業績サマリー

田角陸氏(以下、田角):みなさま、本日はお集まりいただき、誠にありがとうございます。ANYCOLOR株式会社代表取締役CEOの田角です。

釣井慎也氏(以下、釣井):取締役CFOの釣井です。2024年4月期第3四半期のハイライトをご説明します。全体像としては、売上・利益ともに第3四半期累計で概ね計画どおりの水準で着地しています。

もともとこの第4四半期は、コマースやイベント、企業案件等のスケジュールから、今期で一番大きな売上・利益を計上する見込みで、この達成に向けて目下取り組んでいるところです。

2024年4月期 第3四半期決算

国内事業である「にじさんじ」は2024年4月期第3四半期において、特に業界環境その他について大きな変化は生じておらず、順調な状況だと認識しています。

ライブストリーミング、コマース、イベント、プロモーションの領域別では、特にコマース、イベントが好調でした。「にじさんじ」全体で見ても、第3四半期単体で概ね計画どおりの着地です。

特にイベントについては、12月に開催した「にじさんじフェス」が昨年と比較してかなりの盛り上がりを作れたと認識しています。

「NIJISANJI EN」については、少し課題があると思っています。成長に向けての安定的な事業体制の構築が必要だと考えており、VTuberの活動サポートや、そのサポートの先にあるいろいろな魅力的なコンテンツの提供、さらにグループとして拡大していくための各分野での取り組みを強化しているところです。

コスト面については、「にじさんじフェス」の売上は非常に良かった一方で、コスト面では、当該イベントはイベントチケットのみでは大きな赤字計上となり、それが主因となり第3四半期のコスト面は想定より悪くなりました。

売上高推移(四半期)

売上高の四半期ごとの推移です。「にじさんじ」は日本国内で展開している事業で、全体としては順調です。先ほどお伝えした「にじさんじフェス」については、2024年4月期第3四半期に7億4,000万円分のチケットを売っています。

第2四半期に実施した同様のイベントでは、チケット総額は8億3,000万円で、そのうち1億9,000万円は別イベントによる売上を計上したものでした。したがって「にじさんじフェス」のチケット売上は6億4,000万円ぐらいで、これが2024年4月期第3四半期には7億4,000万円に成長したイメージです。

開催規模やオンラインチケットの売上、その他を見ても、非常に順調な結果だと思っています。

一方で、「NIJISANJI EN」は前年同期比で大きく落ち込んでいます。昨年の第3四半期は特定商材が非常によく売れたことに起因して大きな売上につながったのですが、2024年4月期第3四半期にはそのような商材の売上が昨年比では落ちついた着地となり、それが前年同期での減収につながりました。

これを踏まえた今後の方針の1つ目として、「NIJISANJI EN」をさらに盛り上げていくために、安定的なVTuber活動をサポートする体制を充実させていきます。2つ目に、ファン目線に立った盛り上がりを作れるような施策を数多く打っていきます。その上で、VTuber数を増やすことも含めて、グループとしての活動を拡大させていくことにも取り組んでいきます。

営業利益率推移(四半期)

2024年4月期第3四半期のコスト面は想定よりも悪かったですが、内訳としては「にじさんじフェス」の費用が大きなところです。ここで想定以上にコストがかさみ、イベントチケットのみでの赤字幅は過去最大となりました。それにより、スライドの赤い折れ線グラフで表した直接変動費率がかなり上昇しました。

「にじさんじフェス」の費用がこれほどかさんだ理由の1つとして、このイベントの開催形態があると思っています。他のイベントと違って「にじさんじフェス」は入場料のみで楽しめるパート等があり、収益に対して工数が多くかかるなど、構造上コストが重くなります。

「にじさんじフェス」の形式のイベント自体は基本的には年1回のため、このようなコストが恒常的に発生するわけではありません。ただし、イベント費用の適正化は従前からの課題であり、しっかりと取り組む必要があると再認識しています。

それ以外のコマースを中心とした領域では、コスト構造は前四半期比で改善しています。そのような中でも、2024年2月から一部の公式グッズの値段改定を行っており、足元で全体のコストの適正化にしっかりと取り組んでいるところです。

