Mission

菅原充氏:株式会社QDレーザの菅原です。2024年3月期の第2四半期決算説明を行います。

我々は半導体レーザを使っている企業で、「半導体レーザの力で、『できない』を『できる』に変える。」をミッションとしています。意図としては、レーザを使っている当社ではさまざまな装置の性能向上に始まって、新しい応用、新しい市場を創造していくことを目指しています。

大きなテーマとしては、情報処理能力の飛躍的な向上、また視覚障がい者の支援も含めた疾患の予防、視覚拡張などを目指しています。最近ではそのような「できないことができる領域」がどんどん広がってきており、現実的にそれを実現しつつあると我々も感じています。

今まではスライドの目次の3番と4番のデバイスの説明から始めていたのですが、だいぶ回を重ねたこともあり、本日は、デバイスや製品に関してそれぞれの場所に応じて、口頭で1番と2番を重点的にご説明します。もしご質問があれば、質疑応答で3番と4番の具体的な内容をご説明します。最後にESGについても述べたいと思います。

業績ハイライト

2024年3月期第2四半期の業績ハイライトです。

レーザデバイス(LD)事業の売上高は、前年同期比3パーセント増加で4億5,100万円です。レーザアイウェア(LEW)事業はアイウェア、視覚情報の分野ですが、売上高は387パーセント増加の1億8,600万円となりました。全社としては前年同期比から34パーセント増の6億3,800万円の売上となっています。

特に、レーザアイウェア事業が非常に伸びています。「RETISSA MEOCHECK」は、眼の健康をチェックする網膜投影装置で、1分でどこでもご自身で目の状態、白内障や緑内障の疑いを検出できる装置です。

また「RETISSA NEOVIEWER」は、ソニー社とのバンドルで販売を始めたカメラのビューファインダー、網膜ビューファインダーですが、アメリカでも販売が始まっています。また、「RETISSA MEOCHECK」を活用した「眼の健康チェック」サービスが、日本交通社と連携して5,000人規模で本格的に始まっており、387パーセントの売上高の増加を実現することができました。

業績ハイライト

営業利益です。レーザデバイス事業に関しては、前年同期比3パーセント増の4,600万円です。全社営業損失は、前年同期比で16パーセントの改善となりました。

数字でいうと4,500万円です。経常損失は前年同期比1,900万円の改善、四半期純損失は1,800万円の改善となっています。営業損失の改善に比べて数字が下がっているのは、いくつかの費用が発生していることが原因です。

業績ハイライト

前年同期比で売上高増加、損失減少とお話ししましたが、それを表にしたものがこちらです。売上高が6億3,800万円で、そのうちレーザデバイス事業が4億5,100万円、レーザアイウェア事業は1億8,600万円です。レーザアイウェア事業が前年度比で400パーセント近く増加したところが1つのトピックです。

営業損益に関してもご覧のとおりです。右側に記載しているレーザに関しては、小型可視レーザが少しマイナスになっていますが、その理由については後ほどお話しします。

貸借対照表

貸借対照表です。資産合計が現金および預金の増加などにより、前期末比で15億1,000万円の増加となりました。負債合計は未払金の減少等により、5,600万円の減少です。自己資本比率は、現在93.3パーセントとなっています。資産合計は、64億2,800万円です。

キャッシュフロー

キャッシュフローについてです。現金および現金同等物が前年同期比で23億5,900万円の増加です。これにはMSワラントによる資金調達が入っています。結果として、現金および現金同等物の期末残高が50億3,500万円となっています。

売上高+受注状況

売上高と受注状況についてです。第2四半期末時点の売上高や受注残高、受注残高というのは年度内で売上が決まっている、あるいは予定されている分ですが、年間予想売上高の61パーセント、直近3か年最大の8億8,600万円まで来ている状況です。

精密加工用・計測用DFBレーザ:売上高

デバイスについてご紹介しながら、売上に関して、あるいはお客さまやアプリケーションについてお話しします。

精密加工用・計測用の「DFBレーザ」です。我々のレーザは、時間的に非常に短いパルス、13ピコ秒くらいまでいくのですが、単一波長の非常にピュアな波長を作るDFBという構造を内部に有しており、それをDFBレーザと呼んでいます。主に精密加工や計測用に使われています。

