投資遍歴・ルーティンについて教えてください!

富山蔵人(以下、富山):ログミーFinance事業部長の富山です。本日はよろしくお願いします。

「ログミーFinance」は、3年前には有料掲載企業数100社にも満たなかったところから、現在は掲載実績1,500社の規模(2024年2月時点)にまで成長しており、個人投資家ユーザーの方々の利用もどんどん増えています。リテラシーの高い方が特に多く、投資歴や投資額が多い方など、コア層に近い方が記事を見てくれている印象です。

「ログミーFinance」の多くの記事を読み込んでくれて、利益を出している個人投資家の1人として、今回はDAIBOUCHOUさんにお話をうかがいます。どのように「ログミーFinance」を活用しているかを中心に教えていただきたいと思います。

「超分散投資」の手法に行き着いた経緯

DAIBOUCHOU氏(以下、DAIBOUCHOU):私自身の投資歴は2000年5月から現在までで、もうすぐ25年になります。基本的にはバリュー株を対象として、ROEを重視しています。小型株も対象で、保有期間は中期くらい、デイトレではないが長期投資家でもなく、というところです。

投資と売却のルールとして、投資先は自分の理解が及ぶ業界、かつPERが10倍前後と割安なところを狙います。例外としてすごく成長してる場合は20倍、30倍でも買いますが、基本はPER10倍前後で、年間の利益成長が10パーセント以上を狙えるところとしています。

投資のルーティンとして、決算情報で数字の推移を見て、その裏付けとして決算説明資料を見たり、「ログミーFinance」の文字起こしを読み込んだりしています。

売却の際は、新しく買いたい銘柄やすでに持っている銘柄との相対を含めて、「株価が下落した」「次の決算が悪かった」と仮定してそれでも持っていられる銘柄か? ということを考えて判断します。魅力的かどうかを自分に問いかけて、あまり自信がなかったら売却します。

例えば「上方修正すると思ったら下方修正した」「伸びると思っていたのに減収減益の予想が出た」など明確な悪材料が出たら売りますが、よほどでない限り起こらない事象です。あとは、より上がる銘柄に乗り換えないとパフォーマンスが悪くなるので、そのようなことを考えて売却を判断します。

今日は保有している銘柄リストを用意しました。ここに載っていないものもありますが、上位122銘柄が記載されています。

富山:超分散投資ですね。一般的な機関投資家よりも組入数が多そうです。アクティブファンドでも多くて300銘柄、中には100銘柄くらいで構成されてるところもあるかと思います。

DAIBOUCHOU:20銘柄くらいに絞っているファンドもありますね。私はそれよりも分散していて、一番多いところで2.1パーセントと投資比率としてはなだらかだと思っています。

富山:一個人投資家としてうかがいたいのですが、超分散投資の手法に行き着くまでの経緯を教えていただけますか?

DAIBOUCHOU:「個別で20パーセント下がった」などということは必ずあるので、そのような個別リスクをなくそうという考えです。

例えば造船セクターで、名村造船所だけに1億円投資するのと、名村造船所と三井E&S、三井海洋開発、ジャパンエンジンコーポレーション、など分散するのとで、造船セクターごと上がれば同じくらいのパフォーマンスになりますが、下がるときはまちまちです。個別よりも、そのセクターの調子が良くなると見て分散で買うほうが、日々のパフォーマンスも安定する上に楽ということになります。

また、どの業界も調べることはだいたい共通していますから、特定のセクターにフォーカスしていろいろな銘柄を見ているほうが、身に付く知識も何かと増えると思います。見るべき項目が同じであれば分散したほうが楽ですし、パフォーマンスが多少劣後したとしても許容できます。

私のようにフルポジションで保有するためには、当然ながらリスクを分散しなければなりません。個別株投資に集中する分、各銘柄のポジションを控えめにしてリスクを軽減させるように、分散したほうがよいと考えています。

相場全体が大暴落して2割、3割下がってしまうのは仕方ないとして、「個別で20パーセント下がったから、自分の資産も20パーセント下がりました」となってしまうと困るので、そのようなリスクをなくすために分散しています。

当初は「株式投資で儲かるわけがない」と思っていた

富山:もともとの保有資産や運用している金額が一定あるからこそ、分散投資の発想になるのかもしれないと思ったのですが、DAIBOUCHOUさんが投資を始めた当時はどのようなスタイルだったのでしょうか?

