ハイライト

長谷川敬起氏:株式会社ELEMENTS代表取締役社長の長谷川です。これより2024年11月期第3四半期の決算説明会を行います。

まずは財務ハイライトです。2024年11月期第3四半期の業績は、売上高が前年同期プラス22パーセントの6億4,800万円となりました。EBITDAは前年同期比2,800万円の減益となったものの6,300万円の黒字を計上しています。

累計売上高は前年同期比プラス41パーセントの18億5,700万円、累計EBITDAは2億9,700万円となっています。

各種トピックとして、「LIQUID eKYC」に次ぐ第2の柱となりうるプロダクトの進捗についてご説明します。

前四半期から今四半期にかけて、デジタルIDウォレット「PASS」の協業拡大や、数年にわたり開発を行ってきたセルフ式ガソリンスタンドのAIによる給油許可判定ソリューションの実証実験を開始しました。

また「PASS」の取り組みに関連し、2024年7月には「日本スタートアップ大賞2024」において総務大臣賞を受賞しました。

第3四半期連結業績ハイライト

第3四半期の業績ハイライトです。売上高は前年同期比プラス22パーセントの6億4,800万円、個人認証ソリューションについては前年同期比プラス31パーセントとなっており、中期目標の30パーセント増を上回る水準で推移しています。

売上総利益率は83.5パーセントと、前年同期比でほぼ横ばいで推移しています。引き続き、高い粗利率を保持しています。

販管費および一般管理費は、前年同期比プラス2億2,300万円の5億7,800万円を計上しています。

これらを踏まえた結果、EBITDAは6,300万円の黒字、営業利益および親会社株主に帰属する当期純損益は、それぞれ3,600万円、7,700万円の赤字計上となっています。

第3四半期連結業績ハイライト(累計)

第3四半期累計の連結業績ハイライトです。全社売上高は、前年同期比プラス41パーセントの18億5,700万円、個人認証ソリューションは前年同期比プラス55パーセントの18億3,000万円となっています。

EBITDAは2億9,700万円、営業利益は1億1,000万円の黒字計上です。また、親会社株主に帰属する当期純利益は3,800万円の赤字となっています。

売上について

ここからは、財務数値やビジネスのアップデートについてご説明します。まずは、売上についてです。

先ほどお伝えしたとおり、全社売上高は6億4,800万円、個人認証ソリューションの売上高は6億4,000万円です。

前四半期で発生した仮想通貨業界における特需となった認証回数増加の部分は、特殊要因のため剥落しています。しかし当社の主力商品「LIQUID eKYC」の増収要因や、アドメディカの取り込みなどにより、前年同期比で堅調な伸びを示しています。

2022年度からの2年間で、個人認証ソリューションの売上高が2.2倍に成長している状況です。

LIQUID eKYC主要トピック

「LIQUID eKYC」に関連するトピックについてご説明します。まず2024年7月26日に、累計本人確認件数が5,000万件を突破しました。

この5,000万件のうち、20パーセントを占める1,000万件がICチップ方式によるものです。今後、犯罪収益移転防止法や携帯電話不正利用防止法の法改正を見込む中で、より不正に強い方式の利用数が非常に大きく伸びてきており、引き続き堅調に推移していくと考えています。

累計導入社数は270社超に拡大しています。現在、金融系の事業者に加え、通信・サービス系事業者への導入も進んでいます。

また、昨日発表したドキュサイン・ジャパン社のようなグローバル認証ベンダーとの取り組み事例も、少しずつ増えてきています。

LIQUID eKYC主要トピック② IC読み取りソリューションの拡大

ICチップの読み取り方式に関して、新たなサービスプロダクトを発表しました。まず「LIQUID eKYC」の「ICおまかせパック」についてご説明します。

今までは、スマートフォンで本人確認書類の写真と顔の写真を撮影し、照合するeKYC方式がメインストリームでした。現在はより不正に強い方式として、スマートフォンで免許証やマイナンバーカードのICチップ内の情報を読み取ることで、改ざんや不正に強いeKYCの実現が可能となってきています。

