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小森大氏(以下、小森):みなさま、こんにちは。本日はタカラスタンダード株式会社の説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。代表取締役社長の小森でございます。

本日は、スライドに記載の5つの項目についてご説明します。

自己紹介

小森:はじめに、簡単な自己紹介です。私は1994年に当社へ入社し、基本的には一貫して、営業として現場の最前線にいました。2024年4月に代表取締役社長に就任しましたが、これまで培った現場感覚を大切にしながら業容の拡大に努めるとともに、当社の永続的な発展を見据えた人材育成や企業体質の強化にも尽力したい考えです。

関本圭吾氏(以下、関本):昨年4月に社長に就任したとのことですが、どのような経緯があったのでしょうか? ずっと営業に従事してきたと思いますが、営業的な観点からどのよう役割を求められているとお考えですか? 実は役員陣の年齢を拝見したのですが、小森社長が一番若いところも含めて気になっていますので、詳細をうかがえればと思います。

小森:ご承知のとおり、日本の人口はどんどん減っていきますし、世帯数も減っていきますので、今後の国内市場は長いレンジで見るとシュリンクしていきます。そのような中で、企業間の競争は非常に激化することが予測されますから、既存のビジネスモデルから脱却していかないといけないというのが我々の足元の状況です。

私は比較的改革派ですので、そのような点を加味して白羽の矢が立ったのではないかと自分自身では思っています。また、直近では東京で支社長を務めていましたが、非常に苦戦していた首都圏でリフォーム市場を特に伸ばすことができたため、そのような点も加味されたのかと考えています。

関本:変化のスピードが速い世の中で、どんどん変革していくプレイヤーとして期待されていることがよくわかりました。

会社概要

小森:事業概要からご説明します。まずは会社概要です。タカラスタンダードはホーローに特徴を持つ総合住宅設備機器メーカーで、キッチン・浴室・洗面化粧台が主力の製品となっています。大阪に本社があり、創業からずっと大阪城にほど近い大阪市城東区に社屋を構えています。

創業は1912年で、今年で113年目を迎えます。プライム市場に上場しており、証券コードは7981となります。前期の業績は、売上高が2,347億円、営業利益が124億円という規模の企業です。

沿革

小森:沿革です。当社は1912年に日本エナメルとして設立されました。ここで言う「エナメル」とはホーローのことで、当時は一般的ではなかったホーロー製品を国内に広めることを使命として事業をスタートしています。

創業からしばらくはホーロー製の家庭用食器や鍋などを製造していましたが、1962年に世界初のホーロー製キッチンの開発に成功しました。以降は、住宅設備機器を主力としてホーローを中心にさまざまな製品を開発し、継続的に事業を拡大しているところです。

当社の目指す姿

小森:当社の目指す姿についてです。ホーローは、清掃性や耐久性などに優れた特徴を持つ素材です。そうしたホーロー製品の普及により、「より快適できれいな暮らしに貢献する」ことが創業者の思いであり、当社の原点となっています。

スライドに記載の企業理念や長期ビジョンのもと、これからもその実現を追い求めていきます。

事業展開

小森:事業展開についてです。国内の水回り市場は、販路の違いから、リフォーム市場、マンションなどの新築集合住宅市場、新築戸建住宅市場の3つに分類されますが、当社も各市場を中心に事業を展開しています。また、売上構成比率はまだ低いですが、近年は海外市場やホーロー壁装材などの非住宅市場にも注力しています。

なお、いずれの市場においても、当社から直接エンドユーザーには販売していません。代理店やデベロッパーなど、各市場に合わせた販売先を通じて製品を届けています。

業界内における当社のポジションについては、製品別のシェアをスライド右側に記載しています。2023年度の実績では、キッチンでトップシェア、浴室と洗面化粧台は3番手となっています。キッチンは新築マンション向けの高いシェアと、新築戸建やリフォームにおける取組みを背景にトップシェアをいただいています。

一方の浴室は、新築マンションにおいて後発でシェアがまだまだ低い状態ですので、逆に国内市場にも伸びしろがあると考えています。また、各製品部門とも、リフォームにおいてはまだまだ伸ばす余地があります。

