【QAあり】イーグル工業、前年同期比で増収増益、通期予想も上方修正 NOK株式会社との共同株式移転による経営統合実施へ
26年3月期第2四半期実績|売上高・利益(前年同期対比)

鶴鉄二氏:代表取締役会長兼社長の鶴です。2026年3月期第2四半期決算の概要と通期の業績予想をご説明します。
2026年3月期第2四半期累計実績は、売上高が855億円、営業利益が55億円、経常利益が72億円、親会社純利益が48億円となりました。一般産業機械業界向け事業以外のセグメントでは総じて販売が増加し、前年同期比及び計画を上回る結果となりました。
26年3月期第2四半期実績|営業利益変動要因(前年同期対比)

営業利益の変動要因です。前年同期比では、主に原材料の値上がりや人件費の増加、為替の影響がマイナス要因となりました。一方で、コストダウンや生産性向上、売上高の増加及びプロダクトミックスに加え、販売価格の値上げ効果があり、増益となりました。
26年3月期第2四半期実績|事業セグメント別 売上高・営業利益(前年同期対比)

各セグメント別の実績についてご説明します。自動車・建設機械では、EV向けサスペンション用ソレノイドバルブの販売が好調に推移し、増収増益となりました。
一般産業機械では、東南アジア地域でのプラント稼働率低下により減収減益となりました。
半導体は引き続き赤字ですが、前年同期と比較すると販売は増加し、損失も縮小しました。
舶用では、新造船向け販売が増加するとともに、修繕需要も前期に続き堅調に推移し、増収微増益となりました。
航空宇宙では、販売は伸びていますが生産増への対応費用が重なり、増収減益となりました。
26年3月期業績予想|売上高・利益(前期対比)

2026年3月期通期の業績予想です。売上高は1,750億円、営業利益は117億円、経常利益は153億円、親会社純利益は98億円を見込んでいます。
一般産業機械業界向け事業や舶用業界向け事業は、下期も堅調に推移する見通しです。また、自動車・建設機械業界向け事業も販売増と収益改善により、第1四半期決算発表時の通期予想を上回る見通しです。
26年3月期業績予想|営業利益変動要因(前期対比)

通期の営業利益変動要因の予想値です。原材料の値上がり、人件費の増加、為替影響は継続しますが、コスト削減や生産性向上、売上高の増加とプロダクトミックスに合わせて、販売価格の値上げも継続しますので、増益の見通しです。
26年3月期業績予想|事業セグメント別 売上高・営業利益(前期対比)

セグメント別の業績予想です。自動車・建設機械は、下期も販売が同程度で推移する見通しです。営業利益は、米国の関税やプロダクトミックスの影響はあるものの、販売価格の改定も進み、増益となる見通しです。
一般産業機械は、東南アジア地域でのアフターサービス販売の減少もありますが、前年と同程度となる見通しです。
半導体では、下期も上期と同程度の販売が継続し、営業赤字は半減する見通しです。
舶用は、前期に引き続き増収が見込まれます。一方で、航空宇宙は、販売は増加するものの、将来を見据えた投資により減益となる見通しです。
設備投資と減価償却費|実績・計画

今期の設備投資と減価償却費は、119億円の見通しとなりました。2024年3月期から2026年3月期までの3ヶ年計画における設備投資総額は約350億円となる見通しです。
各種財務指標|主要KPIの状況

各種財務指標の見通しです。今期の増益見通しに伴い、各指標も改善され、ROEは8パーセントを超える見通しです。
KPIとしているROICとROEは、来期以降もROICが6パーセント以上、ROEが9パーセント以上の達成を目指しています。
自動車・建設機械業界向け事業|ビジネス現況・今後の拡販品目

各セグメントの状況と今後の事業展開についてご説明します。
自動車・建設機械業界向け事業では、EVをはじめとした次世代自動車向け製品の開発・販売を進めていますが、今期は当社のサスペンション用ソレノイドバルブの販売が好調に推移しています。
本製品は、車両重量が増加するEVにおいて、車両の安定性向上を目的として採用が拡大しており、自動車の動力源に依存しない品目として注力している商品です。
次世代自動車向け製品については、スライドに記載のその他拡販品目も含めて、2030年度には250億円以上の販売を目標としています。
一般産業機械業界向け事業|ビジネス現況と見通し

