インベストメント・ハイライト
濱西望氏:株式会社JSHの濱西です。事業計画及び成長可能性に関する事項についてご説明します。
まず、インベストメント・ハイライトです。当社は人口減少・少子高齢化が進展する日本において、社会課題を解決することで企業価値を向上させることができる事業領域を選定し、事業を推進しています。ハーバード大学の関係者が設立した日本初の独立系インパクトVCファンド等から資金調達を実施し、新規上場しました。
日本の成長分野である在宅医療領域と地方創生領域のシナジーを追求できるユニークなポジションにあると理解しています。
会社概要
会社概要です。JSHは「Japan Support Holdings(ジャパン・サポート・ホールディングス)」の略称で、社名には「日本の課題を解決する事業の連合体になっていきたい」という思いが込められ、ロゴも富士山をモチーフにしています。
所在地は、東京駅から徒歩約5分の中央区京橋にあり、ちょうど8年前に設立しました。人員数は400名を超えており、150名以上の看護師が所属しています。
資本金(資本準備金含む)約19億円は上場前の数字ですが、公募増資によって現在は23億円を超えています。
スライドには上場前の株主を記載していますが、代表取締役会長兼社長の野口、さまざまなベンチャーキャピタルや事業会社、先ほどお伝えしたハーバード大学の関係者らのファンドであるGLIN Impact Capital社からも出資を受けています。
監査法人はあずさ監査法人で、社外役員には弁護士2名と会計士2名が入っています。
役員紹介
社内取締役をご紹介します。野口は長崎県五島列島出身で、精神科の看護師です。N・フィールドを創業し、東証一部に上場させ、退任後にJSHを創業しています。
私を含め野村證券出身者が3名、野口を含めN・フィールド出身者が4名という構成になっています。鎌田、北村は看護師で、市川は元人事担当役員の知見を活かし、地方創生事業に取り組んでいます。
企業理念等
企業理念は「人を通じて、喜びを作り、幸せを作る」、目指すゴールは「地域を問わず全ての人が、心豊かに、能力や個性を発揮できる社会の実現」です。
現在、在宅医療事業、地方創生事業の2つの事業を展開しています。在宅医療事業は「持続可能な医療体制のもと、住み慣れた地域で社会的な生活を家族とともに営むことができる社会の実現」を目指しています。
特に入院医療費の割合の高い精神科に着目して、訪問看護、訪問診療を合わせた在宅医療を受けられる機会の創出に取り組んでいます。サービス名は「訪問看護ステーション コルディアーレ」です。
地方創生事業は、「障がいの特性や職業能力等に関わらず、住み慣れた地域で仕事を通じて自己実現ができる社会の実現」を目指しています。後ほどご説明しますが、「コルディアーレ農園」では、社会構造的に就労機会が限られている、地方に在住する障がい者の雇用創出に取り組んでいます。
実は観光物産事業も行っていますが、現時点では売上高に占める割合を考慮し、記載を割愛しています。
当社が支援する障がい者・シルバー人材の範囲
2つの事業を通じて当社が支援している対象をご説明します。当社が支援する障がい者・シルバー人材の範囲について、訪問看護は主に精神障がい者向け、農園は精神障がい者を中心に身体・知的障がい者を含むすべての障がい者を対象として展開しており、管理者としてシルバー人材を対象としています。
農園は、障がい者の半分が精神障がい、もう半分は身体障がいと知的障がいが半分ずつと、およそ50対25対25の割合になっています。
当社事業とSDGsとの関係
当社事業とSDGsとの関係です。目標1の「貧困をなくそう」という点で、「就労機会が限られた地方の障がい者の雇用を創出し、経済的な自立を支援していく」ことに非常に大きな価値があると考えています。
在宅医療事業と地方創生事業の連携
ビジネス面における在宅医療事業・地方創生事業の両事業のシナジーについてお伝えします。宮崎県、大分県、佐賀県では農園だけでなく、訪問看護ステーションを設置し、訪問看護の利用者と農園で就労している障がい者の状況に応じて、利用者の相互紹介や在宅療養と一般就労の支援を実施したりしています。
また、これらの取り組みを実施することで、両事業の連携先として共通している精神科の医療機関等との関係性の強化にもつながっています。
