日本ヒュームグループの事業概要

増渕智之氏:代表取締役社長の増渕です。本日はご多用の中、日本ヒューム株式会社の決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。初めてご参加された方もいらっしゃるようですので、初めに、当社の事業概要について簡単にご説明します。

一言で言いますと、コンクリート製品屋、コンクリート工事屋となります。来年で創業100年を迎えます。

1925年に、遠心成形によるコンクリート管の製造特許を海外より取得しました。通称ヒューム管と呼ばれている『ドラえもん』の空き地に出てくるようなパイプで、日本の衛生環境を良くしようというミッションで始まった会社です。

創業から99年経ち、現在は下水道関連事業と基礎事業の大きく2つの事業を行っています。もう少し掘り下げると、スライドに記載の7つに分類できます。

1つ目は下水道関連事業で、こちらは主に下水道や雨水対策に用いられる創業以来のビジネスです。ヒューム管の製造・販売から、昨今問題視されている老朽化などに対する管の更生、リペアです。昨年も11月1日に、岸田前首相の命を受けて行われた上下水道施設の耐震化状況についての調査内容が発表されているところですが、下水道管の耐震化工事などコンクリートパイプに関するワンストップサービスを提供しています。

2つ目は基礎事業です。コンクリートパイルの設計・製造・販売・施工で、こちらもワンストップサービスを手がけています。

3つ目は事業セグメントとしては下水道関連事業の中に含めていますが、プレキャスト事業になります。ヒューム管もコンクリートパイルも、工場で製造しているという意味ではプレキャスト製品に入るのかもしれませんが、遠心成形によらないコンクリート製品ということで、プレキャスト事業として区分しています。

建設従事者不足や建設現場の生産性向上が期待される中で、当社としても注力している分野です。主に橋梁の基礎に用いられる「PCウェル」という基礎部材や、高速道路の更新工事などに用いられる壁高欄、トンネルや通信ケーブル、ガス管などを、地中に敷設するために作られた地下のパイプに用いるRCセグメントなどが代表的なものになります。

建設従事者が不足する中で、場所打ちや現場打ちと呼ばれるものに比べて生産性が上がるものについては、プレキャストが今後も期待される分野です。

4つ目は、3つのコンクリート製品事業に関係します。鉄筋コンクリートとも呼ばれるように、鉄は不可欠です。そのような鉄部材の内製化や、技術開発をスピードアップするという点で、金具や骨組みを成す鉄筋カゴといった鉄部材について、グループ会社で手がけている鉄工・鉄筋の分野があります。

5つ目はその他事業と記載していますが、下水道工事に使う機材のレンタルも行っています。

6つ目は、保有している不動産を活用した不動産事業や、工場跡地を利用した太陽光発電事業です。

7つ目は分野が変わり、オゾン脱臭技術を用いた環境・浄化システム(コンサルティング)です。このように、空気の臭いを取るなどの事業も手がけています。

①連結損益計算書

11月8日に発表した決算短信のとおりですが、売上高は前年同期と比べると約30パーセント増加の約189億円、営業利益は前年同期比で大きく改善し、約14億7,000万円となりました。経常利益と中間純利益は、それぞれ約25億円、約20億8,000万円と、こちらも前年同期比で大幅な増益となりました。

当社は来年創業100周年になりますが、中期経営計画の「23-27計画R」を中間点として、200年企業に向かうための構造改革という位置づけで取り組んでいます。中期経営計画2年目の上半期としては、良い形で着地できたと思っています。

②連結貸借対照表

連結貸借対照表です。スライドに記載したとおり、引き続き健全な財務状態を保っています。 トピックとしては、すでに公表したとおり、前半期に自己株式60万株を7億2,900万円で取得しました。

③2024年度上期 業績総括(連結)

