【QAあり】JPMC、営業利益は前期比+16.8%、2円増配で14年連続10%超へ 採算性重視で粗利率上昇、運用戸数拡大へ段階的にシフト
2025年第2四半期業績
屋宮貴之氏:2025年12月期第2四半期決算説明会を開始します。みなさま、本日はお忙しい中お時間をいただき、誠にありがとうございます。株式会社JPMC、グループCFO取締役上席執行役員の屋宮です。
2025年12月期第2四半期の業績ハイライトです。売上高は292億円、前期比2.8パーセント増加し、24期連続の増収となりました。中間期では過去最高の売上高を達成しています。
営業利益は14億4,000万円となりました。採算性を重視した営業戦略が奏功し、利益率が上昇した結果、前期比16.8パーセントの増益となりました。
一方、運用戸数と新規申込戸数に関しては、「丸・三角・バツ」で評価すると三角となります。運用戸数については、採算性を重視した戦略を採用し、ストックの良質化を優先した結果、前期比でわずかに減少しています。新規申込戸数については、前期比24.1パーセントの成長を実現したものの、計画対比ではわずかに未達となっています。
当社の特徴である株主還元と年間配当金についてご説明します。2月に公表した年間配当予想は58円でしたが、先月リリースしたとおり、期末配当の2円増配を決定し、年間で60円としました。これにより、年間配当金は前期比9.1パーセント増と、非常に高い水準を維持しています。
スライド右下のROEも当社の特徴で、20パーセント超を目指して順調に推移しています。後ほどご説明しますが、配当性向とROEの掛け算で計算されるDOEについても、2011年のJASDAQ上場翌年から13年連続で10パーセント超を維持しており、14年目の今期も達成する予定です。
主な経営指標の推移
主要な財務指標のこれまでの推移です。当社の特徴として、あらためてみなさまにご注目いただきたいです。
ストックビジネスの強みを活かし、売上高・利益は安定的に成長してきました。細かい数字を記憶していただく必要はありませんが、2011年のJASDAQ上場以来、運用戸数、売上高、売上総利益、営業利益はおおむね右肩上がりの成長を続けています。
株主還元 1株当たり配当金の推移
株主還元について詳細をご説明します。2025年12月期は6期連続の増配を予定しています。期末配当の2円増配により、1株当たり60円の配当となる予定です。
スライドの縦棒グラフは1株当たり配当額を示しています。「ストックビジネス」「累進配当」をキーワードとしてご記憶いただければと思います。
株主還元 株主還元総額の推移
株主還元総額についてご説明します。スライドの棒グラフのうち、濃い青色が配当金総額、上に積み上がった薄い青色が自社株買いの総額を示しています。
2025年12月期の期末配当は60円を予定しています。配当金総額は10億円、自社株買いも約10億円となり、総額で約20億円の株主還元を予定しています。
株主還元 DOEの推移
業績ハイライトでも少し触れましたが、当社の特徴の1つとしてDOEが挙げられます。DOEはROEと配当性向を掛け合わせたもので、ROEが高い会社、配当性向が高い会社は多く存在しますが、その両方が高い会社は限られていると考えています。
スライド左下のDOEの推移をご覧ください。上場初年度の2011年を除き、2年目以降は10パーセントを超える水準を継続しています。
第2四半期の業績のハイライトは以上です。
賃貸住宅マーケット規模
当社のビジネスモデルについてあらためてご説明いたします。まず、賃貸住宅マーケットについて、当社が属する市場の状況をご説明します。
日本の賃貸住宅マーケットにおけるキーワードは「大きい」です。この点をご記憶いただければと思います。現在、日本の賃貸住宅は住宅全体の約38パーセントに当たる2,389万戸存在しています。年間の賃料収入だけでも約15兆円となり、この15兆円にはリフォームや周辺領域は含まれていません。これだけ大きなマーケットです。
2,389万戸のうち、当社が運用している戸数はわずか11万戸で、全体の0.5パーセントにも満たない水準にとどまっています。一方、賃貸住宅マーケットで管理戸数シェア1位は大東建託ですが、それでも約5パーセントです。
仮に業界上位の会社のシェアが80パーセントや90パーセントの寡占状態であれば、成長の余地が限られる状況となりますが、現在の市場環境はそうではありません。まだまだ伸びしろが大きい巨大なマーケットであることをご理解いただきたいと思います。
マーケットの展望 入居者サイド(需要)
入居者サイドのマーケット展望についてご説明します。みなさまから「日本の人口って、将来減っていくのではないですか?」「その点は大丈夫なのですか?」というご質問をよくいただきます。ここでのキーワードは「市場は安定して推移する」です。ポイントは人口ではなく世帯数です。賃貸住宅マーケットのメインターゲットは、1人世帯と2人世帯です。
