決算ハイライト

渋谷順氏(以下、渋谷):株式会社スマートバリュー取締役兼代表執行役社長の渋谷です。株式会社スマートバリュー2025年6月期決算説明会を始めます。どうぞよろしくお願いします。

まずは、2025年6月期の決算ハイライトについてご説明します。第4四半期は若干の悪化があり、営業面では影響を受けましたが、デジタルガバメント事業を譲渡した結果、最終利益は大幅な増益となりました。また、期末の現預金は41億円と非常に安定しており、固定資産やのれんの減損等にも対応しています。

主力事業であるスマートベニューについて、一部リース会計基準への適用により経常損益に影響を受けた部分や、開業直後の混乱による予約キャンセルなどがありましたが、これらの課題はほぼ一過性のもので、現状は改善済みです。そのため、今期である2026年6月期には大幅な増益を見込んでいます。

また、もう1つのセグメントであるモビリティについては、主力である「CiEMS」の解約があったものの、それでも純増となりました。さらに、最も注力してきたサービスである「Kuruma Base」が非常に成長してきたこともあり、このあたりは好材料であると考えています。

セグメント別にご説明します。デジタルガバメントについては、2025年6月末に譲渡しました。これは公募調達モデル、いわゆる入札に参加する形のモデルに限界があり、受注率の低下や単価の大幅な低下に伴って事業が徐々に厳しくなったことが背景にあります。その結果、事業譲渡に至りました。

モビリティ・サービスについては、期初に低収益だったカーソリューション事業、つまり従来行っていた物販事業を譲渡したことで、営業利益率が大幅に改善しました。

主力の「CiEMS」については、一部解約が発生しましたが、新規契約の獲得がある程度伸びたため、契約数は微増となりました。

一方、注力しているシェアリングプラットフォームの「Kuruma Base」は非常に受注が好調で、契約数は前年同期比282.3パーセントとなり、ようやく今後への期待が高まる状況となりました。

スマートベニューについては、昨年の中期計画と比較すると、リース会計基準の適用により経常損益の悪化が見られました。4月は順調にスタートしましたが、その後、一部で開業後の混乱があり、想定よりも悪化したと考えています。

ただし、3月の初めに竣工し、4月初めに開業するという、開業までの期間が1ヶ月という短期間で事業をスタートしました。一般的には開業までに3ヶ月から6ヶ月程度の準備期間を要するところ、費用負担を考慮しつつ1ヶ月で開業し、その後の運用で改善を図ることができたのは良い成果だったと考えています。今期は運用も軌道に乗りつつあり、一過性の問題として対応していきます。

また、アリーナの開業に伴い、4月単月の子会社ストークスの収益が大幅に改善しました。これは来期への好材料であると捉えています。

業績サマリー

業績のサマリーです。デジタルガバメントセグメントの売上高は17億4,300万円で、少し増収となりましたが、営業利益は1億6,900万円と大幅に減益しました。特に、第4四半期は想定よりもかなり悪い結果だったと考えています。

モビリティ・サービスの売上は11億300万円で、これは物販事業を譲渡した影響によるものです。営業総利益は1億7,600万円とやや減益しましたが、一定の安定感があると見ています。

他方、スマートベニューについては、4月から本格開業したことにより、売上高は15億1,500万円でしたが、営業損失は3億2,000万円という結果になりました。

また、管理部門が4億6,600万円の費用を計上した結果、連結全社では、売上高43億6,100万円、営業損失4億4,000万円、経常損失7億3,300万円となりました。ただし、譲渡に伴う影響により最終利益は9億1,600万円の黒字という結果になっています。

進行期である2026年6月期では、スマートベニューの大幅な増収増益が奏功し、売上高は74億2,100万円、営業利益は9億1,000万円を見込んでいます。ただし、最終利益は若干の赤字となる見込みであり、これはリース会計基準の適用が大きな影響を及ぼしたためと考えています。

デジタルガバメント事業譲渡の詳細

続いて、一つひとつの大きな事象について順にご説明します。

最初に、デジタルガバメント事業の譲渡結果の詳細です。6月末に事業譲渡を無事完了しました。かねてよりご説明していたとおり、技術のオープン化やクラウドサービスの進化により、機能面や価格面での強みが減少してきました。

