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成果につながるIR活動とは? ~KPI設計とIR可視化の実践ノウハウ~

富山蔵人氏(以下、富山):本日のテーマは「成果につながるIR活動とは? 〜KPI設計とIR可視化の実践ノウハウ〜」です。お客さまからも「どうやって設計したらいいんですか?」などとよく聞かれます。本日は株式会社Figuroutの中村社長に、実践のノウハウも含めてお話しいただきます。よろしくお願いします。

中村研太氏(以下、中村):株式会社Figurout代表取締役CEOの中村です。よろしくお願いします。

会社概要

中村:まず、簡単に弊社をご紹介します。株式会社Figuroutは2021年10月設立の会社で、もうすぐで丸4年です。パーパスは大きく「資本主義の主役をお金から人間に」と掲げています。現状、かなり遅れているIR/SRのDXを実践していくことが、より良い資本主義につながるのではないかと考えて事業を行っています。つまり、IR企業と投資家の関係性で、DXのSaaS事業です。

ログミーとは、2024年1月から機能連携というかたちで業務提携をしており、何回かこのようなセミナーも開催している間柄です。プレゼンの後半で、実装された新しい機能についてもご紹介します。

講師紹介

中村:私は、株式会社FiguroutCEOの中村研太です。キャリアとしては、IRやファイナンスではなく、長い間マーケティングをしてきています。

株式投資は学生時代からしており、知見はありました。キャリアとしてマーケティングをしている中で、前職時代は、IRにおいて企業側が投資家に会社のことを知ってもらい、興味を持って買ってもらうこと、株主に対して継続的に関係性を作っていくことは、実はマーケティングであると感じていました。

一方で、企業と投資家はデジタルではつながっていないとも感じました。投資家はもちろん、企業の情報をインターネットで見ますが、その他大勢の1人としてIRサイトを見にいくことしかできません。企業側も、株主名簿のようなかたちで株主のデータは持っていますが、デジタルではつながっていません。

今、企業と消費者はLINEでつながったり、顧客データを持ってそこに対してアプローチしたりできるようになっています。一方、IRにおいては決算を出したり説明会動画を作ったりなどのコンテンツ作成はするものの、それを効果的に投資家に届けることができていません。マーケティングでは当たり前に浸透しているマーケティングプラットフォームの投資家向けバージョンを実現できないかという思いで立ち上げた会社です。

本日のテーマであるKPI設計の部は、マーケティングではよく議論されるテーマです。私はこれまで、KPI設計と運用で成果が変わるプロジェクトをいくつも見てきました。今日は、IRの中でKPIを活用して成果を高めるためのコツについてお話しできればと思います。

適切にIRのKPI設計できていますか?

中村:本日のテーマである、成果につながるIR活動、KPI設計とIRの可視化の実践ノウハウについてお話しします。

まず「適切にIRのKPIを設計できていますか?」という問いです。「KPIはありますか?」と聞くと「実はないんですよ」という会社があります。逆に「他社さんはどうしているんですかね?」という質問を受けることもよくあります。

富山:市場再編は1つのきっかけだと思いますが、それ以前のスタンダード市場、プライム市場でも、社歴が長いと「全然していません」という会社のほうが比較的多い気がしています。よく相談を受けることもあるため、かなり気になるところです。

中村:また、難しい点として、KPIには明確な答えがないという点も挙げられます。会社によっても異なりますし、同じ会社でもシチュエーションによってKPIを変えたほうがいいこともあります。これも各社の悩みどころです。

KPI設定の3つのポイント

中村:IRに限らず、マーケティングやいろいろなコンサルティングの中でもいわれているKPIの設計のポイントは3つあります。

1つ目が「①目的との整合性」です。つまりIRの目的とアラインしているのかどうかです。KPIは、達成したい目標に対する進捗を測る指標です。したがって、何のためにそのKPIを追っているのかを理解し、その数値を管理して改善していく努力をすることが、経営の目的として会社を良くし、会社の価値を高めることにつなげるための大事なポイントです。

多くの場合、IRは企業価値を高め、東証も言及している株価と資本コストなどの部分に寄与していきます。それがIRの大きな目的ですが、それぞれの会社の中で、IRを通じてどのようなことを実現していきたいのかは、状況によっても異なります。