人口は超長期で見ると確かに減少していきますが、単身世帯、夫婦のみ世帯、ひとり親と子の世帯、子どもが独立した後の夫婦世帯など、1人世帯・2人世帯は2030年まで増加を続け、その後も安定的に推移します。
スライドのグラフをご覧ください。薄い緑色、薄いピンク色、もう一段濃いピンク色の部分が1人世帯・2人世帯の合計です。この中には、今後増加すると予想される外国人世帯は含まれていません。2030年には日本の労働力が644万人不足すると予測されており、外国籍の方々の労働力が必ず必要になると考えられます。
外国籍の方々について将来の状況を確実に予測することはできませんが、多くは賃貸住宅を選択されると想定されます。その場合、現在約5,000万世帯ある世帯数に対して約600万世帯が加わると考えられます。つまり、賃貸住宅市場は縮小するどころか、安定に加え成長の余地すらあるとご理解いただければと思います。
運用戸数ランキング
運用戸数ランキングについてご説明します。当社の運用戸数は約11万戸、トップの会社は約120万戸を運用しています。相対的な位置づけとして、当社は現在7位です。スライドのとおり、5位から8位の運用戸数は約11万戸で、ランキングは一定の頻度で入れ替わります。
当社より上位に位置する会社は、賃貸住宅メーカー、またはそこから派生した密接な関係性を持つ会社である点がポイントです。
マーケットの展望 オーナーサイド(供給)
当社よりも上位に位置する賃貸住宅メーカーや、そこから派生した会社が今後どのように変化していくのかについてご説明します。
日本の住宅は現在でも余っています。2018年のデータになりますが、空室率は21.4パーセントです。それにもかかわらず、アパートメーカーは建築を続けています。なぜでしょうか? それは、建築をしなければ利益を上げられないからです。住宅は足りているのに、入居者の需要が追い付かない中、なぜ建て続けることができるのでしょうか?
この大きな理由の1つに、相続税対策があります。つまり、オーナー側や建築会社といった住居を供給する側の都合によって建築が進められてきたのです。この結果、住宅ストックが豊富で空室率が高い状況が続いており、この状況が変わらない限り、当社のソリューションに対するニーズがなくなることはありません。
一方で、足元のアパートメーカーの状況は変化しています。これは本当に最近のことです。資材価格や人件費の上昇に加え、マイナス金利が解除されて金利のある世界が戻ってきました。
つまり、これまでのように建築を進めたいものの、利回りが採算に合わない状況が現状です。金融機関としても、ほとんどの方が手元キャッシュではなく借入によってレバレッジを効かせてアパートを建てるため、貸したくても貸せないという状況があります。この背景には、やはり利回りが採算に合わないという問題があります。
そうすると、これまでのように当社より上位のアパートメーカーが建築によって運用戸数を伸ばすことが難しくなりつつあります。当社はシェアをさらに拡大するチャンスと捉えています。
持続可能な賃貸経営をサポートするJPMC
当社のビジネス全体を俯瞰すると、もちろんサブリース事業は行っていますが、当社の業務はそれだけではありません。賃貸住宅オーナーさまの賃貸経営を代行する会社として、賃貸マンションやアパートの管理も手掛けています。例えば収納代行、滞納保証、少額短期保険などです。当社グループは、こうした賃貸住宅を経営するために必要不可欠なサービスをすべて内製化しています。
さらに、サブリースとリフォームを組み合わせたスーパーリユースという商品は、スクラップ&ビルドから脱却し、持続可能な事業成長を実現しています。また、これから需要の増加が見込まれる高齢者、外国人、法人社宅といった特定の市場に対してもソリューションを提供しています。
当社の強み① 全国で既存物件のサブリースが可能
当社の強みについてご説明します。当社は全国で約11万戸を運用しており、北は北海道から南は沖縄まで、すべての都道府県に管理物件を持っています。この地理的なポートフォリオが効果を発揮しているとご理解いただければと思います。
当社は札幌に比較的小規模な拠点を有していますが、主要な拠点としては、東京・名古屋・大阪・福岡の4つがあります。これらの拠点を軸に、日本全国の物件をリモートで管理できる仕組みを構築しています。
当社の強み② パートナー制度で効率的な運用を実現
それが可能な理由の1つに、パートナーネットワークがあります。「パートナー」とは、資本関係のない協力会社や地元の有力な賃貸管理会社をイメージいただくとわかりやすいと思います。このパートナーネットワークによって、全国に自前の拠点を持たず、自前のリソースを投下せず、低い販管費率でスケール可能なモデルを実現できることが、当社の強みです。
さらに、パートナーネットワークは一朝一夕で模倣することがきわめて難しく、参入障壁としても有効に機能していると考えています。
当社の強み③ 金融機関との提携