2023年3月期通期決算概要
2023年3月期の通期決算概要です。全社の売上高は前年同期比27パーセントの成長を実現しています。コロナ禍での看護師採用難等もあり、在宅医療事業は堅調な推移で、地方創生事業が足下の成長ドライバーとなっています。
セグメント利益は在宅医療事業が2.2億円、利益率は15パーセント程度、地方創生事業が3.4億円、利益率は20パーセント強です。
地方創生事業では売上高の増収率と利益率を合わせると80パーセントを超えており、ストック売上の大きい事業として足下の成長を優先すべきだと考えています。
スライド右側の売上高推移のグラフをご覧ください。当社にとって①は逆風、②は追い風となる情報をそれぞれ記載しています。
後ほどお話ししますが、障がい者の法定雇用率は5年に一度見直しがあり、段階的に引き上げられています。前回は2021年3月に引き上げが行われたことから、その前後である程度の影響があったと考えています。
なお、2024年4月から法定雇用率が2.5パーセントに引き上げられ、さらに2年後の2026年7月から2.7パーセントになることが決定しています。
売上高とセグメント利益の四半期推移
売上高とセグメント利益の四半期推移です。地方創生事業の売上には季節性があり、下半期に傾斜しやすい特性があります。また、在宅医療事業においては、第1四半期に看護師採用に関連した経費(人材紹介手数料)が発生しやすい特徴があります。
スライド右側の赤色の全社営業利益の折れ線グラフで示しているとおり、第1四半期及び第2四半期における利益水準は相対的に低位であり、第3四半期及び第4四半期に年度利益の半分以上を上げることが多くなっています。
ただし、法定雇用率が引き上げられる年度に該当するなど、年によって例外的な動きもありますので、ご留意ください。来期2025年3月期は下期偏重を想定しています。
年々増加する精神科患者数
在宅医療事業の事業環境についてご説明します。人口減少社会にあって、精神科患者数は年々増加しています。特に、高齢化社会の進展に伴い、特に65歳以上の方の精神科患者数の増加が顕著になっています。疾患別では、うつ病などの気分障がいが増加しています。
精神科入院患者の政策的減少
精神科は、他科に比べ医療費削減のニーズが高く、入院から在宅医療への転換が進められており、入院施設を有する病院も減少傾向にあります。また、1年以上の長期入院患者数の減少目標が設定されており、さまざまな病院で退院促進が図られています。
退院患者の行き先は、家庭が最も多く、家庭を訪問する医師や看護師に対する需要が高まっています。
外来診療報酬の削減と訪問診療
一方で、患者が通院する外来診療においては、精神科の診療報酬が引き下げられており、在宅医療普及のため、相対的に高い診療報酬が設定されている訪問診療の魅力度が向上しています。
医師の間では訪問診療への関心がますます高まってきていますが、訪問診療の点数や制度の複雑さ・難解さが普及の妨げになっている状態と認識しています。
事業ドメイン
当社は、精神科訪問診療のコンサルティングを実施し、精神科を主な対象としている訪問看護ステーションを運営している点でユニークなポジションにいると考えています。
在宅医療の連携モデル
在宅医療の連携モデルです。医療機関の医師に対して、当社の看護師が「訪問診療コンサルティング」を行い、訪問診療の対象患者の紹介等を受けます。「訪問看護」を横から提供していくことにより価値を提供するビジネスモデルです。
精神科訪問看護の主な項目は、「生活習慣・生活リズムの確立」「対人関係の改善」「社会的資源活用の支援」など、多岐にわたっています。看護師が行う医療行為として想起しやすい注射や服薬管理以外への対応も必要とされています。
後ほどお話しする地方創生事業の「コルディアーレ農園」では、精神科訪問看護のノウハウを取り込んでおり、このあたりからもその意味がご理解いただけるかと思います。
精神科訪問看護師には障がい者の生活をさまざまな面でサポートする役割が求められています。スライド右上には訪問診療・訪問看護それぞれの実施回数、右下にはスケジュール例を記載しています。
