logmi Finance
logmi Finance
株式会社ファイバーゲート9450

東証スタンダード

情報・通信業

パーパス

猪又將哲氏(以下、猪又):株式会社ファイバーゲート代表取締役社長執行役員の猪又です。本日はご視聴いただき、厚く御礼申し上げます。

それでは、さっそく弊社をご紹介します。スライドにパーパスと書いてありますが、今ご紹介いただいたように、当社はもともと通信事業を行っています。

具体的な内容については後ほどご説明しますが、みなさまも耳にされたことがあるかもしれない賃貸マンションの「インターネット無料マンション」という、昨今非常に多く導入されているサービスのはしりのような会社です。私たちは、このサービスのパイオニアであると自負しており、それを祖業としています。

4年ほど前から「インターネット無料マンション」が可能であれば、電気代無料のマンションも実現できるのではないかと考えていました。しかし、それはなかなか実現せず、独自のビジネスモデルを確立しつつ、4年間にわたり研究開発や実証実験を繰り返してきました。そして、ようやく今期から本格的に販売を開始しました。

基本的に、太陽光パネルと蓄電池を組み合わせた仕組みとなっています。ただし、昨今言われているメガソーラーに関してですが、私自身はあまり好きではありません。ビジネスとしてはどうなのかという点で疑問を持っています。

当社が目指しているのは、いわゆる地産地消ではなく、自家発電・自家消費の世界です。これを既存物件、または通信サービスと組み合わせ、構内、すなわち建物内でインフラ業を成立させていくことを目指している会社です。

「構内インフラ・インテグレーター」というのは弊社の造語ですが、インフラベンチャーとしてこの業態を確立し、社会に貢献していきたいと考えています。

主要事業概要

猪又:具体的な事業内容です。ホームユース事業として、主にインターネット無料マンションを手がけています。これについては、特に説明の必要はないかと思います。

通信事業ではもう1つ、ビジネスユース事業にも取り組んでいます。私たちは、おそらく世界で初めて、現在でいうWi-Fi、当時は無線LANと呼んでいましたが、これを利用して1棟丸ごとブロードバンド化を実現した会社だと思っています。

そのような中で、Wi-Fiと非常に長く関わってきました。仲見世商店街は、浅草にある浅草寺まで続く商店街で、当社で実際にWi-Fiを提供しています。

また、東京タワーや病院、介護施設、ホテルといった観光を含む主要な3領域において、Wi-Fiだけでなく、Wi-Fiのコモディティ化を背景に、デジタル通信ソリューションを提供しています。

大きなホテルの場合、当社はビジネスホテルというよりも、日本独特の温泉や非常に部屋数の多い施設に提供しているケースが多いのが特徴です。そこでは、部屋のWi-Fiはもちろん、レストラン、フロント、ロビー、さらにはバックヤードまで、通信サービスを提供しています。

最近では「楽天トラベル」のようなオンライン・トラベル・エージェンシー(OTA)が非常に多く利用されているため、ホテル側はその都度ダイナミックプライシングで価格を変更する必要があります。そのようなニーズに対応できるよう、当社では非常に高速な通信サービスを提供しています。

さらには、イベントにもサービスを提供しています。時間軸を短縮することで、粗利益や売上が高くなる仕組みになっています。例えば、夏に行われる大規模な音楽フェスティバルなどのイベントに、3日間のみサービスを提供しています。当社のイベントWi-Fiのシェアは、全国的にも相当高いと思われます。

先ほどお話しした再生可能エネルギー事業も展開しており、「SOLERIO(ソレリオ)」という独自の商標で、最近では東京都を中心に助成金の支援を受けながらサービスを提供しています。

不動産事業については、それほど力を入れているわけではありません。当社はもともと不動産業者を顧客としており、現在ではその業者とコラボレーションを進めています。これまで社外に流出していた情報が収益につながっていなかったため、これを内部に取り込み、適切な収益化を図る取り組みを進めています。

ビジネスフロー

猪又:なぜインターネット無料マンションが実現するのかという点ですが、これは非常にシンプルです。フリーWi-Fiと同じ仕組みで、マンションの場合は大家さん、商店街やホテルではロケーションオーナー、つまり施設の所有者もしくはオペレーションを行う会社から料金をいただき、利用者は無料で利用できるというかたちを取っています。

太陽光発電なども同様の仕組みで、入居者は無料というわけではありませんが、例えば定額200kWhまで税込2,200円で利用でき、それを超える分については昔の携帯電話と同様に、一定の範囲までは基本料金内で利用でき、それ以上利用すると追加料金が課されるという、一部固定・一部従量課金型のモデルです。

