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烏田克彦氏:若築建設株式会社代表取締役社長の烏田です。本日は大変お忙しい中、2025年3月期若築建設株式会社決算説明会に、多数のみなさまのご出席を賜りまして、誠にありがとうございます。さっそくですが、資料に基づき決算説明を進めていきます。よろしくお願いします。
まずは、本日の決算説明の内容です。大きく4つの項目についてご説明します。1つ目は当社グループの概要、2つ目は2025年3月期の決算概要、3つ目は2026年3月期の通期業績予想です。最後に、「中期経営計画〈2024-2026〉」の進捗状況についてご報告申し上げます。
当社の概要
1つ目に、当社グループの概要についてです。当社は、本社を東京都目黒区に構えています。売上高は連結864億円、単体836億円です。また、社員数は連結854名、単体768名です。連結対象子会社は、新総建設株式会社、大丸防音株式会社、株式会社都市空間の3社です。3社の売上合計は30億円程度のため、当社の売上がほとんどを占めています。
10か年業績推移 連結
連結の10ヶ年売上と業績推移をご説明します。売上高は、2016年3月期から2020年3月期まで右肩上がりで推移してきました。2021年3月期以降は、800億円台後半で推移しています。
経常利益は、2022年3月期から2024年3月期の3ヶ年は、好採算大規模工事の影響でこれまでにない高水準でしたが、2025年3月期は、その水準には及ばず52億円となりました。ただし、長期スパンで見ると、高い利益率が実現できていると認識しています。
決算サマリー 損益等の状況 単体/連結
2つ目に、2025年3月期の決算の概要についてご説明します。決算サマリーと損益等の状況です。連結売上高は864億6,200万円、連結営業利益52億2,000万円、親会社株主に帰属する当期純利益は36億9,000万円となりました。
単体については下段に示すとおりで、受注高は昨年度を上回る1,040億円の高水準となりました。売上高は、上半期に工事の進捗が進まず、前年度比9.2パーセント減の836億円です。営業利益は、売上高の減少による売上総利益の減少と人件費増等による一般管理費の増加で、26.8パーセント減の47億円となりました。ROEは8.1パーセントとなりました。
セグメント別の状況 概要 単体
セグメント別の状況(単体)についてご説明します。完成工事高は822億3,300万円で、完成工事総利益は116億4,400万円、不動産事業等売上高は14億200万円、不動産事業等総利益は2億8,000万円、合計の売上高は836億3,600万円、合計の売上総利益は119億2,500万円となりました。
セグメント別の売上比は、土木が65.5パーセント、建築が32.9パーセント、不動産事業等が1.6パーセントです。
セグメント別の状況 四半期別完成工事高推移 単体
セグメント別の状況に移ります。このグラフは、過去5年間の四半期ごとの完成工事高の推移を表しています。2025年3月期は上半期となる第1四半期、第2四半期が、過去5年間で最も低い水準となりました。逆に下半期は、過去5年間でも最も高い水準となっています。
その理由は、生産性向上を目的として工事の大型化を目指していますが、その影響で受注から着工までのリードタイムが長くなっていることです。特に建築工事ではその傾向が顕著で、上半期の完成工事高が伸びませんでした。一方、工事が順調に推移した下半期は、順調に工事を消化しています。
セグメント別の状況 ①土木 単体
セグメント別の状況です。土木部門についてご説明します。売上高は、海上土木工事で昨年大規模工事があった反動で、前年比23.2パーセント減です。土木全体では547億4,800万円となりました。
売上総利益は、完成工事高の減少により前年比23.7パーセント減の94億4,800万円です。売上総利益率は、大型好採算工事があった過去2年と比較しても若干減少していますが、依然として高水準を保っています。
セグメント別の状況 ②建築 単体
建築部門についてご説明します。売上高は、上半期は工事進捗の遅れ等により伸びませんでした。しかし、下半期は順調に推移して、前年比19.2パーセント増の274億8,500万円となりました。
売上総利益ですが、不採算工事の影響がなくなり、利益率8パーセント、売上総利益21億9,600万円となっています。建築については、利益率はもとより、さらなる上積みを目指していく所存です。
セグメント別の状況 ③不動産事業等 単体
不動産事業等についてです。このセグメントは、海上運搬業、積算・設計業務等のその他売上と、不動産事業の合計を表しています。売上高は前年比34.8パーセント増の14億200万円、売上総利益は2億8,000万円となりました。
受注高の推移(セグメント別) 単体