当社の管理物件における、いわゆる仕入れについてです。そのルートの1つとして重要なものが、金融機関さまのネットワークです。
金融機関さまは、当社のサブリースを貸出先のオーナーさまにご利用・ご活用いただくことで、債権の保全を図ることが可能です。この点において、金融機関さま、入居者さま、パートナー企業、そして当社の間で「三方よし・四方よし」という状況が成立しています。この金融機関との提携も当社の強みです。
持続的成長に対する考え方
今後の成長戦略の概要についてご説明します。先ほどは少し複雑なご説明となりましたが、当社の成長は大きく2つの柱で成り立っています。
1つ目はスライドの横軸で示しているオレンジ色の「プラットフォームの拡大」、すなわち「部屋の数を増やす」という点です。2つ目はスライドの縦軸で示している緑色の「付加価値の向上」、すなわち「1部屋当たりの利益を増やす」という点です。
もちろん、これら2つを同時に進めることが理想ですが、現実的には難しい面があります。当社はきわめて小規模な組織で、従業員400名で日本全国の11万戸を管理しているため、この両立は容易ではありません。
前期から当期の足元にかけて特に取り組んでいるのは、縦軸の「付加価値の向上」です。1部屋当たりの利益の向上を目指しています。これは冒頭で述べた採算性を重視した戦略です。このような成長戦略は、今後も継続していく予定です。
一方で、オーガニックな戸数の増加も重要視しています。加えて、今後はM&Aをさらに加速させていきます。先ほどご説明したとおり、マーケットはトップシェアでも5パーセントに満たないため、提携や再編が進むことによってさらなるチャンスが生まれると考えています。
M&A 実積
当社のM&A実績です。2015年から4件、さまざまな種類のM&Aを実施しました。その中で最大の成功事例は、2021年7月に行った、賃貸管理会社のシンエイ(現JPMCシンエイ)のM&Aです。
すべてのM&Aにおいてシナジーを創出し、利益を増加させることに成功していますが、特にJPMCシンエイのPMIの中で培ったノウハウをさらに横展開したのが、2024年12月に取得した三重県四日市の管理会社であるリークスプロパティです。
今後は、ノウハウのさらなる蓄積と横展開により、M&Aをさらに加速させることを経営方針としています。
M&A 賃貸管理会社のM&Aシナジー創出メソッド
賃貸管理会社における、M&A後のPMI(統合プロセス)のシナジーについてご説明します。スライド下部のグラフのとおり、まず、当社のノウハウを駆使して既存事業の収益性を改善します。具体的には、入居率の向上や賃料の改善を図ります。
さらに、滞納保証、収納代行、少額短期保険といった付帯事業のクロスセルによって、利益率を一層高めます。加えて、物件のバリューアップを目的としたリフォームを実施し、さらなる付加価値を創出していきます。
なお、当社のM&Aノウハウは、不動産管理会社自体のバリューアップおよび再生にあります。
M&Aの対象戸数
M&Aの対象戸数についてご説明します。ざっくりとした試算ですが、M&Aのターゲットは全国に300万戸以上あります。当社のパートナー企業だけでも78万戸、管理戸数を開示しているパートナー企業以外の会社では222万戸あります。このように、まだまだ潜在的な需要があると考えています。
スマートホーム領域への参入
当社はさまざまな収益源の多角化に取り組んでいます。その1つが、スマートホーム領域への参入です。前期は三菱地所と提携し「HOMETACT」というスマートホーム・スマート賃貸の商品を導入しました。
ポイントは、当社の管理物件11万戸にとどまらず、その先のパートナー企業が有する管理物件100万戸、さらに外枠の2,389万戸と、より広範囲で収益機会を創出できる点です。
賃貸住宅業界に訪れる劇的な変化
近未来の部屋探しや賃貸住宅業界に訪れるパラダイムシフトについてご説明します。みなさまもイメージできると思いますが、新しく引っ越す際、雑誌で家を探し、不動産屋に行き、鍵を受け取ってから不動産屋に戻り、重要事項説明を受け、紙の書類に判を押すといった流れを思い浮かべるでしょう。
これは昔からなにも変わっていません。唯一変わった点があるとすれば、「雑誌で探す」が「スマートフォンで探す」に変わった程度です。その後は何十年も変化がありません。しかし、ここには必ずパラダイムシフトが訪れます。それは、途方もなく遠い未来の話ではありません。
例えば、国道沿いでよく見かけるコンテナを積んだトランクルームをご存じかと思います。このビジネスでは、すでに同じ構造が実現されています。スマートフォンで物件を検索し、LINEで直接やり取りを行います。スマートロックによってセルフ内見をし、Web上で重要事項説明を受けた後に電子契約で手続きを完了します。これらを可能にするデバイスは、すでにそろっています。あとは法令の改正を待つだけです。
賃貸住宅業界に訪れる劇的な変化 「スマート仲介」時代の到来で仲介は不要に
