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池田孝資氏(以下、池田):本日はご多忙中のところ、当社決算説明会にご参加いただき誠にありがとうございます。代表取締役社長の池田です。
はじめに目次をご覧ください。本日は、2025年3月期連結決算概要、2026年3月期通期予想、中期経営計画「VENTURE-5」の進捗状況と取り組みについて、概要は私から、詳細は担当取締役の砂廣よりご説明します。
なお、当社および当社グループの概要、当社のガバナンスやサステナビリティの状況については説明を割愛しますが、本説明会資料にAppendixとして添付しています。ぜひご一読ください。
経営成績
2025年3月期の経営成績についてご説明します。スライドはホームページに公開している資料と同一内容ですので、あわせてご参照ください。
2025年3月期におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善のもと、緩やかな回復基調で推移しました。しかし、物価上昇の継続による消費者マインドの下振れが個人消費に及ぼす影響、また、欧米における高い金利水準の継続や中国経済の先行き、米国の今後の政策動向等による世界的な景気減速への懸念もあり、依然として先行き不透明な状況が継続しています。
清涼飲料業界は、記録的な猛暑や災害備蓄による特需の影響を受け、ミネラルウォーターや茶系飲料は前年を上回りました。一方で、生活必需品の値上げによる買い控えの影響が顕在化し、コーヒー飲料や果汁飲料などが前年を下回り、業界全体としては前年を若干下回る結果となりました。
食品缶詰業界は、水産缶詰においてサバなどの水産原料不足が長期化している影響等もあり、前年を下回る結果となりました。
このような状況の中、当社グループは中期経営計画「VENTURE-5」の中間年度である2025年3月期の計画値必達に向け、中長期的な事業構造改革に取り組み、積極的な設備投資を推進してきました。
労務費の上昇や物価高に伴う輸送コスト等の高騰などがあったものの、価格転嫁の進捗や、容器事業における工場経費の圧縮、充填事業の物流費削減などの取り組みが奏功しました。その結果、当期売上高は前期比1.6パーセント増の924億円、営業利益は前期比2.6パーセント増の45億円、経常利益は前期比2.7パーセント増の51億円を計上しました。
また、政策保有株式の売却による投資有価証券売却益の特別利益3億円、固定資産除売却損や減損損失等の特別損失10億円、法人税等10億円を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比20.0パーセント増の32億円となりました。
2025年3月期 主な実施施策
「VENTURE-5」の全社戦略に基づき、当期に決定、実施した主な施策を表にまとめています。人的資源の最適化、国内事業の再編、海外事業の拡大、新規事業の開発、それぞれの項目において慎重かつスピード感を持って実施しています。このうち2点の施策についてご説明します。
2025年3月期 主な実施施策
当社と、当社中核子会社である北海製罐株式会社ならびに株式会社日本キャンパックの3社を、2027年4月に合併する準備を開始しました。
当社はかつて容器事業を営む旧北海製罐株式会社を母体とし、傘下に充填事業や機械製作事業を有する事業持株会社でしたが、2005年10月に純粋持株会社体制に移行しました。
当時は、社会環境の変化等へ迅速に対応できる体制を構築し、各事業の中核会社を並列に置いて責任および権限を明確化する等の目的がありましたが、これらの目的は一定の成果を収めたものと考えています。
一方、最近は国内人口構成比の変動と主要事業の成熟化、環境問題への対応など、グループ全体で取り組んでいかなければならない課題が顕在化しています。当社取締役会では、これらの変化に対応するために、柔軟かつスピード感を持った組織体制への変革が必要であるとの結論に至りました。
3社合併により組織を一体にすることで、迅速な意思決定力のさらなる向上、成長戦略に合わせた人材の流動化を実行し、人的資本を最大化します。また、効率化によるコストダウン効果も生み出し、グループ一体となった経営戦略の推進とともに、集中的で効率的な経営資源の配分を図りたいと考えています。
現在は、本年12月に合併契約の締結を目指し、各社においてタスク検討を進めているところです。合併後の体制や新たな戦略等については、適切に検討、準備を進めた上であらためてご説明します。
2025年3月期 主な実施施策
インドネシアで飲料容器の製造や飲料水の受託充填事業を営む、ホッカン・デルタパック・インダストリ社におけるバニュアシン新工場建設プロジェクトの変更内容についてご説明します。
バニュアシン新工場の建設は、2022年6月に決定し、手続きを開始しました。しかし、現地での工場建設許可の取得が遅延した都合等により着工が遅れ、現在は建屋を建設中の段階にあります。この間、インドネシアにおける清涼飲料業界、飲料水業界の動きを踏まえて事業環境を見直し、市場機会を捉えるためにプロジェクトを一部変更することにしたものです。