受注高の推移についてご説明します。国内民間土木ですが、大型再生エネルギー関連工事の受注により、前年比150.4パーセント増です。国内建設事業全体でも、堅調な民間需要を背景に民間部門の受注が好調で、その結果、官民比率は54:46となりました。全体では3パーセント増の1,040億円となっています。
次期繰越高の推移(建設事業) 単体
次期繰越高の推移を表しています。受注高が2年連続で1,000億円を超えました。しかし、売上高が伸びなかったため、次期繰越高は前年比20パーセント増の1,210億円となりました。特に陸上土木と建築の手持ち工事は、それぞれ500億円を超える水準となっています。
財政状態及びキャッシュフローの状況 連結
財政状況とキャッシュフローの状況(連結)についてです。連結の貸借対照表とキャッシュフローの状況はスライドのとおりです。
2025年3月期 主な受注工事
当期の主な受注工事を記載しています。海上土木は、上から2行目、3行目の国土交通省発注の和倉港・和倉港海岸護岸の災害復旧工事です。
陸上土木は、上から4行目のコスモエコパワー株式会社発注の遠州風力発電所建設工事です。陸上の風力発電所の建設です。
建築工事は、上から4行目の北九州市発注による旦過地区立体換地建築物整備事業委託業務です。この工事は、地元である北九州市旦過地区の再生事業を担う工事です。
2025年3月期 主な完成工事
当期の主な完成工事を列記しています。この中より抜粋してご説明します。
2025年3月期 主な完成工事
海上土木についてです。広島港出島地区岸壁(マイナス12メートル)築造工事です。発注者は、国土交通省中国地方整備局です。工期は2023年11月から2025年1月までです。
まずは、広島港出島地区の岸壁(マイナス12メートル)の構造物を撤去してから、海上の地盤改良工事を行い、本体工事を実施しました。この工事では、当社の自社船「若鷲丸」を使用しています。
2025年3月期 主な完成工事
陸上土木工事についてです。JRE宮城加美町ウインドファーム土木工事です。事業者は、合同会社JRE宮城加美でした。当社は、EPC契約を結んでいる東光電気工事との契約で、土木工事を担当しました。工期は2020年5月から2024年8月までです。
工事内容として、まずは造成工事から入り、風車の基礎となる杭工事と、その後の基礎工事、土木部門を担当しました。宮城県加美郡の蓬莱山西側の牧場と山林に、風車10基を施工する計画です。この発電所により、年間計画発電量は1億150万キロワット、一般家庭2万3,100世帯分の年間消費電力に相当します。
2025年3月期 主な完成工事
建築工事についてです。名瀬第2合同庁舎(R4)建築その他工事です。発注者は、国土交通省九州地方整備局です。工期は2022年10月から2024年10月までです。
RC造の6階建で、延べ床面積は約3,000平米です。この工事は、鹿児島県奄美市の合同庁舎として建設しました。災害時の活動拠点として、津波避難ビルとしての機能を有しています。世界自然遺産である奄美の環境保全や塩害対策に細心の注意を払い、施工しました。
2026年3月期 通期業績予想 単体/連結
3つ目に、2026年3月期の業績予想についてご説明します。2026年3月期通期の業績予想です。連結売上高は1,006億円、連結営業利益は57億5,000万円、営業利益率は5.7パーセントを予想しています。親会社株主に帰属する当期純利益は37億円です。単体については、下段に示すとおりです。
2026年3月期 通期セグメント別予想 単体
2026年3月期 通期セグメント別の予想(単体)についてご説明します。売上高については、土木工事で660億円、建築工事で310億円、不動産事業等で10億円、売上高合計は980億円です。売上総利益については、土木工事で96億円、建築工事で28億5,000万円、不動産事業等で2億5,000万円、売上総利益の合計は127億円を予想しています。
資本効率性・株主還元について
株主還元についてです。2025年3月期の配当は、株主還元方針である「DOE3.6パーセントを下限とし、配当性向40パーセント以上」に基づき、1株当たり普通配当126円を予定しています。その結果、DOEは3.6パーセント、配当性向は45パーセントになります。
2026年3月期については、配当方針に従い、DOE3.6パーセントに当たる131円を想定しています。その結果、配当性向は46.3パーセントになる予想です。
事業戦略ー各部門の強みをいかした事業展開による案件の大規模化・高収益化
最後に、「中期経営計画〈2024-2026〉」を進めてきた1年間の振り返りをします。まず、事業戦略として6本柱を立てました。この6本柱の活動内容をご報告します。
まずは、官庁土木です。インフラ整備では防衛関連施設、港湾施設大型工事を複数受注しています。大型陸上工事では、河川工事、高速道路施設工事を複数受注しました。災害復興工事として、能登半島地震復興関連工事を4件受注しています。和倉港復旧工事は、地域復興のシンボルとして取り組まれている案件です。