また、公募調達の受注プロセスが限界を迎えつつあり、さらに技術の低廉化も進んだことで単価が減少している状況です。その上、行政デジタル化という大きな流れの中で、このサービス単体では当社の強みを見いだすことが難しいと判断しました。

その結果、国の行政サービスの仕組みを担える他社に吸収される方が全体的に良いと考え、ウイングアーク1st社へ譲渡しました。しかしながら、札幌にある子会社ノースディテールについては、本ディールの対象外としています。

結果として、期末現預金は2024年6月末時点で17億2,600万円でしたが、2025年6月末には41億2,600万円となる見込みです。ここからはファイナンスに関するさまざまな施策も含め、事業の成長を着実に進めていきたいと考えています。

今後の方針についてですが、「デジタルガバメント」がなくなったことを踏まえつつも、引き続き地方創生やまち作りに資する社会システムの提供において、単なるツールの提供にとどまらず、事業そのものの主体者となる取り組みを実践していきたいと考えています。

自治体とのお付き合いは20年以上にわたり、大きな流れの変化を感じています。行政サービスが限界を迎える中で、民間が新しい資本主義や新しい公共のかたちを担う主体者として、社会システムを民間主導の事業モデルで実践していくことを目指しています。

その実践の一例が、スマートベニューセグメントです。現在、神戸で社会実装の推進が始まっており、今後は全国のベニュー計画のある地域を中心に、スマートシティのモデル展開を進めていきたいと考えています。すでに提案も始まっており、この分野をさらに成長させていきたいと考えています。

2024年8月開示の中期経営計画からの変更点

続いて、昨年8月に開示した中期経営計画からの変更点についてご説明します。主に、先ほど申し上げた期間の間にリース会計基準を適用したため、この点について触れます。

昨年8月に開示した中期経営計画では、現行の2026年6月期の業績予想として、売上高84億5,600万円、営業利益5億600万円、経常利益4億6,500万円、最終利益3億3,700万円を想定していました。

これに対して、今回発表の中期経営計画では、売上高が74億2,100万円で、10億円ほど下回っていますが、これはデジタルガバメント事業の譲渡によるものです。営業利益は9億1,000万円の黒字、経常利益は2,000万円の黒字、最終利益は6,800万円の赤字となっています。営業利益以下の数値の増減は、主にリース会計基準の適用とデジタルガバメント事業の譲渡が影響していると考えています。

具体的には、リース会計基準の適用によりアリーナ賃料の計上額が約2億7,700万円悪化しています。ただし、実際の支払い金額には変動はなく、あくまで計上上の悪化です。

リース会計基準適用の影響についてですが、昨年はアリーナ賃料11億円をすべて販売管理費に計上していましたが、今回は6億3,000万円を減価償却費原価、7億4,600万円を支払利息に計上し、合計で13億7,700万円を計上しています。その結果、支払利息で2億7,700万円の悪化が生じています。

また、デジタルガバメント事業で得ていた1億数千万円の利益がなくなったことも影響の一因です。ただし、スマートベニュー事業については、昨年夏の計画よりも上振れを見込んでいますので、確実に成果として結びつけたいと考えています。

新セグメントの説明

デジタルガバメントのセグメントが廃止され、7月1日からはモビリティ・サービスとスマートベニューの2つのセグメントでスタートしました。

デジタルガバメントに含まれていた子会社ノースディテールは、一般的な受託開発を手がける一方で、神戸で社会実装されているスマートシティモデルの開発を中核として担っています。そのため、先ほど申し上げたように全国展開を計画しているスマートシティモデルは、スマートベニューセグメントに含め、7月から計上する予定です。

モビリティ・サービスについては、これまでどおりの内容です。

連結決算概要

2025年6月期の決算と2026年6月期の事業計画についてご説明します。まず、連結決算の概要についてです。先ほどと同じ数字になりますが、最終的には9億1,600万円の当期純利益で前年度を終えました。

足元のクラウドサービスにおけるMRRは一定程度積み上がってはいるものの、若干の減益が確認されています。また、「スマートベニュー」については、先ほど申し上げた3月までの赤字に加え、開業後もオペレーションコストなどがかかったため収益が赤字となっていました。ただし、現在はほぼ解決しており、7月からの新しい期、すなわち2026年6月期には、売上高61億8,700万円、営業利益11億800万円という数字を目指しています。