VTuber数およびANYCOLOR IDの推移

VTuber数および「ANYCOLOR ID」の推移です。「ANYCOLOR ID」 の推移については、引き続き新規のファンの流入は環境が変わらず、順調に進んでいます。

VTuber数は、第3四半期では「にじさんじ」で日本から3名の新規デビューと、1名の卒業がありました。「NIJISANJI EN」は新規がなく1名の卒業で、2024年3月に3名が追加となりました。

日本国内の「にじさんじ」からは今期を通じて6名のデビュー、「NIJISANJI EN」からも6名のデビューとなっています。期初に想定していた計画比ではデビュー数がやや少なくなっています。

2024年4月期 業績予想の進捗

以上を踏まえ、今期予想に対する進捗と足元の取り組みについてご説明します。第3四半期までの進捗は少し計画を上回っていますが、概ねインラインです。これは売上も利益も同じ状況です。

第4四半期に関しては、もともと予定していた施策を通じて、想定以上の売上・利益を計上し、通期業績をしっかりと達成していきたいと思っています。

加えて、長い目線での取り組みとして、1つはVTuber数の拡充が必要だと考えています。質の高いVTuberを定期的にデビューさせていくことに向けた取り組みを進めています。もう1つは、デビューしたVTuberがファンからしっかりと認知され、人気や熱量を高めていき、最終的に会社としての収益も最大化できるようなコンテンツ作りおよび配信を目指し、各種施策を進めています。

継続的なVTuberデビュー

田角:事業進捗についてご説明します。今期は「NIJISANJI EN」および「にじさんじ」それぞれで6名がデビューしています。特に、「にじさんじ」には、つい数日前に国内でデビューを発表した「3SKM」という男性3名のユニットがいます。こちらについて3月15日の夜に初配信のリレーとミュージックビデオの公開を行います。

デビューの実績は、当初のスケジュールよりも少し遅れている部分があります。これには「NIJISANJI EN」 と国内とで別の要因があるのですが、共通する要因の1つとして、研修などの体制構築不足があります。

対策として、オーディションからデビューまでのスケジュールの中で、しっかりとしたコンプライアンスの研修や、人間性を育成し見極めていくようなフローを整えていく必要があると思っています。

国内では、「バーチャルタレントアカデミー(VTA)」を行っています。ここでは、活動を継続し中長期的に活躍していけることと同時に、能力的にも成長していけることを目指して歌やトークのレッスンを行っています。その中で、中長期で活躍できるタレントの素質を持っていただけるように、人間性についてもしっかりと育成し、見極めていきます。そのような姿を目指し、「VTA」を引き続き改善していきます。

「NIJISANJI EN」 に関しては、今は「VTA」のようなアカデミーは用意していないのですが、引き続き、オーディションからデビューまでの工程の中で、中長期で活躍できるVTuberを輩出するべく研修体制を強化します。これにより、スケジュールの遅延やコンプライアンスの課題が起きないような体制作りを進めていきたいと思っています。

ユニット展開施策の状況

ユニット展開の状況です。「にじさんじ」については、「ChroNoiR(クロノワール)」というユニットが、2024年2月にセカンドフルアルバムを販売開始しました。また、「ROF-MAO(ロフマオ)」は2023年11月に2周年のグッズを販売開始しています。紹介したユニットのみならず、引き続き番組活動、音楽活動、グッズ販売を中心に、ユニットとして応援していただきやすいコンテンツ作りを継続していきます。

「NIJISANJI EN」の施策の例としては、「Noctyx(ノクティクス)」という4名の男性VTuberユニットによる「Noctyx LEVEL UP!」という公式番組を投稿しました。2024年4月期第3四半期では、彼らの2周年を記念してオリジナルの楽曲も公開しています。加えて、本人たちが考えプロデュースを担当した、オリジナルのグッズも展開しています。

このようなかたちで「NIJISANJI EN」でも、国内のユニットを模したかたちで番組、音楽、グッズのプロデュースを行っていきたいと思っています。また、「NIJISANJI EN」では、ユニットとしての活動以外の部分でも「NIJISANJI EN」全体のイベント企画や、大会あるいは番組や楽曲のような活動のコンテンツも増やしていき、「NIJISANJI EN」の視聴者との信頼関係の構築にしっかりと取り組んでいきたいと思います。

