2024年3月期 連結決算ポイント

五十嵐祥剛氏(以下、五十嵐):株式会社アートネイチャー代表取締役会長兼社長の五十嵐です。本日は、当社の決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。

2024年3月期の決算概況についてご説明します。まず、当期の決算実績です。修正計画に対しては、売上高、営業利益ともに上回ることができましたが、前期比では減収減益となりました。

売上高の内訳は、メンズ部門、その他部門は前期比で減収となりましたが、レディース部門は前期比で増収となりました。

上期・通期業績推移(連結)

上期・通期の業績推移です。スライドでは、当期を含めた過去10期分の売上高と営業利益の推移をお示ししています。当期は減収減益となりましたが、売上高は上場以来、2番目の売上高を達成しました。

アートネイチャーの目指す姿

2023年度を1年目とする、3ヶ年の中期経営計画の進捗についてご説明します。当社の目指す姿は、スライドに記載のとおりです。長期ビジョンの実現に向けて「次代を切り拓くアートネイチャーの飛躍」をビジョンとして掲げ、これまでの成果をもとに、さらなる飛躍を目指すステージとなっています。

中期経営計画「アートネイチャー Advance プラン」概要

中期経営計画「アートネイチャー Advanceプラン」の概要です。今回の中期経営計画では、売上高は次の大台である「500億円超」を目指すとともに、経常利益率、ROEはともに2桁に乗せるべく、全社一丸となって邁進しています。

中期経営計画主要テーマの進捗

中期経営計画の1年目にあたる、2024年3月期の進捗状況についてご説明します。「価値創造」「サステナビリティ推進」「市場との対話」といった中期経営計画の主要テーマごとの進捗状況を、スライド右側に記載しています。

この後、一つずつポイントを絞ってご説明します。

価値創造(24/3期業績の進捗)

「価値創造」の進捗をまとめたスライドです。当社は、売上高と国内シェアを最大化させ、国内毛髪市場におけるマーケットリーダーとしてのポジション確立を目指してきましたが、当期は減収減益となりました。

レディース単体のリピート販売は、買い替え需要にうまく取り組むことで計画を達成しましたが、新規販売については男女ともに計画未達となり、当初計画を達成できませんでした。

新規販売の計画未達の要因は、新型コロナウイルス5類移行後の個人消費の活性化をウィッグ購入へ十分につなげられなかったことや、シニア世代のインターネット使用増加に伴うWebでのお問い合わせ対応が不十分だったことなどが挙げられます。

価値創造(新規売上低迷への対応状況)

こちらのスライドでは、潜在需要へのアプローチから、当社顧客として定着するまでのフローをお示ししています。当期に苦戦した新規販売を推進していくにあたり、スライド上段と下段に記載した取り組みによって、販売数量を増やすことに注力しました。

上段の取り組みは、広告からの反響を増やす取り組みです。男性向け・女性向けプロモーション内容の見直しなどを積極的に行ってきました。

下段の取り組みは、広告以外からの反響を増やす取り組みです。従来の新規導入の流れとは異なる新たな経路を作り出すべく、出店施設との連携などに取り組んでいます。これらの取り組みを今後も継続していくことで、新規売上を挽回させていきます。

サステナビリティ推進(バングラデシュ新工場の進捗)

サステナビリティ推進の進捗です。バングラデシュにおける、新工場建設の進捗状況についてご説明します。

新工場設立の目的は、持続的な企業価値向上を目指すべく、フィリピン一国集中生産による自然災害や政治リスクなどのカントリーリスクへの備えや、今後の事業拡大に伴う生産ラインの確保です。

当期の進捗は子会社の設立のみとなりますが、中期経営計画最終年度の工場稼働に向けて、工場の建設開始とともに現地人材の労働力確保などを進めていきます。

市場との対話(改善計画書の取組み状況)

市場との対話についてです。当社は、昨年10月にプライム市場からスタンダード市場へ市場変更しました。

昨年3月には、上場維持基準への適合に向けた計画書を発表していますが、スライドの内容は、現時点における実施状況をまとめたものです。今般、スタンダード市場へ市場変更しましたが、引き続き、中長期的な企業価値のさらなる向上を目指し、計画書に掲げた取り組みを継続して実施していきます。