さらに、管理部門のコストについては1億円ほど削減できており、ここをさらに改善していきたいと考えています。この取り組みは、非常に重要なポイントであり、管理部門コストをうまく縮小させながら、小規模でも非常に強い事業体へと成長していきたいと考えています。

経営指標サマリー

経営指標のサマリーです。これはあくまでも1つの指標であり、これだけで何かを結論づけるものではありません。ただし、減価償却費や支払利息が増加している一方で、EBITDAは非常によい数字となっています。この結果は、本業でしっかりと稼げていることを示しており、事業の成果として今後もこのようなEBITDAを達成していけると考えています。

期末想定のキャッシュポジションは約40億円前後まで膨らんでおり、今後どのようにして企業の成長へ向けた事業を加速させるかがポイントになると考えています。

成長戦略としては、先ほども申し上げたスマートベニューや全国へのスマートシティモデルの展開を進めていきたいと考えています。

前年は、賃料が固定資産としての投資となっており、固定資産投資が184億5,400万円に上り、これだけの投資ができたことが成果として挙げられます。

自己資本は約25億円前後まで増加し、総資産は資産と負債をともにオンバランスさせた結果、先ほどお話しした180数億円が積み上がっているため、240億円前後にまで膨らみました。その結果、自己資本比率は約10パーセントまで低下していますが、これで事業をしっかり推進できると考えています。私たちは、この状況を非常にポジティブに捉えながら、事業を推進していきたいと考えています。

売上高の過去推移と今後の予想

過去の売上高の推移についてです。2019年当時は携帯電話の販売代理店を行っていましたが、今年度あたりからようやくその頃の売上高に戻ってきました。

モビリティが新型コロナウイルスの影響を非常に大きく受けた時期も含め、5年から6年は大変苦しい期間でした。しかし、新しい事業には紆余曲折があり、うまくいくこともあればうまくいかないこともありましたが、大きな流れでは順調に進んでいるのではないかと考えています。

営業利益の過去推移と今後の予想

営業利益についてですが、先ほど申し上げた計上の問題はありますが、過去の推移で見ると、携帯電話の代理店をしていた当時の約3倍の営業利益にまで増益している状況です。

売上高・営業利益の過去推移と今後の予想

セグメントごとの推移と予想についてです。デジタルガバメントに関しては、2023年頃をピークとして以降減少傾向にありました。そのため今回、譲渡という判断に至りました。ただし、この分野は引き続き投資をすることで、まだ多くの可能性を秘めた事業であると考えています。しかし、当社だけでは完遂できるものではないため、他社でさらなる成長を遂げてほしいと考えています。

売上高・営業利益の過去推移と今後の予想

モビリティ・サービスについてです。物販の要素を減らしているため、売上高は減少していますが、営業利益はある程度安定していると考えています。

今年度および来年度は減益となりますが、これは通信モジュールの仕様変更に伴う入れ替えが必要であることが影響しています。これらのマイナス要因を考慮した数字ではありますが、その影響を吸収しつつ、「Kuruma Base」が今後成長することで、2028年頃にはしっかりと回復すると見込んでいます。

売上高・営業利益の過去推移と今後の予想

スマートベニューです。今期は売上高を61億円、来期は69億円、再来期には73億円まで増加させる計画です。利益面では、営業利益を11億円から12億円へと伸ばしていきたいと考えています。

営業利益・経常利益・EBITDAの実績と3ヶ年予想

連結全社の営業利益・経常利益についてご説明します。EBITDAの実績と3ヶ年の予測も記載しています。グラフをご覧のとおり、リース会計の影響により経常利益が悪化していましたが、2028年頃には再び3億円程度まで回復できると考えています。引き続き、この目標の実現に向けて取り組んでいきます。

連結業績概要

連結業績概要は再掲となりますので、あらためてご覧ください。いくつかの指標も掲載していますので、ご確認ください。

営業利益の増減(2024年6月期→2025年6月期)

こちらのスライドは、2024年から2025年にかけてのウォーターフォールチャートです。前年は3億800万円の営業赤字となりました。

売上の増加分は、ほぼスマートベニューの売上によるものです。一方で、原価、人件費、販売管理費も増加しており、これも主にスマートベニューが要因であると考えています。

一方、モビリティ・サービスでは売上が減少しましたが、原価や人件費をうまく削減することで、ある程度バランスを取ることができていました。それでも結果としては、4億4,000万円の赤字となりました。

営業利益の増減(2025年6月期→2026年6月期予想)