事業セグメント別の業績についてご説明します。基礎事業と下水道関連事業は、ともに前年同期比で大幅に増収増益となりました。

基礎事業については、全国需要は前年同期を下回る状況でしたが、当社は中期経営計画で推進する組織営業体制強化の結果が出始めたと考えています。売上高は前年同期比34.4パーセント増の約126億円、営業利益は工事原価をよりきめ細かく管理したことで、工事利益の改善が行われ、前年同期比274.2パーセント増加の約12億円となりました。

下水道関連事業については、深いところや、高内圧管といわれるパイプの中に雨水がいっぱいになり内側から圧力がかかっても耐えられるような環境で用いられる、高付加価値製品である合成鋼管の設計スペックによる出荷などにより、売上高は前年同期比33.7パーセント増加の約55億円、営業利益は約倍増の8億8,100万円と伸ばすことができました。

2024年度(通期)業績予想

通期の業績予想は、上半期の結果を踏まえて上方修正を発表しました。売上高は期初の発表のとおりですが、前期に比べると30億円ほど拡大し370億円になりました。売価の改善やコスト改善などが進んだことから、営業利益は2億円増加の19億円、経常利益は4億円増加の30億円、当期純利益は6億円増加の26億円の見通しです。

事業戦略200年企業の基盤構築(構造改革)の進捗

中期経営計画における、上半期の部門別の取り組み状況についてご説明します。営業部門については、昨年12月にデータに基づいた組織営業に取り組もうということで、顧客管理を軸とする営業支援システム、いわゆるSFAやCRMのシステムを導入しています。

上半期は、人脈情報のデータベース化を完了したところです。当社が携わる建設建材業の分野は、非常に差別化しにくい製品もあります。どの産業においても人脈は大切な財産だと思いますが、可視化することでチーム一丸となって営業活動を行い、強みをさらに伸ばし、弱みを補っていく組織営業体制の強化を進めました。

それぞれの営業案件の活動状況も、データ化しています。例えば進捗が遅れがちの案件についても、チームワークでフォローできる体制の構築を進めたところです。しかし、価値を生むのは人であるため、データに基づきながら各人の気づきや改善点の支援・指導を行うことで、パフォーマンスの改善を行っています。こちらは続けることが大切だと思っています。

若手の早期戦力化も大きなテーマとして取り組んでいますが、当社が手がける製品は土木において用いられることが多いわけですが、土木は経験工学と言われるように、経験が非常に重んじられます。

ベテランが持つ経験をいかに早く体験させるか、そのために、営業ロールプレイ研修に取り組んでいます。さまざまなシチュエーションを社内でロールプレイし、疑似体験をさせることで、戦力化のスピードアップを図る取り組みを行っているところです。

こうした総合力が、直接的あるいは間接的に業績につながってくると考えており、上半期の業績にかんがみると、これらが徐々にかみ合ってきている手応えを感じています。

事業戦略200年企業の基盤構築(構造改革)の進捗

技術部門についてご説明します。受注を増やすためには、設計提案を増やすことが不可欠です。DX化と言いますと大げさですが、そのためのスピードアップを目的とした設計ソフトの開発・改善を進めています。

都市の再開発や狭い土地での基礎工事において競争力の高い工法として、「PCウェル工法」を持っていますが、そちらの設計ソフトの改良を完了し、80パーセントの時間短縮を実現しました。

創出した時間は、さらに別の案件の「PCウェル」の設計・提案をする活動に使ったり、あるいは別製品の案件に取りかかったりすることで、設計スペックによる受注活動の強化に取り組んでいます。

現在は、壁高欄の自動割付システムを開発中で、来年3月には完了する予定で順調に進んでいます。完成すれば、設計に関わる時間が70パーセント短縮でき、こちらについても開発したあかつきには、壁高欄の提案活動を増加させ、受注の増加につなげていく考えでいます。