掲げるKPIについて、自社のIR活動を通じて、その先にどのような状態の変化があるのかという目的と、きちんと整合性を取ることが重要です。

2つ目が「②改善可能性」です。アクションにつながるかどうか、業務の努力でそのKPIが改善するかどうかです。よくあるKPIの例として、気温とビールの売上の関係性の事例があります。気温が高いとビールの売上が上がるため、気温を指標としてウォッチすることは重要です。

しかし、高いと売れるからといって、企業は気温を上げることはできません。指標としては大事ですが、KPIではないのです。指標がそのチームの努力で改善できるものなのか、コントロールできるものなのかが、改善可能性のポイントです。

日々の業務について、より質や量を上げていくことが、その指標の改善につながり、評価や取り組みの改善と紐づくようなKPIとして活用できます。

富山:例えば面談件数や再生回数などの数値ですね。 

中村:そうですね。そのアクションを評価する上で定量的に見られるようにすることが大事だと思います。

そして、3つ目が「③定量性と測定可能性」です。目的とあっていて改善につながるとしても、それを客観的に数値として可視化できるかどうかが非常に大事です。見る人によって評価が異なるような定性的な項目は、反応自体は重要なフィードバックではありますが、KPIとして管理する場合は、やはり客観的な数字として管理していく必要があります。

加えて、それをどう簡単にできるかというところです。専門的なデータサイエンティストが算出しないとできないような、数値の算出にコストがかかるようなものは、KPIとしてはハンドリングしにくくなってしまいます。いかにシンプルで、可視化できるのかもポイントです。

この3つのポイントが、KPIを通じて業務を改善していく上で有効といわれています。この観点で、IRの場合はそれがどうなるのかを見ていきたいと思います。

IRの5つの目的

中村:ポイントの1つ目の「目的との整合性」について、そもそもIRの目的は何なのかというところを深めてみたいと思います。スライドは、IRの5つの目的を私なりに整理したものです。いろいろな考え方や見方があるかと思いますが、多くの企業のベースになるものだと思っています。

目的の1つ目が「⓪上場企業義務を果たす」で、開示資料を作ったり、上場を維持するためには義務とされていることをしっかり行ったりすることがベースです。2つ目に、大きく「①企業価値を高める」という目的があります。時価総額、株価、企業価値を高めていくことが、投資家とのコミュニケーションを通じたIRの大きな目的です。

そして3つ目に、そのIR活動がどう企業価値の向上に寄与するかという意味で「②資本コストを下げる」ことを挙げています。東京が唱える、「株価と資本コストを意識した経営」でも言及されるように、投資家にとってみると資本コストは重要で、これには株価のボラティリティが影響します。市場にとってのサプライズを避ける、すなわち企業の状況が適切に投資市場に伝わると、株価のボラティリティが低く適切な水準で維持されます。

適切なIRによって株価の動きに影響を与えるコーポレートファイナンスやIRの中でもいわれているように、適切なIRによって資本コストを下げることができ、これを目的に掲げ続けている会社もあります。

4つ目の「③流動性を高める」については、株価を投資家にしっかりと認知してもらうことで、売買がなされている状態を作ることが、多くの投資家を獲得する上でも大事なポイントです。

5つ目が「④投資家(社会)との信頼関係構築」です。これは、開示したことをしっかり守っていったり、いろいろなコンプライアンスやガイドラインに従っていったりなど、投資家、IRが業務を通じて求められる目的です。

この5つの目的の中で、スライドの下のほうで示しているのが義務的な「守りのIR」です。ガイドラインを遵守する、リスクを管理する等、企業の中のバックオフィス的な特性のある目的かと思います。経理のようなバックオフィス部門のKPIはないことも多いですが、「守り」とは、しっかりとルールに従って着実に行うことが大事ということです。

一方で、上のほうは「攻めのIR」です。改善による成果の拡大等、営業的な部分です。「攻めのIR」については、その成果をどんどん改善していかなければならないため、KPIがより重要となります。

IRでこれまでKPIがなかったところは設計し、IRについて考えないといけないと取り組んでいる会社が多いです。その背景としては、これまではIR担当の設置義務化等、株価と資本コストを意識していかなければいけない中で、IRに求められる業務として義務的なものだけを行っていればよかったところ、より付加価値を付与するような業務領域が求められるようになってきていることにあります。