こうしたパラダイムシフトが起こった場合、賃貸仲介が不要になると考えられます。当社の売上高や営業利益には賃貸仲介が含まれていません。このように賃貸仲介がなくなった未来では、物元である当社、すなわち賃貸業界でいう管理会社が勝者となります。これが当社が想定する賃貸住宅業界の未来です。
パートナー企業の業務負担軽減への取り組み
今期のトピックスとして、パートナー企業の業務負担軽減に向けた取り組みを行っています。パートナー企業の多くが人手不足に直面しており、特に地方ではその傾向が顕著です。この課題を解消するためのソリューションを提供しています。
スライドの商品は債務保証になります。現在契約がない住戸や管理会社を変更する際にも債務保証が利用できる商品です。ポイントは、先ほどの「HOMETACT」と同じです。当社が管理する11万戸にとどまらず、パートナー企業が管理する100万戸、その先までも収益源に変えることができるソリューションである点を、みなさまに知っていただきたいと思います。
JPMCまとめ
最後にまとめです。スライド下の画像は少し遊び心を入れていますが、当社社用車のナンバープレートで、当社の証券コード「3276」になります。これをぜひ覚えていただきたく、語呂合わせも作りました。「累進配当みになる(実になる)」となります。
余談ですが、JMDCやステーブルコインのJPYCなど、似た名前の企業がたくさん出ています。また、証券会社によって異なりますが、半角で「JPMC」と入力すると表示されないケースもあるようです。この機会に、当社の証券コード「3276」を覚えていただければ幸いです。
当社のビジネスモデルについての説明は以上です。
質疑応答:売上高の伸長幅に対する利益成長の要因について
「前期比で売上高の伸びがほぼ横ばい、すなわち前期比2.8パーセントの増収にもかかわらず、利益は大きく成長しています。それはなぜですか?」というご質問です。
冒頭でも少し触れましたが、採算性を重視した営業戦略が成功していることが回答となります。先ほどご覧いただいた図と同じものですが、スライド左下のグラフのとおり、当社の成長は「プラットフォームの拡大」、すなわち部屋数を増やすことと、「付加価値の向上」、すなわち1部屋当たりの利益を増やすことの2点にあります。
その中でも近年当社が特に重視しているのは「付加価値の向上」、つまり採算性の向上です。この成果がスライド右側の粗利率に表れています。薄利多売のビジネスモデルで重要なことは、粗利率をほんのわずかでも向上させることと、固定費の増加をほんの少しでも抑えることの2点です。粗利率の推移をご覧いただくことで、当社が取り組んでいる「付加価値の向上」の実績をご理解いただけると考えています。
(参考)運用物件の収益性を高めるJPMCのノウハウ
「付加価値の向上」には、粗利率の推移やクロスセルなどさまざまな要素が含まれていますが、その核となる部分は何でしょうか? それが、当社独自のノウハウである「JPMCリーシングメソッド」です。「付加価値の向上」のコア戦略のポイントは、徹底した需要調査に基づき、賃料と入居率を最大化するノウハウであるとご理解ください。
例えば、スライドの左下にある物件競争力の適切な評価です。「この物件は駅から何分か?」「周辺にどのような施設があるか?」「どんな設備が備わっているか?」といった供給側のロジックに基づいた賃料設定は、どの会社でも行われています。
当社は徹底した需要調査を行い、さらに付加価値を提供していることがポイントです。需要調査こそが、当社の付加価値の向上を支える柱であると考えています。
質疑応答:外国人労働者増加の影響について
「外国人労働者の増加は御社のビジネスに影響しますか?」というご質問です。
ポジティブな影響をもたらすビジネスチャンスと考えています。スライド左下のとおり、2030年には労働力が644万人不足すると予測されています。そのため、外国から日本に来ていただく以外に方法はありません。
これに伴い、外国籍の方々への就労支援を行っているFourth ValleyやYOLO JAPANと提携し、当社が住居を提供することで新たな市場を開拓できると考えています。この点からも、ビジネスチャンスであると認識しています。
質疑応答:下期見通しについて
「中間決算の業績進捗が良いように思います。通期も予想を上回って着地するのではないでしょうか? 下期の見通しについて教えてください」というご質問です。
鋭いご質問です。上期については、前期から引き続き行っている採算性を重視した営業戦略が奏功し、順調に進捗しています。
下期については、スライド左下のブリッジをご覧ください。当期の期首に当たる2025年2月にご説明した内容です。左側の27億2,200万円が前期の営業利益、右側の25億5,000万円が当期の業績見通しです。この差異については、販売用不動産の売却益の反動減や基幹システムの開発に伴う一過性の費用、保有物件のバリューアップやさらなる収益性強化を目的とした大規模なリフォームなど、成長に向けた投資を積極的に行う方針によるものです。その結果、現時点では通期予想を据え置きとしています。