また、本社に設置したプレキャスト設計センターによる、設計支援活動の強化を図っています。先ほど土木は経験工学だとお伝えしましたが、本社に蓄積してあるノウハウや経験は、人に基づくものです。難易度の高い設計を本社部門が支援することによって、受注機会を増やすと同時に、拠点の技術者の設計力の向上・育成にも取り組んでいます。

加えて、本社の人間が拠点の最前線の状況を知ることの意味が、かなり大きいのではないかと思っています。上半期の実績としては、前年同期は17件でしたが、今上半期はすでに39件の設計を支援しており、少しずつ歯車がかみ合い、活動が増えてきました。

事業戦略200年企業の基盤構築(構造改革)の進捗

技術開発投資は、来年が会社創立100周年に当たるため、「100年に間に合いました」というスローガンのもと、当期は選択と集中による事業化を加速しようということで、15件の開発を進めています。本日は、そのうち4件の開発案件についてご説明します。

1つ目が、低炭素型高機能コンクリート「e-CON」です。ようやくみなさまに良いニュースをお届けできるようになりました。後ほど、事業別戦略の中で詳しくご説明しますが、日本で初めてセメントを使わないプレキャスト製品用のコンクリートとして、建設技術審査証明という公的な証明を取得できました。

2つ目は、杭の新工法です。春の説明会では9月に取得予定とお伝えしたため若干遅れていますが、工法についてはすでに認定を取得しました。新工法で使用する杭材本体についても認定を取得する必要があり、こちらも間もなく取得できる見込みのため、年明けからの販売開始を見込んでいます。

3つ目は3Dプリンティングです。業務上の機密であり、守秘義務契約上の関係で具体的なご紹介は難しいですが、すでに複数の実案件を出荷しています。後ほど詳しくご説明します。

最後は、高耐圧対応コンクリート推進管「JIP PIPE」です。内圧管といって、管の中に水がいっぱいになって高圧がかかっても耐えられる、雨水貯留などに用いられる管になります。

メーカーとして、既存の技術も少しずつ改良を重ねて付加価値を上げていくことに取り組まなければなりません。今回も継手(パイプとパイプをつなぐ部分につけるゴム)の形状や材質などを改良することによって止水性能の向上を図っています。

事業戦略200年企業の基盤構築(構造改革)の進捗

生産部門です。先ほど「PCウェル」の設計スピードアップによる受注拡大に取り組んでいるとお伝えしましたが、「PCウェル」や大型プレキャスト製品の受注が増加していることに加えて、将来に向けた設計スペックも順調に取り込んでいるところです。

こうした製品に対応するために、主力の熊谷工場に大型の製品用研磨機を1台増設しました。スライドに掲載した写真は見づらいかもしれませんが、このように端面をきちんと平らに仕上げるための研磨機を1台増設し、2台の増産体制という設備投資をしました。

プレキャストが大型化していくと、どうしても輸送の関係で分割しなければなりません。分割したものを現場で組み立てますが、接合面がぴったりはまらないといろいろな影響が出るため、このような装置を用いて対応していこうとしています。プレキャストの受注が堅調に推移していることから、そのような設備を増強しました。

2つ目は、設備管理および品質管理のDX化です。時代として当然のシステムですが、設備の稼働状況などをデータ化し、データに基づき全体を可視化することによって、生産上のボトルネックを把握し、無理、ムラ、無駄をなくし、予防保全につなげるべく、徹底して取り組んでいます。設備管理については、設備点検表のシステムを全5工場に、配備し終えたところです。

下半期には、DX化をさらにもう少し進めようと準備しています。どうしても属人的になりがちな業務を、主要な設備にIoTセンサを取り付けることによって、予防保全を前進させていきます。

品質管理システムについては、上半期で熊谷工場への導入が完了し、これから順次他の4工場への展開を図ります。このようにDX化を通して、客観的なデータに基づき、品質管理上の効率化、コスト低減を進めていきます。