精密加工は、例えばスマートフォンの電子回路基板の加工に使われます。計測でいうと、最近新しいアプリケーションとして上がってきたのが、半導体ウエハの検査です。

シリコンの30センチメートルくらいのウエハにレーザをスキャンしていくと、もし欠陥があれば、それによって光が散乱され、上にあるディテクタに検知されます。そのため、欠陥のプロセスの検査を非常に高速で行うことができます。

結果として歩留まりを上げ、工場の稼働時間を短縮できるところが特長です。最近ではウエハだけではなく、マスクの検査、また生のウエハだけではなく、プロセスを経たウエハにも応用されるようになってきており、市場はどんどん広がっていくと思います。

そのようなことも含めて、売上高は前年同期比6パーセント増の1億8,000万円となっています。

加工に関していうと、北米の加工に少し在庫調整があり、後ろ倒しになっています。約1メートルある大きな50ピコ秒の加工装置、こちらはかなりの高級機ですが、第4四半期ぐらいから持ち直してくる状況であり、上期は後ろ倒しとなっています。

市場としておもしろいのは、中国向けに加工装置向けレーザの新規受注がありました。論文を読むと、中国はレーザ加工の論文では圧倒的に世界ナンバーワンです。

そのような背景もあり、レーザ加工装置がいよいよ製品として出始めています。現在、中国のメーカー4社にサンプルのチェックをしていただいていますが、そのうち1社から量産受注があったことが始まりです。ここから、いよいよ中国への展開も始まっていくと思います。

欧州では、気象用のLiDARの受注が好調です。

近視が進むと眼軸(角膜から網膜までの長さ)が長くなってくるのですが、その眼軸を高速で測れる眼科検査用の装置が、今非常によく使われています。年間1,000台ぐらいです。

そのような背景もあり、さまざまなアプリケーションが立ち上がりつつ、事業も伸びている状況です。

バイオ検査装置用小型可視レーザ:売上高

バイオ検査についてです。上期は非常に好調でしたが、マイナスがありました。そのため、売上高が前年同期比で33パーセント減少の7,900万円となっています。

主な原因として、バイオメディカル装置フローサイトメータやセルソータといった血液・細胞の分析装置に関して、本社はアメリカにあるのですが、COVID-19に伴う中国での特需が一段落し、在庫過多による一時中止や後ろ倒しがありました。それにより売上が減少しています。

こちらも第3四半期および第4四半期と持ち直していく予定であり、残念ながら上期は減少せざるを得なかったという状況です。

一方の顕微鏡ですが、こちらは欧州での需要が高まっています。STED顕微鏡は、2014年にノーベル化学賞を受賞した顕微鏡であり、2018年から2019年に300台の受注がありました。同じメーカーからさらに追加の受注もあり、普及がいよいよ始まったという印象を持っています。

STED顕微鏡は、空間分解能が50ナノメートル、これはCOVID-19の半分の大きさですが、そのような細部で分解能を出せる2014年にノーベル賞を受賞した発明であり、それが今、実際に世の中に出始めているところです。そこで我々の非常に小さなオレンジレーザ、黄緑レーザ、緑レーザを使っていただいています。

欧州でも、これも顕微鏡ですが、バイオメディカル装置のレーザの高出力化に我々が成功したことにより、受注が伸びている状況です。

フローサイトメータやセルソータ、STED顕微鏡やバイオメディカル顕微鏡は、共焦点顕微鏡と呼ばれるのですが、そのようなアプリケーションにおいて、他のメーカーに比べて非常に小さい我々のレーザを提供し、使っていただいています。こちらの事業戦略については、後ほどご紹介します。

センサ用高出力レーザ:売上高

センサ用レーザです。2年前に一時落ち込みがありましたが、回復基調にあります。2年前は、DIYや建設用のレベラーの光源の受注が落ちてしまったのですが、コロナ禍のため、装置を作る工場の操業が止まってしまったことが原因です。

こちらが少しずつ回復していることも含めて、半導体工場用のセンサが非常に伸び始めています。ウエハ搬送機用センサ、こちらはLiDARです。ウエハを運ぶ装置の先にレーザがついており、そこで距離を測ります。

パーティクルカウンタは、クリーンルーム中の粒子のゴミの数を計測します。マシンビジョンはスキャニングにより、ダンボールの大きさを測ったり、物の形状を測ったりすることができる装置であり、こちらも使われ始めています。