富山:スライド図の上側のほうが、営業活動のような感じですね。

中村:そうですね。投資家獲得のためのIRが上のほうに位置します。

企業価値は4つのパラメータでできている

中村:スライドは、企業価値を高めるという目的で企業価値をブレイクダウンしてみようという、一般的な考え方を示しています。時価総額(≒株価・企業価値)は、PBR×純資産で示されます。また、そのPBRは、PERとROEの掛け算です。

企業価値は、「現在の財務状況」「ROEと資本コストの関係性」と「PER」がハンドルを握っているといえます。

これらパラメータの中で、財務状況やROEは、IRで何かがんばったからといって利益が上がったり、ROEが改善したりするものではありません。IRの努力では変更できない財務データです。IRが責任を持てない領域です。

一方で、市場、あるいは会社がこの先どれだけ成長していくかという期待値については、IRが自社の成長を計画しており、市場に対してその根拠を伝えることによって、期待値の蓋然性や投資家の見方が変わってきます。このPER、成長期待を通じて、IRは企業価値と株価に対して責任を負うと思っています。

フェーズによりとるべき戦略は異なる

中村:また、何を目的にIRをしていくのか、企業価値を高めるためにどのように投資家と向き合っていくのかを考える中で、企業の規模、フェーズによって適切なアプローチ対象が変わってきます。

もちろん、どの会社も、機関投資家に買ってもらえたらそれが理想です。しかし、時価総額100億円の会社が海外の機関投資家に買ってもらえるかというと、買ってもらえません。

そのため、IRとしては自社の株を買ってくれる可能性の高い投資家が、どのような投資家なのか?を適切に理解した上で、その投資家に対してどのように伝えることが購買につながるのか、どのような手段で投資家に対してアプローチするのかを考える必要があります。

個人投資家にとって魅力が伝わりやすいコミュニケーションと、海外の機関投資家に魅力の伝わるコミュニケーションとは異なります。

フェーズが変われば相手も変わり、相手が変われば適切なKPIも変わるため、自社の株式を保有してくれる可能性が高い投資家に向けたIRを意識することが重要だと思います。つまり、「目的との整合性」が大事だということです。

企業価値とIR施策

中村:2つ目の「改善可能性」は、そこに向けたアクションにきちんと紐づくKPIにできるかというポイントです。スライドに示しているのは、先ほど時価総額をPBR・純資産に、PBRをPER・ROE、資本コストに分けたものを、そこに紐づくアクションまでブレイクダウンしたものです。

PERは市場の成長と個社の成長ですが、そのPERを形成する要素として「株主期待」があります。その中の1つが、会社が企業としてどう成長していくのか、業績・利益が伸びていくのかという「成長期待」です。

計画数値自体は経営が決めるものですが、それがどのような基準で成長しているのか、市場・シェアの成長をどう伝えるのかというところは、一部、IRの裁量にかかってきます。また、その計画の蓋然性は、過去の実績や業績の修正など、IRのアクションとして紐づくと思っています。

「還元期待」は、還元政策、配当、優待、自社株買いなどをどのように実施することで還元期待値を形成していくのかということです。株主の期待値に対する1つのアクションになると思っています。

もう1つは「リスク」で、開示スタンスとして、どのような情報をどのようなタイミングで開示するのかということです。またESGについても重要で、投資家は、ESGの高い会社ではその会社の株価が毀損されるリスクが少なく、ESGの取り組みが少ない会社では高いと判断するといわれています。

このような取り組みが、企業価値にどう寄与するかという観点で見ると、株主期待、つまり将来への予測の中に織り込まれることになります。

PERのもう1つの要素は「株主動向」、すなわち需給です。どれだけすばらしい成長をする決算内容だったとしても、それが投資家に認知されなければ、当然、買ってもらえません。その会社の情報を知っていて、「おもしろそう、買おうかな」「検討してみようかな」と思う投資家の数をどう増やしていくかがPERに影響を与えます。

このようなIRの業務がPERに紐づくのであれば、KPIとしてPERを設定するのも1つの方法です。みなさまの業務が会社の目的である指標などに関係しているのかというところから、みなさまのチームにおけるIRのKPIを見ていけると考えています。

