第1部 2025年4月期 第2四半期決算概況

菅原雅史氏(以下、菅原):みなさま、こんにちは。インスペック株式会社代表取締役社長の菅原です。これから、2025年4月期第2四半期決算説明会をスタートします。

第1部で2025年4月期第2四半期の決算概況、第2部で今後の成長戦略についてご説明します。

会社概要(2024年10月31日現在)

まず、簡単に会社の概要をご説明します。本社は秋田県仙北市角館町にあります。桜の名所で有名な観光地で、毎年たくさんの観光客が訪れます。

当社は現在、東京証券取引所スタンダード市場に上場しており、主な事業として電子回路基板の外観検査装置及び製造装置の開発・製造・販売・サービスを一貫して行っています。社員は84名です。

インスペックの特徴を一言で表すと、「超ハイエンドの精密電子基板外観検査装置で、グローバルニッチトップ」という表現になります。現在、主力製品の半導体パッケージ基板の分野で、ハイスペックな検査装置を提供している会社は世界で3社だけで、当社はそのうちの1社となります。

2025年4月期第2四半期 業績ハイライト

業績について説明します。まず、上半期の売上高10億500万円、営業利益100万円、経常利益1,300万円、当期純利益1,000万円ということで、黒字を確保できています。

例年、お客さまの年度予算の関係で、期初に受注をいただいたものを下半期に納入し、売上が第3四半期、第4四半期に計上という傾向が続いていましたが、今期は上半期に順調に売上が計上できて、上半期黒字確保という結果となりました。

受注高及び売上高推移

こちらは、受注高及び売上高推移のグラフです。今期は納入が順調に進んだことで、前期に比べて受注残の数字が積み上がっていませんが、現在受注が順調に推移しており、商談も非常に活発化しています。したがって、この下半期に受注が随時積み上がっていくと予想しています。

製品別売上高

製品別の売上高についてご説明します。当期は前期、前々期と大きく異なっていますが、最も大きな要因は、当社の分類でいうと半導体パッケージ基板向け、フラットベッド型検査装置の売上が上半期に非常に伸びているためです。

後ほども触れますが、生成AIの処理のための半導体、主にデータセンター向けの半導体需要が急速に伸びており、そのような分野に対応するお客さまへの売上が大きく増加しています。

それに加えて、過去2年間、スマートフォンの成長が若干停滞気味だったのですが、これもまた生成AIが一気に普及してきたため、今後スマートフォンに生成AI機能が搭載されることが各社で発表されています。

それに伴い、今まで買い控えをしていた世界のユーザーによる買い替えが一気に進むだろうという予測の下、スマートフォンの上位企業は増産計画を進めており、それに対応するための検査装置の受注及び売上が増えています。

この当社の2本柱が、今非常に大きな成長の変化点にあると見ており、この上半期の状況が引き続き下半期、さらには来年、再来年と継続していくだろうと見ています。

要約貸借対照表

貸借対照表です。売上が順調に推移したことで仕掛品が減少しており、資産の部にその結果が表れています。

一方、負債の部ですが、短期借入金、長期借入金とも返済が進んでいます。これは年間の資金計画に基づいて、ほぼ計画どおりに進んでいる結果となります。

要約キャッシュ・フロー計算書

キャッシュ・フロー計算書についてです。有形固定資産取得という項目で6,200万円を計上していますが、これは国の「Go-Tech(ゴーテック)事業」という補助金制度を使った次世代向けの装置の開発が進んできており、有形固定資産に計上となっているという内容です。

スライド右側の表のとおり、期首の現金及び現金同等物残高から期末の現金及び現金同等物残高は若干数字としては減っていますが、残高として5億円台が計上されており、資金面についてもまったく問題ないという状況です。

研究開発費

研究開発費についてご説明します。半導体パッケージ基板は現在、需要が非常に伸びており、同時に大きな技術革新を求められています。より高速で、より高密度な半導体が作られ、それに伴って半導体パッケージ基板も、今までと違う次元の性能の向上が求められています。

そのような大きな技術革新のただ中にあり、課題として、検査性能の高度化、検査速度の高速化、さらに配線パターンが2ミクロン・1.5ミクロン・1ミクロンというような、非常に微細な配線をクリアにカメラで映して検査しなくてはならず、光学系の開発も非常に高いハードルになっています。