非常にニッチな領域ですが、QDレーザがナノ秒という短パルスのレーザの保証もつけたかたちで、お客さまが必要なカスタマイズされたレーザを提供していることもあり、シェアはかなり高まっていると思います。これからどんどん伸ばしていける可能性のある分野です。

通信用量子ドットレーザ:売上高

量子ドットレーザです。こちらはすでにリリースでご紹介したように、6万台の受注があり、量産は5月からすでに始まっています。アイオーコア社の光配線向けに加えて、北米のコネクタ・チップ間通信向けのウエハも出荷しています。光配線は、専門用語ではNPO(Near Packaged Optics)と言います。LSIの周りにこのパッケージを置くことで、LSI同士が通信できるというチップです。

北米から来ている光コネクタ・チップは、専門用語ではCo-Packaged Opticsといいます。このCPOは、パッケージの中にASICと光回路を全部入れた究極のLSIなのですが、それを北米の大きな企業が手がけているということです。

まずLSIの外側に、配線用に置くところが来るはずで、それ向けのアイオーコア社のチップが6万個受注されたことで、これから非常に巨大な市場となることを全世界が期待している分野です。

レーザアイウェア(LEW):売上高

アイウェアですが、こちらは幸い、前年同期比で387パーセント増の1億8,600万円となりました。昨年の売上2億6,800万円を超える勢いであり、今年は好調とみています。

「RETISSA MEOCHECK」「RETISSA NEOVIEWER」「RETISSA ON HAND」という3つの新製品についてご説明すると、どれも網膜投影を基軸にしたものがベースになっています。網膜投影については、我々は登録特許も含めてすでに40件の出願をしています。網膜投影技術を製品化できる特許を持っているチームは他にはないと我々は判断しています。

「RETISSA MEOCHECK」は、瞳孔を通して視力に依存せず、網膜の状態を測る、あるいはその透過率を測ることができる製品であり、白内障・緑内障・黄斑変性、あるいはフレイルと呼ばれる高齢化による視力の低下をチェックし、疾患の疑いを判定することができます。

こちらを600台代理店に出荷するとともに、眼の健康チェックサービスを日本交通社の検診の場を借りて、春検診が3,000人、秋検診が2,000人と進めているところです。このような大きな企業に信頼を持って受け入れていただけるところまで来ました。

「RETISSA NEOVIEWER」は、ソニー社の小型デジカメのバンドル品として、日本とアメリカで発売を始めました。日本とアメリカのECストアおよびソニーストアです。アメリカには150台、日本では昨年3月に100台近く出荷し、さらに50台弱を追加で出荷しました。上期の仕上がりでは、188台だと思います。そちらが「RETISSA MEOCHECK」とともに、この売上の中に入っています。

全国5店舗のソニーストアとアメリカで販売中であり、現在ソニー社とさまざまなマーケティングのプロジェクトを組み上げて、実行し始めているところです。

「RETISSA ON HAND」は、行政福祉分野の国内総代理店を通して、図書館流通センター(TRC)社を通じて全国の図書館、美術館、またアーツカウンシル東京という公益法人を中心に公共施設での導入が始まっています。

こちらは台湾や中国でも展開しようとしており、先月、台湾で代理店を通して展示会でデモされています。

また、アナリストの方のレポートで、「アイウェアはもう潰えた」と書かれていたのですが、実際には活動を力強く進めており、スマートグラス「RETISSA Display Ⅲ」に関して、さまざまな要素技術開発を継続中です。

このスマートグラスは前々からお話ししているように、我々の技術を評価いただき、これを使用してご自分の製品に仕上げたいという方々から受託費をいただきながら、共同開発しているところです。

要素技術としては、アイトラック、1,080Pの高画質、そして低電力です。スマートフォンのディスプレイにそのままなってしまうような低電力を目指して開発しています。この前の「CEATEC 2023」でも発表しましたが、来年初めのラスベガスで開催される「CES 2024」でも、TDK社のブースでこちらが公開される予定です。

要素技術が徐々にそろってきていることもあり、パートナーシップをてこにしながら、「RETISSA Display Ⅲ」の製品化を、極めて遠い未来ではなく、3年、4年先ぐらいを目指しています。言葉を選ばずに言うと、今度は妥協しないかたちで、スマートフォンの次世代のアウトプットディスプレイとして仕上げていこうとしています。

