オーケーエムとは
奥村晋一氏(以下、奥村):株式会社オーケーエム代表取締役社長の奥村です。よろしくお願いします。
関本圭吾氏(以下、関本):今回はQ&A形式で進めていきます。はじめに、御社がどのような会社かを簡単にご説明いただければと思います。
奥村:弊社は、工業用バルブを開発・製造・販売しているメーカーです。例えば、配管やプラントなど流体が流れるところには必ずバルブがついています。そのような工業用のバルブを作っている会社です。
120年続く「ものづくり」の歴史
関本:企業の歴史は100年以上と古く、鋸(のこぎり)からスタートしたと拝見しました。どのような事業を展開してきたのか、沿革を教えてください。
奥村:弊社は明治35年に創業され、丸太から板材を切り出す時に使う木挽鋸(こびきのこ)を製造するところから始まっています。
バルブ事業への転換
奥村:太平洋戦争が終わり、手で引く鋸が廃れて電動に置き換わっていく時に、創業メンバーたちが事業転換しなければいけないと話し合いました。当時、滋賀県彦根市がバルブメーカーの集積地だったという背景もありますが、今後産業がどんどん発達していくと配管にバルブが必ずつけられるはずだと考え、バルブに転換しました。
関本:作るものが大きく違いますが、新しいことに取り組みたいという考えだったのか、あるいは技術が共通していたのでしょうか?
奥村:共通しているのは鉄からできている点です。鋸は叩いて作る鍛造ですが、バルブは溶かして作ります。作り方には大きな違いがありますが、鉄は我々にとってなじみ深い素材でした。
関本:素材が共通しているとはいえ、作り方が大きく違うものに転換し、今は世界でもトップシェアに近いというのはすばらしいと思います。
オーケーエムの主要製品
関本:主要製品について、スライドに売上構成比が示されています。現在8割ほどを占めている「バタフライバルブ」とはどのようなものなのかを教えてください。
奥村:今日はバタフライバルブの模型を持ってきています。これはカットモデルで半分に切ってありますが、輪っかの中に円盤を配置して90度開閉させることにより、水や空気などの流体を流したり止めたりすることができます。また、中途半端なところで制御すると流量をコントロールできます。
関本:このようなバルブがパイプの中に入っており、流体を止めたり流量をコントロールしたりするということですね。
こちらは今後も主力製品であり続けるものなのか、あるいは長く使われている製品ですので、新しい製品ができてきているのでしょうか?
奥村:バタフライバルブの特徴は、他の堅牢なバルブより軽くてコンパクトな点です。非常に扱いやすく、設置しやすいため、いろいろな場面で使われるケースが増えてくると思います。また新たな流体のニーズが出た時にうまくマッチするように設計すれば、まだまだ広がる余地はあると考えています。
関本:それが8割近くを占めており、今後も期待できるということですね。
続いてビジネスモデルについてです。御社は各地に自社工場があると思いますが、自社で作っているのか、それとも外注しているのでしょうか?
奥村:基本的な材料はすべて外注しており、鋳物は海外で作ることが多いです。加工して弊社に入れる、あるいは鋳造したものを弊社で加工します。基本的には加工、組み立てを弊社で行い、お客さまに届けるスタイルです。
関本:販売については後半にご説明があると思いますが、カスタマイズ製品は直接お客さまとやりとりするのか、販売会社や商社を介しているのか、どのようなモデルになっているのでしょうか?
奥村:お客さまとの接点という意味では両方あります。販売店を通じてご紹介いただき、その時にプラントを設計しているところにお話をうかがってニーズを聞き出すか、直接お客さまとコンタクトをとってニーズをしっかりと聞き出します。
その後、標準の製品を提供したり、カスタマイズが必要であればしっかりと設計を行ってお客さまに提供したりします。ルートは直接販売や販売店経由など、いろいろなパターンがあります。
関本:それぞれどの程度の割合でしょうか?