続いて、2025年6月から来年6月までのウォーターフォールチャートです。前期は4億4,000万円の営業赤字でしたが、売上高が30億円増加します。

一方で、原価が22億円増加しますが、デジタルガバメントがなくなることで人件費やその他の販売管理費がそれぞれ3億1,600万円、2億4,600万円減少します。その結果、営業利益は9億1,000万円の黒字になると考えています。

連結業績概要(セグメント業績概要)

続いて、セグメント業績の概要です。こちらは、連結全社のセグメントごとではなく、事業の内容ごとの情報を示しています。売上高全体の43億6,100万円のうち、クラウドサービスの比率は22億円であり、ほぼ50パーセントを占めています。

また、MRR、すなわち月額の固定収入であるストック収入は15億6,400万円で、全体の35.8パーセントを占めました。しかし、この後、ストック収入の一部はデジタルガバメントの譲渡に伴って減少し、一方でスマートベニューが増加していくこととなります。

業態別売上高

業態別の売上高についてです。デジタルガバメントについては、先ほどお伝えした推移が記載されています。こちらのMRRは現在積み上がっていますが、今後、新規のサービス初期および構築の段階でしっかり取り組まないといけない部分があり、やや減少に転じつつある状況です。

業態別売上高

モビリティ・サービスについては、MRRはデジタルガバメントより若干少ない状況ですが、サービスの初期段階や構築はある程度進んでいます。今後、しっかりとこれを伸ばしていきたいと考えています。

業態別売上高

スマートベニューについてです。前期の売上高は、アリーナ運営で15億1,500万円を達成しました。現在進行中の2026年6月期の数字は、スライドの表の一番右側に示されていますが、ラボ/受託開発やスマートシティモデルといったノースディテールの部分の6億3,400万円が加わり、このような数字となっています。

2025年6月期 連結貸借対照表

連結貸借対照表についてです。2025年6月期には、リース会計基準の適用により、有形固定資産と有利子負債にそれぞれ150億円を超える費用をオンバランスで計上しています。

その結果、総資産は249億300万円となりました。現預金と自己資本も増加しており、かたちとしてはややいびつかもしれませんが、この資産に見合う収益を確保しながら事業を安定して運営している状況です。5年、10年と中長期的な視点で、引き続きしっかりと収益を伸ばしていきたいと考えています。

会社概要

会社の概要と事業について簡単に説明します。会社概要はスライドをご覧ください。従業員数は197人で、デジタルガバメントの譲渡により、おおよそ80人から90人減少しています。

沿革

沿革についてご説明します。毎年お伝えしていますが、当社は2015年に新規IPOを行ってから10年間、上場企業として事業を進めてきました。この10年間の後半にあたる過去5年間は、2020年に携帯電話の事業譲渡を行い、新型コロナウイルスの影響も受ける中で、ポートフォリオの入れ替えを含め非常に厳しい状況を経験してきました。それでも、2028年に創立100周年を迎えるという非常に長い歴史を持つ会社です。

昭和の頃、私たちの父親や母親が営んでいた町工場からスタートし、1994年に経営に参画して以降の最初の10年間、20年間は、本当に生き残るために努力し続けなければならない時期でした。しかし、次のステップとして未来に向けて、20年後、30年後、50年後にも勝負できる事業形態へと成長していると感じています。この先も、わくわくしながら事業を推進していきたいと考えています。

中長期的に目指す世界観

中長期的に目指す世界観についてです。人口の減少は避けられない課題であり、一部の行政サービスが限界を迎える中で、民間企業が社会維持やまちづくりを担う必要性が高まっています。これは「新しい公」「新しい公共」「新しい資本主義」といった文脈で、その時々の政府や与党が提言している内容にも当てはまると考えています。

その一例が、スライドに示されているスマートシティのモデルです。ITという文脈では、データの利活用が重要な要素となり、これが該当すると思います。

現実的には、例えば現在神戸市でも社会実装が進められています。具体的にどのような活動を展開しているのかという点については、スライドの図で示されているように、上部の丸い部分を左から順に説明します。

まず初めに「スタジアム・アリーナ改革」です。これは、人々のにぎわいを創出し、交流人口を増加させるための施策です。加えて、最近注目されている「推し活」の取り組みも非常に好調で、私たちの施設にも多くの方々が毎日のように来訪されています。このようなモデルから新たな流れを形成したいと考えています。