2023年3月期事業ハイライト

以上が上期のご紹介です。今、中期・中長期の戦略を立てており、それほど遠くない時期に、中期の事業計画を発表しようと考えています。

こちらは2023年3月期の事業ハイライトです。近い将来の全社黒字化とその後の爆発的成長を目指し、両事業が進展してきました。かなり手応えを感じているところです。

レーザデバイス事業は、8期連続で営業黒字となり、昨年度は6,400万円の営業黒字でした。加えて、量産認定のお客さまが今、グローバルに約70社おり、このうち8割が海外です。このような方々に、私がグローバルニッチと呼んでいるバイオ系の小型可視レーザや、DFBレーザ、高出力レーザが寄与しています。

一方で、我々の会社は量子ドットレーザで始まっているのですが、量産受注が3月に1万2,000個あり、4月には累計6万個以上の受注があったということは、以前ご報告したとおりです。今、本格量産体制の構築について、戦略を練って動き始めているところです。

レーザアイウェア事業は昨年度、ようやく売上が前期比183パーセント増、2億6,800万円の売上がありました。これは新製品の投入や、受託開発の案件に寄与しており、そのために3機種を発売したということです。

「眼の健康チェック」サービスは、スライド右下にはトライアルと書いていますが、昨年度、日本交通社と、広島のつばめ交通社で、千数百人にトライアルをした上で、今年度の本格導入に向けて準備しました。

2024年3月期事業目標

このような中で上半期が終わりました。今進めていることとして、まず、今年度も営業黒字を出そうということです。レーザデバイス事業は計画売上高10億1,400万円を目指して順調に進んでいると思います。

レーザデバイスの新規開発は、より速く、より新しい波長と、さらにソリューションという意味でのモジュール化です。ここを今、重点的に進めています。シリコン光配線用量子ドットレーザは量産を開始し、6万台を目標に進めているところです。

レーザアイウェア事業に関しては、今年度もさらに売上を伸ばす計画で、4億3,200万円、前期比61パーセント増です。そして、特に大事な海外展開も行っています。「RETISSA NEOVIEWER」はアメリカのソニー社での販売が始まり、サンフランシスコを中心にプロモーションを始めようとしているところです。

「RETISSA ON HAND」のアメリカ・中国販売は、今ちょうど契約も含めた佳境にあり、大事なポイントになっています。

また、「眼の健康チェック」サービスについては事業拡大していて、今年5,000人のドライバーの方からの受注があり、もうすでに3千数百人が終わっているところです。

これを本格導入しつつ、サブスクリプションサービスの常設モデル、具体的にはレンタルで常設しておき、そこで企業、事業所の従業員の方に自由に使っていただき、その時に、眼の健康チェックを自動的にオンラインで行うようなものの実装を始めようとしています。

中期事業目標(3ヵ年程度)

3か年でどのようなアウトプットを目指しているかというと、まずは全社の黒字化を実現します。かつ、もう1つ大事なところとして、そのための成長エンジンとしての基盤形成を進めるというのが、この中期事業目標の3か年程度になります。

まだ確約はできませんが、2025年か2026年ぐらいに、これらを基にして数字を出すというのが、中期事業計画の目標です。

レーザデバイス事業では、10期から11期で連続しての営業黒字、3億円の営業利益を出すことを1つの目標としています。3億円というのは、我々の本社費用をカバーする観点もあります。粗利40パーセントだとすると、売上18億円が目標です。

またグローバルニッチ製品は、その18億円のうちの4億円で、今開発している新しいアプリケーション、あるいは新しい製品がそちらに寄与するということです。

シリコン光配線用量子ドットレーザは、量産受注6万個を超え、20万個から40万個まで膨らむことを期待し、「IOCore」を手掛けるアイオーコア社や、ほかの会社との連携を深めているところです。

レーザアイウェア事業は、売上10億円超をまずは1つの目標としています。こちらも固定費が4億円弱ぐらいのため、粗利4割ですと10億円、3割ですともう少しというところで、そのあたりが損益分岐点ということになります。

そのために、3つの新製品合計が8億円、「眼の健康チェック」サービスが2億円で、数字で言うと5,000台ぐらいです。今の500台から、グローバルに展開することで、3製品で5,000台販売することが1つの目標です。

また、「眼の健康チェック」サービスは2億円程度で、目標の7万人で割るとだいたいの単価が想像できると思いますが、このような単価で進めているところです。しかし、もちろん7万人まで増える時には、コストダウンも必要ですし、管理者・個人Viewerによるデータサービス化も始めています。