このような低圧一括受電という仕組みは非常に特殊で、それ以前はどの企業も集合住宅に対して一括で提供することはありませんでした。

この仕組みを通信と組み合わせると何が起こるかというと、私たちは通信サービスをマンションに導入しており、その販路に対して電気もクロスセルで提供します。具体的には、電気というより太陽光発電システム自体を蓄電池と組み合わせて販売しています。

なお、この販路は非常に似通っており、一部では同一です。ただし、この仕組みはマンションだけにとどまりません。例えば、ホテルや介護施設などにも導入されています。

また、一般の太陽光発電ベンダーでは実現が難しい点が1つあり、この国には一戸建て用の太陽光発電システムか、もしくは産業用の大きなシステムしかありません。

中小規模の建物は非常に多く見られます。例えばマンションやアパートもそれに該当します。このような建物は、産業用の高額なシステムまでは必要なく、家庭用のシステムは一戸建てには適していてもマンションには規模が小さいといった状況があります。

そのため、こうした建物に産業用のシステムを導入すると、コストが非常に高くなり、費用回収が困難となります。

そこで私たちが行ったのは、家庭用の蓄電池とパワーコンディショナー(インバーター)を組み合わせ、並列で稼働させ、オペレーションを構築し、運転させ、クラウドで制御することで、高いコストパフォーマンスを実現し、産業用の約3分の1の価格で中小規模の建物に自家発電・自家消費を促しています。

おそらく、アパートやマンションなどで太陽光パネルが設置されている光景をほとんど見たことがないと思います。しかし、需要は多くなっています。クリーンなエネルギーで暮らしたいという人が多く、また、クリーンエネルギーを使って、自身のオフィスで照明を安心して使用したいというニーズもあります。照明に限らず、他の用途にも利用されています。

クリーンなシステムを使って自分の仕事をしたいという人は大勢います。それがリーズナブルに利用でき、特に東京都のように都知事による強力な後押しで助成金の割合が非常に高い場合は、なおさらです。

このエネルギーの制御は、必ず通信を介してクラウド上でコントロールする必要があります。この分野において当社は得意としており、通信とエネルギーのサービスを組み合わせてトータルで供給している企業は、ほとんど存在していません。そのため、この分野で強みを発揮していこうと考えています。

想定主要ターゲット

猪又:主要ターゲットは、ネットワーク化に不慣れな中小規模の法人や事業主です。具体的には、店舗、自治体、介護施設、宿泊施設などが想定されます。

大手企業は大手同士で対応すればよいと考えています。大手の場合、品質は良いもののコストが非常に高く、大手の通信キャリアや大手ベンダーから導入しようとすると中小規模法人では手が出せないのが現状です。

日本の場合、法人の99パーセントは中小企業もしくは中堅企業です。このような企業にコストパフォーマンスの非常に高い通信サービスやエネルギーサービスが届いていません。これらが私たちの主要ターゲットとなります。

また、マイクロ法人のような極めて小規模な法人については、ご要望があれば対応していますが、私たちの主なターゲットはむしろ中堅・中小規模の法人です。

インフラ業は、通信キャリアや大手電力会社、鉄道会社など、かつては国策によって成立した大資本の企業しか手掛けられないと考えられてきました。

しかし、私たちのような中小・中堅企業、さらにはベンチャー企業でも、構内に限ればインフラ事業を展開できることを「マンションインターネット」で証明したと考えています。

これをエネルギー分野に展開し、現在では通信とエネルギーの領域を事業の柱としています。将来的にはビル、マンション、病院などにも拡大していく計画です。

ホテルやその他の施設において、当社は構内インフラを提供する役割を担い、構内インフラ・インテグレーターから総合インフラ・インテグレーターへ成長することを中長期的な目標としています。

日本では、現在、民間が水道設備を担う例は少ない状況ですが、フランスなどでは水道全般を民間が管理しています。日本も、今後そのような動きが進むと考えています。

将来的に、当社が浄水場を所有することは難しいかもしれませんが、構内の水道管や構内の大元のバルブから先、約20メートル、規模によっては100メートルほどになる部分のインフラを、すべて当社で担っていきたいと考えています。

これまでのステージと新たな成長ステージ

猪又:ステージについてご説明します。当社は2003年12月1日に営業を開始しました。これが第1ステージです。当初は、NTTや大手通信キャリア、また大手インターネットサービスプロバイダー(ISP)の代理店事業からスタートしました。