奥村:半々くらいです。お客さまの声を直接聞くことを基本姿勢としています。
オーケーエムの強み③ カスタマイズ製品
関本:カスタマイズやラインナップの豊富さは資料でも定期的に示されていると思います。御社の考えとしては、特殊品対応、少量多品種のニッチなニーズを捉えるというイメージで収益を作っているのか、あるいは汎用品も出しているのか、事業モデルの主力を教えてください。
奥村:標準製品ももちろん作っていますが、8割近くはカスタマイズしてお客さまに提供しています。製品を大きく変えるカスタマイズもありますし、首を伸ばすなど少しだけカスタマイズすることもあります。
当初バルブに転換した時は後発のメーカーであり、先輩メーカーの中に入っていこうとすると、特殊なバルブの要望にお応えするしかなかったという背景もあります。
弊社には新しいことに挑戦するという文化がありますので、難しいニーズにもしっかりと応えていきたいと考えています。カスタマイズ製品を提供することは我々の喜びであり、お客さまにも喜んでいただけると思っています。
関本:スライドに「10万種類以上」と記載があり、途方もないと思います。お客さまごとに「この太さのこのパイプに、このようなものをこれくらい流したい」という要望が千差万別あるということでしょうか?
奥村:配管のサイズは規格化されていますので、基本的なサイズをラインナップしておけばよいのですが、流れてくるものはさまざまです。単純な水や油、酸性、アルカリ性、温度や圧力の高低などがありますので、それに合った材質を選んだり、圧力や高温に耐えられるような構造を設計したりします。
バルブの型式は20種類くらいしかありませんが、サイズや材質に加え、手あるいはモーターで動かすのかなど、どのようにして動かすかを掛け合わせると10万種類くらいになります。
関本:中学受験の組み合わせのかけ算を思い出しました。半導体製造装置などについていろいろな機械メーカーにお話を聞くと、「ここは薬液が通る」など材質によって求められる精度が違うのだろうと思いました。
事業モデルについて、もう少しうかがっていきます。製品の需要がどれだけ揺れるのかは、投資する上で大事だと思っています。御社の場合、半分は舶用、もう半分はそれ以外の需要によるものだと思います。新しく船やプラントを作る需要が大きいのか、安定的で収益性も良い保守・メンテナンスの需要が大きいのかを教えてください。
奥村:今あるプラントの「このバルブだけ古くなってきているため取り替える」など、保守・メンテナンスの取り替え需要は20パーセント程度です。
関本:その部分は、今後の事業展開で積み上がっていくのでしょうか?
奥村:おっしゃるとおりです。
オーケーエムの強み① 営業・マーケティング
関本:事業領域について、この1年、2年は船が市場のテーマとして強かったという印象です。舶用以外の領域について、一つひとつ取り出すとおもしろい伸びがあるような領域なのか、あるいは市況サイクルがある中で顧客が分散して安定している領域なのか、事業ポートフォリオの認識を教えてください。
奥村:舶用が50パーセント、陸用が50パーセントで、その中のほとんどの業界にバルブを納めていると認識しています。
今示しているスライドのとおり、半導体工場や食品工場などがあります。食品工場では、粉体やドロドロした味噌のようなものを扱うところだったり、ビール工場もあります。さらに、高層ビルのエアコンなど空調に使われるバルブ、発電関係、製鉄など、ありとあらゆるプラント・業界に納入しています。
したがって、一部の業界への販売が落ちても他の業界が支えてくれるという状態にしっかりとシフトしていき、あまり大きな凸凹が出ないように利益をコントロールできるかたちになっています。
関本:スライドを見ると、そうそうたる大企業が顧客にいることがわかりました。東京ディズニーシーやユニバーサル・スタジオ・ジャパンもあることが個人的にはおもしろく、いろいろな施設の裏側に通っているのだろうと思いました。
世界シェアの約40%を占める船舶排ガス用バルブ
関本:競争環境について教えてください。現在、船舶排ガス用バルブは非常に高いシェアを誇っていますが、御社は鋸から転換し、バルブは後発メーカーとして始まりました。どのようにして高いシェアを実現し、売上を確保しているのでしょうか?
奥村:標準的なバルブは大量に作って市場に出していくというパターンもありますが、弊社の場合はニッチなニーズを狙っています。そこまで大きな市場規模にはなりませんが、それを積み上げています。船舶のエンジンに使われる排ガス用バルブも非常にニッチな領域で、これを世の中でそのまま使うことはできません。
反対に、標準的なバルブを配管内に持っていっても使えないため、標準的なバルブをエンジンの排ガスに特化したバルブにカスタマイズし、開発して提供しています。そうすることでぴったりはまり、標準的なバルブはなかなか入ってこられません。そのようなカスタマイズバルブで売上高を積み上げています。
競争優位性を発揮した成功事例
関本:多くのシェアを持っており、儲かっているらしいとわかると、新規参入や価格競争が出てきてしまうのがビジネスだと思います。それらをブロックして、世界シェアの約40パーセント、日本シェアの約90パーセントを実現できているのには理由があるのでしょうか?
