです。ホラー映画も飽きられていると言われますが、多くの方にご覧いただけます。飽きられているということと購買行動はリンクしていないと思います。

「飽きられているから売れなくなる」と、「飽きられていないから人気があって売れる」という考えに、私は関連性がないと思います。購買行動には安心感などが重要だと思います。

テンプレートという意味では、飽きられているという見方もあるかもしれませんが、安心して読めるものが求められているのではないかと考えています。当社がブランドにこだわる理由もそこにあります。

当社は『本好きの下剋上』を代表としたジュニア文庫に取り組んでいます。このような当社IPについて、基本的には子どもが読んでも楽しめるもの、または子どもに勧められるものを軸に考えています。

子ども向けの作品というのは、飽きられやすいものになるかもしれませんが、安心が購買行動につながると思います。そのため、飽きられるのではなく、安心感を積み重ねられるようなIPを作っていきたいと考えています。飽きられるという言葉は、むしろよい意味を持つのではないでしょうか。

質疑応答:投資コスト回収見込みについて

鳥海:「来期2027年4月期は、アニメ4期の制作放映費用が本格的に計上されるフェーズかと思います。これに対し、国内外の配信印税や版権収入および原作の販促効果によって、制作費を上回る収益を当期間内に回収できる見込みでしょうか?

また、利益水準として今期の高い成長を維持した2桁以上の増益を目指せるステージにあるのか手応えを教えてください」というご質問です。

本田:当社は先ほどもお話ししたように、アニメや映画を含めて製作委員会に参加しています。アニメについては、投資したコストを放送期間中に100パーセント償却しています。そのため、ご指摘いただいたような、未来への積み残しを会計上行うことはありません。

ご指摘のとおり、いわゆる版権収入などのアニメや映画への出資に見合うリターンや、その窓口運用のリターンについては、放送終了後や遅れた時間軸で発生していくことになります。

当然ながら、今後発生する収益となりますが、その部分が着実に積み上がることを目指しています。そうした部分を含め、今後もしっかりと成長していきたいと考えています。

鳥海:利益水準の具体的な数字についてはコメントを差し控えます。みなさまの期待に応えられるよう、成長に向けて邁進していきます。

質疑応答:ファンタジー作品のアニメ化と親和性について

鳥海:「アニメ化につながるIPが多いように思いますが、何か秘訣はあるのでしょうか?」というご質問です。

本田:当社IPはファンタジー作品が多く、ファンタジー作品はアニメと親和性が高いと考えています。

一方で、現代を舞台にした『課長島耕作』のような作品や、いわゆる会社での恋愛ものや仕事ものなどは、一般ユーザー目線で見ると、アニメよりもドラマのほうがおもしろく感じられることがあります。そのため、そうした作品はドラマ化されやすいのではないかと思います。

ファンタジー作品はアニメと親和性が高いことから、「これはアニメになったらいいんじゃないかな」と読者の方々が感じていると同時に、アニメを制作する側の人たちも「アニメにしたらおもしろいな」と考えることで、アニメ化が進むのではないかと思います。親和性が最も重要であると考えています。

質疑応答:プロデュース方式と出資の関係について

鳥海:「IPのライセンスアウトのみならずプロデュースも行うとのことですが、製作委員会方式ではなく単独出資も検討するということでしょうか?」というご質問です。

本田:可能性としてはあります。ただし、現時点で進行しているかどうかについては回答を差し控えます。

鳥海:プロデュース方式は、単独出資を意味するわけではございません。当社では、しっかりと出資してコミットしていく関わり方をプロデュース方式と呼んでいます。

質疑応答:競合企業と事業展開の立ち位置について

鳥海:「競合他社と思われるオーバーラップやアルファポリスとの差別化戦略について、教えてください」というご質問です。

本田:当社は、IP企業としてビジネスを展開しています。出版という事業側面に関しては、オーバーラップやアルファポリス、さらにはマイクロマガジン社などのさまざまな出版社、特にジャンルが近い出版社さんと競合していると認識しています。

映像をプロデュースする部分においては、競合している企業はありません。舞台分野に関しては、ネルケプランニングなどの企業と競合することがあるのではないかと考えています。アニメプロデュースについても、一定程度競合している企業が存在します。