ターゲットが変わると有効なIRアクションも変わる

中村:フェーズによってターゲットが変わってくるとお話ししましたが、そのターゲットが変わると、IRのアクションも変わってきます。

数字が100億円以下の小型株であれば、基本的に個人投資家向けのIR活動が中心になってくると思います。したがって、「攻めのIR」でするべき施策は、個人投資家の認知策や、個人投資家にわかりやすいコーポレートアクションの開示です。

規模が大きくなっていくと機関投資家向けになってきます。そして、機関投資家であればどのような指標が求められるのか、どのようなレポートや手段で接点を持つのかを意識したアクションになります。さらに、それに紐づいたKPIが求められるようになります。

みなさまの会社にもIR計画があるかと思います。その中で重点施策が何なのか、重点施策の成果が響くような指標とは何かという観点でIRのKPIを考える上で、どのようなアクションを重視していく計画になっているかという点から、適切なKPIも見えてくると思っています。

なぜIRの効果検証は難しいのか?

中村:「定量性と測定可能性」については、可視化の難易度が1つのポイントです。IRのKPIで計測の難しいものは、実行してもなかなかうまくいきません。みなさまの業務の中で、難易度が高くなく、把握できる指標としては、スライドのようなものが挙げられると思っています。

スライドの縦軸はターゲットで、個人投資家向け、国内機関投資家向け、海外機関投資家向けです。横軸はIRのアクションのタイプで、開示して、開示した情報をさらにログミーの書き起こしやSNS、動画、レポートなどのコンテンツとして発信し、説明会を行います。機関投資家については、その先に個別対応があります。

それぞれに対して、開示であれば市場の反応として、出来高や株価、売買代金、PER、PBRのような指標です。説明会であれば参加者数と、説明会をした後の出来高の動きが1つのベンチマークになります。多数に対してアプローチをし露出するようなものについては、出来高や株価等を中心に反響を把握していくところが1つのポイントです。

個別対応については、投資家からどのような面談の申し込みがあったのか、あるいは、その決算後の実質株主の動きとして、保持・保有してくれているファンド数、投資機関数が前日と比べてどのようになっているかなどが指標になると思います。

富山:「実質株主データ」とは、どのような機関投資家が保有しているかといったことでしょうか? 

中村:はい。カストディアンの裏で、実際に株式を保有している投資機関のデータを指しています。

定量測定可能なIRのKPI例

中村:次のスライドに、IRでよくいわれるKPIの例をいくつか挙げています。

1つは「時価総額/株価」という、企業価値のゴールのような部分です。「一番大きな数字をIRにおけるKPIとして見ている」という会社もあれば、「利益が倍になったら株価が上がるのは当然で、株価ではなくPER、あるいはPBRのような財務要因を除いたものをIRで見ている」という会社もあります。

また、β、すなわち資本コストがIRのKPIではないかという会社もあれば、IRの努力で認知を獲得し、出来高を高めるため、出来高をKPIに持っている場合もあります。

機関投資家に対してアプローチするのがIRの仕事だとして、IRの面談件数やアナリストカバレッジを指標にしていることもあります。

他にもヒアリングをしていくと、IRの表彰やランクインしているか、あるいは投資家のアンケートの中での定量データをKPIとしている会社もあります。

富山:中村さんのお話をうかがっていると、基本的には特定可能なもの、ある程度コントロールが可能なものをKPIとして設定するのがいいということですね。スライドの表の左側の時価総額や株価をKPIに設定するのはなかなか難しい気もしますよね。

で、結局どのKPIがよい?

中村:そうですね。したがって、スライドに記載の「①目的との整合性」「②改善可能性」「③定量性と測定可能性」の3つのポイントを踏まえて、先ほどの5つを考えた時にどれがよいのかについては、かなり意見が分かれるところだと思います。また、状況によっても異なるため、結論としては状況によって使い分けることが必要だと考えています。

IRのKPIは「適正水準」を目指すものが多い

中村:その理由として、数字が高ければ高いほどよいわけではないということです。例えば、出来高が高すぎる場合は、基本的に激しい売り買いがされていて、株価の乱高下につながるなど理想的な状況ではないことが多いです。低いのはもちろん人気がない、注目されていないという意味で悪いのですが、高ければ高いほどよいものでもありません。