品質管理を何のためにやるのかと言えば、当然品質を向上させるためでもありますが、「いかに原価を安くして同じ品質を出すか」がメーカーの本来の役目だと思いますので、そのような姿勢で、データをもって取り組んでいきます。

安全の強化については、これはもう粛々と取り組んでいくしかないものです。私自らが5工場に赴いて、現場の社員とともに現場を巡回して、安全衛生方針の遵守状況やリスクアセスメントの状況を点検しています。これはもう継続するのみと考えています。

安全な職場を提供することによって一致団結する会社になると思っていますので、大事なのはこれを続けていくことだと思っています。

事業戦略200年企業の基盤構築(構造改革)の進捗

工事部門です。どの部門も、人があってこそすべてですが、工事においては、「人」と「安全」を抜きには語れない分野です。

人については、特に建設業界においては、人手不足という状況が続いています。当社も専門工事会社としての部分もあるため、例外ではありません。

そのような中で「どうするか」という対策として、本社の採用チーム体制を強化し、現場と連携することで、計画的に現場管理者の増員を図っています。

特にプレキャスト製品事業を拡大するには、現場の施工管理者の増員は不可欠であるため、計画に基づいて4名を採用したところです。

当たり前のことなのですが、当社の工事も、決して当社単独で行っているわけではなくて、さまざまな協力会社や、サプライヤーと協力しながら行っている中で、改善のヒントというのは、現場に多くあります。

そこで昨年から、「協力会社の声にしっかり向き合っていこうじゃないか」という方針を立て、全国工事協力合同会議というものを開催して、現場のニーズを汲み取って、それらを工法の開発や改善などにつなげる活動を行っています。

工事のDX化については、省力化、効率化という点で不可欠です。施策として、昨年全国展開したICT施工管理システム「Pile-ViMSys」に新機能を追加しました。

詳細は後ほどご説明しますが、「Pile-ViMSys」の導入により、施工管理データをクラウド上に飛ばすことによって、施工報告書の自動作成が可能になっています。このおかげで、現場の管理者の作業時間のうち、報告書をまとめる時間を6割ほど削減することができました。

昨年は14現場で導入しましたが、今期はこの上半期ですでに18現場で導入しています。2025年度には全工事現場への導入を目指しています。

さらに、「Pile-ViMSys」は既製コンクリート杭に対するシステムなのですが、付加機能として、電子黒板付き工事写真の撮影を行うアプリ「ViMCam」というシステムがあります。この「ViMCam」の、当社のオリジナル工法「PCウェル」への適用を、現在進めているところです。実現場での検証も行いながら、そのような施工品質のトレーサビリティの向上を図っています。

この「PCウェル」を皮切りに、今後プレキャスト製品にこの機能を応用していくことで、いわゆる製品の品質と、施工品質という一番大切なものに関して、トレーサビリティを確立し、デジタルを活用して管理、他社との差別化を推進していきたいと考えています。今期中に「PCウェル」の実現場での試験を終える予定です。

事業戦略200年企業の基盤構築(構造改革)の進捗

管理部門です。管理部門について、大きく「人材」と「IR」を切り口に施策を進めてきています。IRについては、今年から個人投資家向けのフェアに出展するなど、新たな試みにもチャレンジしており、対話の件数が着実に増えているところです。

先ほどから、うるさいぐらい「人、人、人」と言っていますが、やはり「人」が大事です。採用については、先ほど本社で採用チームを強化したと言いましたが、そのような効果が現れ始めている感触もあります。

人作りなくして会社の成長はないため、今年から、車座会議と称して、5支社、5工場、本社の5部署と社長との対話といった会議を進めています。これはもう年に2回行っていこうと決めています。

現場にいろいろなヒント、改善へのヒントがたくさん落ちているため、現場の声を聞いて経営に反映させますし、逆に、経営方針をしっかりと伝えていきます。

所作、振る舞いから、人生観や、働きがい、生きがいのようなことまで、輪になって酒を酌み交わしながら社員と話します。そのような対話によって「一致団結する日本ヒューム」というものを作り上げていきます。同時に、200年企業に向かうような強い組織作りを、進めているところです。

