ツールを活用して情報を深掘り、保有の「握力を増やす」
富山:株式投資において、決算がどのような意味を持つかをおうかがいします。
DAIBOUCHOU:最近は、個人投資家の反応が激しすぎると思っています。ほとんどの方が直近四半期で評価していると思うのですが、いわゆる「決算プレー」に代表されるような方が多すぎて、決算の短期的な評価、もしくはその需給で大きくブレるのが悩ましいというところです。
もちろん、決算はファンダメンタル分析を使って投資する人にとっては一番重要な要素ですが、決算直後の動きは完全にテクニカル分析と需給の話だと思うので、実はそこにあまり勝負をかけていません。どちらかと言うと、決算からその次の決算までの期間がファンダメンタルの世界で、決算前後はテクニカル・需給の世界になっている感じがします。
例えば、業績が悪い、いわゆる「訳あり」を探せるのが決算説明会や説明会資料のほうだと思っています。「会計ルールが変わって売り上げがガクンと下がった」「原価の計上の仕方が変わった」「減価償却が長かったものが短くなった」といった話は決算短信だけでは見えてきません。
他にも、先行投資をがんばっていたり、足下は良くないけど将来的に見込みがあったり、既存事業が停滞しているけど新しい事業が伸びていたり、という会社もあります。説明会資料でそのような状況を把握して、その後の数字がどうなるのか、成長できる実力があるのかを加味して、見た目はパッとしないけど好調な会社、実力のある会社を探すのが良いですね。
富山:投資活動の際、他にはどのようなツールを使っていますか?
DAIBOUCHOU:課金してるものでは、「株探」「会社四季報オンライン」「カビュウ」「マネックス銘柄スカウター」「マーケットスピード II RSS」などを使って情報収集や分析を行っているほか、たけぞうさんのメルマガや、DUKE。さんの「新高値ブレイク投資塾」も利用しています。
「チャートリスト」を使って業績、チャートをパラパラと見ることもあります。これは独自性があって、いろいろとカスタマイズして使えるので便利ですね。あとは、Excelで保有株表を作るなどです。
「ログミーFinance」は、その中で深掘りしたい企業があるときに活用しています。例えば、割安か割高か、足元の業績変化はどうかなどの企業情報をまず自分で調べて、そこからもっと詳しく知りたいときには記事を読んでいます。
富山:別のツールで収集した情報などが入口になって、「ログミーFinance」でより具体的な情報を掘っていく流れですね。
DAIBOUCHOU流「ログミーFinance」6つの活用法
富山:さまざまな分析ツールがある中で、「ログミーFinance」を使う理由や位置付けを教えていただけますか?
DAIBOUCHOU:文字起こしを公開したという会社の開示があった際、「ログミーFinance」の記事があれば可能な限り読んでいます。
「ログミーFinance」を使うということは、それなりにIRにお金をかける意欲があるということだと思います。今まで使っていなかったのに使い出したタイミングがあると、たいてい何かアピールすることがある場合が多いと踏んでいます。もしくは、好調なのに株価が上がらないから対策として予算をつけている、要は「儲かっているから『ログミーFinance』を使っている」という評価もできますね。
文字起こしを複数のサイトで開示している場合は、「ログミーFinance」が非常に読みやすいので優先して見ています。動画より文字起こしを見るのが好きということもありますが。
富山:動画より文字起こしが良い、というのはなぜですか?
DAIBOUCHOU:動画だと視聴する時間がそれなりにかかりますし、説明会資料も興味のあるところだけパラパラと見たいからです。決算説明会の動画は、「ながら見」するとほとんど頭に入ってこない気がして、じっくり見ないといけないのなら負荷が大きいなと思います。
富山:重要なことを聞き逃したくないですもんね。書き起こし記事を読むときに重視しているポイントはありますか?
