決算のポイント

松本尚武氏:静岡ガス株式会社、代表取締役社長執行役員の松本です。2024年12月期決算についてご説明します。

売上高およびスライドタイムラグ補正前の会計上の経常利益については、前期比で減収減益となりました。スライドタイムラグ補正後の実力ベースでは前期比で増益となり、後述の一過性要因もあったため本来の実力よりも比較的上振れたと捉えています。

都市ガスの販売量については、前期比プラス2,500万立方メートルの15億8,200万立方メートルとなりました。家庭用等の小口のお客さまについては、使い控えや高気温の影響によりほぼ前年どおりです。大口については、新規のお客さまの開拓や既存のお客さまの増量により、前期比プラス5,900万立方メートルです。卸売については、卸売先での販売量の減少等により、前期比マイナス3,500万立方メートルとなりました。

売上高は前期比マイナス117億円の2,022億円となりました。

経常利益は、スライドタイムラグ補正後の経常利益は前期比プラス7億円の116億円となりました。一方、スライドタイムラグは、前期はプラス92億円の増益効果がありましたが、今期はプラス14億円に留まったことで、前期比マイナス77億円となっています。この結果、スライドタイムラグ補正前の経常利益は、前期比マイナス69億円の130億円となりました。

経常利益の分析(対2023年)

連結経常利益の対前年差異の分析です。

電力について、2024年から需給調整市場での取引・取り組みが奏功したことや、販売量の増加等の要因により、対前年でプラス19億円の効果がありました。

関係会社その他については、匿名組合出資しているバイオマス発電において、長期の原料調達に伴う長期為替予約分の評価損益を会計上取り込んだ影響もあり、対前年でプラス5億円となりました。

販管費・製造費その他については、ベースアップや、今後の投資のためデューデリジェンスを積極的に行いました。一方、販管費の削減や、製造原価の低減に努めた結果、対前年プラス5億円となりました。

都市ガス販売量については、販売量の増加により3億円の増益効果となりました。

原料価格その他については、2024年前半にLNGのスポットマーケットが非常に緩んだことで、全日本LNG平均輸入価格が大きく下がりました。この結果、我々の調達価格と、販売価格に転嫁する全日本LNG平均輸入価格の差が広がり減益要因になりました。また、一部の余剰玉について、将来スポットマーケットが安くなった時に安いスポット玉を調達できるように、今期中に損切りをしました。この影響もあり原料価格その他のところが、対前年マイナス26億円となりました。

これらの結果、スライドタイムラグ補正後の経常利益は対前年プラス7億円、スライドタイムラグは対前年マイナス77億円となり、スライドタイムラグ補正前の経常利益はマイナス69億円となりました。

投資計画

投資計画についてです。

2024年は案件のソーシング、デューデリジェンス、投資ができる人材の育成と組織開発に相当手がかかり投資実行までは出遅れたものの、見通し案件が積み上がってきました。また、「信頼のブランド強化」に取り組んだ結果、弊社への信頼も高まり、かなりの数のM&Aや事業承継を理由にした事業売却の持ち込みをいただけるようになりました。2025年上期頃には少しずつ成果が出せるのではないかと考えています。

今後の投資については、2025年から2027年の3年間で930億円、そのうちの約70パーセントを成長事業に投入していきます。さらに約10パーセントを基盤事業における天然ガスの普及開拓に投入するなど、引き続き積極的な投資を行っていきたいと考えています。

基盤事業の持続的成⾧①

都市ガス・LPGについてです。

都市ガスは引き続き大口のお客さまが弊社管内に残っているため、そちらの開拓を進めていきます。2025年から2027年の3年間で1億7,000万立方メートルに相当する新規のお客さまの開拓を進めていきます。

その中では、単なるボイラーからの燃料転換というものだけでなく、コージェネレーションへのリプレイスもしくは増設にも取り組んでいきます。

電力

電力についてです。

2024年末時点の使用中戸数は9万7,000件で、目標としていた10万件には残念ながら今一歩届きませんでした。引き続き、省エネや低い環境負荷を訴求し、電力の使用中戸数や販売量を伸ばしていきたいと考えています。

供給側については、静岡ガス&パワーの富士発電所の増設、および、系統用蓄電池事業への参入を広げ、供給力を増すと同時に調整力も高めていきます。また、市場取引も行っていこうと考えています。

なお、スライド右側に記載のとおり、系統用蓄電池事業については、経済産業省の令和6年度「再生可能エネルギー導入拡大・系統用蓄電池等電力貯蔵システム導入支援事業費補助金」の採択が決定しました。2027年の運転開始を目途に、現在準備を進めているところです。