基礎事業①

事業セグメント別の戦略について、基礎事業からご説明します。基礎事業については3つの、取り組み内容と成果があったと考えています。

1つ目は営業利益の改善です。前年同期に比べて大幅に改善することができました。こちらは、売価改善が進んだことや、大型土木杭工事の受注ができたことも要因ですが、1番は、現場の工事管理を緻密に徹底することができた成果ではないかと考えています。

2つ目は新工法の開発です。こちらも先ほどご説明しましたが、まもなく工法に加えて、杭材の評定も取得できる段階で、来年から販売を開始する予定です。

基礎事業②

3つ目が、先ほども触れましたが、「Pile-ViMSys」に1つ機能を追加したことです。「なんだ、そんなことか」と思われるかもしれませんが、杭伏図機能というものを追加しました。

これはどのような機能かと言いますと、設計者は、杭を設計する時に平面図で「ここにこのような杭を打っていくよ」という内容を描くのですが、それをそっくりそのまま「Pile-ViMSys」に取り込むことができるという機能です。

これにより、まず、工程の効率化が図れます。さらに、直感的に、この図にあるように、杭伏図のところをタップすると、リアルタイムに杭の施工状況を確認することができます。

もともと「Pile-ViMSys」はクラウド上にデータを飛ばしているため、設計者は、そのデータを自分のタブレットで確認することができます。画面の杭の部分をタッチすれば、その杭の施工状況を、リアルタイムで見て取れます。さらに、承認機能も追加しましたので、発注者・工事管理者・監理技術者など工事関係者の方々が、現場に臨場することなく、承認作業まで行えるようになりました。

今年、国土交通省が建設現場の生産性向上について、「i-Construction2.0」を発表しましたが、その中に「施工管理のオートメーション化」というキーワードが出てきます。当社の「Pile-ViMSys」によるDX化で、そこに一歩また近づいていると実感しています。

下水道関連事業

下水道関連事業における成果です。1つ目は、ヒューム管のシェアの拡大です。昨年は発注が非常に遅延した影響など、さまざまな要因でシェア2位に甘んじたのですが、この上期に1位に返り咲きました。

2つ目は、雨水災害対策の需要増への対応です。ご承知のように、昨今のいわゆる大雨のような雨水への対策事業として、下水道管の需要が増加しています。特に、都市化により、水が浸透する面積の減少や、気候変動による大雨の影響を受けて、浸水が各地で多発しています。

都市型の浸水には、都市部に降った雨が処理しきれなくて浸水を起こす内水氾濫と、河川の堤防が決壊して都市部に水が流れてくる外水氾濫があります。

主に下水道における下水道管で、合流管や雨水合流管と言われる管は、この都市部の中で処理しきれなかった水を排除していく機能を持つものです。

当社は、スライドに記載のとおり、フルラインナップの製品群を持っており、このような製品で対応しています。

普通下水道管自体は、管の中を満杯に流れることはありませんが、特に、雨が降り満水になると、一気にそこが水で満たされるため、内側から圧力がかかります。

そのような内側からかかる圧力に対応する内圧管である「JIP-PIPE」や合成鋼管あたりが当社の強みであり、このような製品でご期待に応えていきたいと考えています。

今、「パイプの中を水が満杯になる」とお話ししましたが、満杯になると空気が圧縮されます。これが、昨今よく、各地でニュースになっている、マンホールの蓋が浮く、あるいは飛んでいくといった事故につながります。

これに対して当社は、そのような空気をうまく、効果的に抜く装置として、空気圧開放装置を持っているため、昨今は自治体などからの問い合わせも増えています。このような社会的ニーズに対応する当社製品の普及、拡大を十分に図って、自然災害の予防保全にも貢献していければと考えています。