これに加えて、それだけの微細な配線で100パーセント良品を作るということが極めて難しくなっているという背景があり、どうしても不良品が出てしまう状況です。その中で、特に不良として多く発生するのが、配線と隣の配線がくっついてしまう、いわゆるショートするという欠陥です。

ショートした欠陥部位について、非常に精密なレーザー加工機を使って修正する装置が求められています。今後は検査装置とともに、我々が「リペア装置」と呼んでいる装置がセットで求められる状況が急浮上してきています。2、3年前から話はありましたが、今後はおそらくセットで注文をいただくことになります。

それを想定して、当社も1年以上前からその開発を進めてきました。先ほどGo-Tech事業に触れましたが、国の補助金制度の支援を得て、次世代の1ミクロンレベルの配線パターンを修正できる装置も並行して開発しています。

そのようなこともあり、今期の上半期は、基板検査装置事業に1億2,800万円の研究開発費が投じられています。

露光装置については、以前から取り組んでいた電気自動車向けの長尺シームレスの露光装置が、開発そのものは完了し市場で販売活動を継続していますが、電気自動車(EV)の市場が現在低迷しているというのはご承知のとおりです。その結果、お客さまの新規の設備投資がなかなか進んでいないため、そちらについては動きがあまりないという状況です。

一方で、その露光装置の基本技術を活かして、昨年からファインパターンを持つ精密なフレキシブル基板の露光装置を開発していましたが、今非常に良いかたちでファインパターンの露光ができるシステムができあがってきています。大手の電子部品メーカーのご協力を得て、これを実績として上げるべく、今全力を挙げて取り組んでいます。

15ミクロンというフレキシブル基板の分野では最もファインなパターンまで対応できるため、非常に大きな市場をターゲットに新たな事業として取り組むべく、開発に全力を挙げて取り組んでいます。

2025年4月期 通期業績予想

通期の業績予想についてご説明します。

上半期の業績ハイライトでご説明したとおり、受注及び商談が非常に活発化している状況があります。このような背景を踏まえ、今期の売上高を含む業績予想については十分達成可能であると考えています。

例年ご説明しているとおり、最近は装置の単価が非常に高騰しており、1台当たりの製品価格が1億円を超えるものも増えてきています。

このような状況から、4月に計上できる売上や5月に計上を予定している売上が、多少前倒しまたは後ろ倒しになる可能性があります。

当社としては、このような可能性を考慮しながら、今回発表した数字を達成するべく取り組んでいきます。

Vision 2030

今後の成長戦略についてご説明します。基板検査装置事業は、半導体パッケージ基板向け検査装置と、精密なフレキシブル基板向けのロールtoロール型検査装置の2本柱をベースに取り組んでいきます。

ロールtoロール型のフレキシブル基板向け検査装置は、生成AIがスマートフォンに実装されるという今後の計画に基づいて、今まで買い控えや更新をためらってきた世界中のスマートフォンユーザーが、おそらく今後積極的に買い替えていく需要が新たに生まれてくることが予想されるため、ここ2、3年あまり伸びがなかったスマートフォンの市場が大きく動くだろうと見ています。

当社のロールtoロール型検査装置についても、今年の夏あたりから、増産投資計画の話が出始めています。このような計画が下半期からさらに進み、来年以降には具体的に動き出すだろうと予想しています。1つの柱が成長していく可能性が高くなっていると言えます。

半導体パッケージ基板向け検査装置についても、生成AIのデータセンターの積極的な投資はこれからも続くとさまざまな場で言われています。まずは、この検査装置の2本柱を成長の原動力としていきます。

露光装置事業においては、先ほどご説明した自動車向けの露光装置をベースに、フレキシブル基板のファインパターンまで対応可能な露光装置の開発を新たに進めてきました。

当社は最後発になりますが、遅れを乗り越えて、最もスピードの速い露光装置を実現することを前提に取り組んでいます。実際に、テスト露光においてそのようなスペックを実現してきているところです。

今後の1つの大きい柱になりうる製品であると考えているため、こうした露光装置を早急に市場に出せるように全力を挙げて取り組んでいきます。

「Vision 2030」のゴールに向けた取り組みとして、当社が持っている光学センシング技術、高速な画像処理技術、メカトロ技術といった技術に加え、海外の代理店との連携で、販売のネットワークも以前と比べて大幅に拡大しています。