また、こうした取り組みには移動の要素が密接に関わります。私たちは、モビリティIoT技術を活用し、MaaSや移動の多様化を推進していきます。さらに、交流人口の増加に伴い、まちの回遊性を高める仕組みの創出にも注力していきます。そして、スポーツやエンターテインメントを通じた取り組みを強化し、これにより人々の共感や熱狂、消費が体験価値へと変化している現在の潮流に対応し、にぎわいの創出を目指します。

さらに、これらの活動で得られるデータを活用し、まちのデータ利活用を推進します。具体的には、マイナンバーとの連携なども模索しているところです。最終的には、地方創生モデルとして全国への展開を目指しています。このように、私たちは社会システムや行政社会サービスそのものを担うことを目指しています。

事業の概要 セグメント情報と事業構成

では、セグメント別の説明です。デジタルガバメントは終了しましたので、モビリティとスマートベニューの2つのセグメントをご紹介します。

モビリティ・サービス:KGI

モビリティ・サービスについてです。数字は先ほどと同じで横ばい傾向ですが、比較的安定感を持って進められると考えています。ただし、車載機の入れ替えや通信モジュールに関する件など、一時的に厳しい要素もあります。しかし、「Kuruma Base」の推進が非常に効果を発揮しているため、この後しっかりと整理を進め、2028年に向けて増益基調を作り上げたいと考えています。

モビリティ・サービス:KPI

KPIについてご説明します。右のグラフは前期の「CiEMS」の契約数を示していますが、前期のフローにおける新規契約数は340件の純増にとどまりました。新規契約としては3,000件以上を獲得しましたが、その一方で解約も発生した結果、このような数字となっています。フローとストックを合わせた契約数としては、現在2万8,663件の契約を頂戴しています。

最近、企業にアルコールチェックが義務づけられるようになっており、この記録アプリが非常に順調に推移しています。これと私たちの「CiEMS」との連携サービスも、徐々に成果を上げてきたと考えています。

モビリティ・サービス:KPI

続いて、「Kuruma Base」の契約数についてです。本来はさらに増加することを期待していましたが、新規契約の純増は567件にとどまりました。現時点では解約はほとんどない状態です。

フローとストックを合わせた契約数は878件となっていますが、受注はすでにほぼ完了しています。ただし、建設機械レンタル企業では設置工事が必要となるため、この工事が遅れたことが契約数増加に大きな影響を及ぼしたと考えています。今後も順調に増加していけると見込んでいます。

モビリティ・サービス:市場環境と注力領域

現在、私たちは一般企業や自治体向けに、「CiEMS」と呼ばれる車両管理を行う運行管理アプリとの連携を含んだサービスを提供しています。車載器も含めて企業への提供が順調に進んでおり、企業のコンプライアンス意識が高まる中で、アルコールチェックの部分も非常に伸び始めています。これを引き続きしっかりと推進していきたいと考えています。

2つ目の事業である「Kuruma Base」は、レンタカーやカーシェア、建機レンタルといった要素が強く、現在絶好調に伸びています。

2024年問題、2025年問題、2026年問題として、人手不足や労働法の改正、整備士の不足、人材不足、高齢化など、さまざまな課題があります。このような中で、無人化・省人化のソリューションを提案しており、レンタル業界に対してスライドに記載のような提案を進めており、大変よくフィットしていると考えています。

最後に、同じ課題を抱える物流・運送業界についてです。こちらでは、大手物流企業とともにPoCを繰り返しているものの、まだ実践段階には至っていません。しかし、間違いなく重要な課題となっているため、今後も引き続き投資を続け、ビジネスチャンスを見出していきたいと考えています。

モビリティ・サービス:トピックス

直近のトピックについてお伝えします。先ほど申し上げたアルコールチェック検知器との連動を含む運行管理アプリが非常に順調で、すでに約1,000社を超えたというリリースがありました。

もう1つは、建機レンタルについてです。現在、業界トップのアクティオ社に続き、業界大手のレント社にも提供が決定したというご案内です。今後も、このレンタルの無人化・省人化ビジネスは非常に大きな市場になると考えており、引き続きその開拓に注力していきます。

スマートベニュ:神戸アリーナプロジェクト概要

続いて、スマートベニューについてです。スライドには、神戸アリーナの実際の写真が掲載されています。これまでは完成した施設をお見せすることができず、パース画像のみのご紹介でしたが、2025年4月4日に開業しました。

