御発注さんのこれまでの投資遍歴と、現在の投資スタイルについて簡単に教えてください。

社会人1年目から株式投資を開始して、給料の8割を株投資の原資に注ぎ込むエクストリーム節約(コジ活)を継続してきました。2011年に三光マーケティングフーズの銘柄を手数料節約のため信用取引で5株注文しようとしていたところ、間違えて500株買ってしまい、4,235万円分の全力信用二階建て状態になりました。それを反省してハンドルネームを御発注と改名し、今に至ります。

その後も挫けずに投資を続けて2013年に"億り人"になりましたが、その後も生活水準はほとんど変えることなく現在まで継続し、資産8.5億円、年間配当収入2,000万円になりました。

投資手法はPERベースのバリュー投資と株主優待と高配当銘柄から選んだ利回りベースの投資になります。こちらも大枠は一貫して変わってはいません。安定してインデックス+10%を目指す運用になるので、大勝ちはしませんが負けにくい手法なので、入金投資法と相性が良かったです。

4月14日にご出版された『年間配当2000万円! 超節約と優待株で8億円を貯めた御発注の「コジ活」投資法』について、書籍の概要や特徴などを教えてください。

今回、僭越ながら出版の機会をいただき世に出す運びとなりました。この本で読者のみなさまに私が最もお伝えしたいことは、何回でも、時を隔てても使い続けられる原理原則、根源となる精神、再現性のある基本の型になります。

かのウォーレン・バフェットも数多くの金言を持っていますが、その中に、

  • ルール1 絶対に損をしないこと
  • ルール2 ルール1を絶対に忘れないこと
というものがあります。多くの人たちは継続することができないので、自分にできる継続を積み重ねるだけでも時を経ると、とんでもない優位性が生まれるのです。本書ではその考え方について解説し、私の型についてもお伝えできればと思っています。私の場合は、

  • ルール1 収入の8割を損しないと考えられる投資に回すこと
  • ルール2 ルール1を守ること
を継続して続けてきました。これを23年継続し続けた過程での出来事や、学んだことをみなさまにも役に立つようなかたちで提供できればと思い、まとめさせていただきました。

今回書籍を制作される中で、特に意識していたことは何かありましたか?

バリュー投資についての本であれば、すでに他の個人投資家の方が質の高い情報をまとめてくださっているため、基本的な説明部分含めて同じような中身になりがちになってしまいます。それだと読む側もおもしろくないので、投資に触れたことのない方向けの基本的な説明以外は、オリジナルの部分のみで進めようという意識は最初から持っていました。

また、本書で伝えたいことはシンプルな原則であること、時間を味方に付けて投資を始めるべき、活字の苦手な若い現代人の方でも読みやすいように、漫画ベースで進めることにしました。小さい大したことない優位性を積み重ねることで結果を出していくノウハウを伝えらえればと思っています。

特にSNSなどでたくさんの魅力的な商品・体験を知ることができる現代では、「コジ活」そのものを困難に感じる方も少なくないかもしれません。

そのような方、あるいはそのような気持ちを感じた方に伝えたい意識・姿勢などがあれば教えていただけますか。

コジ活については向き不向きは絶対にあると思っています。実際に株クラからは実現不可能と言われている部分もあるのですが、決して「コジ活をやってくださいね」という部分が趣旨ではないのです。「働きたくない」という目的に対して必要なことは何か、から逆算した結果が株に入金になるので、「じゃあより入金するためには・・・」という発想になります。

何を始めるにしても最初のうちは辛いかもしれませんが、継続しているうちに脳の報酬系が変わって、節約という結果に対して脳汁を出してくれるようになりますから大丈夫です。例えばダイエットで考えてみたとして、おいしそうな商品やお店は世の中にたくさんありますよね? では痩せるためには何をするべきか考えた時に、運動したり食事を置き換えたりするわけです。

ただ、私の経験上、我慢にもリソースの上限はあるのではないかと感じていますので、自分に合う我慢の上限で付き合っていくのが良いと思います。

投資家として成長していくうえで、大事にしてきた考え方や習慣はありますか?

成長しているのかどうかはわかりませんが、絶対に間違っていないことをベースに仮説を積み上げるようにはしています。私が投資を始めた当初はインターネット黎明期で情報が今ほど溢れていなかったので、手探りの状態から始めないといけませんでした。

例えば配当2%の株を50年持てば元本は倍になる、これは減配が無ければ間違ってはいない。それならさらに利回りを増やすにはどうすればいいか。PERの逆数の益回りという概念は配当利回りに近い。この投資法はあるのか。バリュー投資という概念があったのか。という具合です。あとはそのための観察と情報収集は継続してやっています。

最近だとトランプ関税で日本が関税を下げるように要求する品目は何か、というところから投資銘柄を見つけることができました。

ふだんの投資活動において「これだけはやらない」と決めている投資行動・ルールはありますか?

なるべく損をしないように気を付けています。特にボラティリティの高い銘柄を人から聞いた時は自分のスタイルと合わないので、自分のやり方以外ではなるべく投資しないよう気を付けています。特に高く買ってさらに高く売るやり方は苦手です。

あとは、なんとなく投資するのもやらないです。含み損になった時に持ちきれなくなるので。自分が何をやっているのかを理解できていない投資はしないに限ります。

御発注さんが考える「勝てる投資家」と「勝てない投資家」の一番の違いは何だと思いますか?

自分の型を持っていないで何となくやっているうちは一番負けると思いますが、長く続けていくと自分の型が見えてくるので、それを続けることでしょうか。あとは、信用取引をパンパンに張っている人は底で投げさせられるので、基本的に負けると思います。

株式投資はゼロサムゲームではないので、変なことをしないで長い目で見れば基本的には負けないと思っていますが、私のように、より多くのリターンを欲しがったりすることで苦労する道に足を踏み入れることになります(笑)。インデックス投資の積み立てであれば、労力に対するリターンとしては良いと思います。

御発注さんにとって「お金」とは、そして「投資」とはどんな存在でしょうか?

最初は会社を辞めるために投資を始めたので、お金とは自由だと思っていました。消費に使う場合にもモノやサービスと交換できる自由ですね。

ただ、何かと交換しなくても持っているだけで不幸を避けることや、何かに挑戦する余裕が得られたり、何かに縛られる不自由からは解放されるわけなので、資本主義を選択する限りはお金との付き合いからは逃れられない不自由ではあります。投資も資本主義を選択した中で、なにも資本を持っていない我々が自由を得るための手段なのではないでしょうか。

一方で、資本主義を選択しない場合でも幸せは得られるわけなので、幸福度とお金はそこまで相関はしないよな、とは思っています。

今回の書籍を読んで御発注さんの姿に憧れ、「コジ活」「株式投資」を始めてみようと考える方も多いかと思います。そんな方々に、エールとして何かメッセージをいただけますでしょうか。

憧れる方、いるんでしょうか(笑)。そこは疑問ですが、著書の巻末にも記載したとおり、よりよく幸せに生きるためにはどうするべきか、私の結論は自分自身をよく観察して、それぞれ自分自身に合うやり方は何か、自分の強みや好きなこと、苦手なことは何かを知ることから始めるべきだと思っています。

自分自身が継続できるポジティブな習慣は何なのか、それを考えて試して、増やし組み合わせていくことが、きっと皆さんの幸せにもつながっていくと信じています。その中に株式投資やコジ活が入りそうなら、ぜひコジ活投資法をお試しいただいてもいいのかなと思います。