質疑応答:株主還元内容の決定理由について
「今年は期末配当の配当予想の修正(増配)や自社株買いなど、今まで以上に株主還元が強いと感じます。今回の決定の背景や考え方などを教えてください」というご質問です。
当社の株主還元の考え方は、まずキャッシュ・フロー・アロケーションとして、営業キャッシュ・フローの成長分を配当と成長投資に充てています。
配当については、利益が上振れした場合や特別利益が発生した場合でも、配当性向40パーセントをお約束しています。また、ストックビジネスの特性を活かし、累進配当を方針としています。さらに、成長投資として主にM&Aや事業用不動産の取得、効率化およびさらなる成長を目的としたシステム投資、人的資本への投資を進めています。
システムや人的資本に対する投資は、会社の意思で比較的コントロールしやすいものですが、M&Aや事業用不動産は出物次第という要素を否定できません。そのため、今期にM&Aや事業用不動産への投資案件が少ないと感じた場合は、さらなる株主還元策として増配や自社株買いに注力していきます。
今回行った配当予想の修正については、自己株式を5.1パーセント取得したこともあってEPSが上昇していることや、今期に特別利益8,000万円が計上されている点が挙げられます。これに加えて、上期の業績進捗率が56.6パーセントであることを総合的に判断し、増配を決定しています。
質疑応答:株価の妥当性について
「株価についての考えをお聞かせください」というご質問です。
杓子定規な回答となり恐縮ですが、株価の妥当性については会社として言及することが難しい部分があります。ただし、本音を言うと割安だと感じています。
スライド下に1年間の株価推移を示しています。安定している中でも、わずかに上昇の兆しが見られるように思いますが、それでもなお割安だと考えています。その理由としては、本日の終値で配当利回りが4.72パーセントという水準であることが挙げられます。
当社は現在、配当利回りで評価されがちな側面がありますが、今後はプラットフォームの拡大や物件戸数増加の成長トレンドを取り込むことで企業価値を一層高めることで、みなさまから高い評価をいただきたいと考えています。
(参考)主な経営指標の推移
当社の特徴として、1年後に売上が倍増することも半減することもありません。必ず安定して成長していきます。それがストックビジネスの特徴であるとご理解いただければと思います。
(参考)主な経営指標の推移
配当金額は基本的に右肩上がりとなっています。配当性向は上場初年度の2011年を除き、40パーセントを下回ったことはありません。ROEはおおむね20パーセント以上の水準を維持しています。DOEも14年連続で10パーセント以上を維持しています。
質疑応答:月次情報の開示を行っている理由について
「不動産業で毎月月次を公表している企業は珍しいと思いますが、そうした経緯をお教え願います」というご質問です。
当社はJASDAQに上場し、2012年10月から月次情報の開示を開始しました。当社の成長において重要なのは、やはりKPIとしての運用戸数です。
運用戸数の先行指標としては、申し込み、つまり受託戸数が新規の仕入れに該当するイメージです。これが重要であり、投資家のみなさまの意思決定に役立つと考え、月次で申込戸数を開示しています。
こちらはよくいただくご質問でもあるため、補足説明します。スライド下の運用戸数と申込戸数の関係図をご覧ください。営業活動を経て申し込みいただきますが、この申し込みいただいた戸数が、月次情報の下半分に掲載している申込戸数になります。
その後、引渡しまでの準備期間を経て実際の引渡契約が開始されますが、この時点で運用戸数として集計されます。そのため、申込戸数が運用戸数に反映されるまでには少しタイムラグが生じることをご理解ください。このような観点からも、申込戸数が先行指標として機能する点をご理解いただければと思います。
少し長くなりましたが、当社の業績のハイライトおよびビジネスモデルのご説明、事前にいただいたご質問に関する説明は以上となります。
質疑応答:サステナビリティの取り組みが収益に与える効果について
「省エネ改修、老朽ストックの活用、廃棄物削除の取り組みと収益への効果を教えてください」というご質問です。
サステナビリティに関するご質問かと思います。私たちの本業であるスーパーリユースやサブリースの事業は、環境負荷を大きく軽減できるサステナビリティに即した事業であると考えています。
私たちは基本的に新築は行わず、既存住宅をメインとしています。スクラップ&ビルドを繰り返すのではなく、既存住宅のストックを活用して収益を伸ばしていくという点が、環境負荷を軽減する上で有効であると考えています。この点に加え、スーパーリユース、サブリース、リフォームを組み合わせた取り組みを積極的に推進しています。