にじさんじフェス2023

第3四半期に行った「にじさんじフェス2023」についてのご報告です。こちらは12月22日から24日までの約2日半、東京ビッグサイトで実施しました。このフェスは、通常の音楽イベントのようなステージやグッズの販売に加えて、アトラクションや企画展示も設けて、1日中いても楽しめるようなイベントとして展開しました。

結果として、来場チケット販売枚数は約6万5,000枚でした。これは抽選で当たった方が6万5,000人で、当選の倍率は4.4倍と、非常に多くの方からチケットを申し込んでいただいた結果です。オンラインの視聴チケットに関しても、開催した5つのステージ合計で約18万枚、チケット収入としては昨年比115パーセントという着地となりました。

グッズの収入については、会場購入が3万7,000人、事前通販が3万7,000件、事後の受注が5万4,000件で、昨年比237パーセントと大きく伸びています。背景としては、フェスの会場で物販を利用しやすくなったことなどがあります。

フェス全体での収入は、昨年比48パーセントの増収です。1日中楽しめるようなフェスイベントがファンの満足度向上、およびファンとの信頼関係の構築やエンゲージメントの向上に効いてきていると実感しています。

直近での取組み施策

直近で取り組んでいる施策についてです。第4四半期に計上されるものとして、コマースの施策で、2月に「にじさんじ」6周年グッズと妖怪イラストグッズを販売開始しています。

イベントの施策においても、2024年4月20日と21日に大阪城ホールにて、ユニットである「ChroNoiR」と「ROF-MAO」がそれぞれイベントを開催します。

これらの施策は年間を通しても非常に大きな施策であり、第4四半期は今期最大規模の業績になる見通しです。

プロモーション領域における施策例

第3四半期に行ったプロモーション領域の施策の例をご紹介します。極楽湯さまとのコラボレーションは、我々がIPコラボと呼んでいる、VTuberのキャラクターとしてコラボレーションをさせていただいた取り組みです。

ほけんの窓口さまとのコラボレーションでは、「YouTube」上の配信でほけんの窓口さまをタイアッププロモーションとしてご紹介しました。PILOTさまとのコラボレーションでは、IPコラボというキャラクターとしての活用と、「YouTube」上でプロモーションのお手伝いをするタイアッププロモーションの両方を行ったものです。

それぞれクライアントさまからもファンのみなさまからも非常にご好評をいただいている状況で、このプロモーションの領域は収益面でも新規視聴者やファン獲得の取り組みとしても引き続き重視していきたい領域です。

配信スタジオへの設備投資

配信スタジオの設備投資に関するご報告です。配信スタジオについては、先ほどご説明したタイアップの配信や、番組のようなコンテンツの提供、生放送コンテンツの提供、3Dと2Dそれぞれのイベントのコンテンツを配信する時などに活用しています。

このように我々のコンテンツを作り出す基盤となっているスタジオを、所属VTuberの人数や作っていくコンテンツの増加などに伴って、これまでの3倍規模に機能を拡張しようと計画しています。

それに加えて、技術的なアプローチとしてモーションキャプチャーやAR技術を活用でき、ファンやユーザーにさらに新しいコンテンツや目新しいコンテンツを届けて楽しんでいただけるスタジオを作りたいという考えもあり、設備投資をしようと取り組んでいます。

こちらは2024年秋頃を運用開始のめどに、一定規模の設備投資を実施予定です。

事業投資と株主還元の基本的な考え方

事業投資と株主還元の基本的な考え方についてご説明します。先ほどご説明したような設備投資に加えて、事業成長のための投資という意味で人材採用への投資を中心に考えています。コンテンツを作っていくという観点では、一定の規律の中で人材採用への投資を継続していく必要があると思っています。

まずは事業成長に対しての投資を最優先としつつも、第2四半期決算報告の後に行ったような、自己株式の取得といった株主還元や、新規事業、M&Aなどの将来の投資に向けた留保も一定の規模で行っていく必要があると思っています。