第2ステージではスライドにあるような「インターネット無料マンション」というサービスを開発し、市場に提供しました。

第3ステージでは、ルーターやWi-Fiアクセスポイントなどの開発を進めてきました。第4ステージは、上場から昨年の決算ころまでを指します。

ステージは外圧や環境の変化によって変わるもので、昨年から第5ステージを迎えています。この第5ステージでは、上場を果たし、当時の東証1部にまで到達し、企業価値を向上させてきました。しかし、その結果としてコモディティ化が進んでいます。

私たちは日本で初めてWi-Fiというカテゴリで上場を果たしたため、大変注目され、珍しがられました。上場当時は「Wi-Fi」という言葉が読めない人もおり、「ウィーフィー」のようなわけのわからない読み方をされて、「なんなのだろう、Wi-Fiって」という反応を示されたこともありました。しかし、この5から6年でWi-Fiは非常にコモディティ化し、当たり前の存在となりました。

その結果、Wi-Fiはもはや珍しい言葉ではなくなり、企業価値が下がり、PERも大幅に低下しました。具体的には、約5分の1になってしまったという状況です。株価も時価総額も、それに伴って下落しました。

ビジネス構造やビジネスモデル、さらには目指すべき方向性を見直す必要があると感じました。それまでは、従来の方針を拡大すれば売上や利益が自然に伸びると思っていましたが、そうではないという認識に至ったのが第5ステージです。

この第5ステージでは、ビジネス構造やビジネスモデル、そして考え方を変え、過去の成功体験を否定する必要がありました。そして、その否定を経て第5ステージを突破し、次なる成長ステージへ向かうことが、第5ステージの役割です。

おそらく、2029年から2030年頃に第6ステージが訪れると考えています。AIによるシンギュラリティがもともと2040年頃に起こるのではないかと孫さんがよくおっしゃっていましたが、もう少し早まるのではないかと見られています。

通信分野では、NTTが「IOWN(アイオン)」を開発して研究を進めている光電融合などのイノベーションにより、5Gから6G、さらに6Gから7Gへと進化し、それ以降は5G、6Gといった呼び方もされなくなると思います。「IOWN」などにより、通信が革命的に変わるからです。

従来の通信は光ファイバーを使いながらも、すべて電気信号に変換して行われていました。しかし、光電融合の世界では、光信号のまま通信が行われます。これにより、通信速度が格段に速くなるだけでなく、エネルギー消費が約100分の1に削減されます。

光電融合の世界が到来すれば、2030年に実現するかどうかはまだ不確定ですが、例えばスマートフォンが1回の充電で1年間使えるような社会になるかもしれません。

イノベーションは約30年ごとに各方面で起こるとされています。エネルギー分野では、これまで主に太陽光パネルとリチウムイオン電池が使われてきましたが、2030年頃には、日本発の技術であるペロブスカイト太陽電池が市場に登場していると考えられます。このフィルム状の太陽電池は、積水化学などによって開発されており、いわゆる太陽光モジュールとして期待されています。

また、現行のリチウムイオン電池も全固体電池へと進化していくでしょう。全固体電池では、トヨタが世界で最多の特許を取得しているとされています。現在の蓄電池は重量があって高価であり、寿命(サイクル数)も約20年ですが、全固体電池によりこれらの課題が解決される未来が期待されています。

これが全固体電池に移行すると、小型化、軽量化、そして耐用年数が長くなることで、革命的な変化が起こると思います。これが実現するのは2030年頃と予測しています。

さらに、AIの進展によって世の中が劇的に変わるでしょう。こうした大きな変化に向けて、私たちは常に準備を整え、突然訪れる変革の波に乗っていかなければなりません。このために第5ステージが存在するのだと思います。

現時点ではメガソーラーがエネルギーの主流ですが、今後は自家発電・自家消費の都市型エネルギーへとシフトしていくと考えています。フィルム状の太陽光パネルが普及することで、景観の議論はひとまず置くとして、例えば窓ガラスをすべて太陽光パネルにすることが可能になります。

パネルというより太陽光フィルムが普及するでしょう。壁にも同様の建材が使われ、デザイン性にも優れた製品が登場すると考えています。そうなると、マンションやビルそのものが太陽光発電所になる時代が訪れるでしょう。これらはどちらも日本発の技術であり、非常にすばらしいものです。これは世界に発信できる技術といえます。