これらを実現する方式は徐々に増えています。具体的には、デジタル庁を中心に政府が投入している「スマホJPKI」の仕組みや、「デジタル認証アプリ」の仕組みがあります。また、Apple社が「Apple Wallet」で、このようなソリューションを提供する見込みです。このように、日本において本人確認書類のICを読み取る選択肢が増えてきています。

そのような中で、ユーザーが使っているスマートフォンのOSのバージョンや、そのユーザーがどのようなアプリをスマートフォンにインストールしているかなどにより、利用できる方式が異なります。

複数の選択肢をすべて利用可能なユーザーであっても、その中においてどの方式が極力離脱率を下げられるかに対して、我々は多くのノウハウを有しています。

それらのノウハウをすべて詰め込み、ユーザーのスマートフォンの中の状況を読み取ることで、そのユーザーにとって最も簡単で最も離脱の少ないeKYCの方式を自動選択できる仕組みが「ICおまかせパック」です。

非常に地道なプロダクトの改善の結果、このような仕組みをリリースできました。現在当社はeKYCのサービスにおいてマーケットシェアNo.1を獲得しています。

その源泉として、ユーザーエクスペリエンスが最も良く、離脱率が業界最低水準を出せているところにあります。このようなところを評価いただき、各社に導入していただいています。

ICの読み取りにおいても、まだ他社はこのような仕組みができていないと認識しています。このようなソリューションをいち早く提供していくことにより、引き続き最先端の技術を注入しながら、最も使いやすいeKYCの仕組みを提供していきたいと考えています。

また、リアル店舗や対面でも、政府はIC読み取りの方式を推奨しています。デジタル庁では、すでに8月にマイナンバーカードの店頭読み取り用のアプリケーションをリリースしています。それに合わせて我々もソリューションを展開しています。

デジタル庁が出しているアプリとの違いについてご説明します。企業は自社のユーザーのデータ基盤を持っています。本人確認だけであれば、デジタル庁が提供されているアプリでも可能です。

しかしながら我々のサービスは、店頭で本人確認が可能なIC読み取りのアプリケーションを企業向けに提供しながら、その本人確認結果をユーザーに同意いただく前提で、企業のユーザーのデータベース基盤に接続することが可能な仕組みになっています。

本人確認をその場で行い、ユーザーから同意を得た上でその情報を使ってユーザー情報の登録を簡便化するなどに使えるアプリとなっています。これも1つの工夫としてプロダクトアウトしています。

売上総利益について

売上総利益は、前年同期比プラス22パーセントの5億4,100万円となっています。売上総利益率はほぼ横ばいで推移しています。

販売費および一般管理費について

販売費および一般管理費は、合計で5億7,800万円となっています。主な内訳は、全社的な規模の拡大に伴う人件費の増加によるものです。加えてアドメディカの連結子会社化に伴う費用の増加が発生しています。

また、ソフトウェア資産計上に伴う減価償却費の増加が影響しています。全体として前四半期比で3,600万円の販管費増となりました。

販管費の推移については、アドメディカの連結子会社化が行われる段階から販管費の構造が変わっており、昨年との比較に意味がなくなってきています。そのため、今後はアドメディカを子会社化したあとの四半期ベースでの推移を見ていくことが合理的であると考えています。

EBITDAの推移

EBITDAの推移です。今四半期は6,300万円で着地しています。第3四半期累計のEBITDAは2億9,700万円となっており、7月に開示した業績予想のレンジに収まっています。

連結貸借対照表

連結貸借対照表です。今四半期のポイントは、1点目にM&A資金の借入および短期借入金の一部返済、2点目にPPAの計上開始、3点目に新株予約権の一部行使の発生となっています。

結果として、今四半期末時点で株主資本は21億6,000万円、自己資本比率は42.5パーセントとなっています。

通期業績予想に対する進捗

通期業績予想です。売上高は18億5,700万円で、進捗率は71.0パーセントから75.8パーセントと、7月時の修正予想に対して想定レンジ内で推移しています。

EBITDAに関しては84.9パーセントから108パーセントとなり、すでに7月の業績修正予想の下限値をクリアしています。達成状況が確実に見込まれる状況です。

現在進行している第4四半期においても、第2の柱の創出に向けた先行投資の強化と、利益の確保の両立を図りながら進めていきたいと考えています。7月の業績修正予想に関しては、間違いなく達成できると確信しています。