DAIBOUCHOU:業績の根拠を知ること、それに加えて「握力を増やす」ことが重要だと思っています。
当然ながら、株価は上下していて投資家を不安にさせるもので、それに打ち克つにはやはり「この銘柄が上がる」という根拠を知らなければなりません。保有し続けられる・し続けられないというのは、その人の精神力や感情もあると思うのですが、知識と、それに基づく信念が重要になると考えます。
富山:買うタイミングは「ここだ」と思っても、株価が下がるとやはり不安になりますよね。そこで握力、というのはよくわかります。そこで「ログミーFinance」で根拠となる定性情報を確認するということですね。
DAIBOUCHOU:実際はその前に「もう買っても良いかな」と思って買うこともありますが、そのあと上がるか下がるかわからないですから深掘りする機会は必要ですね。あとになってチェックしなければいけないことを思い出すこともあります。
深掘りすると言っても何をどう深掘りすれば良いかわからないこともあります。そこで「ログミーFinance」の文字起こし記事を検索して、まずはよく知らない専門用語を調べています。
また、「受注が伸びてます」といっても何の受注の話かわからなければ、それを深掘りすることもできませんから、記事で製品名を見つけて、製品ページに飛んで確認することもあります。
その業界に関わっていなければ、今どのような状況になっているのかわからないことが普通ですが、深掘りによってそれがわかるきっかけを掴めますし、きっかけを掴めば調べることができて、知識も増えていくでしょうね。
その会社のホームページをすべて調べるのは大変なので、「ログミーFinance」上で会社名と気になるワードを検索して、深掘りするための材料を見つけます。
しかし、説明資料を作らない、説明会も開催しない企業は深掘りできません。機関投資家との1on1は実施していても、決算短信以外に情報が出ていないので、その会社の製品が伸びているのか、製品が良いのか悪いのか、顧客が増えているのかなど、良し悪しが何もわからなければ買えないですよね。ライバルがいくらでもある市場で自社の優位性を伝えられない、そのような会社は損しているなと思います。
富山:株価が下がっても原因がわからないから、そのようなときは売っちゃいますよね。
DAIBOUCHOU:握力はすごく下がりますね。説明会自体は会社が良いように伝えがちなので、話半分に聞かなければいけない部分も含まれますが、それをわかった上でも、やはり自社製品がいかに素晴らしいかをアピールしてもらったほうが買いやすいです。自社製品に対する信念も何もない企業の株式を、単に業績が伸びているからという理由で買っても、短期的に下がったらすぐ売ってしまうと思います。
富山:他にはどのような機能を使っていますか?
DAIBOUCHOU:記事ページの下部にある「人気ログ」のランキングや、テーマ特集の記事はたまに見ます。
DAIBOUCHOU:株主総会の記事もありますよね。「やっぱりこういう記事が見られているんだな」と思ったり、そこまで知名度の高くない会社の記事が意外と読まれていたりすると、おもしろいですね。
他にも、自分の持っている銘柄や調べたい銘柄があって、社名で検索して「『ログミーFinance』を使っているかな」と確認することもあります。
富山:なるほど。記事の中で特に注目する情報はありますか?
DAIBOUCHOU:先ほども話が出ましたが、やはり質疑応答は見ています。最近は企業のIRページでも、説明会資料とは別立てで、質疑応答の情報がまとまっていることもありますし、投資家の注目度や期待度などはその情報からわかるのではと思います。専門用語が多い内容でよくわからなければ、自分には難しいなどの判断もできます。
また、説明資料をあらためて見直すこともあります。そのときの株価によって見え方がぜんぜん違って、特に株価が下落しているようなときに資料を見ると、ネガティブなことに敏感になっているので不安点がよく見つかりますから、見直しのチャンスですね。反対に、見直すことで買い増ししたくなるような魅力を見つけることもあります。
富山:良いですね! 具体的な活用シーンを教えていただいて、参考になりました。
機関投資家と個人投資家が対等になる世界へ
富山:最後に、「ログミーFinance」に今後期待することや、何かメッセージがあればお願いできますか?
DAIBOUCHOU:期待はいろいろとありますが、誰でもやる気になれば情報が得られる、情報の非対称性がなくなる、そのような場を作ってくれることは個人投資家として望ましいと思います。
「ログミーFinance」もそれを目指しているのだと思いますが、会社の実態と投資家の理解の間に齟齬がなく、だいたいイコールになれば株価もそれなりに安定して動くでしょうし、株価のボラティリティが下がれば投資家も安心してお金を預けられるから、結果的には株価も上がりやすくなると思います。
業績が安定して伸びて、それに伴って株価が動いてくれたほうが、投資家は安心して持ち続けられると思います。その結果として「短期で保有してうまく上昇だけ取っていきたい」という人にとっては投資機会が減ってしまうかもしれませんが、安定して右肩上がりになっていくほうが世の中としては良いのだろうと思います。
富山:ありがとうございます。事業会社の実力と投資家の期待値のズレは是正していけたらと考えています。
数年前とは違って、今は企業がコーポレートサイトで動画を公開したり、質疑応答をきちんと出したりと、情報を開示していますよね。個人投資家と機関投資家とが、ある程度対等になる世界がどんどん近づいてきています。
DAIBOUCHOU:以前はおそらく、決算説明会に参加できることは機関投資家の武器の1つだったと思いますが、それがなくなって、時代が1つ進んだ感じがありますね。
富山:「ログミーFinance」もそのような世界を目指していて、決算説明会の内容をオープンにしたり、直近はオンラインセミナーを開催して、個人投資家の方々にも参加してもらって企業が質問に答えたりしています。
決算説明会の内容は動画で公開しても、質疑応答の部分はカットしている企業もあります。質問者の方の存在があるので仕方ないところもありますが、基本的には「QAも含め全文公開していきましょう」というスタンスです。
DAIBOUCHOU:湘南投資勉強会や神戸投資勉強会でも実施している、質疑応答のパートを切り出してライブ配信するような内容ですね。情報が正しく伝わって、誤解が生じにくい世界になると良いですね。
しかし、自分のお金儲けのために使っているのに「ログミーFinance」は無料ですからね。個人投資家を甘やかしすぎている気もします(笑)。今日はいろいろと話を引き出していただき、ありがとうございました。
富山:こちらこそ今日はありがとうございました。