当社の独自素材「高品位ホーロー」

小森:当社の特徴や強みをご紹介します。先ほどから何度も出ていますが、タカラスタンダードといえば「ホーロー」が代名詞であり、大きな特徴です。

そもそもホーローとは、鉄板の表面にガラス質の釉薬を焼き付けて密着させた素材のことです。そのため、金属の強さとガラスの美しさなど、それぞれの長所を併せ持っています。当社はこのホーローを長年研究し、鉄とガラスの密着性や素材そのものを改良してきました。それにより独自素材である「高品位ホーロー」を開発し、製品に活用しています。

「高品位ホーロー」の特徴

小森:「高品位ホーロー」は表面がガラス質のため汚れが染み込まず、お手入れが非常に簡単なことに加えて、湿気や傷、熱に強く、水回りには最適な素材となっています。また、内部が鉄板であるため、耐久性にも非常に優れているとともに、磁石も使用できます。これにより、収納のアイデアが広がることも非常に便利なポイントです。

デザイン性に関しても、独自の印刷技術の開発によってさまざまな色や柄を出せるようになっており、多彩な表現が可能です。

ホーロー素材を活かした製品展開

小森:「高品位ホーロー」を使用した製品の一例をスライドに記載しています。キッチン・洗面化粧台・浴室とさまざまな部分に使用し、「より快適できれいな暮らしに貢献する」という当社の原点の実現を追求しています。

関本:「高品位ホーロー」は御社の独自素材ですが、実際に他社製品とはどのように違うのでしょうか? 投資家としては、他社ではなぜ作れないのかという点にも注目していますが、このあたりはどのように考えておけばよいでしょうか?

小森:例えば、ホーロー鍋であれば非常に力を入れている企業もいますが、水回りにまでホーローを展開しているのは、世界中を見ても当社だけだと思います。ホーロー自体を作ることはできても、これをキッチンで使うには、やはり多彩な色柄などを出さないといけません。したがって、そのような技術は唯一無二であり、当社にしかできないところだと考えています。

同時に、装置産業でもありますので、大量生産のことまで考えるとかなりの投資が必要となります。そのため、当社のビジネスが模倣される可能性は低いと思っています。

関本:ホーローは金属にガラスを吹き付けた素材とのことですが、ガラス板のメーカーを見ていても作るのが難しそうだと感じます。同様にホーロー製品にもノウハウが必要ですから、これだけ魅力的な特徴があっても、なかなか他社は参入しこない状況なのでしょうか?

小森:ホーローにおいては密着性が一番肝心だと思いますので、そのあたりの研究にも我々は取組んでいます。以前は、同業他社もけっこうホーロー製品を作っていた時期があったのですが、やはり投資を維持していくことを考えると、片手間ではなかなか難しかったのだろうと思います。

関本:キッチン・洗面化粧台・浴室に使う素材はホーロー以外にもあると思います。それらと比べた時に非常に魅力や特徴があるため、御社のホーロー製品は高価格なハイエンド品という扱いになるのでしょうか? 水回り業界でどのようなポジショニングなのかが気になりました。

小森:ホーロー製品は高価とまでは言いませんが、技術も含めて非常にコストがかかっている面もあります。ただし、他のいろいろな素材と比べてホーローだけが突出して高価というわけではありません。

関本:そのような意味では、ホーローのメリットを知ってくださっている方が購入しており、需要がどんどん伸びてきているということですね。

小森:おっしゃるとおりです。

安定供給を実現する生産・物流体制

小森:ホーロー以外のタカラスタンダードの特徴をご説明します。まずは、生産・物流体制が挙げられます。自社の生産拠点は15ヶ所あり、物流拠点は10ヶ所あります。

新築マンションなどの短期間に大量の納品が必要となる大規模物件にも対応できるように、体制を整えています。また、拠点を各地に分散することにより、自然災害などのリスク回避も行っています。

このような安定供給が可能な体制が市場で評価されており、マンション向けのシステムキッチンのシェアは約80パーセントを誇っています。

専門の営業組織と業界最多のショールーム

小森:営業組織とショールーム展開にも特徴があります。

スライド上段は営業組織についてです。先ほどもお伝えしたとおり、各市場において異なる販売先に対する営業活動が必要となります。そのため、各市場に対応した専門の営業部隊を配置し、きめ細やかな営業活動を実現しています。これにより、シェアの拡大が図れていると考えています。