再エネ

再生可能エネルギーについてです。

「グループ2030年ビジョン」で掲げた2030年再エネ累計開発容量20万キロワットに向けて進めていきます。

バイオマス発電については、当社が出資している鳥海南バイオマス、田原バイオマス、遠州フォレストエナジーの3つとも順調な進捗で、すべて運転開始しています。燃料の調達についても、輸入材は基本的に長期の燃料調達契約と、長期の為替予約をしています。バイオマス燃料の調達の収支が非常に課題となっていますが、解決できていると捉えています。

新規の再エネは、当面は太陽光発電の開発に力を入れながら、ペロブスカイト太陽電池の普及段階には、当社の強みである家庭用の販売チャネルを使い一般のご家庭のお客さまに提案活動を一気にできるように、準備していきたいと考えています。

海外

海外事業についてです。2024年は、ベトナムにおける太陽光発電の事業会社への出資、インドでのバイオガス事業会社への出資、インドでの現地法人の設立の3件について意思決定しました。

海外分野に長けているキャリア人材を外部から多く採用しながら、案件のソーシングやデューデリジェンスを行っており、多くの案件が順調に進捗しています。今後、成果がお示しできるのではないかと捉えています。

売上高/経常利益計画

売上高と経常利益計画についてです。

売上高は、2024年2,022億円、2025年2,048億円、2026年2,295億円、2027年2,526億円と、投資成果を取り入れて売上高が伸びていくことを織り込んでいます。

経常利益については、今期は実力よりも上振れていることを踏まえ、現在の当社の実力は100億円程度と捉えています。これを、2025年104億円、2026年108億円、2027年124億円まで伸ばすことを計画しており、「グループ2030年ビジョン」でお示しした2030年に連結経常利益130億円という目標に、あと一歩というところまで持っていきたいと考えています。

当期純利益計画

当期純利益計画についてです。投資については、持分法ですぐに会計上の取り込みができるものもあれば、実際に動き出して利益につながるまで時間がかかるものもあります。

そのような中で資本効率の向上や利益への貢献として、すぐにできることは資産のスリム化であり、今後3年間で政策保有株式の売却を進めていきたいと考えています。

政策保有株式の売却による貢献で、当期純利益は経常利益以上に伸びると見込んでおり、ROEについても2027年には「2030年ビジョン」で示している目標の8パーセントを超えるレベルまで持っていきたいと考えています。

株主還元

株主還元についてです。

2025年2月に配当方針を一部変更し、「累進的配当」の文言を加えました。静岡ガスグループは2001年に上場して以来、利益の成長に合わせ一貫して増配を続けてきましたが、配当方針を明示的に記載していませんでした。そのため、機関投資家によるスクリーニングではヒットせず、静岡ガスという会社が知られていなかったのではないかと考えています。機関投資家を含め、個人投資家に静岡ガスという会社を認知していただくためにも、今回累進的配当を配当方針に文言として加えました。

配当については、2024年の利益処分としては40円です。今期についても予定配当として41円に増配していきたいと考えています。

配当性向については、3割を目標水準として挙げています。2024年の34.2パーセントから2025年には38.2パーセントになると見込んでおり、目標水準の3割をクリアできると捉えています。

資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応①

資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応についてです。2024年12月30日時点の株価は1,070円で、PBRは0.72倍と決して十分なレベルではないと捉えています。

PBRが低い要因を分析すると、PERも十分ではありませんが、それ以上にROEの低さに課題が大きいと考えます。ROEが低い理由は、当社の強みであり弱みでもある自己資本比率の高さと捉えています。自己資本比率が高いため、M&A等の積極的な投資をするだけの財務基盤があります。しかし、それを有効活用できなければマーケットの評価が悪化していることにつながっていると捉えています。

資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応②

そのような現状において、PBR、ROE、PERをどのように向上させるかについて、スライドで示しています。

PERについては、株主還元を充実していくことと、投資家や株主のみなさまとの対話を充実させていくことが大切であると考えています。

ROEについては、積極的に投資をしていきたいと考えています。もちろんリターンがない投資をするのではなく、当社に適正なリターンを生む投資をしていきます。投資を進め、投資資金を借入で賄い、自己資本比率を下げていくことによってROEを高めます。

資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応③

先ほどご説明したPERとROEの向上策に取り組むことによって、PBRを高めていきたいと考えています。

以上で、私からのご説明を終わります。どうもありがとうございました。

〈参考〉静岡ガスの株主優待制度について

当社は2021年より株主優待制度を導入しています。株主さまには安心して長く株式を保有いただきたいという思いから、株数と期間に応じて、株主優待ポイントを進呈するポイント制としています。

株主優待ポイントは、静岡県の特産品・名産品や、当社ポイントサービス「エネリアmottoポイント」との交換、商品に代えて公益法人等への寄付など、お好きなものをお選びいただけます。