また、こうしたスーパーリユースを通じて、ストックの良質化や物件のバリューアップを図ることも可能です。先ほどご覧いただいた成長のグラフで、横軸が戸数の拡大、縦軸が1部屋当たりの利益の拡大を示していましたが、縦軸にあたる1部屋当たりの利益の拡大に大きく貢献できると考えています。
リフォーム需要に関しては、今後も低下することはないと考えています。一方で、賃貸住宅メーカーによる新築については、これまでとは少し状況が変化し、足元では陰りが見え始めています。こうした点においても、当社の成長に期待を寄せていただければと考えています。
もう1点、当社はCDPでB評価を受けており、不動産セクターとしては非常に高い評価だと考えています。このような外部からの評価を通じて、当社のサステナビリティに対する取り組みが評価されていると感じています。
質疑応答:競合他社との違いと効率的ビジネスモデルについて
武藤英明氏:「地域商品別の競合、差別化要素、稼働率、スピード満足度などを教えてください」というご質問です。
競合には完全に同じ業態の企業は少ない状況ですが、当社のパートナーである建設会社と提携すると賃貸住宅メーカーが競合になるかと思います。例えば、大東建託、レオパレス21、積水ハウス、大和ハウス工業など、それぞれに自社内や子会社として、当社と似た業態の管理会社やサブリース会社を保有しています。
すべて自前で運営している企業と比較し、当社は非常に高効率なビジネスモデルを追求しています。例えば、大手企業では数千人、場合によっては数万人単位の社員を抱えており高コストな運営体制です。一方で、当社はパートタイマーや派遣社員を含めて471名の社員で、運営戸数11万戸弱を実現しています。
このような効率の良さにより、オーナーさまにとって有利な条件でサブリースの提案が可能となります。つまり、営業のしやすさにつながる他、当社は建物の建設を行っていないため、建設収益を追求しなくても、薄いフィーで十分に会社の利益を上げることができます。
また、他社との大きな違いとしては、賃貸住宅メーカー子会社の管理会社に限らず、「JPMCリーシングメソッド」に代表されるように、ノウハウを投入し、予算も組んでいる点が挙げられます。具体的には、オーナーさまからいただく予算以外にも独自の予算を組み、入居率を向上させる取り組みを行っています。
こうした施策や予算組みが奏功し、入居率の向上を実現しています。このような点が、他社との違いであると考えています。
質疑応答:金利上昇と空室率が事業に与える影響について
「金利の上昇と空室率の上昇への対応について教えてください」というご質問です。
まず、金利の上昇についてご説明します。屋宮もお話ししたかもしれませんが、もちろんリフォーム時にも融資を引きます。しかし、リフォームの場合は利回りが高いため、金利の上昇の影響は軽微です。一方で、新築のアパートや賃貸マンション、またサービス付き高齢者向け住宅や住宅型有料老人ホームなどは一定の利回りしか得られないため、金利の上昇の影響は大きいと考えます。
当社全体の事業に対する影響は小さいものの、シニアハウス事業部が推進する高齢者向け賃貸住宅の新築事業においては、金利の上昇が多少の影響を与えています。ただし、新築を建て続けなければ利益が出ない賃貸住宅メーカーと比較すると、その影響は非常に軽微です。
次に、空室率の上昇についてご説明します。オーナーさまには大変申し訳なく思いますが、空室率が高くないと当社のようなプロフェッショナルにご依頼いただけません。ただし現状よりも空室率が良くなる見込みはないと考えています。
人口減少が進行する中で、将来的には入居者が減少することが予測されます。現在の人口は約1億2,400万人ですが、2055年には約9,700万人となり、およそ3,000万人の減少が見込まれています。しかしながら、2000年と2030年を比較すると、1人世帯・2人世帯の需要層が増加する見込みであることから、世帯数は約993万世帯増加する見込みです。この点では取り組む余地がまだあると考えています。
現時点で日本全体の空室率は21.4パーセントに達しており、これ以上改善する余地はほとんどないと見ています。しかし、当社の主な事業である空室問題へのソリューション提供を通じて、状況の維持・改善に努めています。「JPMCリーシングメソッド」をはじめ、スマート賃貸化やリニューアル・リフォーム・リノベーションを通じて、住宅の質を向上させることで入居者を確保します。
加えて、原状回復工事の期間を短縮することや、退去のスケジュールを適切に管理し、空室期間を極力短縮することで、収益性を損なわない施策を講じています。
これまでの23年間で積み重ねてきたノウハウを活かし、入居率の向上に成功しています。この成果は、当社が最も得意とする分野によると言えます。
質疑応答:累進配当の継続方針について
「今後も累進配当を続けていく方針なのか教えてください」というご質問です。