ページ下段はショールーム展開についてです。当社はホーローという他社とは異なる素材をメインに使用しているため、実際に見て触れていただくことが重要だと考えています。そのため、全国に約160ヶ所という業界最多のショールームを展開しています。

また、エンドユーザーの情報収集に役立てるようホームページも充実させています。ぜひ、ホームページの閲覧や、お近くのショールームでホーローの良さを体験していただければ幸いです。

関本:ショールームに来ていただいて需要を喚起するスタイルは昔からよくあるかと思いますが、インターネットが普及して情報の取得元が多様化する中で、ショールームのスタイルは現代でもかなり有効なのでしょうか? 時代に即して何か変化しているところがあれば、そのあたりのお考えについてもお聞かせください。 

小森:やはりリアルのショールームが必要だと、私は考えています。ネットとリアルもしくはバーチャルを融合して、ベストミックスのようなことを考えていく必要もありますが、最後には実際の商品を見て、触れて、確認してもらいます。

また、これは私の持論も入っていますが、お客さまの好みは千差万別です。そして、例えば「リフォームをしよう」と考えた時に、お客さまのご自宅のサイズや形は一つひとつすべて異なります。そのような情報をキャッチすることはホームページでもできますが、人を介して、きちんと変換していく作業が必要になります。

これらを踏まえると、やはりショールームは必要だと思っています。

関本:実物を見て感覚をわかってもらった上で、一対一の対応でどのように使っていくかなどもきちんと伝えることがベストだとお考えなのですね。

小森:おっしゃるとおりです。

水回り市場の動向

小森:取組み施策についてご説明します。まずは当社を取り巻く水回り市場の動向です。住宅設備機器メーカーとして、新設住宅着工戸数は非常に重要な指標となっています。

スライドの黄色の折れ線グラフが、新設住宅着工戸数です。人口および世帯数の減少を背景として、1990年の167万戸をピークに、直近の2023年は80万戸、2024年は79万戸と、当時からするとおよそ半減している状況です。

一方、棒グラフは当社の売上高を示しています。新築が減少する中でも、基本的には当社の売上高は右肩上がりに増加し、同期間では約2.5倍に拡大しています。これは特に新築マンションの需要をしっかり確保できているとともに、豊富にある既存住宅のリフォーム需要を取り込めている結果であると考えています。

今後も成長していくためには、新築市場が縮小傾向となる中でも高シェアを維持するとともに、豊富な住宅ストックを背景とするリフォーム市場での需要獲得が重要となっていきます。

中期経営計画2026の概要 (2024年5月公表)

小森:このような市場環境の中、当社は「中期経営計画2026」を昨年5月に公表しています。前中計では資材・エネルギー価格高騰の影響などにより、稼ぐ力の改革が道半ばとなっていました。

そのため、今回は「変革への再挑戦」をテーマに、長期ビジョンである「ホーローと共に、光り輝く魅力ある企業へ」の実現に向けて、「収益力強化」と「持続的成長を実現する基盤構築」に取り組んでいます。2030年度の数値目標を設定した上で、その実現に向けた3ヶ年の計画を設定しています。

2026年度の財務目標に関しては、売上高2,500億円、営業利益200億円、ROE7パーセントを計画しています。

関本:中期経営計画の利益率についてうかがいます。昔の業績を拝見すると、2014年3月期には9パーセントくらいの営業利益率が出ていました。一方、その後は5パーセント、6パーセントくらいで推移しており、今回の中期経営計画の目標でも2026年に8パーセント、2030年に10パーセントを掲げています。

そもそも過去になぜ利益率が下がったのか、そして直近の四半期では回復してきていますが、今後どのように改善させていくのかについて考えをお聞かせください。

小森:2014年3月期の営業利益は166億円でしたが、これはちょうど消費税率が8パーセントに上がった年となります。つまり、いわゆる「駆け込み需要」があったということです。正直に言うと、我々の営業利益が非常に好調な時は「特需」とは言えないまでも、何かしらの駆け込み需要などが背景にあります。

直近では、コロナ禍によりサプライチェーンは寸断したものの、巣ごもり需要によって住宅をきれいに直すというトレンドがありました。そのような需要をきちんとキャッチできたことは、評価できると思います。

しかし逆に言えば、そのような時だからこそ営業利益額も率も上がっていたわけであり、直近では、持続的に利益水準を上げていくことがなかなかできていませんでした。その点は反省しており、現在いろいろな体質強化を図っているところです。DXを駆使した効率化や商品力の強化も現在進行中で、それが今回の中期経営計画の内容となっています。

関本:全方面でビジネスの効率性を高めていくことも含めて、利益率の上昇を図っていくということですね。どうしても住宅を買ったり建てたりする時に需要が発生しやすいとなると、高価な買い物ですので、消費税の影響を受けることも実際にはあるのでしょうか?