DAIBOUCHOU:そこそこ分散するスタイルでした。当初は資産バリュー株を4つか5つ分散して50万円ずつ、上限はだいたい60万円と決めて買いました。今みたいにセクターがバラバラということはなく、PBRの低いもの、業績が安定してるものを中心に選びました。

始めたばかりのときは株式投資で儲かるわけがないと思っていたので、あくまで損しないかたちを目指していました。PBRが低いほうが株価は安定しているし、割安感が是正されれば儲かるに違いない、という考えでした。そのような銘柄を複数持てば、どこかが振るわなくてもどこかがカバーしてくれるに違いないということで、そもそも分散思考だったと言えます。

その後は不動産セクターに絞りました。ここではサミーの株を売買した経験から、上昇した銘柄をフルで取りきれなかった反省があって、上がるものがそのまま上がり続けることも多く、それを下手に切るとせっかく良い銘柄を捕まえたのに損してしまう、機会損失につながるのだと学びました。

不動産は非常に良い投資機会で、株価も上がっていたし市況も良かったので、とは言え同じ銘柄で信用二階建てすると危険だからいろいろな銘柄で分散しました。さらにポジションを増やすことがパフォーマンスを一番良くすると考えて、そのときに信用取引を始めています。

富山:信用取引を始めたのはいつ頃でしょうか?

DAIBOUCHOU:投資を始めてから3年、4年くらい、年代にして2003年から2004年くらいです。不動産が盛り上がっていた時期でした。

レバレッジをかけるのはリスクも高いものですが、例えばアーネストワンとフージャースコーポレーションが上がっていて、一方に寄せるともう一方の上昇は取れないということがありましたが、両方を取るには信用取引をするしかない、と。そこで仮に下がるとして、そのときは離れればよいし、個別ではもっと他の選択肢があるだろうと考えました。結果としては、業績予想どおりの決算が出て上昇しました。

業績予想どおりになるかどうかは、公式ホームページを見ればわかります。マンションは竣工前に完売するのが基本なので、売れているかどうかは物件の情報を調べて確認します。その決算期において引き渡す予定のものがすべて完売していれば、業績予想どおりになるということです。

ただ、当時はインターネットを活用して株式投資を行うことがそれほど一般的ではなかったので、そのやり方で儲かっていたとも言えます。いわゆる金融ビッグバンが起きて、2000年頃にネット証券が参入してきた、そのような時期です。

当時は「Yahoo!ファイナンス」の掲示板を使っていて、銘柄の情報のやり取りなどを行っていました。サミー株を話題にする掲示板には有力な人がたくさんいて、それで知り合って、オフ会も開催しました。「ログミーFinance」のような便利なサービスはなかったですからね。

現在も、日経新聞などにニュースが出ているのを見て、異常な株価になった銘柄などがあれば「何があったのか」と掲示板で調べています。情報の開示があって株価が動いているのならわかるのですが、そうではない場合です。

機関投資家が買いたくても買えない「小型・割安株」を狙う

富山:3年目、4年目で信用取引を始められたということですが、当時を振り返ってみて「リスクの高いことをしていたな」など、思うところはありますか?

DAIBOUCHOU:2008年のリーマン・ショックで資産を減らすことのつらさ、苦しさを経験していますから、それに比べれば大したことないかもしれません。当時、不動産が2003年くらいから相場が上がって、いつまで続くかわからないけどすごく上がっているし、業績も非常に伸びていたし、株価も上昇していて、「とりあえず上に行き着くまで挑戦してみよう」という気持ちでした。

信用取引もフルレバレッジをかけていたのは1年くらいで、2004年5月に一気に下がって大きく損したときに、現物100パーセントに対して100パーセント乗せて程度に抑えました。リスクが高いことには変わりないので、今はそのやり方を取ることはないですが、市況などが過去に戻ったらやるかもしれないですね。