奥村:ニーズをいち早く察知して情報をつかみ、カスタマイズ製品をしっかりと設計・開発して一番手で出していくことが非常に重要だと考えています。一番手で入れば、数年間はその位置と価格を維持できます。
しかし、1社独占ということにはならず、必ず競争相手が入ってきます。そこからはコスト競争に入りますので、コストダウンを重ねて競合相手とシェアするかたちです。
関本:共倒れしても仕方がないため、難しいところですね。業界によっては毎年の値下げが厳しいところもあると思いますが、対顧客で高い交渉力があるのか、顧客交渉力についてはどのように考えていますか?
奥村:一番手で入ると、価格交渉のイニシアチブを取れます。競争相手が入ってくるとコストダウンの要求が必ず入りますので、アフターフォローや事前の情報提供など、製品以外の価値を認めていただくことも強みにしています。
事業環境① 国内市場規模推移
関本:市場認識についてです。バルブ市場全体は成長しているのでしょうか? 短期、中期、長期という視点で切り分けた時、成長しているのであれば何がドライバーになっているのかを教えてください。
奥村:日本のバルブ業界に大きな伸びは見られません。スライドに示しているように、国内市場規模は4,500億円からここ数年は5,000億円を超え、少しずつ増加しています。
ただし、流体制御のニーズは時代に応じて変わってきています。全体のパイは大きくは広がらないと思いますが、流体制御のニーズの変化にしっかりと対応していけば、まだまだ伸ばす余地があると考えています。
関本:流体制御という枠は常に存在しているはずで、そこに対して御社がどれだけソリューションを提供できるかが、市場をコントロールする鍵になるのですね。
奥村:そのとおりです。
中長期ビジョンと中期経営計画の位置づけ
関本:ここまで、成り立ちやビジネスモデル、競争力、市場についておうかがいしました。これらを前提に、成長戦略や見通しについて教えてください。
中長期ビジョンとして、2031年3月期に、今期の着地予想から2倍近くの売上高を掲げていますが、過去の推移から見ると意欲的だと思います。この戦略の全体感を教えてください。
奥村:今期で第1次中期経営計画が終了します。第1次中期経営計画は変革の計画と捉えており、成長させるためにいろいろな施策を打っていきたいと考えています。
スライドに2031年の売上高は200億円と示していますが、10年前の売上規模は50億円弱でした。そこから10年で倍になっていますので、200億円というのは夢物語ではありません。
関本:前の10年と同じく、次の10年で2倍にしていくということですね。
売上高の安定性・成長性
奥村:リニアに上がっていくというよりは、どこかで不連続点を作って成長してきています。この5年ほどでも船舶排ガス用バルブで不連続点を作ることができました。今後もこのような不連続点を作っていきたいと考えています。
関本:今回、不連続点として船舶排ガス用バルブが伸びを牽引しましたが、こちらのさらなる成長や新商品の開発、M&Aなどをどの程度の割合で進めようと考えていますか?
奥村:具体的な割合については精査しているところです。しっかりと見え次第、開示していきたいと考えています。
基本的には既存のバルブ事業を成長させていきますが、バルブだけではなく、バルブを中心とした流体制御機器も広げていきたいと考えています。さらに、単品ではなくバルブをコアとしてシステム化し、ソフトウェアも含めてシステムをしっかりとお客さまに届けていくことも視野に入れています。
また、先ほどメンテナンスについてお話ししましたが、メンテナンスの取り組みはまだまだ受け身の体制です。弊社からしっかりと提案していけば、需要を掘り起こせると考えています。
そして、バルブ以外の新規事業を展開する中で、足りないところについてはM&Aを視野に入れて、しっかりと探索していきたいと考えています。
関本:後ほど各要素を詳細にうかがいたいと思います。
中長期ビジョンと中期経営計画の位置づけ
関本:2031年3月期に売上高200億円を実現する上で、取り組まなければならないことは何だと考えていますか?
