第10回大学生対抗IRプレゼンコンテスト優勝チーム「蝶理×中央大学A班」
中央大学「中央大学A班」、蝶理へ次世代高機能素材の開発を提案 2.1兆円eスポーツ市場でヘルスケア分野の技術革新を
AGENDA

菅原愛子氏:みなさま、こんにちは。中央大学A班の菅原です。本日は、蝶理株式会社のIR説明を担当します。よろしくお願いします。
本日のアジェンダはスライドのとおりです。
企業概要

蝶理は東証プライムに上場しており、繊維、化学品、機械の3つの事業を柱に、高機能・高付加価値を追求する複合型専門商社です。
蝶理の最大の強みは、70年にわたる中国ビジネスで培った独自の品質管理体制を横展開できるグローバルネットワークを駆使していること、そして、専門性が求められるニッチな分野で世界トップシェアを確立している点にあります。
企業概要~沿革~

蝶理は、1861年の創業以来、160年を超える歴史を歩んできました。1961年に日中貿易のパイオニアとして中国に進出して以来、中国との信頼関係を活かし、半世紀以上にわたり独自のサプライチェーンガバナンスを確立しています。
製造現場への深い介入を通じ、日本基準を徹底させる指導力が、現在の蝶理品質の礎となっています。現在はこの管理能力を環境分野にも展開しており、2019年からは独自のコンセプト「BLUE CHAIN(ブルーチェーン)」を掲げ、環境配慮型ビジネスの加速にも取り組んでいます。
企業概要~3つのセグメント~

こうした独自の機能や価値観が各事業セグメントにおいて、具体的にどのように展開されているのか、蝶理の中核事業である繊維事業と化学品事業に焦点を当て、それぞれの取り組みについてご説明します。
繊維事業

まずは、蝶理の売上の49パーセントを占める中核事業である繊維事業についてです。
蝶理の最大の強みは、単なる商社としての仲介にとどまらない、「半工半商」という独自のビジネスモデルにあります。自社工場を持たずとも、製造現場に深く入り込み技術指導を行う「蝶理フィルター」を機能させることで、日本品質の製品を世界中の拠点から供給できる体制を整えています。
この仕組みにより、中国やASEANで生産した高品質な製品を、欧米や中東などの最適な市場へ届ける「適地生産・適地販売」をグローバルに展開しています。
繊維事業

こうした体制を背景に、蝶理は大手総合商社が入り込めない高機能かつニッチな分野で、圧倒的な強みを発揮しています。象徴的な例が、中東の男性用民族衣装「トーブ」の生地です。この分野では、蝶理が世界No.1のシェアを誇っています。
特定の用途で高い付加価値を持つ製品を独占的に取り扱うことで、価格競争を回避し、確固たる地位を築いています。
繊維事業~サステナブルな取り組み~

これからの成長の鍵を握るのは、サステナビリティへの対応です。蝶理は独自のコンセプト「BLUE CHAIN」を掲げ、環境対応を単なるコストではなく、利益に直結する仕組みへと昇華させています。
具体的には、水の使用量を極限まで抑えた魔法の糸「ECOSOL(エコソル)」や、回収ペットボトルを再生した「ECO BLUE(エコブルー)」などを通じて、環境負荷を低減しながらビジネスを拡大する、攻めのサステナブル戦略を推進しています。
業界分析~繊維事業~

業界分析を通じて、蝶理の立ち位置をご説明します。
これまでサステナブルについて多くお伝えしてきましたが、ここまで注力する背景には世界的な需要があります。現在、環境に配慮した素材は欧州を中心に、サステナブルであることが証明されなければ購買に至らない時代です。
実際、国内のアパレル市場は少子高齢化の影響を受け、縮小傾向にあります。一方、世界のサステナブルファッション市場は年々拡大しています。蝶理は拡大する世界の環境需要を次のブルーオーシャンと位置づけ、グローバル市場でのシェア拡大を目指します。
業界分析~繊維事業~

スライドのグラフをご覧ください。左側のグラフは、繊維・アパレル業界における蝶理の立ち位置を示しています。この市場における他社との最大の違いは、「素材」と「グローバルニッチ」の分野にあります。
蝶理は、大手商社がブランドや小売のマーケティングを重視する中で、素材と技術に特化することでブルーオーシャン領域を独占しています。その結果、右側のグラフのとおり、繊維・アパレル専門商社の平均営業利益率である2.5パーセントを大きく上回る4.7パーセントという高い実績を実現しました。
化学品事業

織笠結衣氏:続いて、全社売上の51パーセントを占める中核事業である化学品事業についてご説明します。
当事業の最大の特徴は、既存ビジネスで得た安定収益を環境やエネルギーといった高成長分野へ戦略的に再投資し、独自の好循環モデルを確立している点です。
化学品事業~注力している商材~

その核となるのが、次世代素材であるイオン液体です。これは、真空でも蒸発せず、電気を通し、自在に分子設計ができるという3つの革命的な特性を持ち、安全な二次電池やCO2回収など、地球規模の課題解決を可能にします。
業界分析~化学品事業~

この事業を支えるのは、他社が撤退を選択する中で築いた中国市場における最強のパートナーシップです。強固な中国基盤を活用し、イオン液体のアジア独占販売権と、年間3万トンという世界最大級の供給体制を確保しています。稼働前に販路の7割を確保するという、確実性の高い収益基盤の創出は蝶理の強みの1つです。
独自の事業構成モデルにより高マージンを実現し、衰退する国内市場を尻目に、年率16パーセント成長の海外市場へシフトしました。次世代産業に不可欠なパートナーとして、持続的な成長を目指していきます。
リスクへの対応