このような当社の資産を活かし、シナジーを発揮できるような企業とのM&Aに積極的に取り組んでいくため、現在、取引先の金融機関またはM&Aのコンサルタント会社を含め、広く情報提供を求めています。

現在、社会的課題でもある後継者不足を抱えている会社の中にも、優れた会社が存在しています。今後はそのような会社ともうまく縁がつながるように取り組んでいきます。

半導体市場の見通し

大きな原動力の1つである半導体市場ですが、データセンター向けの半導体の需要が非常に増えているという話はすでにお話ししました。その中で、どのようなことが起きているのか、少し触れたいと思います。

市場の成長性

今、生成AIの処理をする半導体は、非常に高い機能が求められており、1つのシリコンチップですべての機能を満たすことが非常に難しくなりつつあります。

機能ごとにシリコンチップを分けて作り、それを高機能の半導体パッケージ基板に並べて使う技術を「チップレット」という名前で呼んでいます。

シリコンチップ間で電気信号をやり取りしなくてはいけないため、非常に微細かつ高速な信号のやり取りが求められています。それがこれまでの説明の中で触れた2ミクロンや1ミクロンのパターンが求められる理由です。

さらに、サイズの大型化に伴い、半導体として機能させるために、今まではシリコンチップ1個に詰め込んでいたことが、分割して役割分担しながら処理することで、パッケージ基板が半導体の機能の一部そのものになり、非常に重要な役割を担っていくことになります。

このような非常に高性能な半導体パッケージ基板は、今後量産されていきます。そのため、検査装置も、ハイスペックなものを準備しなくてはいけない状況になっています。

成長戦略実現に向けた取り組み

スライド右側の写真はガラスで作った基板で、2ミクロン、または1ミクロンの配線パターンがびっしりと形成された半導体パッケージ基板の製造工程の一部です。

これはインターネット上に公開されており、みなさまもご覧になれます。インテルは、このガラス基板の生産ライン構築に向けて非常に大きな投資を行い、試作を進めています。

今後このような基板が普及してくると、検査装置もこれに対応していく必要があります。当社は、すでに2ミクロン、または1.5ミクロンのパターンを検査できるデモ用装置を準備しており、さまざまなお客さまから試作基板のテスト依頼が増えてきています。

このように先手を打ち、これらの基板が量産される際には、対応する検査装置を用意するかたちで貢献できるように継続して取り組んでいきます。

成長戦略実現に向けた取り組み

成長戦略のうち、露光装置事業についてご説明します。電気自動車向けについては先ほど触れたとおりで、フレキシブル基板向けに開発を進めており、「L/S=15/15ミクロン」は現在の全フレキシブル基板業界で作られているほぼすべての製品に対応できる性能になります。

資料には「L/S=30/30ミクロン」と書いてありますが、すでに15ミクロンの装置についても取り組んでいます。したがって、フレキシブル基板分野は、基板分野の中で今後最も成長率が高いと言われている基板のため、そこにしっかりと対応していく取り組みになりますので、いずれ当社の成長における1つの大きな柱にしていく覚悟を持って進めているところです。

成長戦略実現に向けた取り組み

現在、当社製品は電気自動車向けの検査装置が一部入っているものの、ほぼ全数がエレクトロニクス分野の製品です。そして、製造地域はアジアに集中しています。

現在、当社の売上高比率は日本国内が7割から8割、海外が2割から3割というところです。今後はアジア地域、特に東南アジアが大きく伸びていくであろうことから、さまざまな海外メーカーや中国の有力企業の工場が東南アジアに進出しています。

このような動きは、みなさまもすでにご存じかと思います。そのようなところをターゲットに、国内外の展示会へ積極的に参加しています。加えて、海外代理店と連携し、しっかりとしたサポート体制を作り、アジア地域での販売を強化することにより、早期に全売上高の半分以上が海外市場というかたちまで伸ばしていきたいと考えています。

質疑応答:ファインパターンのエレクトロニクス市場向け高性能露光装置の市場投入時期について

司会者:「ファインパターンのエレクトロニクス市場向け高性能露光装置の開発について、全力を挙げて取り組んでいるとのことでしたが、市場投入の時期を教えてください」というご質問です。

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