次に、官庁建築です。防衛関連施設への取組として、大型工事を複数受注しました。環境系施設建設への取組では、福岡県北九州市、岡山県玉野市にてゴミ処理施設工事を受注しています。ECI方式への取組では、旦過地区再開発事業の業務委託や、築城基地施設最適化技術協力業務を受注しています。
民間土木の再生可能エネルギー分野についてご説明します。再生可能エネルギー分野として、陸上風力・太陽光発電・小水力発電施設建設工事を受注しました。バイオマス・地熱発電への取組は、継続的に進めていきます。
民間設備投資として、民間保有の岸壁施設関連工事を複数受注しています。今後は、物流・データセンター用地造成への取組を強化していきます。
民間建築部門です。大型プロジェクトへの取組として、物流倉庫・工場・宿泊施設等の大型プロジェクトに参画しました。その結果、集合住宅の比率は減少しています。
また、組織の拡充として建築事業部制を導入しました。その結果、新規エリアである北海道・群馬・岡山にて、工事を獲得することとなっています。さらに、2025年度より建築設計部を新設しました。意匠・構造設計、BIM支援、大型物流施設等の設計施工案件に積極的に取り組んでいきます。
続いて、海外事業です。ODAは、アジア・大洋州を中心に営業中です。さまざまなリスクを排除しながら、今年度中に複数件工事の受注を目指します。新市場として、アフリカ沿岸地域への取組も実施しています。
民間設備投資に関する工事では、法人企業の海外投資案件へ積極的に営業をかけているところです。また、人材育成として、技術系現地人スタッフをスリランカ、インドネシアで複数名を直接雇用し、対応力を強化していきます。今後も、日本人・外国人を問わず優秀な人材を確保していきます。
不動産事業です。安定収益賃貸資産への投資を継続して行っていきます。現有資産の有効活用として、北九州市に保有する不動産の整備・売却も進めていきます。
事業戦略ー新エネルギー分野への事業展開
事業戦略のうち、再生エネルギー分野についてご説明します。浮体式洋上風力発電の大量急速施工や、合理的な建設コストを実現するための建設システムの確立を目的としたFLOWCONに参画しました。洋上風力の取組を加速していきます。
共同保有するSEP船は、2026年春に国内に入港してくる予定です。現在は、国内の発電事業者さまへ積極的にセールスを行っています。
次に、陸上風力の新工法「ウインドブレイン工法」について、施工機材の製作は完了しました。現在は習熟訓練を実施中で、年度内には実施工による実証を予定しています。この工法についても、発電事業者から多数の問い合わせをいただいています。
また、2024年度は宮城県、静岡県で陸上風力発電工事、山形県で小水力発電工事を獲得しています。
生産性向上/研究開発
生産性の向上、現場ICTの浸透と深化についてご説明します。土木部門の実績として、遠隔臨場システムの標準化を実施しました。BIM/CIMの専任技術者を採用・教育し、内製化に対応しています。施工DXに関する各種システムを導入し、情報の共有化・効率化も実施しています。
建築部門の実績では、総合仮設・配筋・意匠・構造・設備等の総合モデルをAR(仮想現実)技術により、建築物の3次元の視覚化を実施しています。3次元構造モデル作成の技術検証も実施しているところです。
建築部門の継続事業では、3次元構造モデルを活用した構造レビューによる現場理解の促進と、施工計画の効率化を促進するための研究も実施中です。
市場ニーズに基づく研究開発としては、ROV等によるRC構造物点検診断システムの開発、外洋向けROVの調査研究、バイオマス灰の有効利用に関する調査研究、潜水士用パワーアシストスーツの開発、FD上におけるコンクリート打設システムの研究開発に取り組んでいます。
研究開発
施工の効率化に向けた研究開発の実績についてご説明します。AIコンクリート締固めシステム、電気伝導率による地盤改良の品質評価システム、および施工情報遠隔モニタリングシステムを開発しました。
また、スライド右上の図にある、クレーンAI監視システム「WIT 3rdEYE」の開発も行いました。こちらは、現場で必ず使用するクレーンによる事故を未然に防止するために開発したシステムです。お客さまからも非常にご好評をいただいている開発となりました。
続いて、その下に掲載している一般航行船舶AI監視システム「MAIRS」も開発しました。こちらは、当社が海上工事で使用する作業船と一般航行船舶の接触・衝突を未然に防止するためのシステムです。特に国土交通省港湾局から、非常に高い評価をいただいた開発となります。また、その他にも潜水士マルチモニター用小型デバイスの開発等を行いました。
新規・継続案件としては、港湾構造物を対象とした調査ROVの開発、ケーソン据付の自動化システム開発、ガット船バケット検知システムの開発等を実施しています。
投資計画の進捗状況/IR強化