お客さまの需要を新製品で掘り起こし、お客さまを開拓するためにさらに営業しなければいけないが、そのための人員が足りていない、あるいは生産のキャパシティが足りていないため拡大しなければいけないなど、どのような点がボトルネックと考えているかを教えてください。
奥村:人材の問題は弊社の課題であり、生産のキャパシティについてもそろそろ次の段階に入らなければいけないと考えています。現在、少ない人数でもなんとかカスタマイズをこなしていくために、業務も含め、作る部分のシステム改革を進めているところです。
カスタマイズのためラインナップがどんどん広がっていきますが、そこをできるだけ標準化していきます。外から見ると特殊なカスタマイズ製品ですが、社内では標準品であるといったかたちで、システムで流していくような仕組みを作り上げている最中です。
そこで余剰工数をしっかりと作っていき、次の新しい製品開発に振り向けていくことを実現することが課題となっています。
関本:陳腐な言葉ですが、DXのようなイメージですね。
奥村:そのとおりです。
関本:この取り組みは、まだ検討途中なのでしょうか? 社内ではトライアルが進みつつあり、数年後など近いうちに見える予定なのか、進捗を教えてください。
奥村:システム改革については、すでに取り組みをスタートしています。来期には本格的な作業に入ると考えています。
関本:次が通期の決算発表のタイミングになると思いますが、ぜひそのあたりで見えていればと思います。
人材のところも課題であるというお話でしたが、生産人員のお話でしょうか? それとも営業活動のための人員になりますか?
奥村:生産、マーケティング、開発の人材です。新しい製品や新しいシステムについては、取り組む課題の焦点を絞っています。その開発および市場開拓を進めるマーケティングの人材の強化を図らなければいけないと考えています。
また、多くの引き合いをいただいていますので、生産を行う人材に加え、工作機械を含む設備についても拡充する必要があると考えています。海外の工場でもうまく製造を分担し、グループ全体でキャパシティを上げていきます。
関本:大変勉強になります。中長期ビジョンでは売上高が開示されていますが、投資家としては利益についても気になるところです。中長期ビジョンが実現できた時の収益性など、ソフトな面も教えていただけたらと思います。
奥村:中長期的な目標として、営業利益率は10パーセント、ROEは8パーセント以上を掲げています。ただし、資本コストから考えるとROEはできれば10パーセント以上を目指したいと考えています。売上高も成長させますが、どちらかというと利益や利益率を上げていくことにしっかりと注力していく方針です。
関本:収益性の向上を考えると、やはり先ほどお話があった効率化が中心になっていくのでしょうか? それとも、高付加価値品を作っていくことを考えていますか?
奥村:両方です。おっしゃるとおり、できるだけ少ない人員で生産性を上げていくところと、カスタマイズ製品の投入になります。1番手でニーズをつかまえ、開発して製品を投入していくことは、永続的に繰り返していくと考えています。
関本:御社のカルチャーであり、原動力であり、強みであるということですね。
奥村:そのとおりです。
関本:中期経営計画の進捗を追っていく時に、内部から見えているものと投資家などの外部から見えているものは、けっこう異なってくると思っています。投資家が御社をモニタリングする上で、「うまくいっている」「雲行きが怪しい」などがわかるような指標となるものを教えてください。
奥村:新しい製品や付加価値の高い製品を投入していく上では、やはり利益率です。もう1つは、新しい製品を出していくと売上高も積み上がっていきますので、こちらもご覧いただきたいと思っています。
関本:スライドの「新規分野への展開」に記載されているM&Aについてもうかがいます。先ほど「自社に足りないところがある分野」といった表現がありましたが、これは新しいプロダクトラインナップのお話でしょうか? 欲しい領域があれば教えてください。
奥村:どこで足りない駒をM&Aしていくかについては、社内で議論している途中です。バルブについては、社内でいろいろできると考えています。
システム化においてはシステムを得意とするところとタイアップしたり、あるいはサプライチェーンを考えると、鋳造を含め、上流をしっかりと作るところで提携していくこともあるかと思います。こちらについては、今全方位で検討している段階です。
関本:一部は外部で作っているというお話でしたが、それを内部にも少し持ってくるということですか?