「眼の健康チェック」サービスはひと月5万円で置かせていただき、12ヶ月で100件分動かしていただければ6,000万円という、サブスクリプションのサービスです。特に仙台を起点として始めようとしており、コンタクトレンズメーカーと東北大学と一緒に店舗展開することになりそうです。

中⻑期の成⻑

中長期の成長についてです。このように、我々の基盤を支えるグローバルニッチな、海外売上率80パーセントの独自製品があります。加工や計測に使われているDFBレーザや、スライド左側に画像を載せていますが、バイオ系のきれいな色を出す小型可視レーザ、それぞれがベースを支えながら、3つの製品で国内外で開発を加速していきます。2025年、2026年には5,000台、これが損益分岐点を変えるポイントになっていくと考えています。

今準備していて、すでに始まっているのは、シリコンフォトニクス向けの光配線のNPO(Near Packaged Optics)です。レーザの周りに敷き詰める通信機器としての「IOCore」の製品に量子ドットレーザを入れていくものです。こちらを量産開始して100万台を超えることが最初のマイルストンですが、例えば車に入れると1,000万台にもなり、そのような準備の始まりになっていると思います。

「眼の健康チェック」サービスは主力事業にしていくためのスタートを切っています。幸い、日本交通社に受け入れていただき、すでに事業として始まっています。

最後にスマートグラスです。これはもともとIPO時に「10万円で10万台売ることで100億円」ということをずっとお伝えしてきましたが、残念ながら、レーザアイウェア事業である「RETISSA Display Ⅱ」は850台の販売で終了したいと思います。

しかし、これを基盤としたアイトラッキング、低電力化、1,080Pを含めたこのような小型のモジュールを今、開発を加速しています。来年度もデモを続けながら、遅くとも2026年、2027年度にはスマートフォンの新しい世代のARグラスとして、さまざまなメーカーと連携して上市させようとしています。

今のところはTDK社や携帯電話メーカー、NTT、半導体メーカーとも連携しており、このようなパートナーシップが成功の鍵を握っていると思っています。

レーザデバイス事業の戦略

次の成長可能性資料には、このような分析市場規模と、我々がどれだけの市場にアクセスできるかということを含め、DFB、小型可視、高出力、量子ドットなどそれぞれのレーザ製品が、どのように顧客横展開して、新しいアプリを開拓し、どのようにグローバルに広がっていくかを記載していきます。

さらにソリューション化を軸に、単にチップを売るだけでなく、モジュールや電子回路をつけたりファイバーをつけたり、小型にしていくソリューション、特にプラグアンドプレイなど、そのまますぐ使えるようなものを軸として、一つひとつの価値を高めながら、量産し、さらに販売を伸ばしていきたいと思います。

スライドの図は成長可能性資料を作るための準備資料で、情報量が多く申し訳ないのですが、市場的に我々が読んでいるのは、ここにある最終製品の市場規模の1パーセントぐらいがQDレーザの取り分だと思っており、そうするとだいたい600億円となります。ここがまず、2030年までに見ていく市場だと思っています。

そのためのアプリケーションでいうと、例えばDFBレーザの分野ではマスク検査・脳疾患検査・衛星間通信、また、グローバル展開としては新興国、現在は中国に展開しています。

我々独自の小型化可視レーザの分野では、全波長展開を進めます。全波長というのは我々が見える光の内側と外側も含めてですが、バイオに使われている光を全波長展開していき、かつそれをソリューション化し、世界最小のモジュールに仕上げるというのが目標です。これを今後3年から4年ぐらいで進めていきます。

量子ドットに関しては、今ご説明したように6万個からだんだん増やしていきます。1つの区切りは80万個から100万個ぐらいだと思っていて、ここが達成されるとその後の1,000万個、数千万個への最初のステップになると考えています。

レーザアイウェア(視覚情報デバイス)事業の戦略

レーザアイウェア事業では、「Low Vision Aid」「Vision Healthcare」「Augmented Vision」という3つを掲げています。紆余曲折はありつつ確かに進んでおり、40件の特許があります。アイウェアを柱として850台を販売しつつ、「RETISSA ON HAND」「RETISSA NEOVIEWER」「RETISSA MEOCHECK」という広視野角で目の検査をしたり、あるいは「原理的には最大限見ることができる」装置をソニー社と一緒に開発したりしながら、市場に投入しているところです。