この施設は、神戸のウォーターフロントの突堤に建設され、270度を海に囲まれた立地に位置し、1万人を収容できるアリーナです。世界を見渡すと、シドニーのオペラハウスや、立地は異なりますがニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンのような存在を目指しています。街の誇りとなるような施設を目指しており、現在運用が始まっています。

スマートベニュー:KGI

スマートベニューのKGIの数字は先ほどと同じですので、こちらのスライドをご一読ください。

スマートベニュー:神戸アリーナプロジェクト概要

この事業は、1万人を収容できるアリーナで、NTTドコモ、NTT都市開発、当社の3社でコンソーシアムを組み、神戸市と一緒に進めてきたものがようやく開業に至りました。当社の子会社であるOne Bright KOBEとストークスの2社が担っています。

スマートベニュー:アリーナおよびエリア全体の特徴

特徴として、まず挙げられるのは、民設民営のアリーナである点です。みなさまもご存じの大阪城ホール、横浜アリーナ、さいたまスーパーアリーナ、日本武道館などはすべて公共施設です。これらが非常に重要な役割を担っていることは言うまでもありませんが、私たちはこれを民設で運営し、さらに大きな価値を創り上げることを目指しています。

スライドの下段に記載していますが、関西エリアでは待望の1万人収容アリーナです。関西では当施設と大阪城ホールの2ヶ所しかないため、多くのご予約をいただいています。

また、最近ではスポーツが非常に盛り上がっており、とりわけバスケットボールのBリーグが急速に成長している市場です。当社はこのBリーグのクラブを保有しており、一体運営を行っていきます。

さらに、環境配慮として「ZEB Ready」の認証を取得しました。この施設は100パーセント再生可能エネルギーで電力を賄っており、非常に稀有な事例と言えます。加えて、地元兵庫県の間伐材を利用したバイオマスチップを発電に活用するなど、環境配慮を一つひとつ実践しています。

下段の最後は、立地についてです。世界初の、突堤に立つ270度を海に囲まれた水辺のアリーナという、建設的にも非常に難しい工事が実現されました。

スライドの上段、右側についてですが、この立地は約300万人以上の人口を抱える後背地を持つ神戸にあり、三宮駅、元町駅、神戸駅といったターミナル駅から徒歩15分から20分圏内で到着できる水辺のアリーナとなっています。このような稀有な立地は、国内ではほとんど残されていないと思われ、このすばらしい場所に建設されました。

さらに、この施設は単なる建物ではなく、コンテンツやデジタル、コミュニティなどの中身を含めた運用を私たちが推進しています。これにより、収益の獲得だけでなく、人口減少時代における社会課題の解決を両立することを目指しています。

そのために、スマートシティモデルの社会実装を行い、交流人口の増加や回遊性の向上などを目指していく壮大なビジネスです。現在、ここまでしっかりと推進し運用にこぎつけてきたことで、これからは私たちの成果を社会に還元していくタイミングだと考えています。

スマートベニュー:大規模多目的アリーナ

スライドの写真は、開業した4月に行われた私たちの自主興行である「神戸ストークス」というBリーグのクラブの試合です。この試合では、8,000人から1万人ほどの収容がありました。

みなさま、こうした光景をご覧になったことがありますでしょうか? 国内では、スポーツの競技で、しかもアリーナ内にこれだけの人が集まる場面はなかなかありません。

アメリカではNBAなどがありますし、世界ではサッカーなどで大きな盛り上がりを見せていますが、私たちはこうした世界観を国内で作り上げることができている点を、まずご理解いただければと思います。

スマートベニュー:大規模多目的アリーナ

続いて、こちらは日常的なアリーナの風景です。多くの方々にお越しいただいています。スライドの中段にある3つの写真は、いずれも音楽の興行を撮影したものです。現在、アリーナ内ではほぼ毎週、6,000人から1万人弱の来場者をお迎えする状況となっています。人々のにぎわいと交流人口が高まる中、こうした来場者の方々とのデータ連携を実践しているところです。

スマートベニュー:稼働予定

貸館の稼働率は非常に重要であり、約80パーセント強を目指しています。スポーツや音楽、MICE・法人利用など、さまざまなイベントが行われています。例えば、今年10月に開幕するバレーボール「SVリーグ」の開幕戦も、当施設で開催される予定です。このように、多様な競技で利用していただける場所であり、共感、熱狂、感動を実現できる場だと考えています。