このような変化が国内から同時多発的に、さらにはグローバルに広がると予想しています。特に国内においては、カントリーリスクや地政学的な要因も含め、日本製品が活用されるようになるでしょう。そのような時代には、私たちが一気に成長することができると考えています。

現在はその成長に向けた準備期間であり、もちろん準備期間中でも利益を拡大していく必要がありますが、第5ステージはそのような時代に備えたさまざまな準備をする時間だと思っています。

構内インフラ・インテグレーター

猪又:これまで「Wi-Fi, Anywhere」をスローガンとして掲げていましたが、それを「構内インフラ・インテグレーター」に変更しました。

現在は太陽光発電を中心に展開していますが、私たちは太陽光発電以外のエネルギーは都市部では普及しにくいと考えています。洋上風力発電にしても洋上がなく、地熱発電にしても都市部の街中での運用は難しいため、太陽光発電が最適だと思います。

そのような太陽光と蓄電池を組み合わせた、イノベーション的なエネルギーと通信を融合します。ごく簡単に言うと「セット割」のようなものです。「auセット割」のようなサービスがありますが、そのようなサービスを展開し、ロケーションオーナーにご提案することで、入居者や構内の利用者がより便利に、より安価に利用できることを目指しています。

ホームユース B2C契約スキーム

猪又:そのために、さまざまな面でソニーネットワークコミュニケーションズと提携しています。

TAMの拡大にも注力

猪又:スライドでは、通信分野の事業についてご説明しています。業績については恐縮ですが、第1四半期の決算説明補足資料や動画でご説明している内容をご覧ください。

太陽光発電EPC事業会社株式を取得

猪又:EPC事業会社と記載していますが、これは太陽光発電の工事会社・施工会社のことです。AIの時代には、論理的な思考や文章・ドキュメントの作成などはAIが担うようになると思いますが、私たちはAIができないことに取り組む必要があります。

この点で、一番みなさまにわかりやすいのは工事ではないかと思います。ロボットが工事を行えるようになるのは、まだ20年ほど先の話だと考えています。それまでの間、工事や施工技術は非常にアナログではありますが、絶対に必要なものです。

アメリカでは、ブルーカラーの労働者が非常に裕福になっているという話があります。従来のホワイトカラーの仕事がAIによって代替され、ブルーカラーが非常に重要な存在となり、例えばエレベーターの保守に従事する人々が非常に裕福になっていると言われています。

このように、AIにできないことや人手不足がある中で、施工技術は今後も非常に重要であり続けると考えています。

通信分野も同じです。美観を損ねず、効率的な通信を可能にする設計・施工を行うことが非常に重要です。そのため、通信の電気工事会社などもM&Aを検討しています。具体的な案件はまだ出てきていませんが、時間をお金で買う状況にならざるを得ないと言えます。

このようなAI時代だからこそ、アナログに注目することが私のポリシーです。そのために、来たるべき時代に備えて施工技術を磨き、ペロブスカイト太陽電池や全固体電池の時代に対応する施工体制を整え、受注して日本全国に提供できるように、あるいはアジアに展開できるように、太陽光のノウハウを持つ施工会社をM&Aしました。これは今後、通信の世界でも進めていくつもりです。

戦略投資

猪又:戦略投資についてです。キャピタルアロケーションですが、約2年間で営業キャッシュフローとして50億円を稼ぐ予定です。外部調達および手元資金で50億円程度を確保し、営業キャッシュフローと合わせて100億円をどのように使うかという点ですが、株主還元に約10億円を充て、戦略投資としてM&Aやシステム投資に50億円から60億円を充てる予定です。

当社は20年以上、自社で開発した基幹システムを作り続けてきました。しかし規模が大きくなったため、現状のシステムでは限界を迎えており、変更が必要です。そのため、相当なシステム投資が求められます。

設備投資についても年間で約15億円から20億円が必要であり、通信設備を中心に資金を活用する予定です。これらを合わせた全体の投資額として約100億円をこの戦略に充てることになると考えています。

本日の日本経済新聞朝刊によると、東京電力グループが子会社に外部資本を導入するという記事が掲載されていました。これは当社の規模とは異なりますが、今後はさらに大企業同士が提携を進めていくと見られます。

東京電力グループは通信会社も保有しており、さまざまなチャンスが生まれる可能性があります。そのため、キャピタルアロケーションを通じて資金を有効に活用し、成長につなげたいと考えています。

時間になりましたので、終わりにします。この資料は、四半期の開示資料や決算説明資料に掲載していますので、ぜひそちらをご覧ください。

本日は、私たちが描く未来、現状、そして現状から未来についてご説明しました。大変簡略な説明ではありましたが、以上で終わります。ありがとうございました。

質疑応答:ソニーネットワークコミュニケーションズ社との提携の狙いと現状について

1UP投資部屋Ken氏(以下、Ken):ソニーネットワークコミュニケーションズ社との提携の狙いと、足元の状況について教えていただけますか? 

