カンボジアにおける不正事案に関する状況説明
黒田武志氏(以下、黒田):代表取締役社長グループCEOの黒田でございます。経営近況報告会に先立ちまして、昨日発表したカンボジアでマイクロファイナンス事業を行うChamroeun Microfinance, Plc.(以下、チャムロン社)で発生した不正事案とそれによる有価証券報告書提出延長申請について、みなさまへ多大なご迷惑をおかけしておりますことを深くお詫び申し上げます。現在の状況についてご説明させていただきます。
チャムロン社は6月29日に五常・アンド・カンパニー株式会社への全株式譲渡について契約済であり、現在、譲渡承認について現地当局での承認手続き中です。
本年12月チャムロン社において不適切融資の存在が複数判明しました。現在、不適切融資発生の経緯・規模及び今後の会計上の影響額について調査を行っており、不適切融資の背景・規模・影響範囲を調査のうえ、再発防止策を策定し、監査法人から適正意見を取得するまで、2023年9月期決算に係る「有価証券報告書提出」について、一定期間の提出期限延長を申請予定です。
ここからしっかり調査対応をしていく所存ですが、まずは株主のみなさまには多大なるご心配をおかけいたしましたことをお詫び申し上げます。
不適切取引の状況についてご説明します。チャムロン社の21支店のうち、特定支店において詐取を目的とする架空融資が判明しました。融資担当者複数名が、存在しない債務者、取引終了元債務者、過去の融資謝絶先等の名義を虚偽で使用し、架空融資案件を偽造し不正に融資を実行していました。
これまでの調査により確定・一部推定される架空融資残高は50万ドル(約7,000万円)相当額ですが現時点での推定ではこちらを上回る可能性があります。 今後、会計上の影響等を含め、現地専門部隊による調査と会計処理を実施のうえ、当社連結でも必要な修正を実施予定です。
2023年9末期を含む過去の連結決算修正は複数四半期、過年度に及ぶ可能性があり、会計適正反映について会計監査人と協議継続する予定です。
アニスピホールディングスの戦略的買収
経営近況報告会を始めます。会社の成長戦略を中心にお話しします。
今年4月に、障がい者向けグループホームにおいて、業界で圧倒的ナンバーワンの拠点数を持つアニスピホールディングス(以下、アニスピ社)が、我々の100パーセント子会社としてグループインしました。
今後の戦略として、障がい者向けグループホームを中心に据えて拡大させたいと考えています。特に、障がい福祉と医療を組み合わせた医療的ケア対応型グループホーム「リビットホーム&ナース」の直営展開を、成長戦略の基軸に据えていきたいと思います。
藤田英明 経歴
本日は、アニスピ社の創業者で社長である藤田英明も参加しています。彼は福祉業界で非常に実績のある経営者であり、私もリスペクトしています。報告会への参加は初めてのため、藤田よりご挨拶させていただきます。
藤田英明氏:みなさま、はじめまして。アニスピホールディングス代表の藤田です。
私は、明治学院大学の社会福祉学科を卒業し、社会福祉法人に就職しました。当時は最年少の23歳で、介護職もしつつ生活相談員や事務長、施設長も務める、ほぼ「何でも屋」でした。
26歳の時に、高齢者の介護事業を起業しました。当時は待機高齢者が全国に42万人もおり、家族による虐待や、最悪の場合は心中してしまうケースを目の当たりにしてきました。この問題を解決しようと26歳で起業し、そこから福祉事業を専門に、48歳になる現在まで22年に渡り経営を行ってきました。
藤田英明 経歴
今回リネットジャパングループにグループインしたのは、本業である環境と福祉の融合という部分に大きな可能性を感じたためです。「都市鉱山×福祉」という、福祉業界において前代未聞の事業に、ぜひ一緒に取り組みたいと考えました。
先ほど黒田社長より、「医療的ケアが必要な障がいのある方の施設を作っていく」というお話がありました。まさに私のいとこがALSという難病にかかっており、最初は転んだり、持っていたものを落としたりということから始まり、今は眼球も指先も動かない状態になっています。同時に私のおばも70代半ばを超え、子どもの世話をすることが難しくなっています。現状、そのような方々が入居できる施設がほぼ皆無のため、黒田社長と一緒にこれから全国に展開していきたいと思っています。
私自身は、内閣府規制改革会議への参画や首相公邸での講演などを行い、現在は全国障害福祉事業者連盟という、主にロビー活動を行う団体の理事長を務めています。福祉領域における専門知識やノウハウ、マネジメントに関しては自信を持っています。それらをフルに活用し、リネットジャパングループの利益に貢献していきたいと思います。みなさま、今後ともよろしくお願いします。
第2回アニスピホールディングス総会「福祉維新」
黒田:藤田が率いるアニスピ社では先般、両国国技館にて「福祉維新」を開催しました。「福祉維新」は全国のフランチャイズのパートナー企業が一堂に会する総会で、年に1回開催しています。