訪問診療は月1回から2回程度、訪問看護は月4回から12回程度、当社では1利用者当たり平均月7回弱訪問しています。時間についても医師は1回当たり10分前後、看護師は1回当たり30分以上が基本です。患者の在宅療養を成り立たせるという面では、訪問看護師の重要性が低いとは言えない状態です。
精神科訪問看護と訪問看護、訪問介護との違い
スライドには精神科訪問看護、訪問看護、訪問介護の違いについて記載していますので、ご確認ください。
訪問診療サポート事業所所在地
当社の訪問診療サポート事業所数です。関東14拠点を中心として、九州3拠点を含めて全国20拠点で展開しています。関東では主に連携医療機関、地方では「コルデイアーレ農園」とともに活動しています。
サービス料金体系
サービスの料金体系です。慢性疾患が多い精神科領域が主な対象であり、4年以上の長期利用も多いという意味では、積み上げ型と言えるビジネスモデルとなっています。売上は、「訪問看護の件数×単価(1件あたり約9,000円)」が基本となります。
市場規模
拡大余地はまだ大きい市場であると捉えています。
連携医療機関の獲得
先ほど連携医療機関とお伝えしましたが、訪問診療の開始または拡大の支援を実施している連携医療機関からの患者の紹介が全体の約4割あります。
看護師の採用
看護師の採用・定着に関しては各社苦労していますが、当社も人材紹介会社、看護師採用専門サイト、社内紹介等を通じて、看護師の採用を多面的に実施しています。
常勤換算看護師数・訪問件数・1常勤換算看護師あたり訪問件数
基本的に週5日勤務する看護師を「常勤換算1」とした場合の「常勤換算看護師数」はスライドに記載のとおりです。「訪問件数」「1常勤換算看護師あたり訪問件数」も記載のとおりで、「1常勤換算看護師あたり訪問件数」は100件から110件と、同業他社比で比較的高い数値となっています。
利用者数・1利用者あたり訪問件数(月間)
利用者数・1利用者あたりの訪問件数の推移については、スライドに記載のとおりです。
障がい者の法定雇用率の引き上げが継続
地方創生事業の「コルディアーレ農園」についてご説明します。事業環境における非常に重要な点となりますが、障がい者の法定雇用率が継続的に引き上げられています。
障害者雇用促進法にて定められた民間企業における障がい者の法定雇用率は2024年4月に2.3パーセントから2.5パーセント、2年後の2026年7月に2.7パーセントへと引き上げられることが決定されました。
スライドのグラフで示しているとおり、法定雇用率を達成している企業の割合は5割程度しかありませんが、達成企業の割合が5割程度に上昇してくると法定雇用率が引き上げられ、法定雇用率達成企業の割合が低下することを繰り返しています。
今後も法定雇用率達成企業の割合が6割、7割、8割になることは想定しにくく、5年に一度見直される法定雇用率は、徐々に上昇していくと想定しています。
なお、2.3パーセントから2.7パーセントまでの引き上げにより、民間企業が必要とする障がい者の雇用者数は、約11万人と想定しています。
民間企業と身体障がい者
さらに過去には、法定雇用率の算定上、身体障がい者のみが障がい者として認められていたことや、身体障がい者の方のほうが仕事を渡しやすいと考える企業が多数であったことから、民間企業では主として身体障がい者を積極的に雇用してきました。そのため現時点では、一般就労している障がい者のうち56パーセントが身体障がい者となっています。
しかし、高齢化の進展に伴い55歳以上の身体障がい者の割合がかなり多くなってきており、今後10年間で約10万人が退職すると見込まれています。法定雇用率の上昇と合わせて、今後5年から10年で約20万人の障がい者雇用のニーズが出てくるものと想定しています。
民間企業と精神障がい者
一方で、交通事故等の減少もあり、身体障がい者そのものが増加していませんので、就労者としては純減となる年も出てきています。知的障がい者の純増数も横ばい傾向であり、多くの企業は、精神障がい者の雇用によって法定雇用率を達成している状態にあります。
ただし、スライド右側のグラフに示したとおり、精神障がい者の就職1年後の職場定着率は50パーセントを下回る状況となっています。企業によっては前年に採用した100人の障がい者のうち就労が継続している障がい者は50人以下、前々年に採用した100人の障がい者のうち就労が継続している障がい者は25人といった状況で、年々、採用数を増加させないと純増できない状態にあります。