これをグローバル化したり、カメラのほうはデジタル一眼に対応したり、「RETISSA MEOCHECK」のほうは産学連携による横展開、健診業者との連携を行ったりしていきます。「眼の健康チェック」サービスも、我々が実際に現場へお邪魔して進めていますが、健診業者とタイアップすることでノウハウを提供して、我々としてはそれによりサービス展開がさらに進むと思っています。

さらに、無人化という意味では、サブスクリプションにも注力します。製品をレンタルする形式で、DXで検眼データすべてを管理者や個人の方に教えて差し上げる、このようなサービスが、スライドには1年と書いていますが、今年末にはおそらくPoCが出来上がり、デモを行ったのち、来年度には実際に実装されていく予定です。

そして、やはり最後はスマートグラス「RETISSA Display Ⅲ」で、これから本当の成果が出てきます。ここではアイトラッキング、1,080Pの高精細化、低電力化も含めた要素技術開発を進めています。アイトラッキングの特許は5月に公開されました。実際のデモンストレーションは、まだ実験のレベルですが、来年の早いうちにはデモできるのではないかと考えています。

ESG観点に直結する事業展開

最後に、ESG観点についてお話しします。

我々としては、やはりソーシャルが重点を置くところではないかと思っています。これまで行ってきたような網膜投影技術「Low Vision Aid」への貢献、また、検眼器の普及 です。これを海外展開しながら、予防医療を進めていくことができます。例えば失明を救ったり、見えなくなった人を少しでも助けたりということです。

レーザのほうでもバイオ系の検査装置や、眼軸長測定装置、あるいは今進めている脳検査の測定装置、そのようなことも含めて、レーザの広がりというのがこれから非常に大きくなってくると思っていますし、ソーシャルの面で貢献できると考えているところです。

ここまで一通りご説明しました。ご清聴ありがとうございました。

質疑応答:小型可視レーザの売上挽回策について

「小型可視レーザの売上挽回策について教えてください」というご質問です。

挽回については必要なのはおっしゃるとおりです。我々は400ナノメートルから640ナノメートルまで作る技術を持っていますが、扱っている波長は3つで、530、565、591ナノメートルです。そこをそろえながら面で展開して、かつそれをモジュール化・ソリューション化していくことで付加価値を上げて、最終的・長期的には、市場そのものの存在感をそこで示していこうと思っています。

今年度に関していうと、小型可視レーザの挽回策を打つというのは正直、厳しいです。フローサイトメータ大手のメーカーからの計画予測に対して、今年度の売上は3分の1ぐらいになりそうです。全体で1億円弱ぐらいの売上のマイナスが出ます。

そこを、実は他の製品でほぼカバーできるところまで来ていて、売上10.1億円の目標は変えずに済むと考えています。

小型可視レーザだけに限っていうと、先ほどお伝えした大手メーカーからの受注が止まっているのですが、一方でいくつかの顕微鏡メーカーからの受注が増えています。

それは、1つには彼らの製品が市場により多く導入されたということもありますが、もう1つ、我々は30ミリワットから50ミリワットまでパワーを上げることに成功しています。それが高い歩留まりで作れるようになり、出荷できるようになったこともあって、その顕微鏡メーカーの受注につながっています。

ですからお答えとしては、失注してしまったものは新しい製品の開発で取り返しつつ、営業でお客さまとコンタクトを取ってお客さまの量産に貢献し、さらに新しいお客さまを取っていこうと考えています。かつ、2年後、3年後には波長の面展開、それからソリューション化・モジュール化というところで、より大きな市場を取っていこうとしています。

そうすることで、1社だけの失注というのを他でカバーできるところまで少しずつ来ていると思っています。

質疑応答:新製品への期待について

「3つの新製品で最も期待できるのはどれでしょうか? 5,000台に対してどのような内訳になるでしょうか?」というご質問です。

まず1つ目は「RETISSA ON HAND」の海外展開です。これは第2世代として、消費電力やサイズ感をより小さくしたものの開発が始まったところです。これをグローバルに売れるものにして、数千台規模での量産につなげていきたいと思います。

2つ目に「RETISSA MEOCHECK」も非常に重要なアイテムで、サービス化していくことで、ハードと両輪になって広がっていくと思います。今、5,000台のうち、売上の比率がどれぐらいかというのは言えませんが、それぞれ3年後に数千台の販売が十分に想定できるものだと思っています。