猪又:提携の狙いは、スライドに書いてあるとおりです。全戸一括型の「インターネット無料マンション」はレッドオーシャン化しています。今後の展開を考えると、私たちがターゲットとしている集合住宅は、民間賃貸住宅で1,700万戸ほどあると見込んでいます。

分譲住宅を含めるとさらに多くなりますが、私たちは主に民間賃貸住宅をターゲットとしています。レッドオーシャン化が進むと、M&Aや撤退により事業者が縮小していきます。そのような状況下で、例えば私たちの場合、ネット上で「ファイバーゲート 回線 遅い」といった評価が出てくることがあります。

一方でレッドオーシャン化により、各社は品質を担保できない状況にあります。これは、価格転嫁が難しい業界であるためです。理由として、家賃という岩盤物価が上がらなかったことが挙げられます。最近になって都市部ではようやく家賃が上昇してきましたが、家賃の上昇がない状態で付帯サービスの価格だけを上げることはできない、というのが1つの理由です。

もう1つの理由は、レッドオーシャン化により、例えば、私たちが契約更新時に料金を下げなければ、他社が料金を下げて契約を切り替えてしまうという事態が多発していることです。

結果として、ネット上ではマンション一括型の回線が「遅い」「対応が悪い」などと言われています。現状としては、各事業者は厳しい状況に直面しています。

しかし今後、部屋内のIoT機器の増加や、共用部を含むカメラのネット経由化が進む中で、こうした部分には必ず回線が必要とされます。また、現在、高速回線を求める人が非常に増えている状況です。「インターネット無料マンション」では、さらに3,000円から4,000円を払っても高品質な回線を求める方がすでに多くいらっしゃいます。

そこでソニーネットワークコミュニケーションズ社と提携し、大元の回線を高速化するとともに、高品質な回線を求めるお客さまを開拓していく方針です。これにより、入居者にとって非常に良い環境を提供できると考えています。

既存設備については私たちがすでに投資を完了しているため、「NURO(ニューロ)」が新たに投資をする必要がありません。

若干ではありますが、市場よりも安くご提供できます。現状では居酒屋でも4,000円から5,000円程度で飲むことは難しいかと思います。学生であれば別ですが、高速回線を必要とする社会人であれば4,000円から5,000円の支払いは可能だと考えます。

私たちは現在、約70万戸にサービスを提供していますが、高速回線を必要とするお客さまはその約20パーセント、5分の1程度いらっしゃいます。この数を10万回線、10万戸と仮定し、個別回線として1戸あたり3,000円いただいた場合、10万戸で月額3億円、年間では36億円の収益となります。

そうすると営業利益率は20パーセント以上となる見込みで、三方良しのビジネスを展開できるためソニーネットワークコミュニケーションズ社と提携しました。

質疑応答:「NURO」の比率増加と利益率への影響について

Ken:なるほど、実際に私もソニーネットワークコミュニケーションズ社のサービスを利用しています。家も完全にオンライン化しており、鍵などもネットで操作可能ですが、そのおかげで物件自体の競争力が急激に上がると感じました。

御社の中で「NURO」の比率が今後さらに増加していくと思いますが、それが増えることで、利益率を含め御社にとってプラスに働くという認識でよろしいですか?

猪又:個別回線が増えていけばの話です。「NURO」はみなさまご存知のとおり、「フレッツ」プラスアルファよりも品質がよいのですが、少し高額です。私たちも既存の「インターネット無料マンション」の品質を向上させるためだけに「NURO」に変えると、利益を圧迫します。「NURO」自体が安価なものではないからです。

インフラ維持費用が高額になることで営業利益は減少しますが、それでも個別回線が増えれば、大幅に利益率が向上します。そのため、BtoBを主体にしてきた私たちが、BtoCにも取り組まざるを得ない状況となっています。

スライド右側は全国賃貸住宅新聞の今年版ですが、ご覧のとおりです。ファミリー向け、単身者向けともに、「インターネット無料」の順位が落ちました。一方で、単身者向けで1位、ファミリー向けで2位に上がってきたのが「高速インターネット無料」です。高速回線を求めている人が多いため、そのニーズに対応していくということです。