地方在住障がい者の就労機会の格差(社会構造的不平等)
日本においては、法律上障がい者雇用が義務付けられている中堅・大企業が都市部に集中していることから、都市部と地方では障がい者の就労率に大きな格差が存在しています。これを私たちは、「社会構造的不平等」と呼んでいます。
「法定雇用率◯パーセント、そのうち法定雇用率を達成できている企業の割合は◯パーセント」と、雇用主となる企業側から見た採用状況に関しては報道や記事などで目に触れる機会がある一方、障がい者側から見た就労機会については、なかなか報道されないのが現状です。
スライド右側のグラフをご覧ください。東京都で生まれた障がい者、または東京都で暮らしている障がい者は、働こうと思えば働ける場所が多くある状況です。ただし、例えば長崎県在住の障がい者は11パーセントしか一般就労ができないのが現状です。
障がい者就労支援領域における主なプレイヤー
障がい者の就労を支援している会社はさまざまありますが、「コルディアーレ農園」は一般就労支援であり、障がい者の雇用主となる企業の所在地は、日本全国場所を問わないモデルとなっています。
地方においては、技能が高く一般就労が難しい状態ではない方でも、雇用機会が限られていることにより一般就労が難しい状況にあり、やむなく福祉的就労のフェーズにとどまっている方もいらっしゃいます。
障がい者雇用のパラダイムシフト
当社は、障がい者雇用のパラダイムシフトが必要であると考えています。大企業の都市部集中、身体障がい者の生産年齢人口の減少、精神障がい者の急増、ペーパーレスやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の進展に伴う単純作業の減少などへの対応のため、障がい者雇用は、社内の中で増やしていくという発想に加え、地方も含めた日本社会全体での共生の実現という発想が鍵になっていると感じています。
厚生労働省の見解について
一方、当社が行っているような障がい者雇用ビジネスに対して、さまざまな否定的な見解もあります。ここで厚生労働省の見解についてご紹介したいと思います。
「厚生労働省が障がい者雇用ビジネスに規制を導入するのではないか」という懸念もありましたが、現時点では、スライド中央の「事業主の皆様へ」と題する資料に記載されているとおり、主に私たちのような就労場所を運営する事業者ではなく、その事業者を利用する事業主や雇用主企業に対して注意喚起がされました。
当社は、農園を利用する事業主が障害者雇用促進法のみならず、厚生労働省におかれている労働政策審議会(障害者雇用分科会)で公表された「懸念される課題等」を解決し、「望ましい取組のポイント」に沿った障がい者雇用に主体的に取り組めるよう、障がい者各自の障がい特性の把握や合理的配慮の提供、職業能力の開発、適正な雇用管理等の支援を実施しています。このような対応状況も含めて取引所の審査を受け、今般上場をさせていただいたことは一定の自負になっているところです。
さらに業界全体の品質向上のため、「一般社団法人日本障害者雇用促進事業者協会」の設立に参画し、業界の健全な発展に寄与していく方針です。
サービス概要
サービス概要です。農園利用企業に対して障がい者3名と管理者1名(管理者は健常者でシルバー人材が主)を紹介(人材紹介)し、農園利用企業が計4名をチームとして雇用する仕組みとなっています。当社農園には看護師が常駐しており、農園で就労する障がい者の障がい特性を把握し、特性に応じた「定着支援サポート」を提供しています。
また、当社農園を利用して障がい者を雇用している企業が、農園で就労する障がい者の能力開発に取り組むことができる体制を整備しています。農園において、障がい者の方が栽培し収穫した野菜は、地域への販売活動や寄付、雇用主企業内で活用されており、経済社会を構成する労働者の一員として能力を発揮する機会が与えられる仕組みとなっています。
スライド左側の「求人が少ない」「障がいに配慮された職場がない」「通勤が困難・公共交通機関が少ない」という課題を抱えている地方の障がい者の方と、スライド右側の「募集しても応募がない」「社員の知識が足りなくて受け入れが大変」「障がい者が担う業務の切り出しができない」「定着率が低い」「雇用している障がい者の高齢化」という課題を抱えている都市部の企業とのマッチングを行っています。