全社的な方針については、通期決算のタイミングをめどに出していきたいと思っています。

質疑応答:「志摩スペイン村」の印象について

釣井:「『志摩スペイン村』を訪問されていましたが、印象はいかがでしょうか?」というご質問です。

田角:先日、プロモーション領域で当社所属VTuberがコラボレーションしている「志摩スペイン村」に遊びに行きました。一昨年も当社所属VTuberを起用していただきコラボレーションしましたが、それが好評だったようで、今年も実施いただいている状況です。

実際に「志摩スペイン村」に足を運んでみて、当社所属VTuberのぬいぐるみを持って写真を撮るなどして楽しんでいる方を非常に多く見かけました。この魅力ある「志摩スペイン村」をご紹介させていただくことで、我々としてもその効果を発揮できたと考えています。足を運んでみることで、実際のお客さまの熱量などを強く実感できたと思っています。

質疑応答:株式市場との対話のあり方について

釣井:「売上・利益ともに計画に対してインラインとのことですが、株式市場はさらに強い数字を期待していたようです。そのような意味で、株式市場との対話を改善したほうがいいと思いますが、その点についてどう考えていますか?」というご質問です。

まず、反省すべき点があったというところは、ご指摘を真摯に受け止めて改善していきたいと思っています。

その上で、売上・利益の期待値については、基本的には我々の声の届く範囲、開示できる範囲において、当初から出している業績予想に向けた進捗を継続的にお伝えしています。その中での「計画比でインラインだ」というメッセージは、これまでのコミュニケーションとはずれていないと認識しています。

株式市場が計画比でさらに上の数字を期待していることについては、昨年は複数回の予想修正を行った実績があるなどいろいろな要因があると思います。足元では、個別に見ると少し強いところと少し弱いところがありますが、全体としてはインラインです。この背景には、我々が計画を立てて実行していくことを繰り返す中で、だんだんと計画の精度が上がってきていると思っています。

質疑応答:「にじさんじ」セグメントの売上高について

「第3四半期の『にじさんじ』セグメントのコマース売上高について、第4四半期への期ずれが大きく生じたなどの特殊要素はありましたか?」というご質問です。

第3四半期のコマース領域の売上高は、基本的には当初の会社計画を少し上回るかたちで着地しています。そのため、その意味では計画との比較でずれているものはありません。

補足としては、「にじさんじフェス」は物販が非常に良く、物販のうちボリュームが一番大きい事後の受注が第3四半期に入っておらず、第4四半期への計上になっています。そのため「にじさんじフェス」関連の物販の3割から4割は第4四半期に計上されます。

質疑応答:通期業績計画に影響する要素について

「通期の業績計画に対する上振れ、下振れの要素について、どのようなものが考え得るのか教えてください」というご質問です。

現時点では大きな上振れ、下振れは見えていないと思っています。現時点で第4四半期に実施しようと思っていた施策については、開示済みか未開示かにかかわらず、計画比で大きなずれは生じていません。

2月にすでに実施済みのもの、またはこれから実施するものの結果は、見えているものも見えていないものもありますが、想定に対してそれほど大きくずれることはないと思っています。

コマースの比率が多い我々にとっては、発送がずれることによる期ずれの可能性は常にあります。足元でその懸念が大きいわけではなく、可能性の話です。

質疑応答:「NIJISANJI EN」の体制強化について

「『NIJISANJI EN』の体制強化に関して、具体的にどのようなことをどのような時間軸で取り組むのか教えてください」というご質問です。

田角:まずは既存タレントとの信頼関係を構築することが、ファンとの信頼関係の構築につながってくると思っています。

その意味で、足元でマネジメント体制の土台をしっかり作っていくことを行っています。それに加えて、数ヶ月単位では、「NIJISANJI EN」全体が盛り上がり、ファンのみなさまとの信頼関係をしっかりと作れるようなコンテンツを企画しているところです。

質疑応答:イベント物販の売上計上について

釣井:「イベントで売れるグッズについては、カバー社同様にイベントセグメントへ計上されるものと理解していいでしょうか?」というご質問です。

カバー社の計上の詳細については存じ上げません。我々の会社は、イベント開催に伴って販売されたチケット収益のみをイベント領域の売上として計上し、イベントに関連して販売されるグッズはコマースの領域に計上しています。