リスクについてお話しします。中国リスクへの懸念に対する蝶理の答えは明確です。リスクがあるからこそ、蝶理の介在価値を発揮できると考えています。70年をかけて構築した「蝶理フィルター」によって、地政学リスクという不純物を取り除き、製品の真の価値だけを世界へ届けます。
他社が撤退する市場でも、安全な商流を実現できることが蝶理の高収益の源泉です。さらに、国内需要の減退に対しても、海外のサステナブル分野でグローバル・ニッチな地位を確立しています。
蝶理にとってリスクは回避すべきものではなく、独自の機能によって利益へと転換するものです。
財務実績

蝶理の財務実績です。蝶理は2021年3月期より会計基準を変更しており、その影響で該当年の売上高が一時的に減少しました。しかし、その後は着実に回復し、2023年3月期以降は年間売上高3,000億円規模を安定的に維持しています。これは、蝶理独自の「半工半商」ビジネスモデルと高付加価値分野への注力により、収益力が強化されたためです。
この結果、利益の拡大に伴い配当も継続的に増配しており、2026年3月期は1株当たり年間144円の配当を予定しています。
売上総利益分析

蝶理の高付加価値化戦略の成果についてです。スライドのグラフは、売上規模だけでなく、売上の質がどのように向上したかを示しています。左上のグラフにあるとおり、利益率は右肩上がりで推移しており、売上総利益額は5年間で約1.7倍と大幅に拡大しました。また、売上総利益率も13パーセントまで向上しています。
これらの数値は、他社が手を出さないニッチな領域に注力し、単なる価格競争に陥らない強固な収益構造への転換が着実に進んでいることを示しています。
市場評価

蝶理と競合他社の比較表です。比較対象として、同じ専門商社であるA社と、繊維事業に強みを持つB社を取り上げています。
ご覧のとおり、蝶理は自己資本比率が63パーセントと他社を大きく上回り、非常に高い財務安定性を有しています。また、キャッシュを蓄えるだけでなく、配当性向30パーセント以上の株主還元を行いつつ、成長投資やM&Aも進めています。
ROEも13.4パーセントと、業界内トップクラスの資本効率を実現しています。
IR体制と上場維持基準

村上俠太朗氏:続いて、IR体制についてご説明します。蝶理は、英文開示や個人投資家向け説明会の拡充などを通じて、透明性の高い対話を心がけています。東証の「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」についても、機関投資家との活発な対話を希望する企業として申請しています。
また、2025年からの上場維持基準への対応についても、ご覧のとおり全項目で基準を大幅にクリアしています。これは、プライム市場において強固な上場基盤を維持していることを示しています。
事業計画

事業計画についてです。中期経営計画「Chori Innovation Plan 2025」の達成に向け、蝶理独自のフィルター機能をさらに強化してきました。
資本効率、株主還元、収益のすべての指標で高い水準を維持し、次世代産業のスタンダードを支えるグローバル・ニッチトップ商社へと躍進しています。培った信頼と実績を力に変え、蝶理は新たな成長のステージへと突き進んでいます。
事業計画

2026年3月期の連結貸借対照表です。特筆すべき点は、有利子負債がわずか12億円と、前年比でさらに減少していることです。これは、蝶理が実質無借金という、極めて強固な財政基盤を有していることを示しています。また、純資産から固定資産を差し引いた成長余力は約700億円に上り、M&Aや新規事業に投じるための潤沢なキャッシュがすでに確保できていることを示しています。
蝶理の2030年度目標である売上高4,000億円の達成に向け、今後は資金を貯めるフェーズから、投資するフェーズへと転換していきます。
学生提案

最後に、蝶理のさらなる飛躍に向けて、私たち学生から提案します。
私たち中央大学A班は、対面4回、オンライン4回の計8回にわたる取材を通じて、蝶理の強みと課題を深掘りしてきました。取材から浮き彫りになった現状の課題は、積み上がる利益の70パーセントをどのように投資し、2030年度の目標である売上1,000億円の上積みをどう実現するかという点にあります。
そこで私たちは、既存事業の延長ではなく、まったく新しい領域への投資として、eSportsを起点とした次世代高機能素材の開発を提案します。
現在、eSports市場は年平均成長率(CAGR)10パーセント以上で成長しており、すでにゴルフに匹敵する巨大な経済圏を形成しています。
学生提案

メインターゲットは、身体負荷が非常に高い職業であるプロゲーマーです。彼らの平均座位時間は10時間以上に及び、世界最長の座位時間を持つ日本人の平均である7時間を大きく上回っています。
これらプロゲーマー向けに、動きを補助するウェアをメーカー各社と共同で開発することを検討しています。また、eSportsで得た疲労軽減に関するデータを活用し、腰痛や肩こりに悩む世界中のオフィスワーカーや高齢者向けの製品開発にも応用していきます。
社長から投資家の皆様へ向けて

スライドは、蝶理の迫田社長から、個人投資家のみなさまへ向けたメッセージです。
競合が少ないニッチな分野で活躍を続ける蝶理を、今後ともよろしくお願いします。みなさま、ご清聴ありがとうございました。