質疑応答:PDI社買収の狙いとメリットについて

Ken:PDI社買収の狙いについてお聞きします。先ほど少しお話をうかがいましたが、マーケットを見てもサブコンを自社の傘下に入れる動きが非常に強いように思います。御社も抱え込むことで今後のメリットが大きいと判断されたということですね。

猪又:そうですね。1つは、私たちは太陽光システムの工事を外注していましたが、外注先も収入がなければ立ち行かないため利益が発生しています。これをすべて内製化すれば、連結で利益は上がることになります。また、太陽光のベンダーが一般的に行っているのは、設計の外注、施工の外注、防水工事の外注、そして機械も仕入れているため外注です。

施工や納品、さらにはサポートまで外注しているため、それぞれの外注先で利益が取られ、お客さまが支払う金額が高額になります。これをすべて一気通貫で当社の連結グループで内製化すれば、各工程の利益が少なくても確保され、価格競争力が向上するという発想です。

また、2030年にペロブスカイト太陽電池の量産化が始まると、大きな変化が見込まれます。その際に、施工技術を磨いておく必要があります。

電気工事は法的にも資格取得の面でもハードルが高いですが、これを内製化してグループ内に取り込むことで非常に大きなメリットがあると考えています。

質疑応答:今後のM&Aと内製化の方向性について

Ken:M&Aは、徐々に業績が伸びてきたら、「さらにこうしていこう」といったお考えもありますか? 

猪又:もちろんです。通信工事に関しても行わなければなりませんね。グループ化が必要です。通信工事は弱電工事である一方、太陽光などの工事は強電工事と呼ばれ、分野が少し異なります。施工については、内製化が必要だと考えています。

質疑応答:新築の開通戸数における季節性について

Ken:新築の開通戸数についてですが、季節性があるのではないかと思います。その点について教えていただけますでしょうか? 

猪又:私たちが賃貸業界を主に手掛けてきた中での、これまでの傾向としては第2四半期と第3四半期には季節要因が強く表れています。これは、ホームユース事業における特徴です。

ビジネスユース事業についても、3月決算企業のお客さまが多いため、3月までの納品依頼が多くなります。一方、ホームユース事業では、第2四半期と第3四半期に圧倒的な比重があります。

第2四半期および第3四半期にあたる10月から3月は、どうしても案件が多くなるという季節要因は避けられません。一方で、ビジネスユース事業では新年度になり、予算を組んだことにより「やりましょう」というケースも見られます。

質疑応答:マンパワーと対応力不足の改善策について

Ken:資料を拝見しましたが、今回の決算について「マンパワーの対応力が不足していた」と直近書かれていたと思います。その改善に関して、どのような施策を講じているか教えていただけますか? 

猪又:経常利益の成長は一昨年の24億円で止まりました。その要因の1つとして、ホームユース事業を売り切りにした会計処理による影響があります。

それまでは初期費用をいただきながら自社で設備投資を行っていました。そのため、初期費用の粗利は非常に高くなります。これは減価償却によるものであり、通信設備への投資が増えるにつれて固定資産税が非常に高額になる状況です。

これを中長期的に見ると、キャッシュフローは全体として変わりませんが、利益が目減りするとして、売り切り方式を増やしています。その結果、粗利が減少した事情もあります。

ただ、それだけではなく、社員一人ひとりが通信ネットワークやエネルギーに関する知識やスキルを向上させていかなければならないという課題もあります。マンパワーと対応力が不足している点が課題だと考えています。

これを克服するために、これまで営業をホームユース営業本部とビジネスユース営業本部に分けていましたが、今年7月の組織改編でこれらを統合し、営業本部をエリア別に3つに分けました。

ホームユース事業はマンション向けのため、工事もパターン化やテンプレート化が進んでいます。一方、ビジネスユース事業ではさまざまなお客さまに対応する必要があり、オールカスタマイズとなっています。

病院や観光、介護、自治体といった分野の知識が求められ、それぞれのネットワークがカスタマイズされているため、非常に高いスキルが必要です。

短期間で成果を上げることは難しいですが、これらを適切に融合させることで、その過程で営業スキルが自動的にOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)によって向上し、1人当たりの営業単価が上昇すると考えています。結果として、ホームユース事業、ビジネスユース事業、そして再生可能エネルギー事業もすべてカバーすることができます。