理由としては、イベントに関連したグッズについて、どこまでをイベント関連とするかがややこしいところがあります。チケット販売とグッズ販売という線引きが一番クリアであるため、我々はそのように計上しています。

質疑応答:事業進捗と第4四半期の見通しについて

「事業進捗は計画どおりとのことですが、カテゴリーごとでは濃淡があるように思います。また、第4四半期には強い業績を見込んでいるようですが、どのような施策が寄与するとお考えですか?」とのご質問です。

カテゴリー別の濃淡については、「にじさんじ」は計画を上回るペースで進捗しています。一方、「NIJISANJI EN」は計画をやや下回っており、少し課題感がある状況です。

ビジネスの領域別では、コマースとプロモーションの領域は当初計画していた以上の進捗ができています。

イベントは全体のボリュームがそこまでないのですが、トップラインは基本的に計画を上回るかたちで進捗できています。ただし、コストサイドはご説明したとおり、特に直近の第3四半期で開催したイベントについて課題がある状況です。

ライブストリーミングという配信から生まれてくる収益は、思っていたほど伸びておらず、計画を少し割っている状態です。この背景としては「YouTube」全体の盛り上がりの影響もあると思いますし、我々の新規デビューを含めたペースが少し想定より遅いこともあります。

第4四半期については、コマース、イベント、プロモーションの領域で強い企業案件が積み上がっており、パイプラインとして寄与していきます。

コマースは、2月にローンチしている6周年記念グッズ、妖怪イラストグッズ、そしてスライド右側にある2つのイベントに関連したグッズも計上されます。また、「にじさんじフェス」の事後受注の発送も控えています。

この2つのイベントは、「にじさんじフェス」とは開催フォーマットが異なり、100パーセント自社主催です。そのため、イベント領域での計上額も強くなってくると見込んでいます。

質疑応答:中期的な成長性について

「中期的にはどの程度の成長率を想定されていますか? 第2四半期と第3四半期の状況では来期の成長率が懸念されます。『にじさんじフェス』の収益性はコントロールできますか?」というご質問です。

田角:事業投資と株主還元と近い話かと思っており、また今期の決算のタイミングで開示できればと考えています。一定の成長をしていける企業を目指してやっていきたいと考えています。

質疑応答:「にじさんじフェス」の赤字とコマース売上について

釣井:「『にじさんじフェス』は赤字とのことですが、これは関連コマース売上を含めて赤字なのでしょうか? また、フェス関連のコマースを除けば国内のコマース売上は前年同期や前四半期をやや下回る水準にも思えるのですが、そのような理解でいいでしょうか?」というご質問です。

フェスの赤字については、チケット収益に対してこのフェスを開催するのにかかった会場費や設営費などのいろいろなコストとの比較で、コマースの売上や製造原価を除いた上での赤字です。コマースの売上まで含めたイベント関連で発生した収益と、イベント関連で発生したコストをすべて比較すると、しっかり黒字を出しています。

ただし、チケット収入のみの比較では「にじさんじフェス」は赤字であり、過去の類似イベントと比較して収益性が悪かったことは事実です。

国内コマースの売上については、前四半期と比較しても強いと思います。その背景として、「にじさんじフェス」は外部の会社との共催イベントで、チケット収入やグッズ収入も含めてイベントの売上が全額計上されるわけではなく、共催比率に応じて総額の一定割合のみ計上となっています。グッズの販売に関しても総額ではなく共催比率に応じた計上です。

そのあたりも加味して考えると、第3四半期についてコマースの売上が前四半期比で弱かったとはいえないと思っています。

質疑応答:セレン龍月さんの契約解除の影響について

釣井:「セレン龍月さんの契約解除について、IRとしてのリリースも一部の開示であり、その後、大きく炎上したと思います。こちらの第3四半期、第4四半期への影響を教えてください。

また、これによって『NIJISANJI EN』の展開がさらに難しくなっているように感じていますが、考えをお聞かせください」というご質問です。

田角:予定していたコンテンツの提供の延期が発生しているのは事実で、スケジュールに関する影響はあると考えています。

これに対し、今後、大会だけでなく「NIJISANJI EN」全体を盛り上げていくような施策をしっかりと展開していくことで、ファンとの信頼関係を再構築していく必要があると考えています。