奥村:そのようなところも視野に入れています。
関本:検討先はたくさんあるのですね。
奥村:そのとおりです。
業績予想の上方修正について
関本:直近の動きについてもうかがいます。第3四半期の決算を2月に発表しており、業績および配当の上方修正がありました。先ほど「利益率を見ていてください」というお話がありましたが、特に最近は利益が良くなっていると思っています。
こちらをどのように評価すればいいのかについて、実は一過性のところもあるのか、御社の実力なのかを教えてください。
奥村:カスタマイズ製品が売れて積み上がった部分もあります。ただし、今回は第1四半期にグループ会社との決算期のずれによる補正が入り、会計上のかさ上げがありましたので、そこはできすぎなところがあります。
関本:その部分を差し引いても、事業として良いところももちろんあるということですね。
奥村:そのとおりです。
売上高、受注高、受注残(市場別、単体)
関本:舶用は好調だったと思いますが、陸用の売上高については計画未達となりました。事業として見直したいところや課題が見えているのか、あるいは市場やタイミングなどの問題によるものなのかを教えてください。
奥村:陸用に関しては、プラントを含めて工事が少し後ろにずれてしまっています。お客さまも工事を行う人材を確保するのがなかなか難しいという背景もあり、実行できずに少しずつずれてきています。
弊社としては、できるだけ付加価値を認めていただける業界・市場にシフトし、そちらに注力していきます。まんべんなくすべてのお客さまに提供していくのではなく、我々を認めていただける、認知していただけるお客さまにより注力していき、利益をしっかりと出していくところへシフトしたいと考えています。
関本:私もけっこういろいろ見ていますが、不動産、建設、設備施工はなかなか人手が足りないという話を聞きます。医療機器の商社のIRセミナーでもお話を聞きましたが、やはり医師が忙しく、なかなか対応していただけないこともあるそうです。このあたりの課題はどこの会社でも見られるのかと思いました。
もう1点おうかがいします。リスク面についてです。受注残は売上高、受注高よりもかなり好調に伸びています。こちらは生産が追いついていないということでしょうか?
奥村:受注残が積み上がっているところは、舶用の分野です。舶用は比較的リードタイムが長いと言いますか、お客さまから早めにご注文をいただきます。現在、造船業界では建造数が徐々に上がっており、排ガス用バルブの需要も高まっていますので、舶用の受注が増えています。
関本:御社の課題というよりは、リードタイムが長いお客さまが多いのですね。
奥村:そのとおりです。
関本:2025年3月期もそろそろ終わりますので、2026年3月期の議論が始まってくる頃だと思います。「今回はここはできすぎているから、2026年3月期も続くとは思わないでね」というところや、費用を使いたいと思っている部分など、投資家に心構えをしておいてほしいところはありますか?
奥村:利益は少しイレギュラーなところでかさ上げがあり、その部分は来期には期待できませんので、ご留意いただければと思います。
それから、システム改革への注力で費用を使いたいと考えています。システムの入れ替えを鋭意進めているところです。まずは生産性を上げるための社内体制の構築が必要です。システムを含め、来期に集中的に投資を行っていきたいと考えていますので、利益にも少し響いてくるだろうと考えています。
数字については精査しているところですので、あらためて開示したいと思います。
関本:中長期的に売上高200億円、営業利益率10パーセントを目指すために必要なところということですね。
企業価値向上に向けた施策
関本:最後に、財務戦略と株主還元についてうかがいます。ROEは8パーセント以上、資本コストを考えると10パーセント以上を見ていきたいというお話がありました。ROEの向上は、利益率の改善で達成できる見込みでしょうか?
還元をもう少し強化して資本効率を上げていき、いわゆるエクイティの増え方を下げていく、あるいは現金の量をもう少し下げるなど、適切なレバレッジや財務戦略についての考えを教えてください。
奥村:資本コストを意識した経営としては、スライドに示しているように、今大きな方針を3つ考えています。
1つ目は「収益性の強化」で、ROEを上げていきます。営業利益率は徐々に下がっていますが、なんとかして上げていかなければいけません。ここについては、やはり新製品の投入を行っていきます。カスタマイズ製品を投入し、営業利益率とROEをしっかりと上げていくことに取り組みます。
2つ目は「株主還元の強化」です。今期の配当予想は普通配当40円、特別配当5円の計45円です。これから先、配当政策についてもしっかりと見直し、株主のみなさまに満足していただけるような配当政策を出していきたいと考えています。
3つ目は「IR活動の強化」です。弊社のことを知らない投資家はまだまだたくさんいらっしゃいますので、特に個人投資家向けにしっかりとIR活動を展開していきたいと考えています。
B/Sについては、弊社の中で戦略を練ることがまだできていませんので、キャッシュのところも含めてしっかりと政策を作り直し、みなさまに満足していただけるかたちに持っていきたいと考えています。
関本:実際に事業に取り組んでいるわけでもない投資家がいろいろ言って申し訳ありませんが、考えていただけると大変うれしいです。
質疑応答:国内と海外の売上比率について
荒井沙織氏(以下、荒井):「国内と海外の売上比率を教えてください。できれば海外は地域別でお願いします」というご質問です。
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