その様子をまとめたダイジェストビデオをご用意しましたので、ぜひご覧ください。
(動画が流れる)
ご覧のとおり、総会は大変盛り上がりました。ビデオに登場したペット共生型障がい者グループホーム「わおん」は、フランチャイズのパートナー企業も含めて約1,500棟を全国に展開しています。
この「福祉維新」では、各グループホーム運営のクオリティに得点をつけて競い合います。各ブロックで予選があり、「福祉維新」で本選が行われます。最後にプレゼンテーションを行い1位を決めるもので、非常に感動的な話などもあり、大いに盛り上がりました。これにより加盟店も勢いがついていると思いますので、我々本部も一丸となって、さらなる成長を目指します。
「ESモデル」としての成長
今後の成長戦略についてご説明します。我々はIRにおいて「ESモデル」を掲げています。いわゆるESGの「E」と「S」に合致する部分が、我々の戦略事業である2つの成長ドライバーになっています。「E」のEnvironment(環境)である小型家電リサイクル事業と、「S」のSociety(社会)である障がい福祉のソーシャルケア事業の2つを軸に成長していきたいと考えています。
今後の戦略の柱
今後の成長の柱になるものとして、1つ目にソーシャルケア事業の医療的ケア対応グループホーム「リビットホーム&ナース」を最重要戦略に掲げて取り組んでいきます。
そして2つ目が、小型家電のリサイクル事業です。こちらの事業はまだ成長余力があると考えています。
我々は、家庭に長年退蔵されると言われる3,000万台のパソコンを掘り起こし、これまで全国660超の自治体との提携ネットワークを広げてきました。今後もこのように退蔵された「都市鉱山」を掘り起こすために、全国の小中学校約3万校を軸に、新たなリサイクルネットワーク作りに取り組んでいきたいと思っています。
3つ目が、外国人材事業です。今、介護業界を中心に人手不足が深刻になっていますので、障がい福祉・介護福祉・医療福祉が連携するかたちで、外国人材を送り出すことに注力していきたいと思っています。
ソーシャルケア事業 医療的ケア対応型グループホームの展開
最重要戦略の医療的ケア対応型グループホームについてです。医療的ケアが必要な障がい者の方は、全国に約50万人います。しかし、その方々が退院する受け皿になる看護師常駐の施設が、全国的に極端に不足している状況です。この社会課題の解決を目指し、業界の中で我々が先駆けて取り組んでいきたいと思っています。
「LIVIT」のロゴも含めた企画は藤田が考えたものであり、スライドの下に3つのコンセプトを記載しています。1つ目は「入居者の自己実現の最大化」です。入居者のQOL(生活の質)を高め、難病や障がいを抱えていても、大いに生きる(Live it up)人生をサポートします。この「Live it up」がネーミングの由来です。
2つ目は「安心できる住まいと介護」です。病院ではなく、在宅で生活を継続できるための拠点となる、「日中支援型+医療的ケア」の障がい者グループホームです。
3つ目は「万全な医療看護」です。看護師が常駐し、昼夜を問わず必要な医療を適切に提供します。また、訪問看護との連携も行います。
今までにないこのようなコンセプトで、起業家精神を持つ藤田と、起業家で経営者でもある私が、しっかりタッグを組んで大きく伸ばしていきたいと思っています。
ソーシャルケア事業 医療的ケア対応型グループホームの展開
医療的ケア対応型グループホーム「リビットホーム&ナース」の展開についてです。収益性が非常に高く、障がい福祉報酬に医療報酬が加わることで収益性の高い施設運営が可能になるため、2024年9月期は8棟を計画しています。
本格的には、2025年9月期以降に年間15棟、満床になれば営業利益約7億円を上積みしていけるペースで拡大を目指していきたいと考えています。
ソーシャルケア事業 医療的ケア対応型グループホームの展開
第1号店の「リビットホーム&ナース沼津」は、静岡県沼津市でオープンの準備をしています。12月開設予定で、定員は20名です。すでに25名の入居希望者がいますので、遅くとも来年の2月か3月には満床になると思っています。
このようなサービスを提供するグループホームは全国で極端に少なく、第1号店への反響を見て、非常に手応えを感じています。中間期には、「リビットホーム&ナース沼津」を今後どのようなかたちで展開していくのか、もう少し詳細な計画を発表する予定です。
ソーシャルケア事業 医療的ケア対応グループホームの展開
アニスピ社のソーシャルケア事業についてです。スライドのグラフは収益構造の転換イメージを示しています。
これまではFC(フランチャイズ)加盟金を中心とした収益が大部分を占めていましたが、グループイン以降はフランチャイズを継続しながら、直営施設により注力していきたいと思っています。
スライドのピンクの部分が示しているように、2025年くらいには逆転していくと見込んでいます。フランチャイズに加えて直営施設に注力することで、これまでとは違ったかたちで利益の伸びが加速していくと考えています。