小森:おっしゃるとおり、そのようなこともあります。ただし、その状態をブレイクスルーしていくことが我々の足元の課題だと認識しています。

商品力の強化(既存事業の持続的成長)

小森:中期経営計画の施策も含めて、これから特に注力すべき施策についてご説明します。

まずは、メーカーの根幹となる商品力の強化です。ホーローは本来ツヤのあるのガラス質の表面ですが、デザイン性のさらなる向上を図るため、現在のトレンドに合わせてあえてマットに仕上げたホーローを近年発売しました。

それと併せて、世界初となるホーローの3Dインクジェット印刷技術を開発し、多彩な柄が出せるようになっています。これにより、木目調などのさまざまな色柄をリアルに再現できることから、ホーローの新たな可能性が広がったと言えると思います。

また、レンジフードも自社で製造しています。2023年には、10年間お手入れが不要なホーロー製の「キープクリーンフード」を発売するなど、取組みを推進しています。さらに、当社は新築マンションのキッチンは高シェアである一方、浴室は後発のため、今後のシェア拡大に向けた専用シリーズを発売しています。

このような事例も含めて、継続的に商品力の強化に努め、リフォーム需要の獲得および新築市場での売上確保を実現していきます。

関本:マット仕上げや色柄のホーローなど、より付加価値の高い製品を開発しているのは、商品力の強化がどのようなところにつながってくると認識しているからですか?

小森:今のトレンドをきちんとキャッチして、それをホーローで実現していくことが付加価値につながると思っています。そのため、我々は技術力をどんどん上げながら、それを商品に落とし込んでいきます。このような取組みが需要喚起にもつながりますし、結果として売上や利益にもつながればよいという思いで、現在はいろいろな面での強化を図っています。

関本:どうしたらお客さまが気に入ってくれるのかを考えると、ラインナップは幅広く持っておいたほうがよいですし、そのために時代に合わせた商品を開発しているということですね。

飯村美樹氏(以下、飯村):白くてツヤツヤなものがホーローという印象でしたので、本日の資料を見て「今はこんな商品があるのか」と驚きました。このような新たな取組みはいつ頃から始めたのでしょうか?

小森:10年ほど前に技術を開発しました。鉄板の上にインクジェットで印刷を施すのは非常にハードルが高い技術ですので、製品化までに数年かかりましたが、なんとか実現することができました。現在、色柄に関してはかなりリアルに表現できています。

今おっしゃったような「ホーローはツヤツヤだからマットなんて無理だ」という前提を、我々は技術でクリアしていきました。その理由は、マットの要望が非常に多かったからです。このようなことも、我々の技術革新の中でできるようになってきています。

飯村:業界の方は、けっこう驚かれたのではないですか?

小森:そのとおりです。我々は、現在海外展開にも力を入れていますが、海外のお客さまの中でホーローを知っている方はほとんどいません。非常に優れた素材であることに加えて、リアルに表現したマット仕上げができることにも大変好評をいただいています。

関本:浴室は、高いシェアを占めるシステムキッチンと比べると差があるということですが、この差は何になりますか? 知名度の問題があるのでしょうか? また、浴室のシェア向上のための施策はありますか?

小森:キッチンで高いシェアを占めているのは、新築分譲マンションにおけるキッチンのシェアが確保されているからです。一方で、新築分譲マンションの浴室に関して我々は後発になりますので、今までの取り組みや製品化も含めて遅れていました。したがって、その部分で若干の差が出ています。

ただしリフォームに関しては、キッチンも浴室も昔から強化して取り組んでいます。しかしながら、シェアの差で見ると、浴室はまだまだ事業領域として隙間がたくさんあります。

関本:それでは、商品の拡充やより積極的に分譲マンションの選択肢に入ることができれば、市場シェアを伸ばせるはずだということでしょうか? 