プレキャスト事業①

下水道事業における成果の3つ目として、プレキャスト製品事業のトピックスで、脱炭素コンクリートの対応というものがあります。これに関して、以前からご案内している、低炭素型高機能コンクリート「e-CON」について、ご説明します。

今年9月に、東京都下水道サービスと共同開発した「e-CON」が、我が国で初めて「セメントを使用しないプレキャスト製品用コンクリート」として、一般社団法人土木研究センターの建設技術審査証明を取得することができました。これでやっとお墨付きがいただけたといった状況にあります。

今回のこの建設技術審査証明の意義は2つあります。1つは、「e-CON」がセメントと同等の性能であることを公に証明していただいたということです。つまり、普通のセメントと同じような設計を行うことができるといったことが、大きな点です。

もう1つは、「e-CON」が耐硫酸性に優れていることが示された点です。普通コンクリートの10倍以上の能力が認められるといったことを、今回証明していただきました。

この他の特徴として、この「e-CON」には、普通コンクリートに比べると、当社調べですが、もともとCO2を80パーセント削減できる性質があります。加えて、耐塩害性が普通コンクリートの5倍以上あります。さらに産業副産物を使っているため、環境にも配慮している材料です。

以上のような5つの特徴があるため、下水道管に限らず、プレキャストコンクリート製品全般に、用途に応じて適用していただけるように、今後、さまざまな分野への提案活動を進めていきたいと考えています。それを、自信を持ってやっと進めていける、最初の一歩を踏み出せたといったところです。

プレキャスト事業②

プレキャスト製品事業に関するその他の成果を、ここから5つご説明します。1つ目は、プレキャスト事業の強化です。「プレキャスト事業を第3の柱にしよう」と、拡販に注力して行ってきており、前年同期比で約1.5倍に売上高が増えてきました。

この1.5倍を今、保持できている状況ですので、今後の案件についても、これをさらに増やして、プレキャスト製品事業をより大きくしていく、そのようなスタートラインに、ようやく立てたところです。

2つ目が、「PCウェル」の拡販です。現在、道路事業や再開発事業での継続的な採用が決定しています。

私は以前から、「まずは得意分野でしっかりと、このようなプレキャスト製品事業を拡大していく」ということを、ご説明してきました。場所打ちの基礎から、いわゆるプレキャスト基礎への切り替えを目指した、組織的な提案営業活動が、ようやく花開きつつある状況です。

さらに、設計ソフトの改良を行っています。今まで以上に、この「PCウェル」の設計スペックを加速することで、受注増加につなげていきたいと考えています。

プレキャスト事業③

プレキャスト製品事業の成果の3つ目が、プレキャスト遊水池の採用です。過去に実績がないわけではないのですが、しばらく採用されなかったため、トピックスとして挙げました。

当社は、国土交通省の「流域治水オフィシャルサポーター」としても登録しています。そのような中で、やはり貯留管としてのパイプだけではなくて、このような大型の貯留施設、遊水池の受注も果たしていきたいという方針で、全社一丸となって取り組んできた結果であるため、ここでご紹介しました。

プレキャスト製品事業の成果の4つ目は、道路分野でのプレキャスト壁高欄や区画柵の拡販です。ご承知のように、いわゆる暫定2車線という、中央分離帯がない対面通行の高速道路では、今だと道路の真ん中にオレンジ色の、おそらくプラスチック的なポールが立っているだけの状態になっています。

これでは危ないため、NEXCO各社は、そこにセンターブロックというコンクリート製の防護柵を設置する対策を、長い橋梁やトンネルの中で検証が進行中です。この区画柵の拡大が今後進められるという流れがあります。

あわせて、昨今では、高速道路の更新の際には、いわゆる壁高欄というガードフェンスが採用されています。

数年前から、これらの分野にしっかりとキャッチアップしていこうと取り組んできましたが、道路分野でのプレキャスト製品の売上が、関東・東北地区を中心に、ようやく前年同期比で1.8倍ぐらいに実績を積めるようになってきました。