販路が基本的にすべて共通しているため、それがすべてクロスセルに移行すると、1人当たりの受注高や粗利が向上し、生産性が向上するという対策を講じているのが、最も重要なポイントだと考えています。もちろん、優秀な人材を採用していきたいという思いはありますが、人材不足の中で採用が難しい状況においては、まずは内部成長を図ることが重要だと考えています。

質疑応答:株価対策について

飯村美樹氏:「株価の長期下落が続いており、損失の限界にきている株主も多いと思います。スタンダード市場に移行したことで、今後、優待、自社株買い、増配などの株価対策は行わない方針なのでしょうか?」というご質問です。

猪又:株主優待については、以前は実施していましたが、不公平な側面があると考えています。保有株数に応じた規定があるものの、規定を超える保有者については一律で、特に大口株主さまに対しては優待があまり貢献できない状況です。

それを考慮すると、全株主さまに対し公平な配当を実施するほうが良いと判断しています。また、株主優待施策はすべて営業利益に影響を及ぼすため、優待を拡充すればするほど営業利益が低下することになります。

配当は利益処分であり、すべて純資産や純利益に関連するもので、営業利益には関係ありません。しかし、営業利益が低下すると市場の反応が悪くなり、さまざまなご意見をいただくことになります。そのような理由から、個人的には株主優待は好ましくないと考えており、公平性を重視したいと思っています。

増配についてですが、当社はもともと「三方良し」という考え方を持っています。当期純利益の用途については、3分の1ずつ、1つは株主還元、1つは内部留保、そしてもう1つは成長投資(人的投資やM&Aへの投資を含む)に充てるべきだと考えています。

現在、配当性向は約42パーセントとなっています。基本的には前年を下回らないように配当を続けていきます。ただし、配当性向を55パーセント、60パーセント、65パーセントと増やしていくのは、違うのではないかと思います。

成長には内部留保が必要であり、自己資本比率や財務の健全性を考慮するだけでなく、成長投資にも資金を活用しなければなりません。そのため、配当性向は最大でも50パーセント程度が限界だと思っています。

質疑応答:再生可能エネルギー事業の進捗と展望について

Ken:「第1四半期の不動産、再生可能エネルギーの売上は不動産が大半を占めているように見受けられます。実際、再生可能エネルギーの第2四半期以降、今期売上につながる引き合いはありますか?」というご質問です。

猪又:再生可能エネルギーは今期から本格的に売り出しているため、引き合いや受注残がけっこうありますが、新築案件が多くなっています。

第2四半期について詳しいことはお話しできませんが、ヒットしているものがあるため、P/Lに影響を及ぼしている案件も出てきています。新築案件が多く、リードタイムが長いことから、今期の分もありますが、ほとんどが来期の案件です。その結果、受注残が積み上がっています。

具体的には、大規模な物件の引き合いが出てきており、工場や何百店舗規模の案件、中小自治体の案件などがあります。

一例として、旭川市の隣にある東神楽町では、太陽光発電と蓄電池を納め、オペレーションを行っています。今後は老朽化に伴い、庁舎、体育館、公民館の建て替えが必要であり、この際には100パーセント再生可能エネルギーを導入しなければなりません。

そのような市営住宅や県営住宅も含めて引き合いがあります。ただ、今期の大きな目標は、再生可能エネルギー部門のセグメント利益を黒字化することであり、これは達成したいと思います。

猪又氏からのご挨拶

猪又:株価やPERが低迷する状況が続いていますが、第6ステージでの飛躍を見据えて、第5ステージでは1回屈伸を図らなければならないと考えています。このため、しばらくはM&Aも含めて先行投資が続く見込みです。

しかし、2029年から2030年にかけて、イノベーションによって世の中が大きく変わると確信しています。その時に大きな飛躍を実現するため、準備を進めていかなければなりません。

一方で、第5ステージの成長を充実させる必要もあります。まずは進化を遂げなければPERなども向上しません。より魅力的な会社にしていくため、第5ステージに注力していきたいと考えています。

ぜひ、株主のみなさま、投資家のみなさまには引き続きご指導ご鞭撻を賜りますよう、伏してお願い申し上げます。どうぞよろしくお願いします。

当日に寄せられたその他の質問と回答

当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。

<質問1>

質問:ビジネスユース事業について、上場以降コロナもありましたが、インバウンド需要もあったにも関わらずそれほど成長しているように感じません。成長余地があると言っていますが、今でもそうですか?