投資の進捗状況およびIRの状況についてご説明します。
投資の進捗状況として、2024年度の投資実績は21億円でした。具体的には、グリーン電力を導入した技術研究所の新棟の増築等を行いました。今後の投資としては、1万2,000トン級のフローティングドッグ(FD)の製作を決定しています。また、基幹システムの更新や、AIを活用したソフトの開発を実施しているところです。
次に、IRの状況については、今年8月に個人投資家説明会を実施する予定です。「YouTube」の公式チャンネルでは、当社の保有技術や携わった工事の紹介を行っています。サステナビリティ外部評価としては、CDPにてスコアBを獲得しています。また、EcoVadisにてブロンズメダルを獲得しました。
人的資本経営
人的資本経営の中の「働きがい、働きやすさの実現」についてご説明します。
健康経営を実施しており、健康経営優良法人の認定を受けました。スライド右の写真のように、若築マラソンクラブの取締役を含む18名のメンバーが北九州マラソンに参加しました。北九州マラソンにおいては、スポンサーとしても参加しています。また、えるぼし認定は2段階目を取得しています。
次に「人材の確保」についてです。人材開発課を新設し、採用活動を強化しています。2025年度の新入社員は、前年比85パーセント増の52名となりました。2026年度は、80名を目標として活動しています。また、地域限定職員制度の運用を開始しました。多様な働き方に対応していきます。
「人材の育成」として、さまざまな資格取得支援を実施しています。女性社員の会「あやめ会」では、現場見学会や意見交換会の実施など、積極的に活動しています。
働き方改革/サプライチェーンの連携強化
働き方改革/サプライチェーン連携強化についてご説明します。土木部門では、現場支援体制充実のため、業務支援担当責任者を本社・支店に配置しました。その結果、時間外労働時間は昨年度の3分の1程度に減少しています。
また、適正工期確保のため、民間工事においては、見積もり時の施工条件として休日の確保と適正な工期設定を行い、受注に当たっています。
建築部門では、現場支援体制充実のため、AIを利用した新規ソフトの開発、生産性の向上に努めています。適正工期確保のため、新規案件については「適正工期確保宣言」を行ったのち、顧客に完全週休2日をアピールするとともに、全職員にも指導を実施しています。
サプライチェーンの連携強化としては、「パートナーシップ構築宣言」を行いました。グループの調達方針やサプライチェーン調達ガイドラインを表明し、手形払いを全面廃止しました。すべての支払いの現金化を実施しています。
ガバナンス強化
ガバナンスの強化、および建設業の担い手確保と地域貢献についてご説明します。
ガバナンスの強化として、リスク統括部を新設しました。社内リスクの発生予防と早期発見体制の強化を図っているところです。グループ全体では、サイバーセキュリティ研修を実施しています。また、内部通報制度の周知徹底を図り、若築グループ全体でのリスクマネジメントの強化を実施しています。
建設業の担い手確保については、今年度も現場見学会を積極的に開催していきます。奨学金制度も、引き続き運用していく予定です。
安全かつ良質なインフラの提供/カーボンニュートラルに向けて
安全かつ良質なインフラの提供として、能登半島地震での災害復旧工事4件に取り組んでいます。港の復旧が3件、道路の復旧が1件です。
和倉港は能登半島復興のシンボルとして位置づけられ、世間から非常に注目を受けている工事であると認識しており、全社を挙げて取り組んでいきます。
次に、カーボンニュートラルに向けた対応についてです。低環境負荷型の藻場基盤材の現場実証実験に着手しました。製作時のCO2排出を90パーセント以上削減した、藻場基盤材を開発しています。
今年度の秋には、実海域での現場実証実験に着手します。藻場造成による磯焼け予防、ブルーカーボン生態系の創出による脱炭素社会推進に貢献していきます。
エコ・ファースト企業としての活動として、全社員のeco検定取得率90パーセントを目指しています。初年度にあたる2024年度は、188名が合格しています。
数値目標
決算の数値目標をご説明します。初年度にあたる2024年度の受注については、数値・内容ともに充実したものとなりました。
2025年度は獲得した工事にしっかりと取り組みつつ、引き続き良質な工事の受注を進め、中期経営計画目標達成への足がかりとなる年にしたいと思っています。
長期ビジョン2030
「長期ビジョン2030」に掲げている「すべてのステークホルダーの期待に応えられる企業」を目指し、若築一丸となって邁進していく所存です。みなさま方におかれましても、変わらぬご指導、ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げまして、簡単ではありますが、2025年3月期決算発表とします。ご清聴、ありがとうございました。