スマートベニュー:神戸市連携協定

このような場だけでなく、私たちはここからデータを活用したデジタルイノベーションの社会実装を進める取り組みを行っています。2022年当時から神戸市と連携協定を締結し、「スマートシティモデル」の実現に向けて推進を進めてきました。回遊性の向上、デジタルイノベーションの社会実装、街のエンゲージメントを高めること、そして関係人口の拡大などを目指し、これを推進することをお約束してきました。この後は、その内容について少しご説明します。

スマートベニュー:スマートシティ“Commons Tech KOBE”

神戸では、「Commons Tech KOBE」という名称で、このような企業にご参加いただいています。

スマートベニュー:TOTTEI KOBEアプリ

実際には、ペイメント機能を含めたさまざまな機能を持つアプリを活用していただいています。

スマートベニュー:スマートシティ“Commons Tech KOBE”

また、次のページに記載されている内容ですが、これは街中を回遊していただくために、街中にビーコンを設置する取り組みを鋭意進めており、人流を捕捉する流れとなっています。

スマートベニュー:スマートシティ“Commons Tech KOBE”

これらの人流捕捉用ビーコンのモデルは、JR西日本と共同で進めています。会員であるお客さまには、広告や不要と思われる情報を提供するのではなく、このエリアでお客さまが「良かった」とか「お得だった」と感じられる非常に利便性の高い情報を受け取れるよう配信することで、街の回遊性を高め、消費を促進していきたいと考えています。

スマートベニュー:スマートシティ“Commons Tech KOBE”

また、こうした方々に対して、CRMを活用した、いわゆる街のファンマーケティングを推進しています。先ほど推し活についての話がありましたが、街全体を好きになっていただき、街全体のファンになっていただくという、街自体がマーケティング活動を行うような取り組みを、私たちは推進していこうと考えています。

スマートベニュー:2025年4月開業を踏まえ3ヶ年売上予想

これらのスマートベニュー事業について、2028年までの領域ごとの数字を表現しています。2026年6月期については、スライドの左から2番目のグラフをご覧ください。まず、貸館事業が35パーセントを占めており、アリーナを借りていただくことで、私たちの収益の柱となる部分です。

協賛の割合は19パーセントです。ほぼすべての協賛はすでに確保されていますので、新規というよりも継続を含めてこの水準となっています。ここも私たちの収益の大きな柱です。

次に自主興行についてですが、先ほどのバスケットボールの例に加え、音楽イベントなども自主興行に含まれ、売上の19パーセントを占めています。このように、多くの人が集まることから、ホスピタリティサービスやフード&ビバレッジ、テナントや物販といった事業が全体の15パーセントを占めています。

最後に、「その他」として記載していますが、ここにはスマートシティ関連事業や、札幌の子会社ノースディテールの売上の一部が含まれています。また、一部受託開発のようなものも含まれていますが、これらの事業で今後しっかりと推進していく流れとなっています。

中長期的な事業の方針:当社の考える新しい公での地方創生モデル

中期経営計画についてです。中期的には、私たちのモデルについて、スライドの一番下に記載されている地域社会の課題を踏まえて考えています。具体的には、人口減少や地方の疲弊、行政サービスの限界、労働力不足といった問題が、この国の、特に地方において今後10年、20年、30年、50年と続いていく深刻な課題であり、現状の事実として直面しています。

そのため、スライドに「民間による新しい公」と記載していますが、行政サービスの一部を民間へ移行する、地域の賑わいを創出して交流人口を増やす、街の回遊性を向上させ消費を促進する、さらに地域に住む方々や交流人口・関係人口のみなさまに向けてコミュニティを育成し、シビックプライドを醸成するというモデルを実践していきたいと考えています。

また、スライドの上部では当社の事業展開について説明しています。中心に記載されているスマートシティモデルやスマートベニュー、これはスタジアムアリーナの運営を指します。

モビリティのIoTは移動サービスとして、全国の都市に展開していきます。スポーツやライブエンターテインメントといった共感や熱狂を司る事業を進める中で、街のマーケティングまで実装することを推進していきます。