一般産業機械業界向け事業の動向です。今期の上期は、貿易摩擦の影響により、東南アジア地域の一部プラントの稼働が低下し、当社製品のアフターサービス需要も減少しました。
一方で、通期では、当社の主要市場であるインドや東南アジア地域において、エネルギー需要の増加を背景とした各プラントへの販売は増加傾向が続いており、収益は前期と同程度の見通しです。引き続き、長期的な収益を見据えた販売とアフターサービスを進めていきます。
半導体業界向け事業|ビジネス現況と今後の事業動向

半導体業界向け事業の動向です。当期は、生成AI関連分野を中心とした業界の回復に伴い、当社製品の需要と販売も回復基調にあり、営業損失幅が縮小する見込みです。
販売拡大に合わせて、スライドに記載の「スリップリング」や「テクスチャーシール仕様ロータリージョイント」などの新製品開発や、従来の磁性流体シールとの複合ユニット開発を開始しており、来期の黒字回復を目指していきます。
舶用業界向け事業|ビジネス現況と今後の事業動向

舶用業界向け事業の動向です。当期は主に新造船向け販売増に伴い営業利益が落ち込む見通しでしたが、修繕需要も堅調に推移していることから、前期に続き増収増益の見込みです。
当社は、世界中の1万トン以上の中大型船の船尾管シールで60パーセント以上のマーケットシェアを有しています。活発化する造船業界の動向を見据え、シェアの維持と収益の柱となるアフターサービスの確保に努めていきます。
航空宇宙業界向け事業|ビジネス現況とトピックス

航空宇宙業界向け事業の動向です。航空機向け製品については、海外のエンジンメーカーからの量産引き合いが増加しています。防衛関連も生産拡大や次期戦闘機エンジンへの当社製品の採用に向けた活動を進めています。
宇宙産業向け製品に関しては、スライドに記載のとおり、直近の国産ロケット開発プロジェクトには継続して参画するとともに、その他国内外の民間ロケット開発プロジェクトにも参画しています。
これらの状況を踏まえ、今期は将来に向けた各種プロジェクトへの先行投資を実施するため、利益は落ち込みます。しかしながら、来期以降は売上高100億円以上のビジネスに成長する見通しです。
NOK株式会社との共同株式移転による経営統合の実施

最後に、決算発表と同時に本日開示した、NOK株式会社との共同株式移転による経営統合についてご説明します。
当社は1964年10月にNOKのメカニカルシール部門が独立して設立され、その後、1982年の上場以降もNOKと連携しつつ独自に経営を進めてきました。
今回の経営統合の背景として、両社の主要事業である自動車産業をはじめ、次世代モビリティや次世代エネルギー市場に向けた環境・省エネに資する新製品の開発や、さらなるグローバル展開といった重要な課題を共有しており、これらの課題に対応するため、これまで以上に一体感を持ったグループ経営体制を構築することが両社の企業価値向上につながるとの認識が一致し、共同持株会社の設立を決定しました。
共同株式移転に伴う株式移転比率は、NOK及びイーグル工業それぞれの株式1株に対し、新設される親会社であるNOK Group株式会社の株式1株を割り当てます。移転は2026年6月に予定される定時株主総会での承認を経て、2026年10月1日に実施する予定です。
なお、NOK Group株式会社は、同日に東証プライム市場へテクニカル上場する予定です。したがって、当社もNOKも実質的には株式上場は維持されます。
本経営統合によるシナジー・期待される効果

本経営統合によるシナジーと現時点で期待される効果についてご説明します。両社が強みである素材技術を幅広く有することで、将来的な製品ラインアップの拡充が期待でき、それぞれの顧客基盤に対してさらなる拡販の余地が生じると考えています。
また、営業・生産面においても、各拠点の効率的な活用や生産材の内製拡大、さらに規模拡大に伴う購買力の向上が期待されます。
そして、持株会社への間接部門の集約・統合による、グループ経営資源の最適配分と効率化を進めていきます。同時に、グループ全体を俯瞰した投資戦略の立案と実行により、さらなる企業価値の向上を見込んでいます。
これらについては、今後の統合準備プロセスにおいて検討・精査していきますが、両社の経営資源を効率的かつ効果的な相互利用を通じて、NOKグループ一体として将来への成長につなげていきます。
以上でご報告を終わります。
質疑応答:販売価格の値上げの進捗状況について