具体的には、当初予定していたカップ清涼飲料の充填ライン導入を再検討します。また、飲料水市場の伸長が見込めることから、飲料水に対応するボトル成型機、PETガロンボトル成型機および各飲料水充填ライン設備を導入することとしました。
これらについては本年12月の稼働開始を予定しています。設備投資額は、当初予定の約16億円から約15億円に減少する見込みです。
セグメント別売上高および営業損益
砂廣俊明氏:経理部、経営企画部および海外事業部を担当している砂廣です。よろしくお願いします。セグメント別売上高および営業損益についてご説明します。
容器事業は、リサイクル材を使用した耐熱ボトル等の受注は好調に推移したものの、最終製品の値上げによる販売鈍化等の影響からプリフォーム販売が減少し、売上高は前期比0.9パーセント減の313億円、営業利益は前期比34.8パーセント減の10億円となりました。
充填事業は、猛暑や災害備蓄需要等の影響を受けてペットボトル製品が好調に推移したことから、売上高は前期比3.4パーセント増の394億円、営業利益は前期比21.1パーセント増の35億円となりました。
海外事業は、積極的な営業と設備投資の結果、売上高は前期比5.7パーセント増の179億円、営業利益は前期比0.9パーセント増の12億円となりました。
その他の売上高は、前期末に化粧品等製造販売事業を譲渡したことにより、前期比11.7パーセント減の36億円となりましたが、機械製作事業において自動車部品の生産設備更新に伴い機械や金型の受注が増加し、営業利益は前期比78パーセント増の6億円となりました。
売上高の増減要因
売上高の主な増減要因をご説明します。容器事業では、売上高は前期比で2億円減少しました。主な要因は、粉ミルク用空缶において一部のお客さまと取引が終了したことによるものです。
充填事業では、売上高は前期比で12億円増加しました。缶製品が減少した一方で、猛暑や災害備蓄需要の影響でペットボトル製品が好調に推移したことによるものです。
海外事業では、売上高が前期比で9億円増加しました。これはホッカン・デルタパック・インダストリ社における積極的な営業施策が奏功したことによるものです。
これらの結果、当期連結売上高は前期比で14億円増加し、924億円となりました。
売上高の推移
過去3年間および当期における四半期ごとの売上推移をグラフにまとめています。当社グループの主要事業である飲料充填や飲料容器製造は、例年、天候、特に気温の影響を受けて売上高が増減します。当社グループは清涼飲料市場に関わる販売の割合が特に大きいため、下期よりも上期の売上規模が大きくなります。
一方、容器事業では下期の売上規模が大きくなっています。これはホット飲料向けの耐熱ボトルの販売が増加するためです。
営業損益の増減要因
次に、営業損益の主な増減要因をご説明します。容器事業は前期比で5億円減少しています。北海製罐において売上高がおおむね横ばいだったのに対し、売上原価、販売費および一般管理費がそれぞれ2億円増加したこと等が主な要因です。
充填事業は前期比で6億円増加しました。これは日本キャンパックにおいて売上高が12億円増加したのに対し、売上原価、販売費および一般管理費の増加が5億円にとどまったこと等が主な要因です。
海外事業では売上高が9億円増加したものの、売上原価、販売費および一般管理費も同程度増加しました。
この結果、営業利益は前期比で1億円増加し、45億円となりました。
営業損益の推移
過去3年間および当期における四半期ごとの営業損益の推移をグラフで表しています。当社の連結営業損益は夏場の清涼飲料需要の影響を大きく受け、上期に偏る傾向があります。当期は充填事業において猛暑を見据え、第1四半期から受注が順調に推移し、下期に入ってからも継続したこと等により、営業損益は前期比で増加しました。
設備投資
続いて、2025年3月期の連結設備投資についてご説明します。当期は総額109億円の設備投資を実施しました。容器事業では、粉乳缶・エアゾール用製造設備の移転等が27億円、充填事業では倉庫建設等16億円を実施しました。
海外事業では、ホッカン・インドネシア社の生産ライン増設や、ホッカン・デルタパック・インダストリ社における飲料用パッケージ製造設備の取得等61億円を実施しました。また、減価償却費は61億円を計上しています。
2026年3月期通期においては、容器事業ではプラスチック製品製造設備の拡充等に29億円、充填事業では自社倉庫の建設等に40億円、海外事業ではインドネシアにおける設備投資に41億円、総額116億円の設備投資を予定しています。減価償却費は66億円になる見込みです。
2026年3月期 通期予想
池田:2026年3月期通期予想と中期経営計画「VENTURE-5」の進捗状況についてお伝えします。前期と前々期は「VENTURE-5」に基づく施策を着実に実行する一方、コロナ禍の終息に伴う人流の活発化やインバウンド需要に加え、猛暑・好天が続いた影響により、期首の計画を大幅に上回って着地しました。
当期は物価上昇が続くことにより、消費者マインドが生活防衛に傾くことが予想されます。また、米国の通商政策をはじめ、世界各地における紛争の動向などによって世界経済の不透明感が増しており、厳しい状況が予想されています。