小森:おっしゃるとおりです。

リフォームの取組み強化 (既存事業の持続的成長)

小森:潜在需要が期待されるリフォーム市場への取組みとしては、取引先や施工業者に向けた拠点を整備しているところです。

東京にはマンションリフォーム専用の研修施設「東京MRe. 墨田テクニカルベース」を開設し、横浜と大阪にはリフォームの施工方法を学べる「トレーニングベース」を開設しています。社外の業者との協力体制をしっかりと構築しながら、リフォーム需要の掘り起こしと取組みに努めていきます。

関本:新築とリフォームの市場性は、やはり明確に異なるのでしょうか? リフォームを伸ばすには何が必要なのかについて、考え方を教えてください。 

小森:新築はディベロッパーやハウスメーカーを介して製品を届けるBtoBtoCの世界となります。したがって、企業から要望をいただきながら、我々が求められる製品を世に送り出してきました。

リフォームに関しては、単に取り替えるだけではなく生活を豊かにするためなど、ユーザーによってさまざまな理由があります。そのため、ユーザーのニーズをしっかりとキャッチして商品化する必要があり、当然ながら価格帯も幅広くなければいけません。

ユーザーがリフォームで求めているものをよりキャッチした上で、ホーローがよいのか、ほかの素材がよいのかなどをミックスさせながら、商品開発すべきだと思っています。そのような意味から、商品力をさらに上げる必要があると考えています。

関本:確かに、新築であればラインナップがたくさんあり、ユーザーがそこから選ぶかたちになります。しかしリフォームは、ユーザーが「ここを変えたい」と思ったニーズに合う商品が見つかるかどうかが重要になるということですね。

小森:おっしゃるとおりです。

海外事業の基盤構築 (新規売上拡大)

小森:海外事業についてです。国内市場がシュリンクする中、さらなる成長に向けて、海外事業での売上拡大も重要だと考えています。長期的には、日系キッチンブランドの“グローバルトップリーダー”を目指したいと考えており、まずはアジアでの展開を図っているところです。

アジアをターゲットにする理由として、ホーローは腐食に非常に強いため、高温多湿な国が多いアジアでの潜在的な需要がとても高いと想定していることが挙げられます。まずは現状の10億円強の海外売上高を、2030年までに100億円にする計画を立てています。

現在は、販売代理店網の構築・拡大や、認知度の強化・向上を目的とする展示会への出店などに取組んでいます。

関本:2030年度に売上高2,700億円、そのうち海外売上高は100億円を目指すというお話がありました。国内の売上高を考えると2,500億円が既存事業で目指せる数字であり、2,700億円以上を目指すとなると、やはり海外売上を伸ばす必要があると思います。このあたりについてはどのようにお考えでしょうか?

小森:2030年度の売上高目標は2,700億円で、このうちの100億円が海外売上高になります。

一方で「国内は100億円しか伸びないのか」と疑問に思われるかもしれません。実は、国内市場がどのくらいシュリンクするかについては、かなりの危険度を持って見ています。開示している数字では小さく見えますが、当然ながら国内売上も伸ばしていきたいと考えています。

先ほどお話ししたリフォームもシェアはまだ10パーセント台であり、システムバスは3番手です。したがって、まだまだすべきことはあります。しかし、国内市場においては決して悲観する必要はないということで、慎重に見ています。

とは言え、やはり海外売上は伸ばしていきたいと思いますので、今は売上高100億円を目標に計画も含めて進めています。

関本:海外事業についてもう1つ教えてください。やはり投資家からすると、利益面が気になります。単価の違いなどがある中で、海外事業の収益性はどのようになっていますか?  

小森:海外事業の主な製品は、ホーローのシステムキッチンになります。我々の中でもハイエンドな製品に的を絞っているため、収益性は非常に高いです。

関本:現地の富裕層などを中心に販売していくイメージでしょうか?

小森:おっしゃるとおりです。ハイエンドに的を絞り、ブランディングも含めて取り組んでいます。

関本:これらを踏まえた上で、2026年度の売上高2,500億円、営業利益率8パーセント、2030年度の売上高2,700億円、営業利益率10パーセントという目標を達成するために、現時点で明確に見えているボトルネックは何になりますか? 採用が必要になるのか、それとも、そもそもマクロ需要がうまく動いていなければいけないのでしょうか?