また、ソニー社と一緒に取り組んでいる「RETISSA NEOVIEWER」については、今年度は500台、来年度も同等を見込んでいます。その後ミラーレス製品に搭載され、対象の方をロービジョンから広げて、高級機を扱われる高齢者の方々に展開することができれば、ここも数千台規模の可能性が十分あると思っています。

今、デジタルカメラ機器の年間売上台数がだいたい数万台なのですが、そこに500台搭載すると1パーセントぐらいになります。そこをスライドさせて、アルファシリーズに入れていくことです。数としては相当読めると思います。

それぞれ今のものを改良したり、グローバル展開したり、サービスと連携したりすることでそれぞれが伸びていけば、5,000台というのは十分まかなえる数字になっています。

その台数の振り分けは、半年後には出せるかもしれません。今年度の残りの半年を経て、マーケティング数値をもとに想定台数は出せるように努力したいと思っています。

質疑応答:新製品のマーケティングについて

「3つの新製品のマーケティング上の注力点について教えてください」というご質問です。

ソニー社と行っている「RETISSA NEOVIEWER」は、いずれアルファシリーズに展開しようとしているものですが、まずはソニー社の国内5店舗、札幌、東京、大阪、名古屋、博多で販売していますが、特に東京中心として、カメラコンテストなどをこれから開こうとしています。

まだ認知が少し足りないこともありますので、このようなコンテストを通じて、ロービジョンの方の存在や、楽しみを見つけるソーシャルということをよりアピールしたいと思っています。

アメリカに関していうと、ロービジョン向けのショップを展開の起点として、よりアピールを深めていきたいと考えています。そこで実際に「RETISSA NEOVIEWER」を触っていただくことで、アメリカのECストアにある製品の販売に貢献すると思います。

そのようなことも含めて、今ソニー社との連携が非常に深くなっています。ソニー社は、アクセシビリティの分野でこの製品にとても感動してくださっていて、マーケティングのフォーメーションを組んで、チームとして非常に力強く推進しているところです。このように「いかに認知を広げるか」に注力して、ソニー社の店舗をベースとして行うのがまず1つです。

「RETISSA MEOCHECK」に関して、これは眼の健康チェックができるため、まず運輸業界に横展開で広げていきます。日本交通社と連携できているため、タクシーアプリ「GO」との連携や、行政・他業界につながるようなアクセスを検討したいと考えています。

東北大学との連携においては、これは医療機器ではないのですが、早期発見につながるというエビデンスを構築中です。まず白内障について、クラスⅡという少し曇り始める初期白内障が、高い感度と特異度で検出できるという論文が投稿される予定です。これをてこに、学会や業界へのパンフレットに記載して、東北大学の監修も受けて進めるということが始まっています。

緑内障についても、見え方のパターンがあるのですが、これを早期に発見できるということについて4月くらいに論文を発表できると思います。それも含めて、医学会のバックアップと東北大学の監修があり、これが確かな早期発見のツールであることを広めていくというのが1つのやり方です。

以上のタクシー業界連携・行政連携、東北大学と連携してのエビデンスの構築が2本の柱です。

加えて、今は「眼の健康チェック」のサブスクリプションサービスが始まっていて、こちらは値段設定が鍵だと思いますが、それを仙台を中心に広げていくことを始めています。仙台を「眼の健康チェック」の先進都市に、というのが3本目の柱です。

仙台の眼鏡店やコンタクトレンズ店にこれを置いて、そこに来た人が測って、すぐ処方を受けるということです。コンタクトレンズ店のいいところは、そこにお医者さんが一緒にいるという点です。そのようなところから始めていこうと考えています。

また「RETISSA ON HAND」は、図書館と美術館と学校の3つに展開しています。見えづらい方が公共空間で何かできるようになるというのが「RETISSA ON HAND」の目標です。

特に美術館、博物館に最大の力を入れていて、アーツカウンシル東京という公益財団法人からこれをすでに数台買っていただいて、デモが始まっています。

今はデモや実証実験などを実施していますが、その後は財団法人の傘下にあるいろいろな施設のうち、三十数施設から導入していくというストーリーを持っています。例えば音声ガイドのようなかたちで、レンタルで使っていただくのが1つのやり方で、現在そこを目指して、使用マニュアルやビジネスモデルを組み上げているところです。