株価についても同様です。低いのはもちろんよくありませんが、一方で、PERが高すぎる場合は、基本的に過剰な期待で上がり過ぎているため、その先で下がるのも目に見えています。よって、ストップ高だと一見うれしいのですが、その先に必ず下がるという意味で、もう少し適正な水準のほうがよいこともあります。

個人株主比率についても、高すぎると機関投資家に買われていないということですし、株主数が多すぎても管理コストがかさみます。逆に低すぎて、機関投資家ばかりになると、流動性が低くなります。そして、個人投資家は、業績が悪くなる時に代わりに買ってくれるような、買い支えをする役割を果たす仕組みもありますが、株主数が少なすぎるとそれが難しくなります。

面談件数についても、ないのはもちろんだめですが、問い合わせのあった面談を全部受けると、当然業務コストもかさんでリソースを逼迫するため、際限なく増やせばよいというものでもありません。

その中で、主に低すぎるものや、もう少し高めたいものをKPIにすることが効果的かと思います。今このような状況であるため、PBRが低いのであればPBRを高めていく、高めるためのアクションを効果的に行っているのかを検証し、PBRをKPIにしようということです。つまり、流動性が低いのであれば、流動性を高めるために出来高をKPIにしようということです。

すでに出来高が十分ある会社で、出来高をKPIにしてさらに高めようというのは効果的ではありません。「自社にとって理想の状態とのギャップのある項目は何なのだろう?」というところが、KPIの定め方の1つだと思います。

それぞれのKPIのメリットデメリット

中村:スライドに、先ほどの5つの指標を3つの視点、1つ目が目的の整合性、2つ目がアクションとの関わり、3つ目が計測のしやすさで見た表を示しています。まさに株価を高めるのは企業価値・会社にとって大変重要なことですが、IRを適切に行うことで株価が上がるかというと、それ以外のパラメーターの要素が大きいです。一方で、株価はいろいろな場所で見られるので、わかりやすいといえばわかりやすいです。

PERについては、企業価値へのインパクトで、寄与度についても株価よりは業績・利益や資産状況が割引かれているため、株価よりは適切ですがIRだけで語れるものでもないです。

βについては、企業価値へのインパクトとして折り込まれますし、IRが適切にしっかり情報開示できることで落ち着くという話があります。一方で、βは計算が煩雑なため、少しわかりにくいという面があります。

出来高については、非常にわかりやすく、市場の動きも計測もしやすく、IRが開示などの発信をがんばることで貢献できる数字でもあるのでよいのですが、あらゆる企業にとって企業価値へのインパクトがあるのかというと、知名度のある大きい企業だとそこまで重視していないこともあります。

面談獲得については、IRのアクションとかなり紐づいていてわかりやすいですが、それが企業価値へダイレクトにインパクトがあるのかは会社の状況にもよります。また、面談の件数は、断る等コントロールするケースもあるため、わかりやすさ、計測のしやすさについても、二重丸とはいかないです。

これが全部二重丸になり、「IRのKPIはこれだよね」と業界標準ができるかと思いますが、やはりどれも一長一短であるため、いろいろなKPIで何がよいのかといった時に、人によって言うことが違うと思います。

したがって、この状況を踏まえた上で、自社の今のIRチームとしては、この指標をKPIで追うと決めて、それがIRチームの努力で紐づいていて、そのKPIが上がっていけば会社が理想の状態につながることになります。それがIRチームのKPIなのではないかということで取り組むのがよいかと思います。

何をKPIにするかは、もちろん会社によって異なるとは思いますが、一方で、全部が大事な指標であることに変わりはありません。したがって、このような指標を適切にモニタリングしていくことが必要です。

当然、「株価はKPIではないから、株価は見ない」というわけにはいかなくて、出来高の数値が下がってきていたら改善しなければいけないので、それをKPIに設定するかどうかという視点でも、このような指標をしっかりモニタリングしていくことは、IRチームとして必須だと考えています。

でも、株価や出来高を分析するよいツールがない・・・

中村:一方で、株価や出来高を分析するよいツールは、実はないと思っています。大きな会社でも、「株価をどこで見てますか?」と聞くと、「『Yahoo!ファイナンス』で見ています」「社長などもみんな『Yahoo !ファイナンス』で見ているのではないですか」と答えられることがあります。