質問者:販売価格の値上げについての考え方をお聞かせください。上期の実績では7億円、通期予想は15億円となっています。
期初の計画でも15億円増と想定されていたかと思いますが、上期は当初の想定どおり進んでいると理解してよいのでしょうか?
回答:今期は以前から交渉を重ねてきた結果、なんとか妥結に至ったこともあり、ほぼ想定どおりに進みつつ、若干想定を上回る成果を上げることができました。
質問者:御社は直接米国で非常に大きなビジネスを展開しているわけではないため、それほど気にしなくてもよいのかもしれませんが、御社の販売先からすると、米国向けの売上があり、関税による混乱もあったため、販売価格の値上げは難しいのではないかと考えました。その点について、御社の場合はその部分はあまり気にしなくてもよいのでしょうか?
回答:米国関税が収益にどのような影響があったかについては、当社の米国拠点の収益において影響を受けました。関税で負担は増加しましたが、そのうち約3割程度は価格転嫁ができています。一方で、残る部分についてはコスト増となっています。
質疑応答:舶用業界向け事業の増収微増益の要因について

質問者:舶用業界向け事業において、売上は上がっているものの利益が出ない要因は何だったのでしょうか?
回答:舶用業界向け事業は、新造船への納入後、5年ごとのアフターサービスで利益を出す仕組みとなっています。しかし、最近の地政学リスク拡大による海運航路の変更等を背景に新造船建造が進みそれらへの販売が増加し、利益が縮小しました。
質問者:つまり、アフターサービスよりも新造船が増えたことで売上が増えたため、その限界利益があまり出てこなかったという理解でよいでしょうか?
回答:ご認識のとおりです。新造船ビジネスが増える分、利益的には非常に厳しいところがあります。
質疑応答:政治的な動きが造船・航空・防衛関連事業に与える影響について
質問者:昨今、御社の事業に関係のある造船や航空・防衛関連の分野で政治的な話題がいろいろと出てきています。3ヶ月前、前期の決算発表時などと比べて、御社の事業に直接的な影響はすでに現れているのでしょうか?
回答:当社は防衛関連統括室という組織を持ち、防衛関連事業に注力しています。最近の厳しい情勢の中で、受注は明らかに増加していますし、今後かなり進展することが考えられますが、現時点では売上に占める防衛関連事業の割合はまだ1桁にとどまっています。
今後はこの分野がさらに進展することは間違いなく、そのような中で社会に貢献していきたいと考えています。
質問者:防衛関連を含む航空宇宙業界向け事業の売上高は上期に42億円と、昨年と比べても2億円増でしたので、防衛関連の話は入っていないかと考えていました。そうではなく、むしろ来年になったらもっと増えるというイメージでしょうか?
回答:そのご理解のとおりです。なお、防衛関連に関する製品は各セグメントに存在しています。舶用部分もありますし、一般産業機械もあります。さらに、特殊車両等などの自動車・建設機械業界向け事業の部分など、ほぼ全事業にまたがっていまして、防衛事業としての集計は表に出していません。
質疑応答:自動車・建設機械業界向け事業におけるEV向けの成長要因について

質問者:自動車・建設機械業界向け事業に関して、今回はEV向けが良かったというお話でした。一方で、グローバルで見ると「EV市場はなかなか成長も鈍化していて厳しい」という声も聞こえます。御社が伸びている理由はどこにあるのでしょうか?
回答:おっしゃるとおり、確かにグローバルでEV市場の成長は鈍化しています。しかし、当社ではそもそもの計画として「もう少し鈍化が大きいだろう」という見方で少し厳しめに予測していました。加えて、お客さまである機器メーカーでの拡販が進んだことも重なり、非常に大きな受注販売を獲得できています。
さらに、グローバル全体でのEV市場の変化や、それに合わせて当社がどのような技術や製品を供給していくかですが、サスペンション用バルブについては、EVが中心の中国やヨーロッパで大変好評を得ており、現在も顧客が日本に来訪して増産の打ち合わせを行っています。
さらに、熱マネジメント関係では、スライドの右下に記載したLLC切替弁について、これから市場に投入する計画があり、現在はいくつかの引き合いに対応しています。
同じく熱マネジメントに関連して、モーターのローター冷却の分野では、モーターの効率を向上させる「GlideX」という製品があります。EVが増加していく中で、最終的には電力効率を高めることが求められる厳しい動きが予想されます。このような課題に貢献できる材料や部品を、現在から開発して投入していく方針です。
質問者:EVについてですが、中国メーカーは依然として大きな成長を続けています。引き合いは中国系が多いと考えてよろしいでしょうか?
回答:現在のメインはやはり中国ですが、ヨーロッパでも引き合いが増えています。
質疑応答:中国におけるEV向けの競争戦略について
質問者:中国は競争が非常に激しく、例えば開発期間を短縮しなければ採用されないなど、難しいビジネスだと聞いています。その点についてどのように対応していますか?
回答:それに対応するための技術スタッフをそろえ、懸命に取り組んでいます。ただし、開発が進み、そこから数が増えていく際の投資判断は非常に難しいです。今後、EVがどのペースで普及していくのかという点も含めて、顧客との連携が必要だと考えており、関係を深めながら対応しています。
質疑応答:NOKとの経営統合の狙いとメリットについて