このような中、当社グループは、国内事業では顧客のニーズに対して迅速かつ高品質な対応を図るとともに、サプライチェーン全体の労務費、輸送費・保管料等のコスト増を適切に価格転嫁できるよう努めることで、利益を確保していきます。
また、海外事業ではインドネシアにおいて積極的な営業活動に取り組み、設備投資の早期回収を実現していきます。
これらの施策によって、2026年3月期の通期業績は、連結売上高990億円、営業利益47億円、経常利益48億円の予想としています。
親会社株主に帰属する当期純利益32億円の予想としています。前期実績が32億6,200万円だったことから、表示の上では前期比1.9パーセント減となっていますが、ニュアンスとしては前期実績並みの着地を想定しています。
中期経営計画について
中期経営計画の進捗状況についてご説明します。連結経営指標から見た「VENTURE-5」の進捗状況です。2025年3月期の売上高は計画を下回りましたが、営業利益は同期間の計画を上回っており、営業利益率については2026年3月期の計画値を上回りました。
また、2026年3月期の業績予想値については、売上高は「VENTURE-5」の計画値を下回っていますが、各種施策により利益を出せる体質への変革を進めた結果、営業利益については計画値を達成できるものと予想しています。
バランスシート項目については、「VENTURE-5」の諸施策を着実に実行し、業績の向上と政策保有株式の縮減に伴って得られるキャッシュの有効活用により、各計画値の達成とさらなる資本効率の向上に取り組んでいきます。
2027年3月期には、最終的な連結経営指標である営業利益61億円、営業利益率5パーセント超、DEレシオ0.6倍以下、ROE6.5パーセントの達成を実現していきます。
中期経営計画について
「VENTURE-5」期間中の配当政策についてご説明します。当社は長らく株価が1株当たり純資産額を下回る状況が続いており、早期に改善を図る必要があると認識しています。
「VENTURE-5」の施策を着実に実行することにより、業績が改善すれば一定の株価上昇が期待されますが、当社としてはさらなる株主価値の向上を図るため、株主還元に注力することとしています。具体的には「VENTURE-5」期間中の配当政策を連結配当性向35パーセント以上、かつ1株当たり年間配当金を45円以上としています。
また、「VENTURE-5」の経営指標として、2027年3月期までに1株当たり年間配当金100円以上を掲げて取り組んでいます。これを前提として、2025年3月期の期末配当金は1株当たり70円とすることを決定しました。これにより、年間配当金は1株当たり93円となりました。
また、2026年3月期の配当については、中間配当金は1株当たり30円とした上で、期末配当金については先ほど申し上げた通期予想に基づき、連結配当性向を35パーセント以上として、期末配当金を1株当たり63円、年間配当金を1株当たり93円としています。
コーポレートガバナンス
株式の政策保有に関する方針についてご説明します。当社は、政策保有株式については今後も取引先として継続していく企業、新たに事業戦略上関係を強化すべき企業等に限定します。また、年に1回以上、取締役会において各株式を保有する合理性を検証し、合理性がないと判断した株式については、順次売却するなどの手続きを行っています。
検証の結果については、コーポレートガバナンス報告書や有価証券報告書において開示しており、これらは当社Webサイトでも閲覧することが可能です。
当社は政策保有株式の縮減をさらに進めるため、「VENTURE-5」の最終年度となる2027年3月末において、その保有比率を連結純資産の約10パーセントとすることを目指す旨の縮減方針を取締役会で決定し、公表しました。
この方針を踏まえ、前期には上場株式4銘柄を処分し、保有比率は2024年3月期末の18.7パーセントから16.4パーセントに減少しました。当期においても、すでに2銘柄について、その一部の売却を進めています。
これらについては、業績への影響が判明次第、適時開示を行うほか、定期的に開示していきます。
コーポレートガバナンス
当社は、2025年6月27日に開催予定の第100回定時株主総会における議案について、当社株主より株主提案を行う旨の書面を受領しました。内容は、スライドにも記載している政策保有株式に関する定款変更を求めるものです。
当社としては、政策保有株式の縮減については、すでに取締役会の監督のもと、業務執行に属する事項として一定の取り組みを進めて開示を実施しています。そのため、あらためて定款に規定するよりも、現在の進め方を継続することが望ましいと考えており、取締役会として株主提案に反対する旨の意見を表明しています。
説明は以上です。ご清聴ありがとうございました。
質疑応答:価格改定における加工賃転嫁の状況について
質問者:容器事業でも価格改定が進んでいると思いますが、数字を見る限りでは、原材料とエネルギーコストはある程度価格転嫁ができているものの、おそらく他の容器メーカーと同様に加工賃がまったく上昇していないのではないかと推察します。その点について、可能な範囲でご回答をお願いします。
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