小森:マクロ的に見ると、おそらく市場が急激に冷え込むことはないと思います。したがって、市場の急激な変化はないと思っています。

当然ながら、我々も人口減少による外的要因は織り込んでいます。しかし、どちらかというと当社自身にボトルネックがあると思っています。要するに、計画どおりに革新的にいろいろなものを進めていけるかどうかということです。

前回の中期経営計画では、供給責任を果たすために改革よりも供給を進め、それゆえに遅れた部分もありました。ですので、先ほどお伝えしたように、売上計画を少し抑えめかつ慎重にしている部分があります。

関本:社内体制の変革も成し遂げるということですか? 

小森:その部分が一番重要であると思っています。例えば、工場の技術革新やオートメーション化は、今もどんどん進めています。しかし、再編も含めてさらにもう一段進めていかなければいけません。DXに関しても、仕事の仕方から変えていかなければ、デジタル技術を使いこなすことはできないと考えています。

2025年3月期 業績予想

小森:足元の業績と株主還元に関してご説明します。2024年3月期の売上高は2,347億円、営業利益は124億円でした。進行期である2025年3月期の売上高は2,391億円、営業利益は145億円を予想しています。

売上高は、2022年3月期から3期連続で過去最高を達成しており、今期もその更新を目指しています。営業利益に関しては、近年は主に資材価格の高騰により停滞気味でしたが、コストダウンや価格改定などの対応も進んだことで、今期も増益を目指しています。

2025年3月期 第3四半期 経営成績

小森:進行期の2025年3月期は第3四半期まで終了していますが、売上高、営業利益ともに順調に進捗しています。特に営業利益は、前年同期比20.1パーセント増と堅調に伸びています。通期予想の達成に向けて、引き続き各施策を進めていきます。

株主還元の状況

小森:株主還元についてです。2025年3月期の配当は、中間で28円、期末で28円の年間56円と、3期連続の増配を予定しています。また、3期連続の自己株式取得も予定しています。今期は自己株式20億円を上限とする取得を実施しており、2月15日時点で約19億円をすでに取得しています。

増配と自己株式取得を合わせた総還元性向は、60パーセント水準を見込んでいます。

株主還元方針と株価の状況

小森:当社の株主還元方針と、足元の株価の状況についてお話しします。

配当に関しては、従前から安定配当を実施し、近年は増配傾向で推移しています。また、現在まで33期連続で減配していません。これは当社の大きな特徴であり、株主さまへ安定的に還元している会社であるとご認識いただければ幸いです。

さらに、今期からは配当性向を40パーセント水準として利益成長に伴う累進配当にしたことで、配当をより強化しました。自己株式取得については、資本構成に応じて機動的に実施していく考えです。

スライドのグラフは、過去2年間における株価の推移を示しています。2年前の株価水準からは上昇しているものの、足元では低迷しています。

一方、先ほどのスライドでご説明したように増配は継続しており、2024年12月30日時点の配当利回りは約3.3パーセントとなっています。今後の業績については、2026年度と2030年度の各業績目標に向けて、特に利益面で拡大させていく予定です。

このような利益成長に加え、株主還元の充実を図りながら株価をしっかりと上昇させていくことで、みなさまに長く株式を保有していただける会社を目指していきたいと考えています。

関本:株主還元に関連して、御社の貸借対照表について教えてください。総還元性向が非常に高いということで、投資家にとってはとてもありがたく思います。

一方で、現金という部分を見た時に、負債がない中でネットキャッシュがあったり、ショールームなどを含めて在庫などのアセットは一定程度持っていなければならかなかったりする状況もあるかと思います。

それらを踏まえると、御社にとってどのぐらいの現金が必要なのでしょうか? また、レバレッジをかけることでROEを向上させていくのでしょうか? このあたりの財務についてどのようにお考えでしょうか? 