2025年3月期 通期連結業績計画

2025年3月期の通期連結業績計画についてご説明します。前期は減収減益となりましたが、2025年3月期は増収増益を目指します。

売上面では、男女ともに新規販売活動に注力していきます。売上原価については、物価高および為替の影響による原価増を抑制すべく、原材料の入れ替えなどを検討しています。また、原価率を低減すべく、既存モデルの価格改定なども検討していきます。

販管費については、人員補充や処遇改善などを進めながらも、各種経費を効率的に使用していきます。詳細は、後ほど本多よりご説明します。

計数目標

中期経営計画における、主な経営指標についてご説明します。

中期経営計画の2年目である2025年3月期は、当初計画を下回る修正計画となっていますが、まずはこの計画をしっかりと達成していきます。

新規の売上対策に継続して取り組むことで、売上高を当初計画の軌道に回帰させるとともに、業務の効率化や生産性の向上による収益構造の改善を図り、中期経営計画最終年度の当初計画達成を目指します。

株主還元

最後に、株主還元についてご説明します。2024年3月期より、安定的かつ継続的な配当の維持に努めるという基本方針に加え、新たな配当方針を設定しました。

スライドに記載の方針に基づき、2024年3月期の配当は、中間配当14円、期末配当14円、年間配当28円とします。なお、今期以降もこの方針に基づき配当していく予定です。引き続き、1日でも早く利益率やROEを2桁に乗せるべく、全社一丸となって邁進していきます。

以上で、私からの説明を終わります。続いて、本多部長よりご説明します。

2024年3月期 連結損益計算書の概要

本多敏男氏(以下、本多):上席執行役員 経営企画部長の本多です。2024年3月期の本決算の計数面を中心にご説明します。

まず、2024年3月期連結決算の概要です。当期の売上高は、前期比0.8パーセント減の428億5,000万円となりました。詳細については後ほど説明しますが、新規販売の苦戦が主な要因となっています。

売上原価は、原価率が前期比0.5ポイント増の141億3,400万円となりました。内訳としては、商品原価率が売上構成の変化や円安、物価高の影響で0.1ポイントの増加、スタイリスト人件費率がベアなどの処遇改善の他、固定費的な要素が強いことから売上高縮小の影響を受けて0.4ポイントの増加となりました。

販管費は、前期比1.9パーセント増の260億6,000万円となりました。広告費率は引き続き抑制的な運用により0.2ポイントの減少となりましたが、人件費率はスタイリスト人件費と同様の影響を受け、1.0ポイントの増加となりました。また、その他率は資産除去債務の見直しなどの影響により0.8ポイントの増加となりました。

この結果、営業利益は前期比25.7パーセント減の26億5,400万円となっています。なお、減価償却費の増加は、主に資産除去債務の見直しによるものです。また、設備投資の増加は、主に情報システムの刷新によるものです。そのほか、当期は新工場関連費として約3億円を計上しています。

2024年3月期 商品・サービス別売上高(単体/男女計)

商品・サービス別の売上高です。全体として、リピート売上は堅調、ジュリア・オージェは2桁伸ばしたものの、新規売上が前期を大きく下回った結果、減収となりました。

商品別では、アフターサービスが2022年10月の価格改定等により、前期比5億9,400万円の増収、その他商品は主に通販事業の販売方針の見直しなどにより、前期比3億2,500万円の減収となりました。

2024年3月期 商品・サービス別売上高(単体/男性)

男性向け事業の商品・サービス別売上高です。スライド最下段の「全商品・サービス」欄に記載のとおり、前期比は新規が19.0パーセント減、リピートが0.4パーセント減となり、全体で1.8パーセント減となりました。

商品別では、オーダーメイドウィッグのリピートが伸び悩み前期比マイナス、増毛商品の新規がウィッグ訴求を重視したプロモーション戦略をとったため前期比マイナス、アフターサービスが価格改定により前期比プラスとなりました。

2024年3月期 商品・サービス別売上高(単体/女性)

女性向け事業の商品・サービス別売上高です。スライド最下段の「全商品・サービス」欄に記載のとおり、前期比は新規が16.9パーセント減、リピートが6.3パーセント増、ジュリア・オージェが12.2パーセント増、全体で1.5パーセント増となりました。