さらに、来年春に完成する、壁高欄の自動割付システムで、今後7割ぐらい設計時間を短縮することができます。設計の提案活動をより増やして、さらに受注拡大につなげていきたいと考えています。

プレキャスト事業④

プレキャスト製品事業の成果の5つ目は、3Dプリンティングの導入で、こちらの進捗についてご説明します。守秘義務の関係で詳細をお伝えできませんが、スライドの写真のように、曲線的な造形物も構築できるようになってきました。

製造現場でも労働者不足が起きている中、プレキャスト製品の型枠の費用や納期も、コンクリート製品を作る上では課題の1つになってきています。こうした3Dプリンターを活用することで省人化など、型枠を使わないプレキャストコンクリート製品といったようなことにこれからも取り組んでいきたいと考えています。

まだ発展途上の技術分野ですが、今から取り組みながらさまざまな可能性に挑戦していきたいと考えています。

ESG戦略(E:環境)

ESG戦略についてです。まず環境ですが、「e-CON」の建設技術審査証明が取得できました。これを拡大していくことによりCO2削減に貢献していこうと考えています。また、自社のCO2の排出量削減については、ガスボイラーの導入を計画的に進めており、着実にお約束を果たしていきたいと思っています。

ESG戦略(S:社会)

社会についてのトピックを2つご紹介します。1つは、小・中学校向けに無料配布されている「おしごと年鑑2024」という教材に、我々も地下インフラを支える企業として当然自負を持っているため、その仕事をぜひ小・中学生にも知ってもらいたいということで協賛をしました。

子供たちに「ヒューム管」と言っても、『ドラえもん』を例に出してもなかなか伝わらず、「スーパーマリオの緑のやつ」と言わないとわからない昨今ですので、このような活動を通じて少しでも我々の仕事をわかっていただきたいと考えています。

もう1つは、熊谷工場が「彩の国工場」に指定されました。やはり企業も社会の一員ですので、地域に愛される工場を目指したいと思い、「彩の国工場」という埼玉県の制度に応募しました。

これによって、工場で働く人たちにも「社会の一員なんだ」「埼玉県に協力しよう」というような心を持ってもらい工場運営をしていきたいと考えています。

財務戦略(資本政策)

財務戦略についてご説明します。株価及び1日の平均売買高の状況について、折れ線グラフでお示ししています。中期経営計画「23-27計画R」のさまざまな取り組みをご評価いただいているのか、いろいろあると思いますが、このような状況となっています。

財務戦略(株主還元)

次は株主還元です。安定的な株主還元の向上ということを中期経営計画の中でも発表していますが、今般の業績などを勘案し前期比13円増配の38円を予定しています。

資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について①

資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応については、このようなことが求められている現状も十分把握していますし、スライドでお示ししているように、課題がないわけではないこともきちんと認識しているところです。

ROE、PER、その結果のPBRと、比較的改善してきている状況にはありますが、やはり「PBR1倍」「ROE8パーセント」という目線としてはまだ改善の余地があると強く思っています。

資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について②

こういったことを踏まえて、企業価値向上、収益向上については、「総還元性向50パーセント以上」「ROE8パーセント」を目指すという方針を立てました。繰り返しになりますが、当社は来年創業100周年を迎えます。現在取り組んでいる中期経営計画「23-27計画R」では、100周年となる2025年を中間点とし、これまでを振り返って内省し、次の200年に向かっていくにはどのような構造改革をしていくかを全社一丸となって考えながら、今改革を推進しているところです。

この「23-27計画R」を着実に遂行することで、早期に達成をし、こうした経営指標の改善、資本コストや株価を意識した経営についても目標達成していきたいと考えています。

これ以降の資料は、その他のトピックスなど業界の需要推移のデータとなります。後ほどご高覧ください。