図書館は全国で三千数百か所あり、そこの総本山の図書館流通センター社と、来年度の予算取りについて話を進めているところです。ここでも、公共空間で普通に使っていただけることをご案内しています。

台湾と中国での展開としては、台湾では実際に新しい視覚支援機器としてデモが始まっています。台湾と中国それぞれで主要な代理店や連携するメーカーを選びながら、広めていきたいということです。

いずれにしても、やはりパートナーシップが鍵です。それぞれ戦略をもって進めているところです。

質疑応答:量子ドットレーザの受注見通しについて

「量子ドットレーザの受注計画は20万個から40万個ということですが、予想の数字と比較すると少なく見えます。こちらの考え方を教えてください」というご質問です。

量子ドットレーザについては、まだ「IOCore」を使った製品のフィールドテストの段階なので、今回の6万台という予想の数字は少し保守的に見たというところです。フィールドテストが終わると、受注台数は一気に膨らんでいくと思っており、このテストの成功をじりじりと待っているところです。

質疑応答:「眼の健康チェック」サービスの営業展開の現状について

「『眼の健康チェック』サービスの営業展開の現状について教えてください」というご質問です。

ここまでの説明をまとめると、日本交通社で昨年度1,000人のトライアルが終わって、本格的な検診に組み入れられて、今年は5,000人に実施します。来年度も継続していくことになっています。

それから、もう1つは横展開です。タクシードライバーの方は日本に30万人いらっしゃって、そのうちの1万人が日本交通社に所属していますが、これを横展開して、来年度以降に4倍の規模、2万人に増やしたいと考えています。

ただ2万人となると、我々だけでは検診をやり切ることができませんので、検診業者や人材会社と契約を結ぼうとしています。専門の業者さんに使い方をすべて教えて、すべて対応してもらうかたちの事業を組み上げているところです。

「眼の健康チェック」サービスはオンライン化、DX化しています。機材をレンタルして置いてもらい、それを覗いてセルフチェックできるもので、結果はCSVデータをオンライン送信して、我々のデータベースがそれを解析し、統計解析や疾患の危険性などをまとめた結果を事業者の管理者あるいは個人に送るということです。現在PoCを作っており、来年から稼働すると思います。

また、営業展開という意味では、仙台を先進都市にするというプロジェクトが始まっていて、そこに共感いただいている眼鏡店、コンタクトレンズメーカーの方、ショップの方と一緒に店舗に置くことが始まりそうです。このプロジェクトは東北大学の中で始まっていて、最後の組み上げをしているところです。

白内障に関しては、論文はまだ出ていないため詳しいことは言えないのですが、感度と特異度という、スクリーニングに必要な検査の有用性をきちんと測れるところまできています。従来の眼科検査装置に比べて、白内障の検出率が最も高いという結果になっており、緑内障のほうも同様と考えています。

質疑応答:フォトニック結晶レーザとの量子ドットレーザの違いについて

「京都大学の野田進教授が開発しているフォトニック結晶レーザと、貴社の量子ドットレーザの違いについて教えてください」というご質問です。

レーザというのは増幅するバイアスと、それを閉じ込めて光を共振させる構造があります。光増幅と光を閉じ込めるという2つのトリックがあって、発振が起こる媒質になっています。

野田教授が行っておられるのは光を閉じ込めるほうで、フォトニック結晶というのは、光を非常に狭い場所に閉じ込めることで光を集中して出したり、電力を下げたり、あるいは光回路の中に全部集積してしまったりすることができる結晶です。ノーベル賞を取るかもしれませんね、すばらしい成果だと思います。

一方で、量子ドットレーザというのは光を増幅する媒質です。我々の材質はフォトニック結晶の中にも、シリコンの中にも入るというもので、光を増幅するものです。

レーザの2つの要素、つまりフォトニック結晶という共振器と、量子ドットという増幅媒質がそれぞれあって、分野が違うというか、これらが合わさってレーザができると思っていただければと思います。

野田教授も、フォトニック結晶の中に量子ドットを入れてレーザにする研究を行っており、NTTグループのIWON構想への参加が期待されているようです。フォトニック結晶は非常に小さいところに光を閉じ込められるため、微小な集積回路との適合性が高いですし、シリコンを用いることもできます。

シリコンの電子回路とフォトニック結晶を合わせることで、より微細な電子光集積回路ができるのではという期待は学会内でもあって、ただ、それが本当に実用化されるかどうかはわからず、かなり長い道のりがあるとは想像します。