「経済的価値と社会的価値の両立を目指す」ということが私たちの重要なミッションです。経済的価値としては、アリーナで収益を拡大するとともに、現在潤沢にある資金をどのように成長戦略へ結びつけていくかが鍵となります。また、ファイナンス面での戦略を構築しつつ、社会公共サービスで収益を獲得する流れを作っていきたいと考えています。

また、社会的価値としては、賑わいの創出や交流人口の増加に取り組み、神戸では年間300万人の集客を目指します。また、回遊性の向上や消費の増加、マイナンバーの民間活用、データ利活用、コミュニティの創発といった、自治体だけではなかなか実現が難しい取り組みを、民間企業、自治体、教育機関、企業、そして市民のみなさまと一体となって実現し、新しい街のかたちを作り上げていきたいと考えています。

第79期~第81期 損益計算書

中期の損益計画についてですが、先ほども触れたとおりです。2028年6月期には経常利益が3億円を超えることを想定しています。

第79期~第81期 経営指標

経営指標については、安定したEBITDAを維持しつつ、キャッシュポジションを確保しながら、しっかりと投資を進めていきます。

売上高の過去推移と今後の予想

売上高の過去推移については、再掲となりますのでご確認ください。

営業利益の過去推移と今後の予想

営業利益の過去推移についても再掲です。

売上高・営業利益の過去推移と今後の予想

デジタルガバメントの売上高・営業利益の過去推移と今後の予想の再掲です。

売上高・営業利益の過去推移と今後の予想

モビリティ・サービスの売上高・営業利益の過去推移と今後の予想の再掲です。

売上高・営業利益の過去推移と今後の予想

スマートベニューの売上高・営業利益の過去推移と今後の予想の再掲です。

MRRの推移

MRRについてです。デジタルガバメントがなくなったため、一時的にMRRは減少しますが、その後はしっかりとモビリティサービスを積み上げていきたいと考えています。

本来、スマートベニューにおけるスポンサー協賛については毎月定額で計上していますが、今回はそれを省いています。そのため、ストック収入という意味で、モビリティサービスのMRRはこのようなかたちとなります。

KPI(モビリティIoT:CiEMS契約数)

KPIについてです。モビリティIoTの「CiEMS」は、昨年と今年は少し厳しい状況にありますが、その後はしっかりと成長させることができると考えています。

KPI(モビリティIoT:Kuruma Base契約数)

「Kuruma Base」は、今後も800台以上を毎年順調に増加させていきたいと考えています。

従業員の状況

では、最後にAppendixです。従業員数はデジタルガバメントの譲渡に伴い減少していますが、先ほども申し上げましたように、従業員数にとらわれることなく、本当の意味で強い企業を目指しています。そのため、規模を縮小しても、収益性が高く、社会的意義のある事業を今後も継続して営んでいきたいと考えています。

人的資本に関する取り組み(両立支援)

人的資本に関する取り組みについてです。両立支援に関しても順調に推移していると考えています。

人的資本に関する取り組み(健康経営)

また、2025年に「健康経営優良法人2025(大規模法人部門)」の認定を取得しました。

DE&Iの取り組み

さらに、DE&Iへの取り組みについてです。

サステナビリティへの取り組み

そして、サステナビリティの基本方針です。先ほどお伝えした、アリーナの電力については100パーセント再生可能エネルギーを使っているという内容も含めて、このような取り組みにもしっかりとつなげていきたいと考えています。

コーポレートガバナンス

ガバナンス体制の構築・推進についても、従来どおりです。

DXへの取り組み

また、社内システムのDXへの取り組みについてです。

情報セキュリティへの取り組み

そして、「ISO27001」の認証取得についてです。こちらも当然のことではありますが、このような取り組みも含めながら、今後も足元をしっかり固めつつ、事業の成果へとつなげていきたいと考えています。

以上で、私から2025年6月期の決算および今後の方針についてのご説明を終わります。これまでさまざまな課題があり、株主のみなさまにご心配をおかけしてきましたが、ようやく成果がかたちになりつつあると感じています。引き続き、ご支援を賜りますようお願い申し上げます。ありがとうございました。

質疑応答:リース会計基準の変更による会計上の影響について

司会者:「リース会計基準の変更により、会計上の業績は悪化しますが、今期および来期のフリーキャッシュフローの水準はいかがでしょうか? このリース会計基準の変更によって、恒常的に純利益が出にくい状況となるとお考えでしょうか?」というご質問です。

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