この背景としては、ファイナンスの専門的な投資家向けのツールは「ブルームバーグ」などいろいろとありますが、それらは基本的に高価で、プロの投資家向けであるため、1アカウントあたりのようなかたちになっています。

会社で「ブルームバーグ」に入っているけれども1アカウントしかないため、結局みんなが「Yahoo!ファイナンス」で株価を見ているような会社が非常に多く、それが、IRチームが株価を意識して業務をする上で弊害になっているかと思います。

また、「Yahoo!ファイナンス」のデータをちゃんと管理しようとする場合、Excelにデータを日々コピペしているような会社がかなり多いです。

Hooolders Analytics(ホールダーズ・アナリティクス)とは

中村:今は人事・営業等あらゆる業務でSaaSなど専門の業務ツールができていますが、IRについてはこのようなツールがないかと思います。そこで、「IRのDXを。」を目的に、企業に関するデータを可視化して経営判断力を高め、IRチームの業務改善をすることで企業価値を高めるツールとして、弊社は「Hooolders Analytics」というSaaSを提供しています。

「Hooolders Analytics」サービス紹介ページはこちら

IRをとりまく4領域のデータとその活用

中村:弊社のサービスでは、IRにまつわるデータを投資家に対して発信しています。スライドに示しているように、IRをとりまくデータは大きく分けると、まずプレスリリースなどを含めた「①開示情報データ」があります。

次に、どう発信していくかというところで書き起こしも含めた説明会やレポート・面談など、投資家に伝える「②IR施策データ」があります。

その結果として、株主の保有状況がどのように変わったのかという株主名簿や実質株主判明調査などの「③株主/投資家データ」があります。

そして、最終結果として、株価・出来高・PER・PBRのようなさまざまなデータである「④市場評価データ」があります。

みなさまはこれらを経営向けにレポートにするために、Excelに落としてさまざまな作業をして、PowerPointにするということを行っています。これは非常に手間のかかる作業なので、この4つの領域のデータを管理するプラットフォームとして、「Hooolders Analytics」を提供しています。

ログミーFinanceで「企業比較」ができるようになります!

中村:この後お見せする「Hooolders Analytics」ですが、2024年1月に、自社の株価分析を行う機能を提供していました。

富山:もともとは、ログミーFinanceのクライアント向け機能として「Hooolders Analytics」の株価・出来高の可視化機能があったということです。

中村:はい。今回、競合ベンチマークとの比較ができる機能をリリースしていますので、アカウントのある方はぜひログインして新機能もみていただければと思います。

ログミーFinanceをご利用されていない企業もいらっしゃると聞いていますので、どんな機能なのかを、実際の画面で少しご紹介できればと思います。

富山:毎回、「Yahoo!ファイナンス」からExcelデータをダウンロードして可視化させて、四半期ごとや年間で振り返って、IRの会議などに準備をする必要があり、このツールがなければかなりの工数かけていたということですよね。

中村:そうですね。毎週「Yahoo!ファイナンス」からコピペする際、コピペする行を間違えてデータがおかしくなってしまったり、あるいはデータを取り忘れていて困ったりというような話があります。また、競合の株価データや、競合比較の株価チャートをずっと作ってきたのですが、「新しく事業をするから他の企業の株価と比較したい」「3年前から遡りたい」と言われた時にどうするのか? というような話もあります。

やはり株価データは市場にあるとはいえ、それが使いやすいかたちで存在するかというと、なかなか入手しにくいデータでもあります。そこをボトルネック・課題として捉えている会社はかなり存在します。日々の株価を見るには「Yahoo!ファイナンス」をご覧になっている方も多いかと思います。

富山:今、デモ画面を拝見していますが、この見方はどのような感じですか? 

中村:まず基本的に、株価チャートは折れ線グラフで表示されており、デフォルトでは出来高が棒グラフで表示されています。

投資する方で、ローソク足のほうが見やすいようであれば、折れ線グラフをローソク足に変えることもできます。棒グラフの指標についても、出来高ではなく売買代金を表示することもできます。PERやPBRのチャートを重ねて見ることもできます。

また、株価移動平均などの表示もできます。出来高が決算直後に上がることは当然であるため、移動平均で見るのが適切などと言われますが、1日あたり1億円の売買代金に達しているのかなどが確認できます。Sansanだと、売買代金でおよそ10億円ほどですね。

富山:数字が記載されているバルーンはなんですか? 