質問者:NOKとの経営統合についてです。これから具体的な詳細を話していくのだと思いますが、経営統合することによって、特にNOKが自動車向け事業を多く手がけている点でのメリットや、製品や拠点の融通ややりくりなどの具体的な狙いがあれば教えてください。
回答:まだ具体的な話には入っておらずいろいろと想定している段階ですが、拠点間のさらなる交流や、それぞれの独自品目を互いに融通しあうこと、人員や技術面での交流を深めることで売上向上を図るといった可能性が考えられます。これらは決まり次第、あらためてお伝えしたいと考えています。
質問者:この経営統合を選ばれた一番の狙いについては、例えば長期的な投資戦略であるとか、業界を取り巻く環境の変化などもあるかと思います。その点についてもう一度具体的に教えていただけますか?
回答:NOKとイーグル工業はどちらも、売上の大部分を自動車関連が占めています。しかし、EV向け製品や新しい商品への対応がまだ十分ではありません。このため、グループ全体の力を高めてこれらへの対応を進めていこうと考え、経営統合に至りました。
質疑応答:NOKとの経営統合検討の開始時期ときっかけについて
質問者:NOKとの経営統合については、いつ頃から検討を行ってきたのでしょうか? EV向けや新商品の商材への対応を進めたいということですので、EV時代の到来に備えての判断だと思います。具体的にいつ頃からこのような検討を始めたのか、何かきっかけなどがあったのでしょうか?
回答:具体的な日付やタイミングについては、お答えを差し控えたいと思いますが、いずれにしても両社で検討を重ねた結果、今回の統合に至ったということです。
質疑応答:半導体、舶用、航空宇宙業界向け事業におけるNOKとのシナジー効果について
質問者:経営統合により、イーグル工業の自動車・建設機械業界向け事業や一般産業機械業界向け事業では、さまざまなシナジーが期待できると思います。その他の半導体、舶用、航空宇宙業界向け事業に関しては、NOKとのシナジーで想定されるものはあるのでしょうか?
回答:技術的な観点からお答えすると、技術的なシナジーが非常に大きいと考えています。当社では無機材料、主にセラミックスやカーボンを扱っていますが、NOKでは樹脂やゴムの有機材料を扱っています。
技術が急速に進化する中で、これらのトータル技術を組み合わせて製品提案が可能になることは、どの分野においても非常に大きなシナジーをもたらすと考えており、大変楽しみにしています。
質疑応答:自動車関連のEVにおけるシナジー効果について
質問者:自動車関連のEVについて、例えばNOK単独の技術では難しく、イーグル工業の技術を組み合わせることで可能となる商材や技術はありますか? 我々としてもシナジーを期待する際にイメージしやすくなりますのでご紹介をお願いします。
回答:例えば、コンプレッサが電動化することで、当社の部品は減少します。一方で、内部に使用される安全弁のようなものについては、コンプレッサのさまざまなノウハウとNOKのゴム、そして当社の金属部品を組み合わせることで対応しています。これについてはすでに取り組みを開始しており、今後成長の余地があると考えています。
また、サスペンション用のバルブに関しても非常に需要が伸びています。このバルブの特性を担う部分にゴムのバルブを使用することで、新たな可能性が広がると考えています。このような面で、今後期待される分野になっていくと思っています。
質疑応答:NOKとの経営統合の前段階での事業再編の可能性について
質問者:NOKとの経営統合に向けて、例えば拠点の再編やリストラなど、統合前の段階でビジネス的に見直しが必要となる部分はあるのでしょうか?
回答:例えば、NOKとイーグル工業が同じ国に拠点を2つ持っている場合があります。それについては、どちらかを閉鎖するのではなく、2社間の連携をさらに深めていくことが考えられます。
生産面以外でも、例えば生産管理におけるIT技術を相互に発展させることも1つの可能性だろうと考えています。また、間接部門の効率化も検討課題になると考えています。
質疑応答:ブルグマンとのアライアンスについて
質問者:NOKとの経営統合に関連して、御社とブルグマンとのアライアンスは維持されるのでしょうか?
回答:ブルグマンとのアライアンスはこのままです。従来どおり維持されます。
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