小型家電リサイクル事業 退蔵パソコン3,000万台の掘り起こし
小型家電リサイクル事業についてです。我々の取り組んでいるマーケットは大きいと考えています。スライドには氷山のイラストを記載していますが、氷山というのは、実は水面から目に見えている部分は小さく、水中に隠れた部分が非常に大きいと言われています。我々は、まさにこの氷山と同じように顕在化したニーズに対して、広告宣伝費をかけて回収の申し込みを募ってきました。
日本の家庭の約半数に、10年から15年眠っているパソコンがあると言われています。マーケットを掘り起こしていくために、このような眠ったパソコンを片付けるきっかけを我々が作っていきたいと考えています。
全国の小中学校約3万校を起点に、生徒やPTAの方にリサイクル運動に参加していただき、リサイクルと学校への寄付を組み合わせた「スマイル・エコ・プログラム」を展開することで、潜在的な処分ニーズにアプローチし、「都市鉱山」を掘り起こしていきたいと思います。
イメージとしては、ベルマーク運動です。ベルマークを集めると、学校の備品などが寄贈されます。我々はベルマークを集めるのではなく、家の中のパソコンを片付けることにより、例えば学校のバレーボールや備品の寄贈につなげていきたいと考えています。
小学校のPTAの方々や地域のみなさまを巻き込みながら、家の中に眠っているパソコンを無料で回収する、新しいかたちのリサイクル運動を展開していきたいと思います。
世の中に広く認知されているリサイクル運動に、ペットボトルのキャップ運動があります。みなさまがひと手間かけてキャップを外して回収する運動が、途上国にワクチンを寄付することをきっかけに全国津々浦々に普及しました。
我々もエコキャップ運動に負けないくらいのリサイクル運動を、小中学校を起点として日本全国に展開し、リサイクルのムーブメントを起こしていきたいと考えています。
小型家電リサイクル事業 GIGAスクールパソコン回収への取り組み
パソコンリサイクル関連のもう1つの取り組みです。安倍首相の時代に全国の小中学校に1人1台導入されたGIGAスクールパソコンが、今は900万台に増えています。これらは5年更新で、来年・再来年に一斉に入れ替わるため、パソコンのリサイクルに非常に大きな特需が発生することが見込まれています。
我々は全国660超の自治体と協定を結んでいます。このネットワークを通じて、教育委員会などにもリサイクルの重要性の理解促進を行い、需要獲得を目指していきたいと思っています。
現在、我々は年間約100万台と、業界No.1のパソコン回収事業者ですが、GIGAスクールパソコンの900万台の更新は、約9倍もの非常に大きな特需です。来年・再来年にかけて詳細が本格化してきますので、しっかりとシェアも取っていきたいと考えています。
外国人材事業 介護人材送り出し開始
外国人材事業についてです。昨今、介護人材の不足について新聞でも取り上げられることが多いのですが、2040年には介護業界だけで約69万人が不足すると予測されています。
アニスピ社では約1,500棟のグループホームを展開しており、その現場でも人手が不足しています。グループのシナジーで、外国人材の採用をより積極的に導入し、福祉領域に特化したかたちで外国人材の送り出し事業を加速していきたいと思っています。
これまではカンボジアを中心に送り出し事業を行っていましたが、近々インドネシアで新たに送り出し事業がスタートします。あと1ヶ月から2ヶ月ほどでスタートできる見込みです。
特にインドネシアでは、介護を含めた福祉の外国人材の育成に注力しており、HR事業を本格的に成長路線に乗せていきたいと思っています。
M&A戦略による成長の加速
M&A戦略についてです。こちらも積極的に取り組んでいきたいと思っています。
アニスピ社がグループに入ったことで、会社としてもグループが大きく変化しました。同じように、外国人材のHR事業等、積極的にM&Aを行うことで成長を加速させたいと思います。そして、将来的には売上高約1,000億円のグループにしたいと考えています。
自力でのオーガニック成長に加え、M&Aも重要な成長戦略と位置づけて取り組んでいきます。
「経営理念」の実現に向けて
我々の経営理念は「ビジネスを通じて”偉大な作品”を創る」です。我々が偉大な作品と呼んでいるのは、社会課題を解決できる収益と社会性が両立したビジネスモデルです。小型家電リサイクル事業や障がい福祉のソーシャルケア事業を中心に経営理念を実現させて、成長を加速させたいと思います。
黒田氏からのご挨拶
今回は、カンボジアの件でご心配をおかけしました。本日のご質問の中でも、利益が出ていないことに対して株主さまから厳しいご意見がありました。
いただいたご意見を真摯に受け止め、この問題を早期に収束させたいと思います。利益面でもしっかりと期待に応えられるよう、全社一丸となって取り組んでいきますので、引き続き応援のほどよろしくお願いします。本日はお忙しい中、どうもありがとうございました。