回答:ビジネスユース事業の成長性について、ご指摘のとおり、上場以降、特にコロナ禍を経てインバウンド需要が一巡した時期において、成長が鈍化傾向にあった事実は認識しています。しかしながら、結論として現在もこの事業の成長余地は極めて大きいと考えています。

成長が鈍化した背景には、市場のニーズと当社の提供価値の大きな転換があります。コロナ以前のビジネスは、主に飲食店などの個店向けに「来客誘致を目的としたシンプルなWi-Fiスポットの提供」が中心で、単価が安く、件数を増やすことで成長しました。

しかし、現在は単に「繋がる」通信から「業務のDX化や生産性向上を目的としたソリューション」としての通信へと、ニーズが大きく移行しています。このソリューション分野への転換には、高度な知識やノウハウの蓄積が必要であり、時間を要しているのが実情です。また、コロナ禍で既存の販売パートナーの財務状況が悪化した影響もあり、新たな販路の開拓の取り組みにも時間を要しました。

現在、当社は成長の「布石」を打っている段階であり、前期に課題として挙げたマンパワー不足解消に向けた営業体制の変更や、ソリューション提供に必要なノウハウの蓄積を進めています。特に、地域別への営業体制変更により、既存顧客に別商材を提案するクロスセルの機会が着実に増加しており、今後の収益貢献を見込んでいます。

ターゲットとする「医療・介護」「公共・交通」「観光」の各領域での潜在的な需要は依然として非常に旺盛であり、ビジネスユース事業はあらためて高い成長力を発揮できると確信しています。

<質問2>

質問:プライム市場からスタンダード市場に移りましたが、営業に影響はありましたか?

回答:上場市場の変更は、当社の営業活動においては特に影響はありません。提供するサービスの本質や、顧客である不動産オーナーさま、法人さまの意思決定に、市場区分が直接影響を及ぼすことはないと認識しています。引き続き、事業戦略に基づき営業活動を推進していきます。

<質問3>

質問:分譲マンションもサービス拡大、B2Cの推進とあります。こちらの営業はすでに行っていますか?

回答:分譲マンションは従来、当社のメインターゲットではありませんでしたが、導入実績はあります。現在、この市場への本格的なアプローチを推進している段階です。

特に今後、B2Cサービスの提供を開始することで、サービス提案が強化され、分譲マンション市場をターゲットとした営業活動がしやすくなると見込んでいます。これにより、事業の市場規模拡大が期待されます。

このB2Cサービスは、市場規模拡大とクロスセル推進の要ですが、現時点ではまだ販売を開始していません。現在はサービス提供に向けた先行投資の段階であり、その効果が今期の下期から影響し始めると想定しています。

<質問4>

質問:売り切り方式にしたのはプライム市場から落ちたことにより、業績悪化、株価下落よりも税負担軽減を優先したからですか?

回答:プライム市場からの区分変更と機器の提供方式は特に関係ありません。機器の売り切り方式を採用した最も重要な理由は、長期的なストックビジネスの収益性向上を重視した経営判断によるものです。当社は創業以来、安定的な収益基盤であるストックの粗利を重視しており、売り切り方式を採用することで、今後のストックの利益が向上すると考えています。

また、ホームユース事業における新築物件の比率が高まるにつれて、お客さまである物件オーナーさまから機器の売り切りのご要望をいただくことが増えたことも、この方式の採用を決定した要因の1つです。

この方式では、契約初年度の営業利益率は低下しますが、その後の利益増が見込まれるため、契約期間全体での累計損益は従来の貸与方式と差異がないと考えています。目指すは、長期的なキャッシュを稼ぐ力(EBITDAマージン)の改善です。

<質問5>

質問:大口顧客でも優待込みで利回りが上がれば株価に影響があり喜ばれると思いますが、いかがでしょうか?

回答:優待を実施することが株価に好影響を与え、株主さまに喜ばれるというご指摘は理解しています。しかしながら、株主優待制度については、βの改善が図られ資本コストの低下に寄与するとの意見もありますが、機関投資家にとって公平性に欠ける側面があると考えています。

当社は株価への貢献を、優待による一時的な効果ではなく、より公平かつ持続的な方法で実現すべきだと考えています。そのため、すべての株主さまに対し、営業利益に影響を及ぼさない配当を通じて公平な利益還元を行うことを主軸としています。

また、純利益を「株主還元」「内部留保」「成長投資」に均等に充てる「三方良し」の考え方に基づき、成長投資を積極化することで、本業の収益性と企業価値を持続的に向上させ、株価の長期的上昇を通じてすべての株主さまの期待に応えていきます。

facebookxhatenaBookmark