中村:こちらはその会社の出したリリースや、TDnet、日経ニュースに取り上げられたもの、PR TIMES、ログミーの書き起こしも表示されるようになっていて、実際にそのリソース、開示資料をこのバルーンから見ることができるかたちになっています。

このようなリリースや決算を出した時には、株価インパクト、出来高インパクト、株価変動がバルーンから見られるようになっています。株価インパクトは市場指数との変動比率を抜いたものから計算しています。

株価が下がった時には、みなさまは経過が気になって、「なぜ株価が下がったんだ、大丈夫か」と思います。2025年4月あたりに株価が下がっているのはトランプ関税の影響で、赤い折れ線グラフが東証プライム市場の指数ですが、これと同じように株価が下がっています。

このように、これは自社になにかがあったというわけではなく、日本企業全体が下がった動きだということがわかります。そこからさらに市場と株価が同じように動いていて、逆に2025年5月後半あたりに「市場として大きな動きがあったわけではないのに株価だけが下がっている箇所がある」「これは何だろう」と、気にするべきポイントがわかります。

みなさまは、そのような株価の動き自体は見ており、上がったり下がったりすると驚いて「これはなぜだ」と焦って原因を探すと思います。市場指数と株価を「Yahoo!ファイナンス」などで見ようとすると、目検で見比べるような感じでどうしても感覚的になってしまいますが、このシステムだとデータとしてしっかり定量的に可視化できます。

このようなデータを管理したくなり、プライム指数と自社の株価を比較して、その変動比率をExcelで出している会社もありますが、それをするためには、毎日Excelの転記が必要になるわけです。当システムを使うと、そのようなモニタリングが瞬時にできます。

また、業種指数などもあります。この例だと、情報通信業の同業他社は直近半年では上がっている中で、Sansanの場合は直近の決算がネガティブだったというように、状況が適切に捉えられます。こちらは1年半前から提供しているため、ご利用いただいている方も多いのではないかと思います。

こちらに対し、今回実装されたものは企業比較機能です。こちらは自社の株価の動きだけでなく、各社がベンチマークとする企業との相対的な株価の動きを見ることができます。

例えば、株価の動きを見た時に、ベンチマークとしているSaaS企業が上げている中で自社は下げている場合、自社の問題だということがわかります。PBR水準で見比べることもでき、PBRでは評価されていることがわかります。逆に、資産を上げてきている要因としてPBR水準も関係しているなど、すぐに可視化できます。

「Hooolders Analytics」でも、この機能が非常にうれしいという声をいただいています。前四半期から、前回の決算からというように、あるタイミングからの株価騰落率をレポートとして経営陣に出したい時に、始点を揃えてチャートを作るのは大変で、Excelでは数値をいちいち設定し直すことが必要になるため、この機能を非常によく使っているとの声も多くいただいています。今回、その機能をログミーFinenceに実装しています。

株価の動きのほかに、競合・ベンチマークもリリースしています。この例だとビジョナルが直近で上がっているかと思いますが、これはなぜなのかがわかります。

富山:自社のリリースを出したタイミングでの株価は、ある程度把握できるのですが、「同業他社があるタイミングで株価が上がっているが、これはどのような背景だったのか」ということを調べるのはかなり大変です。

中村:大変ですね。したがって、よく聞く使い方としては、社長から「株価が上がっているのはなぜなのか」と言われた時に、そもそもそのニュースについて知らなかったり、「競合のサイト、IRサイトをブックマークして定期的に巡回するようにはしているけれど、そんな頻繁には見られない」といったりする場合に、このダッシュボードを見て直近のベンチマーク企業の動きをモニタリングしてチェックする方法です。

あるいは、大量変動報告も見えるようになっていますので、競合、ベンチマークの動きを見て活用できるものになっています。ぜひログミーファイナンスにより頻繁にログインして、この機能を触ってみていただければと思います。

こちらの機能は、今回ログミーとの業務提携の枠の中で実装し、弊社の「Hooolders Analytics」では、自社や競合他社の株価の動き以外にも、株主構成や実質株主の保有状況なども見られます。所有区分別のため各社の有価証券報告書から見られる情報なのですが、これ以外にも運用機関別、いわゆる自粛株主の変動状況も見られますし、この中でファンド単位までブレイクダウンできるのも1つの特徴になっています。