商品別では、オーダーメイドウィッグの新規において前期まで好評だったフィーリンシリーズの反響が落ち着いてきたこともあり、前期比マイナスとなりました。ジュリア・オージェは商業施設への集客回復に加え、社内体制を一層強化したため、前期比2桁のプラスとなりました。

2024年3月期 連結経常利益の増減要因

2024年3月期の連結経常利益の増減要因です。スライドにお示ししているとおり、減収に伴う利益減に加え、円安・物価高による売上原価の増加、全社的な処遇改善による人件費の増加などにより、減益となりました。

項目別では、売上総利益の減収に伴う利益減などにより前期比4億4,000万円減、人件費がベアなどの処遇改善により前期比3億5,400万円増、減価償却費が資産除去債務の見直しなどにより前期比2億1,600万円増となり、経常利益は前期比8億1,000万円減の27億2,400万円となりました。

主要商品の月次売上推移(前年同月比)

主要商品の月次売上推移です。スライド右上の主要商品売上高に記載のとおり、新規販売の苦戦により、売上高は男性・女性ともに前期比96.5パーセントとなりました。

月次延べ来店顧客数(前年同月比)

月次延べ来店顧客数です。スライド右上の来店顧客数に記載のとおり、男性はコロナ禍後も漸減傾向が続いていますが、女性はほぼ横ばいで推移しました。

2025年3月期 通期連結業績計画

2025年3月期の計画です。まず、2025年3月期の通期連結業績計画についてご説明します。

今期は女性向け事業を中心に売上高を伸ばし、前期比5.0パーセント増となる450億100万円の売上高を目指します。また、経費全体の伸び率を売上高の伸び率以下に抑えることで、営業利益を前期比9.7パーセント増の29億1,100万円にしたいと思っています。

商品原価については、売上構成の変化や円安・物価高の影響を加味し、商品原価率を0.6ポイント増としています。

減価償却費の増加は、2024年3月期と同様の理由によるものです。また、設備投資の増加は約19億円増の39億7,500万円としています。この内訳は、店舗設備関連で前期比約6億円増の15億1,100万円、システム関連で約3億円増の9億600万円、新工場関連で約8億円増の11億600万円を予定しています。

2025年3月期 商品・サービス別売上計画(単体/男女計)

2025年3月期の商品・サービス別の売上計画です。全体感はスライドに記載のとおり、主力のオーダーメイドウィッグを安定的に成長させつつ、引き続きジュリア・オージェを2桁伸ばす計画です。

2025年3月期 商品・サービス別売上計画(単体/男性)

男性向け事業の商品・サービス別売上計画です。男性向けイベントの導入やインターネットからの訴求など、新たな反響を増やす取り組みによって新規売上の回復に注力し、全体で前期比4億2,000万円増の232億3,500万円を目指します。

なお、商品別では、オーダーメイドウィッグは前期比2億2,600万円増の139億1,100万円、増毛商品は前期比1億4,400万円増の28億4,800万円を目指します。

2025年3月期 商品・サービス別売上計画(単体/女性)

女性向け事業の商品・サービス別売上計画です。新規顧客の受け入れ体制の整備やWeb問い合わせの対応強化の他、女性向け事業全体の連携を強化して新規売上を増やしながら、リピート売上も堅調に伸ばすことで、全体で前期比14億4,500万円増の187億100万円を目指します。

なお、商品別では、オーダーメイドウィッグは前期比1億8,000万円増の86億5,300万円、増毛商品は前期比1億2,200万円増の12億5,300万円を目指します。ジュリア・オージェは、従来の施策に加え、未出店エリアへの出店などにより前期比8億300万円増の52億7,100万円を目指します。

2025年3月期 連結経常利益計画の増減要因

連結経常利益計画の増減要因です。スライドにも記載のとおり、男女の新規売上を回復させるとともに、女性向け事業を中心に売上高を伸ばしていきます。

売上原価は現状を勘案してコスト増を加味するものの、費用全体ではメリハリをつけながら、その伸び率を売上高の伸び率以下に抑え、経常利益は前期比2億2,500万円増の29億4,900万円を目指します。