小森:まずはROEについて、我々はこれまで非常にP/Lに偏重した経営を行っており、今は反省しています。もう少しB/Sを意識した経営に転換していく必要があるということが、現在の課題でもあります。

当然ながら、現在のROE水準は満足のいくものではありません。まずは8パーセントを早く実現することが、我々の課題であると考えています。ROEの分母と分子のバランスをよくするために、自己株式取得や株主還元を強化しており、今後は520億円ほどかけて成長投資をする予定です。

我々は、これらをよりスピード感を持って、より機動的に取り組んでいかなければならないと考えています。財務戦略を含めて今がベストな状態であるとは思っていないため、私自身はしっかりと本格的に市場と向き合っていくことを決意しています。プライム市場としてあるべきバリュエーションを達成したいと考えています。

そのような中での財務戦略で言えば、今後はおそらく投資やM&Aなどのタイミングがあり、資金需要は非常に変化してくる可能性があります。したがって、これまでのキャッシュを上手に使いながら、借り入れのバランスなども含めて取り組んでいかなければいけません。

また、現金水準に関しても、レバレッジをかけるかたちも考えていく必要があると思います。今後の成長戦略とともに、そのような部分が変化していくということをご理解いただければと思います。

キャラクターとのコラボレーション

小森:直近のトピックスをご紹介します。まずは、キャラクターとのコラボレーション商品についてです。

近年、インテリアのトレンドの中心である北欧風と親和性の高い「ムーミン」とコラボレーションしたキッチンパネルや、ホーローの内装材を発売しています。「ムーミン」は幅広い年齢層のファンが非常に多いキャラクターです。先方のブランドイメージや我々の企業認知を向上させることで、新規ユーザーの獲得を図っていきたいと考えています。

今回のコラボレーションにはもう1つ狙いがあります。それは、キャラクターを用いたキッチンパネルの取り扱いは我々が初めてだということです。ホーローの耐久性が優れているからこそ、キャラクターが傷つかず剥がれないため、汚れやすいキッチンの壁面パネルにキャラクターを採用することができました。

ブランドイメージにも関わりますので、キャラクターをキッチンパネルに使うことは審査も含めてかなり厳しいです。今回のコラボレーションを契機に、ホーロー製品のさらなる拡販とイメージの変化に努めていきたいと思っています。

アーティストとのコラボレーション

小森:アーティストとのコラボレーションについてです。当社は、アーティスト支援による社会貢献活動と「高品位ホーロー」の新たな価値創造を目的として、2022年8月に「ホーロー×アートプロジェクト」を発足しました。

最近では、現代美術作家のヤノベケンジ氏とコラボレーションし、ヤノベ氏の代表作である「シップス・キャット」をモチーフにした鏡「SHIP’S CAT(Mirror)」を限定発売しています。現在、ヤノベ氏の新作アート作品がGINZA SIXに展示されていますので、機会がありましたらぜひご覧いただければと思います。

また、現代美術作家の川田知志氏とコラボレーションし、「大阪アート&デザイン2024」に初出展しました。このように、アーティストとのコラボレーションを通じて、ホーローの魅力を伝える取り組みを積極的に行っています。

ブランディング展開

小森:ほかにも、ブランディング強化に向けたさまざまな取り組みを行っています。その一環として、テレビCMを強化しています。5年前からは女優の土屋太鳳さんにイメージキャラクターをご担当いただき、当社のブランド力向上に貢献いただいています。

また、まもなく開催される「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)」では、ステージの左右に配置される楽屋や倉庫棟の外壁建材、トイレの内装などに、ホーロー壁装材「エマウォール」を提供しています。

社会への貢献

小森:社会貢献活動として、未来の担い手である子どもにフォーカスを当てた取り組みを多数行っています。最近では、児童養護施設のキッチンリフォーム支援を行いました。今後は、こども食堂へキッチンの寄付を計画しています。

今後も、当社の企業価値向上のために取り組みを推進していきたいと考えています。

ESGの取組み

小森:サステナブルな社会の実現に向け、ESGにも取り組んでいます。事業を通じた環境への対応や、次世代を担う子どもたちへの支援など、さまざまな取り組みを実施しています。

本日すべてを紹介することはできませんが、ホームページに詳細を公開していますので、ぜひご覧ください。

本日のまとめ

小森:スライドには本日のまとめを記載していますので、あらためてご確認いただければ幸いです。以上でご説明を終わります。ご視聴ありがとうございました。

質疑応答:ストック型ビジネスについて

飯村:「販売以外で、保守やメンテナンスなどのストック型ビジネスはあるのでしょうか?」というご質問です。 

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