収穫した野菜の活用方法
昨今、「収穫した野菜が一般流通に回るわけでもなく、経済社会を構成する労働者の一員として能力が発揮されていないのではないか。このようなビジネスはけしからん」というお声もありますが、「コルディアーレ農園」においては、当社が野菜を買い取って販路を開拓し、一般流通に乗せていく仕組みを積極的に取り入れています。
障がい者雇用のプラットフォーム(日本全国の企業が利用可能)
当社のサービスは日本全国の企業が利用可能な障がい者雇用のプラットフォームとなっています。実際に、北は北海道、南は九州まで、さまざまなエリアの企業にご利用いただいています。基本的に屋内型の水耕栽培農園となっており、車椅子の方も働ける環境を整えています。
精神科看護の知見から空間を作りこみ、利用企業の合理的配慮を実現
農園は、精神病棟の事故事件予防のための知見や、ストレス緩和のための知見を活かした設計となっており、精神科の医療に関する知見がないと類似した空間作りが難しい仕組みで運営されています。また、スライドに記載した情報以外にも、職場にはさまざまな観点や工夫が盛り込まれています。
農園の開設(17か所)
現在、農園は九州全域に17ヶ所開設しています。さらに、3月22日にプレスリリースしていますが、「コルディアーレ福岡農園」のオープンを予定しており、現状18農園の開設が決定しています。
九州には「働きたいが働けない」という障がい者の方が多くいらっしゃるため、九州だけで農園を50ヶ所から100ヶ所程度は開設できるのではないかと考えています。
理由は、法定雇用率を達成している企業の割合が高い上位10県中4県が九州地域となっているためです。裏を返すと、今後、障がい者雇用を増やさなければいけない状況にある企業が少ないことを表しており、障がい者からすると就労機会が拡大しにくい状況にあることを意味します。
現状においては、資本的支出が少ないロードサイドの物件を居抜きで借り、当社がリフォームする形態での出店をメインとしていますが、今後は物件取得も含め、さまざまな可能性を検討していきたいと考えています。
サービス料金体系
「コルディアーレ農園」のビジネスモデルの大きな特徴は、リカーリング売上比率の高さです。当社のサービスを利用していただく際、利用企業からは初期費用として人材紹介料をいただきますが、運用開始後、障がい者1名あたり月額15万円のサービス利用料をいただく月額課金のモデルとなっています。
スライド右側のグラフに記載のとおり、現状、リカーリング売上比率は90パーセント程度で推移しています。グラフには、法定雇用率上昇の影響が考えられる部分を記載していますが、2024年4月からの法定雇用率引き上げの影響は、すでに出始めていると認識しています。
市場規模
拡大余地がまだ大きくある市場であると考えています。
売上高の成長継続に向けた戦略
「コルディアーレ農園」の成長戦略についてです。農園の数、つまり農園をいかに出店できるかが大事だと思われやすいのですが、例えばロードサイドの居抜き出店のリードタイムは半年程度と比較的短いことに加えて、当社の農園は遠隔雇用が前提となっているため、「宮崎県の農園でないと利用が難しい」「大分県の農園でないと利用が難しい」といった農園所在地を特定する企業は多くなく、出店地域に関する制約は少ないため、ボトルネックかつ成長の源泉となるのは利用企業の獲得になります。
利用企業を想定以上に獲得できた場合は、計画以上に出店し、利用企業の獲得が低調にとどまる場合は、出店を延期させ、費用をコントロールしていく必要があると認識しています。
当サービスは、平均顧客単価が年1,200万円程度と高額な商材ですが、さまざまな業種から優秀な営業人材を獲得しており、順調に利用企業の積み上げができています。
今般の上場により調達した資金を用いて、各種マーケティング施策の強化も図っていく方針です。ただし、一部のSaaS系企業のような、赤字となっても広告宣伝費をかけるという方針ではなく、増収増益を両立させるクオリティ・グロースの考え方を大切にしています。
1社当たりの売上高の向上にも注力し、顧客満足度の向上のための各種施策を実行しており、顧客平均単価も年々上昇しています。
成長性を示す主要KPI 追加割合等