累進配当については、環境が大きく変化しない限り、基本的に継続すると考えています。大規模なM&Aを控えてキャッシュが必要な場合でも、基本的には有利子負債でM&Aを行う方針のため、累進配当に影響を及ぼすことはあまりないと考えています。
これはストックビジネスの強みであり、将来的な売上が見込めます。環境の変化によって左右される可能性もあるため絶対とは言えませんが、急変する可能性は低いため、現時点では累進配当を続けていく方針です。
質疑応答:賃料改定および滞納保証の運用方針について
「サブリース賃料改定の未実施案件や滞納増減状況について教えてください」というご質問です。
当社は、賃料改定のタイミングが解約のリスクを伴うことを理解しています。そのため、欲しい物件や収益が上がる物件に関しては、オーナーさまにきちんと説明を行い、理解を得るよう努めています。賃料改定に対する不満が解約の要因というよりも、連絡の行き届かなさや適切な賃料に関する説明やエビデンスの不足が主な原因であることがわかってきました。
この課題に対応するため、日々忙しいプロパティマネージャーについても、オーナーさまとのコンタクト回数をシステムで管理監督しつつ増やしています。その結果、解約戸数は減少傾向にあります。
賃料改定については順調に進んでいると考えています。「未実施」というご指摘については、正確な意味を把握しきれませんが、賃料改定は儲かっている物件には実施せず、儲かっていない物件には実施するという方針です。そのため、意識的に儲かっていないのに未実施という案件はほとんどないと思います。
ただし、全体で10棟を管理している場合、そのうち8棟が儲かっていて、2棟は我慢が必要な物件があるかもしれません。このような未実施物件はレアケースと言えるでしょう。また、通常はお1人のオーナーさまから1棟ないし2棟を借り上げるケースが大半であり、5棟や10棟を所有しているのは法人のお客さまか一部の富裕層に限られます。そのため、賃料改定が未実施の物件はほとんどないと考えています。
滞納率については微減していますが、大幅な改善があるわけではなく、現状適切に対応しています。JPMCファイナンスでは、他の滞納保証会社に二次保証を付けています。正直に申し上げると、当社が直接滞納を保証しなければならない物件については、いわゆるチェリーピッキングを行い、入居者の審査を慎重に行っています。審査の結果、多少リスクがありそうな入居者については二次保証に回し、適切と判断した入居者に対して当社が保証を提供しています。
JPMCファイナンスで引き受けるのは「自信を持って保証できる入居者」、すなわちリスクの少ない入居者を直接保証しています。一方、中程度以上のリスクの入居者については、JPMCファイナンス以外の競合他社である滞納保証会社が引き受けています。
なぜこのようなかたちが成り立つかというと、当社には自動的にお客さまが集まる仕組みがあるからです。他の滞納保証会社は、不動産会社を代理店として利用し、多額のバックマージンを支払わなければ顧客を増やすことが難しい状況にあります。このような当社の特徴ゆえ、他の滞納保証会社が協力をしてくれているのです。このため、当社は非常に低リスクで滞納保証を実現できています。
質疑応答:リスクとそれに対するシナリオについて
「自然災害、事故、コンプライアンスシステム障害の主要リスクとシナリオの備えについてご説明いただきたいです」というご質問です。
自然災害が発生し、借上物件が減少することはリスクにつながります。これは当社に限ったことではありません。ただし、自然災害が発生した場合でも、継続して家賃を必ず借り上げし続けなければならないというわけではありません。
当社も入居者であるため、賃貸住宅として機能しなくなった段階で契約は終了します。例えば、普通のご入居者の方が、物件が倒壊してもう住めない場合に、オーナーが「家賃を払い続けろ」と言うことはないですよね。同じ状況です。
したがって、自然災害によって物件が減少することは当社のリスクになりますが、自然災害が発生したことで特にリスクが高まるわけではありません。また、支払賃料だけで収入が得られないということもなく、収入と支出はセットになっていますので、その点でリスクはありません。
事故についてですが、事故にはさまざまな種類があります。直近で考えられる事故としては、入居者による事件が挙げられます。当社は11万戸近くの物件を有しているため、火災などの事故が発生する可能性もあります。これらは非常にレアなケースですが、過去23年間で数例の事例がありました。
当社が入居者を手配した場合、当然ながら当社がその責任を負う必要があります。ただし、保証人を確保しているため、まずは当社が一義的にオーナーさまへギャランティを補償します。裁判に至るケースもありますが、その補償は保証人に求償しますので、事故に関する大きなリスクを現時点で抱えている状況はありません。