当社所属のVTuberを応援してくださるファンの方は、いまだしっかりと応援してくださっている状況だと思っています。そのような方に喜んでいただけるようなコンテンツ作りを行うことで、信頼関係の回復に取り組んでいきたいと思っています。

質疑応答:海外展開に関する取り組みについて

釣井:「カバー社が北米に営業拠点を設けることがプレスで取り上げられていましたが、御社の海外展開に関する取り組みをあらためて教えてください」というご質問です。

田角:先ほどご説明したようなコンテンツの展開に加え、ビジネス面での展開としてコマース、ライセンス、営業、コンテンツ制作等も含め、人材の採用を北米だけではなくアジア圏でもしっかりとやっていくべきだと思っています。

いろいろな言語圏、文化圏での採用が必要だとして、海外在住の方の従業員としての採用を足元で進めている状況です。

質疑応答:成長率や現在のフェーズについて

釣井:「一定の成長率とはどの程度を見込みますか? 成長企業とするならば今はどのフェーズですか? 投資時期ですか? それとも回収時期ですか?」というご質問です。

成長率は開示していないため、具体的な数字をお伝えするのは控えたいと思います。一定の成長を継続していくという趣旨でご説明しました。

フェーズに関しては、今、我々がビジネスを開始して6年が経過したところですが、我々の事業は何十億円を投下して何年後かに回収するというビジネスではなく、投資と回収のサイクルはより期間が短く高サイクルで行われています。

ファンの方々に魅力的なコンテンツを届けるために、人を採用し、必要な配信設備やその他の拡充をし、VTuberをデビューさせ、ファンの方から反響をいただき、それが収益につながっていきます。これ自体は、投資時期、回収時期をあえてお伝えするほど息の長い、大規模な投資を伴うものではないと思っています。

質疑応答:M&Aの検討について

釣井:「通期決算でM&A等の考え方を公表するとのコメントがありましたが、これまで基本的にオーガニック成長に注力しており、M&Aを積極的に検討されていなかったとの理解でよろしいでしょうか?」というご質問です。

田角:M&Aを今初めて検討し始めたわけではなく、機会があれば前向きに捉えたいと思っていたところです。ただし、その方針やどのような企業を目指していくのかも含めて、しっかりと開示した上で取り組むべきかと思っており、その意味で通期決算にてM&Aや新規事業に対する考え方を開示したいとご説明した次第です。

質疑応答:課題の解決や成長期待維持のための取り組みについて

釣井:「課題の解決に向け、人材の手当など御社内で足りないリソースにはどのようなスピード感で取り組む予定でしょうか? また、成長企業として評価されるために、競合であるカバー社が示すような海外での成長やメタバースへの投資など、成長期待を維持するための取り組みを教えてください」というご質問です。

田角:足元で課題がいろいろある中で、「NIJISANJI EN」を中心に、第3四半期で採用やコンテンツ制作、マネジメントの体制についてしっかりと取り組み、着実に準備を進めています。また、先のスケジュールについても、結果や反応を見ながら引き続き迅速な対応をしていきます。

成長企業としての評価については、オーガニックの成長戦略や、資金をどのようにアレンジしていくのかも含め、今まさに開示できるかたちで取りまとめている状況です。今期の決算のタイミングで、中長期的な部分に関してご説明できればと思っています。

質疑応答:「にじさんじ」の視聴回数、視聴時間の推移と今後について

釣井:「期初から足元までの『にじさんじ』の視聴回数、視聴時間はどのような推移を描いていますか? また、今後の成長可能性や勢いについても目線をお聞かせください」というご質問です。

田角:ショート動画が流行りはじめたことなど、いろいろな環境の変化はありつつも、視聴時間や再生回数は着実に伸びている状況です。もちろん、月次で休暇の時期は大きく伸びるといったボラティリティはありますが、コツコツと伸びてきています。

質疑応答:前回の「にじさんじフェス」の事後通販について

釣井:「前回の『にじさんじフェス』の事後通販は、第2四半期に計上されているのでしょうか? それとも第3四半期でしょうか?」というご質問です。

前回の「にじさんじフェス」の事後通販は、第3四半期での計上となっています。