後ほどあらためてご説明しますが、現在、一定の条件のもと、既存顧客だけで売上高が2桁成長できる状態となっています。農園を用いた障がい者雇用支援については、複数社がサービスを提供していますが、地方、かつ、サポートが充実しているというポジションにあるのは、当社のみだと認識しています。
成長性を示す主要KPI
KPIについてです。当社の主要KPIは、障がい者受入純増数、障がい者受入数合計です。障がい者受入純増数については、法定雇用率上昇やコロナ禍の影響で遠隔地での雇用を取り入れるハードルが引き下がったこともあり、2022年3月期に大きく純増しました。
その後は厚生労働省が規制を導入するなどの報道の影響もあり、やや減速していますが、今期は持ち直す見通しです。障がい者受入数合計は今期末に1,163人を計画し、成長率は前年比33パーセント増となっています。
安定性を示す指標
当社のビジネスモデルの特徴はキャッシュ・フローの安定性です。リカーリング売上比率の高いモデルとしてモニタリングしているARRは前年同期比39パーセント増と、高い成長を実現できています。
スライドの図式は、「ARR=利用企業数×月額のARPA」になっていますが、こちらに12を掛けるとARRが算出されます。利用企業数はここ2年で3.5倍に増加しており、サービス品質向上も寄与し、既存企業からの区画追加(障がい者の追加雇用)も堅調なことから、ARPA(1企業あたりMRR)が上昇しています。
特に12ヶ月平均の解約率はほぼゼロとなっており、全上場企業の中でも際立った安定性であると認識しています。
事業計画
2024年3月期の売上高は前年比18パーセント増の35億円、営業利益2億円を見込んでいます。
事業計画
在宅医療事業の訪問件数、地方創生事業の農園数・総区画数、および障がい者受入数はスライドに記載のとおりです。
リスク
当社の事業リスクです。比較的発生可能性の高いリスクは、利用企業の獲得と人材の確保、定着化であると考えていますが、さまざまな施策を行うことでコントロールしています。
インパクト創出のためのロジックモデル
補足資料ですが、重要なスライドだと考えていますので、ご説明します。冒頭お伝えしたように、当社はハーバード大学の教授がアドバイザーを務めるGLIN Impact Capital社からの出資を受け入れ、彼らのサポートを受けながら、インパクトスタートアップとして、インパクト創出のためのロジックモデルを作成し、上場しました。
在宅医療事業において、どのようなロジックでビジョンを達成しようとしているのか記載していますので、ご一読ください。
インパクト創出のためのロジックモデル
地方創生事業において、どのようなロジックでビジョンを達成しようとしているのか記載していますので、こちらもご一読ください。
既存顧客のみで地方創生事業が2桁成長できる根拠についてご説明します。農園利用企業の満足度向上と比例し、区画追加(障がい者の追加雇用)の割合が現状35パーセントと増加していることから、NRR(売上維持率)も113パーセントとなっています。これらの状況が継続した場合、新規利用企業獲得がゼロでも13パーセント成長を実現できる数値です。
さらに、顧客獲得時期別ARRがすべての時期でネガティブチャーンを実現している稀有なサービスです。
スライド右端のグラフにも記載しているとおり、現時点で区画追加(障がい者の追加雇用)していない企業からの追加も、今後見込まれると考えています。
高いNRRがもたらすARRの成長シナリオ
スライドのグラフはあくまでシミュレーションのため、保証できるものではありませんが、仮に障がい者新規紹介数が年164人の場合でも、NRRが現水準を継続すれば約4年後にはARRは3.1倍に、仮に新規の利用企業をまったく獲得できなくなったとしても、ARRは1.8倍になることを示しています。
利用者実例
最後に、当社農園があることで、障がい者の方の生活や人生にどのような変化が起きているのかという実例を掲載していますので、ご覧いただければ幸いです。
当社農園の職場定着率は一般の職場と比べてかなり高くなっており、障がい者の方の安定的・継続的な就労の実現、最低賃金以上の給与の獲得、ひいては生活の自立につながっていると考えています。
次回の成長可能性資料は、5月頃を目処に開示する予定です。ご清聴ありがとうございました。