本計画の達成に向け、全社一丸となって取り組んでいきます。以上で、私からのご説明を終わります。ありがとうございました。

質疑応答:中期経営計画目標達成の施策について

質問者:2025年3月期の売上高は450億円、中期経営計画の最終年度である次の期の目標は523億円と、これまでの伸び率と比べるとハードルの高い目標だと思いますが、どのように達成していくのでしょうか? 例えばさらに出店を増やす、新しいラインを立ち上げるなど、積極的な施策も求められるのではないかと思いますが、そのあたりの考え方を教えてください。 

本多:先ほど会長からもご説明したとおり、前期の目標未達の要因は新規販売の苦戦だったため、今期はまずはそれを解消するために全力を挙げるというのが我々の考え方です。ここでしっかりと結果を出し、その結果を受けて、最終年度である当初目標に挑戦していきたいと考えています。

株主・投資家のみなさまの期待に沿うべく、役職員一同、目標達成に向けて全力で取り組んでいますので、今しばらく成否をお待ちいただければと思います。

質問者:前期の未達分を今期に取り返していくかたちだと思いますが、もし今期で遅れが取り戻せなかった場合は、目標の未達や、目標を下げる可能性もあるのでしょうか?

本多:現時点では先のことをご説明しづらいのですが、まずは今期掲げている売上高450億円を超過して達成すべく取り組んでいますので、その結果次第になると思います。大幅に超過できれば十分届く範囲だと考えていますし、大きく未達になるようであれば、おっしゃるような事態もあり得ると考えています。

質疑応答:業界全体での新規顧客の取り込み状況について

質問者:新規顧客の取り込みに苦戦しているのは御社に限ったことなのでしょうか? 業界全体が苦戦しているのか、なにかご認識等があれば教えてください。

五十嵐:新規顧客の取り込みについては、当社だけでなく、業界全体が苦戦しているというご懸念は合っていると思います。ただし、当社として前期の新規取り込みの悪かった点については、先ほど本多からご説明したとおり、すでにいろいろな施策を行っています。

新規顧客を取り込むためには、市場のニーズにいかに応えていくかということが一番の問題です。当社の場合は、特に新商品やヒット商品をいかに出していき、市場に告知して認めてもらうかということが売上増につながっていきます。

そのあたりは開発や広告等でさまざまな展開を目論んでいるため、期待を裏切らないような成果を出していきたいと思っています。

質疑応答:市場におけるシェアの変動について

質問者:数年前までは、業界内での御社のシェアを男女別に開示されていましたが、なんらかの事情によって開示されなくなったと思います。公表できる範囲で、シェアの変動について教えてください。

本多:シェアについては、情報を提供していただいている会社からの「数字の開示や他社との比較をやめてほしい」との要望により、自社の数字の大きさしか開示できていない状況です。

約2年前の結果によると、徐々に伸びているのは、当社のシェアの推移です。こちらは、男性と女性どちらも伸びていると認識しています。前期実績については、おそらく現在、来年度に向けて各社のものを取りまとめていると思われます。

市場の大きさ自体が会社が示したような実態であれば、今期の売上高でも相応にシェアを維持できているか、伸びている可能性もあると考えています。

質疑応答:株主還元施策について

司会者:「当期より新たな配当方針を設定されましたが、配当金や株主優待などの株主還元施策について、今後どのように考えているかを教えてください」というご質問です。

五十嵐:配当金については、前期より配当方針を新設しました。連結配当性向40パーセント以上を基本に、年間配当28円を下限として、連結業績に応じた配当水準の向上を目指します。

ただし、ROE10パーセント超を達成するまでは、連結配当性向50パーセント以上を基本としています。今後の利益配分については、今回新設した配当方針に則って配分を決定するとともに、継続的な安定配当の確保に取り組む所存です。

自社株買いについては、当社の今後の業績を考慮し、事業展開や資本政策に加えて、流動性低下などのデメリット面も配慮の上で、慎重に検討していきたいと考えています。

株主優待については、個人投資家からのリクエストをよく耳にしますが、内外環境を勘案した上で、慎重に検討していきたいと思っています。