ただ、そのときほど儲けられるチャンスが今あるかどうかはわかりません。あのときはインターネットが普及し始めて、Web上で決算説明資料や決算短信を読めるようになって、ちょうど儲けやすいタイミングだったと思います。

銘柄の情報を検索できるようなサービスはなかったから、四半期業績を手打ちで計算して「減益だけど直近の四半期業績が良い」「月次で見ると良い」というような情報を得るだけでも優位性がありました。インターネットは整備され始めたものの、情報が流通・普及するまでに時間がかかったことにチャンスがあり、勝ちやすかったと思います。

今は良くも悪くも、情報が共通して伝わりやすい状況になっているので、レバレッジを張って挑戦するほど優位性があるかどうかと言うと、自分にはちょっと自信がないです。情報が行き渡りやすく、すぐに結果が出て短期で利益を獲得できる可能性はあると思いますが、以前ほど単純ではないと思います。

ですから今は「増やす」ことより「守る」ことに重きを置いています。額的には十分儲かると思うので、インデックス投資、プラスアルファくらいでもよいかなと。ただ、フルポジションに加えてレバレッジは今も3割程度かけていて、分散はしつつもリスクは張っています。

2005年は不動産流動化の流れがあり、当時は純資産100億円くらいの流動化銘柄を保有していました。今の不動産株で例えれば、例えば霞ヶ関キャピタルのように人気の銘柄が多く、流動性もあったので安心感がありました。

今私が保有している銘柄は、流動性の高いものが一部ありますが、そうでない銘柄が多いので、そのような観点では集中投資しにくいと考えています。2005年頃は10銘柄程度の分散や、1銘柄で数千万円保有していても売買に困りませんでしたが、今では数十万円ずつなど、少しずつでないと売れない銘柄が多いです。

富山:投資対象として1日の売買代金ではどのくらいの目線ですか?

DAIBOUCHOU:だいたい5,000万円以下です。1,000万円、数十万円ということもありますし、たまに出来高がないものもあります。

富山:ファンドマネージャーや機関投資家ですと、そもそも出来高のないところ(5,000万円以下)は買いに行かないスタンスですね。

DAIBOUCHOU:もちろん出来高があるほうが良いのですが、出来高がなくて周りが買わないということは、入っていくチャンスがあるとも考えられます。

人気のない銘柄でもかなりのロットを買うことがありますが、決算の翌日など「出来高があるときに売れば何とかなる」と思いますし、出来高がなくてもプラマイゼロで良いだろうと考えます。割安で買っても、業績が成長したら株価も上がって人気も出るだろうから、そのときに売ろう、という判断ができるのです。

富山:なるほど、機関投資家が買いたくても買えないところを狙い撃ちするのですね。

DAIBOUCHOU:そのとおりです。そこで小型株を狙います。大型株は、まず調べるのに大変時間がかかりますし、調べたわりには優位性がなく、株価は適正であることが多いです。市場全体が成長するかどうかで見るとマクロの話になってきますし、ここは機関投資家にはかないません。

市況が悪かったとして、市場の中の1ポジションにフォーカスして、そこを確実に攻めて獲得することは個人投資家でもできます。むしろシェアが小さいからこそ将来大きくなりやすいですし、シェアが1パーセントから2パーセントになって売上が2倍になる、ということも十分にあり得ます。

『会社四季報』を通読しても、自分が適正だと思う株価と実際の株価のギャップが大きいのは小型株が多いと思います。大型株を毛嫌いしてるわけではありませんが、そのような経験から、小型株を選んでいます。

株価のギャップ以外にも、明確な誤解があったときに企業側が資料を見せながらいろいろと説明して、その誤解が解けたら株価が上がったり、その後実際に業績が良くなって数字で評価されたり、ということが起こりやすいのもあります。「ログミーFinance」の記事にも、そのような投資のヒントがたくさん散りばめられていますよね。

富山:ありがとうございます。まさにそうなんです。そこをユーザーのみなさまにも伝えていきたいんです。