アニメから出版まで総合的にビジネスを展開するという視点では、KADOKAWAやソニーグループなどの企業と競合することになる場合もあります。しかし、当社とは規模が大きく異なるため、規模の違いによるフットワークの差があると感じています。

私としては、競合ポイントを大きく3つに分けて考えています。1つ目が「紡ぐ力」の競合、2つ目が「届ける力」の競合、3つ目が「紡ぐ力×届ける力」の競合です。当社は、これら3つの競合の中で特異な立ち位置を持ち、それぞれの側面で競い合うことで強みを発揮しています。

先ほど具体的に挙げた企業は、会社全体としての直接の競合関係にあるとは認識していません。

質疑応答:IP企業としての強みと課題について

鳥海:「個人的な印象ではありますが、同業他社よりも、書籍化IP数に対してヒットする率が高いようにお見受けしています。同業他社と比較して強みがあるとしたら何か、一方で弱みがあるとしたらどういう点かお聞かせください」というご質問です。

本田:アニメ化やその他のメディアミックス展開において、ライセンスアウトだけでなく、プロデュースというかたちでIPをしっかり盛り上げていく点が強みになります。その結果として、ヒットしている作品が多いのは、ライセンスアウトに加えてプロデュースを行った成果だと思います。

弱みとして挙げられるのは、当社が時間をかけて作品を盛り上げていくスタイルを取っている点ですが、これを弱みと捉えるよりも、当社がどこを目指しているのかという点に注目いただきたいと思います。

先ほど競合として出版社の名前が挙げられました。当社はIP企業として活動していますが、IP企業として十分に認識されていないのが現状です。そのため、当社への理解が進むまでに時間がかかる点が課題だと考えています。

質疑応答:生成AIに関する意見について

鳥海:「売上の大半が電子書籍とのことですが、個人が生成AIで作成した小説は、今後脅威にならないのでしょうか?」というご質問です。

本田:生成AIについては、さまざまな見解があります。今回は第3四半期決算のご説明と質疑応答が目的ですので、その件については業界からのリリースをご参照いただければと思います。この場で、当社としての意見を述べることは差し控えます。

質疑応答:アニメ『本好きの下剋上』第3部の内容と放送タイミングについて

鳥海:「『本好きの下剋上』は夕方進出となりましたが、4期からの放送時間移動はライト層にとって少し敷居が高いのではないでしょうか? ライト層に人気が広がる勝算を教えてください」というご質問です。

本田:『本好きの下剋上』の4期というのは、4回目のアニメ化ですが、内容としては原作の第3部からスタートします。第3部は、主人公のマインが最も見応えのある展開を迎えるとともに、アクションが多い部分です。

非常に楽しみな内容で、視聴者のみなさまもわくわくすると思います。このタイミングで夕方の時間帯に放送するのはおもしろい試みだと思いますので、ぜひご覧ください。

質疑応答:今期の配当予想について

鳥海:「直近業績上方修正されましたが、増配はなく、今期の予想配当性向は10パーセントを割っています。有利子負債もほぼないキャッシュリッチの状況ですが、株主還元方針について教えてください」というご質問です。

1つ目のご質問に対する回答と同様ですが、今期の配当予想については、まだ公表できる状況にはありません。決定次第公表しますので、お待ちください。

質疑応答:アニメ制作におけるクオリティ管理について

鳥海:「アニメ化企画進行中の作品が続々と発表され、非常に勢いがあります。しかし、アニメ制作業界はどこも人手不足が深刻とのことで、IP価値を下げてしまうようなアニメが乱造されないかという心配があります。

アニメ幹事機能を持つ出版大手であるKADOKAWAは、年間40本目安でアニメ制作を進めていると聞きました」というご質問です。

本田:クオリティについてのご質問かと思います。クオリティに関しては、当社ではプロデュース方式で制作する場合もあれば、ライセンスアウトの場合もあります。いずれの場合でも、クオリティに細心の注意を払いながら制作を進めています。

また、アニメを制作するアニメスタジオのみなさまの環境を良くしていく中で、しっかりと高品質な作品を作り上げることを目指しています。良い作品、おもしろい作品、そしてネガティブな評価を受けない作品を目指し、日々努力していきます。

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