第2の柱の展開(1):デジタルIDウォレット「PASS」の協業拡大

第2の柱の展開についてご説明します。まずはデジタルIDウォレット「PASS」に関してです。現在、地方自治体向けソリューションを提供しているJAPANDX社やプレイネクストラボ社とソリューション等の連携と展開を図っています。

第1弾としてプレイネクストラボ社と連携し、自治体向け防災サービスをリリースしています。北陸で2024年の年明けに大きな災害があったことから、各自治体で防災に対する意識が非常に高まっています。そのため、現在多くの引き合いをいただいている状況です。

第2の柱の展開(2):セルフ式ガソリンスタンド自動給油の実証実験

セルフ式ガソリンスタンド自動給油の実証実験についてです。すでに日本経済新聞社でも取り上げられているとおり、コスモ石油マーケティング社とタツノ社と共同で、セルフ式ガソリンスタンドにおける人手不足解消に向けたAI自動給油許可監視システムの実証実験を開始しました。

自身で給油する際は、セルフ給油機にクレジットカードなどの決済手段を先に入力してからノズルを手に持ち、車の給油口に差し入れてトリガーを引き給油するという手順を踏んでいます。

現状では消防法の規制により、ユーザーがトリガーを引いても、建物内にいるガソリンスタンドの従業員が目視で確認してから給油許可ボタンを押さないと油が出ない仕組みになっています。

この規制があるため、地方の過疎地域だけでなく、都会でも人手不足の問題が出ています。目視で確認する人員は専任であることが多く、現場に張り付いてその業務だけを行わなければなりません。そのような従業員の確保が難しくなってきており、人手不足によってガソリンスタンドの数が減少している側面があります。

このことは、資源エネルギー庁や経済産業省も国家としてのエネルギー供給課題として認識しています。そこで我々は、官庁から補助金をいただきながら実証実験を続けてきました。

長年の実験の積み重ねにより、ようやく精度が向上してきました。まだ確定していないものの、可能性として2024年度もしくは2025年頃の法改正が期待されています。

法改正された場合、実証実験で行っている給油許可監視システムが、実際にサービスとしてリリースできるようになります。

こちらも現行法の規制が緩和されることを想定して、今後の拡大を期待しているソリューションです。

その他トピック:日本スタートアップ大賞総務大臣賞の受賞

今年7月に「日本スタートアップ大賞2024」で「情報通信スタートアップ賞(総務大臣賞)」を受賞しました。

我々が認証ソリューションの中で注力している「LIQUID eKYC」およびデジタルIDウォレット「PASS」の仕組みを使って石川県加賀市と取り組んでいる内容が評価され、受賞しました。

これをきっかけに防災の観点から多くの引き合いをいただいていますが、これらは防災に限らず活用いただけるソリューションです。

現在、例えば地方自治体のサービスで、市民と市外民で利用の可否が異なる、また利用はできるものの価格が異なる場合や、市バスの中で高齢者だけ割引できるなどといった、年齢や居住地などの条件によりサービスの提供内容や価格が変わるといったシーン全般において、本人確認書類が必要になります。

保育所や、小学生のお子さまが1人で来るような遊具施設でも、そのお子さまが市民かどうかを確認する必要があります。そのため、小学校の在籍確認が年に1回必要になるなど、かなり手間がかかるのが現状です。

我々は誰1人取り残さないDX社会を実現するべく、このようなものをすべて顔認証だけで実現できるようにする仕組みをリリースし、評価していただきました。

スマートフォンで社会を便利にしていくことが我々の基盤の1つです。一度登録すれば、スマートフォンを持っていないお子さま世代から、スマートフォンを持っていても使いこなせない高齢者世代まで、老若男女が生体認証を利用することで、顔パスで決済や身元の確認が一気通貫で行えます。

さらにサービスごとの登録は不要で、一度登録すればあらゆるサービスが横断的に利用できる社会を実現できるといった部分もご評価いただきました。現在、さまざまな自治体からの引き合いをいただいている状況です。

自治体の予算確保のタイミングや実際の予算を消化するタイミングにより、多少足は長くなりますが、1年後や2年後には非常に大きな花を開くことができると期待しながら、サービスを展開しています。