例えば「日本新興成長企業株ファンドとはどんなファンドなんだろう?」と思ったときに、「73銘柄を組み入れてAUMが20億円規模のファンドである」という情報や、PER、PBRなどを見ることができ、「業種別だとサービス業が多く入っている」「このような会社を入れている」というような分析もできます。これらをファンド単位で分析することができる機能もあります。

変動状況や、前年と比べてポジションを減らしたファンドはどこだったかという情報もわかります。「メディアスは非常に増やしているな。どのファンドで増やしているのだろう。」「新成長株マザーファンドでぜんぜんなかったものが組み入れられて、確かに面談で新しく来たな」「どのようなことを聞かれたな」などがわかります。

逆に、「減らしているアセットマネジメントOneは、このような状況で減らしているのはなぜなのか」「成長株系のファンドを軒並み減らしてしまっているが、面談のアナリストから何を聞かれたか」など、ファンド単位で増減なども上手く管理ができます。

富山:ちなみに、ファンド単位での更新のタイミング、更新頻度はどのようになっていますか? 

中村:各ファンドの元データが、ファンドの運用報告書が出たタイミングになっているため、それが出たらタイムリーに更新されます。このデータ自体は30分に1回更新されるようになっています。

ただ、これはみなさまの決算と同様で、3月31日時点の情報を一定期間で締めて出しており、スライドの表示でいうと4月25日時点のデータが7月24日に出てきているかたちです。タイムリーであり、このツールの中では、出たらすぐに反映されます。

さらに、実質株主系データのサービスベンダーは他にもいろいろあるかと思いますが、きちんと元のデータソースまで見られ、根拠まで辿り着けるのは弊社だけかと考えています。

他にも、事例検索分析機能があります。例えば、優待を検討している場合に、自社と同じような時価総額200億円以下のグロース企業の優待新設事例を検索してみた上で、優待を新しく作って、株価がちゃんと上がっているかどうかを確認することもできます。

優待新設のリリースを出した日を基準に、株価がどう動いているかを見られるため、平均で何ポイントぐらい上がっているかもわかります。あるいは、この例の中でも非常に数字を上げている緑色の線で示している農業総合研究所ですが、そこはどのような優待をしているのだろうということを見ることもできます。この場合は、「みかん5,000円相当に加えて、やはりお米の優待が効いているのかな」ということもわかります。

逆に下がってしまっている企業はなぜなのかを見ることもでき、「100株以上で2,000円分の優待券だと、最近の高い優待と比較したら、ちょっと少ないかな」というようなことも見られるようになっています。

他にもいろいろ機能があり、株価、株主、競合・ベンチマークにデータがいろいろ集まっている、IRにとって活用・分析しやすいツールになっています。興味のある方はぜひ、トライアルもできますので、興味のある方はアンケートの「話を聞いてみたい」というところにぜひチェックをいただければと思います。

富山:この「Hooolders Analytics」がないと、相当時間がかかりますよね。

中村:そうですね。このあたりの機能については、「1ヶ月前にこの作業をしたので、あの時に欲しかった」というような声をかなりいただいています。地味に頻度は低くなく、重くはないが実行にはかなりの時間を取られているような作業があって、この機能もよく使っていただいています。

富山:検索機能のところで、他社の適時開示を参考にするなど、活用できそうですよね。

中村:そこの書き方も、株価が動いたものの内容を参考にするようなこともできます。また、普通に調べるとどうしても規模感の大きい企業の情報ばかり出てくる中で、自社と同じようなグロースや、時価総額帯で絞り込むこともできます。

“ you can’t manage what you can’t measure”

中村:以上のようなサービスを提供しています。このIRデータについては、弊社のサービスにおけるポリシーで、ドラッカーの「可視化できないものは改善できない」という言葉が、『マネジメント』という本の中にあります。

IRについても、株価と資本コストと言われているとおり、「株価データをしっかり可視化できていますか?」ということです。「可視化できないものは改善できない」ということで、KPIを通じて企業価値を高めていく中で、そのKPIにまつわる指標をしっかり可視化して、マネジメントしていきます。この言葉をご紹介して、本日の結びにさせていただければと思います。

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