コンプライアンスについては、当社は建築を手掛けていないため、例えば建築に関する重大なコンプライアンス違反を引き起こす可能性は低いと考えています。もちろん個人情報の流出などの可能性はゼロではありませんが、他社の賃貸住宅メーカーと比べるとコンプライアンスに抵触する業務は少ないです。そのため、情報管理を適切に行うことで、大きなコンプライアンス違反が指摘される事態には至りにくいと考えています。
このほか、一般的な企業と同様に、社内におけるハラスメントなどのリスクを抱えています。この点については、社員教育やマネージャー教育を通じて、リスクをできるだけ低減する努力をしています。具体的には、四半期や半期ごとに研修を実施し、リスクの低減を図っています。また、月に2度の役員会で厳格にモニタリングを行っています。
システム障害については、バックアップで対応しています。システム全体が攻撃を受けた場合、完全に防御することはできませんが、災害によるシステムダウンに備え、離れた場所にある2ヶ所のサーバーでデータを保存しています。
また、一時的に本社のシステムが動かなくなった場合でも、地方の事業所に保存されている情報で復旧が可能です。当社のシステムは1ヶ月単位で家賃の送金を行っており、リアルタイムではないため、長期にわたるシステム障害は考えにくいです。このように、バックアップを取ることでリスクをヘッジしています。
当社のインフラのクラウド化については、6月24日から新しいシステムに入れ替え、第1次のシステムチェンジを開始しました。今後、第2次、第3次も予定しています。インフラをクラウド化したことで、従来に比べて脆弱性は回避できていると考えています。
質疑応答:運用戸数拡大に向けた対策について
「運用戸数が減少していますが、新規申込戸数は増えていますか? 今後は増やす方向にシフトしていくのでしょうか?」というご質問です。
もちろん増やしたいと考えていますが、その原因がより明確になってきました。やはり、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で3年間、当社のコンサルタントやアセットマネージャーがオーナーさまと対面で面談できなかったことが、大きな痛手となっています。
ダイレクトセールスはそのような理由ですが、インダイレクトセールスでも大きな影響を及ぼしている要因があります。具体的には、地方のパートナー企業が人員不足で新規物件に積極的に対応できていないことです。
ただし、コロナ禍から徐々に回復してきたことで、当社ではさまざまな仕組みを提供し始めています。人数が8割程度でも現行の売上と利益を確保できるよう、その労働集約部分は当社が引き受けています。
例えば、5人のオーナーさまが所有する物件がある場合、それぞれのパートナー不動産会社や賃貸管理会社の担当者が一人ずつ対応しなければなりません。また、オーナーさまがご高齢であることが多く、日常業務以外にもさまざまなコミュニケーションが発生するケースもあります。
この物件をまとめて当社が借り上げれば、オーナーは当社1社との取引となります。そのため、窓口が明確になり、またプロ同士のやり取りとなるため、余計な世間話もなく、非常に効率化できます。
さらに、例えば他社の物件管理を新たに引き受ける場合、一時的に手間が増加します。具体的には、管理切替や入居者の調査などの手続きが必要です。これらの業務をJPMCファイナンスが一括で引き受けます。
また、家財保険に未加入のケースを防止するために、「みらい少額短期保険」を活用するなど、細かな作業を引き受けることで、パートナー企業が手間と感じる業務を代行しています。これにより、人員が1割から2割減少した状態であっても現状の売上や利益を確保できるよう支援します。その上で、現在の物件数で十分対応しつつ、さらに攻めに転じていただけるようサポートを行っています。
パートナー企業に対する入居率向上のノウハウの連携のために、JPMCリーシングメソッド研究会というセミナーを定期的に開催しています。本日も福岡で講演を行ってきました。このような手厚いサポートにより、パートナーの機能を保全し、過去と同様に当社の営業チャネルとして機能する活動を進めています。
これが成果として顕在化するのは来年、再来年になると考えていますが、すでに多くの賛同を得て大きなムーブメントになりつつあります。運用戸数の増加には少し時間がかかるものの、確実に実現できると信じています。
当社の23年の歴史の中では、1万戸以上を獲得した年が9年あり、1万5,000戸近くを獲得した年も4年あります。現在は社員数も比較的充実しているため、物件の増加に十分対応できると確信しています。
また、1つの好材料として、前述のとおり現在11万戸を運用する中で、過去最高水準の入居率を達成しており、これが当社の強みとなっています。オーナーさまにご注目いただけていると感じています。
最後までお付き合いいただき、誠にありがとうございました。
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