イベント関連株「博展」 新社長と元楽天IR部長が徹底解剖 !

原田淳氏(以下、原田):みなさま、こんにちは。株式会社博展 代表取締役社長の原田です。博展についてご紹介させていただきます。

今回は、「楽天」などでIR責任者として、市場との対話を長年続けてこられた、マーケットリバー株式会社 代表取締役の市川さんにお越しいただきました。投資家のみなさまにわかりやすくお伝えできるよう、対談形式でお送りします。市川さん、よろしくお願いします。

市川祐子氏(以下、市川):こんにちは、市川と申します。よろしくお願いいたします。はじめに、「イベント関連株『博展』 新社長と元楽天IR部長が徹底解剖!」と題して、4月に新社長に就任された原田さんに、博展の魅力と事業概要についてお話しいただきます。さっそくですが、まず原田さんの経歴から教えてください。

新社長 原田のプロフィール

原田:私は、もともと大学で建築を学んでいました。その学生時代に山一証券が倒産したんですよね。

市川:1997年のことですね。

原田:当時は「大きい会社に入っても潰れるんだ」と、非常に衝撃を受けました。その後、建築会社への入社を経て、一級建築士事務所で独立しようとがんばっていましたが、その中で、自分のデザインのセンスなどを見て「僕がデザインをがんばっても伸びないな」と限界も感じていました。

そこで、自分のバイタリティを活かしながら、多くの業界や業種に触れる中で空間デザインの可能性をより探究でき、また、自分の成長が会社の成長に直接つながるような成長意欲の高い会社で働きたいと思い、博展に入社しました。

市川:なるほど。デザインからさまざまな体験ができて、多くの業種があるということで博展を選んだのですね。博展に入ってからはいかがでしたか?

原田:当時の博展の売上は30億円程度で、そのほとんどが展示会によるものでした。私は建築業界での経験がありましたので、商空間であるショールームなどの常設の仕事を広げていこうというタイミングで、責任者として事業を立ち上げることになりました。

市川:事業の立ち上げに携わっていたのですね。

原田:そのとおりです。いきなり「やって」と言われて驚きましたが、仲間と努力していく中で徐々に事業が伸びていき、その功績が認められて、本丸のイベント・展示会も手がけるようになりました。

そして当時、IT動画やアプリを開発し、サービス提供しているスプラシアを博展が買収しました。そこで、ITの「あ」の字もわからない、経営をしたこともない私に社長としての白羽の矢が立ち、「やってみろ」ということで必死にがんばりました。

市川:すばらしいですね。子会社の社長は社長育成の定石と言われていますが、もともとあった子会社ではなく新しい買収先ということで、非常に貴重な経営経験になったのではないかと思います。

原田:おっしゃるとおりです。今思えば本当に良い経験をさせていただきましたが、当時は必死でそれどころではありませんでした。

市川:そうでしたか。しかし、買収後のPMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)は経営経験として大きなプラスになっていそうだと思いました。

社長就任にあたり

市川:社長就任にあたって大切にしていきたいことについて教えてください。

原田:現会長である前任の田口は、本当に人を大事にしてこの会社を経営してきました。その考えは私も同様です。やはり一番は“社員”ですので、これからも人を大事にして経営していきたいと考えています。

当然ながら、私の使命は会社を成長させることです。しかし、会社は形のないもので、それを直接成長させるのは簡単ではありません。社員一人ひとりの成長の総和が会社の成長につながると思いますので、これまで以上に社員一人ひとりの成長に注力して経営していきたいと考えています。

市川:それが「人が大事。一人一人の成長を、会社の成長につなぐ。」という木のコンセプトですね。「根」と「幹」と「葉」に、それぞれ違うワードが入っていますが、これについて教えてください。

原田:スライド上部にある「葉振り」が成果です。成果を急いて「早く実ってほしい」と思ってしまいますが、しっかりとした根と幹があってこその葉振りです。したがって、まずは、この根をしっかりと張ることが大切です。太く揺るがない頑丈な幹を作ることによって、花は必ず咲くと思っています。

いくら葉振りがよくても、根や幹が細ければ、途中で花は枯れ、枝も折れてしまいます。そのため、枝になる前の根や幹が大切です。

市川:根が「人」であり、企業文化や理念をしっかりと張ることによって、最終的には葉である売上や利益、パーパスの実現、社会への貢献につながっていくという思いで描かれたということですね。

原田:おっしゃるとおりです。

会社概要・沿革

市川:博展の事業の沿革について教えてください。

原田:1970年に会社を設立しました。1992年に現会長の田口が社長に就任し、そこから急成長を遂げています。もともとの大工の会社から営業、クリエイティブ、デジタル、サステナブルと近年では事業を伸ばしてきました。

市川:原田社長の経歴と博展の事業発展の歴史はほぼ同じではありませんか?

原田:2008年に入社しましたので、そのとおりだと思います。

市川:多角化として、多くの部分を担ったということですか?

原田:それどころではなく必死でした。振り返ってみて、そこに貢献できていたとすれば、非常にうれしいです。

市川:なるほど。また、コロナ禍でかなり苦労されたと思います。スライドの売上高の推移はV字回復していますが、どのように対応されたのでしょうか?

原田:まずは、社員一人ひとりが足を止めなかったことが非常に大きかったと思っています。もちろん、コロナ禍で調子のよい業界、調子の悪い業界もありました。展示会やイベントは行わないお客さまも、その期間にショールームを改装したり、自分たちの価値をオンラインで伝えるチャレンジを一緒に行ったりしました。

我々も大変でしたが、お客さまも困惑していました。お客さま自身の商品やサービス、ブランド的価値を届ける方法を失っていたため、そこで我々は何ができるのかをお客さまと一緒に考え、乗り越えることができたと思っています。

市川:コロナ禍を契機にお客さまと一緒に事業をトランスフォーメーションした成果が、このV字回復につながったということですね。

原田:そのとおりです。

Our Service - サービス概要

市川:博展の事業について詳しく教えてください。

原田:スライドには、現在、我々がお客さまにお届けしているサービスを記載しています。博展は、リアルとデジタルの両方を通じて人の体験を統合的にデザインし、企業や社会の課題解決に貢献しています。

市川:「イベント」「デジタル」「施設・環境開発」とありますが、当初はイベントの展示会が多かったというお話でした。しかし今は、一言でいえばデジタルで施設の内装をかっこよくデザインし、企業のコンセプトを上手に伝えて体験を作っていくのが博展のサービスということですね。

原田:そのとおりです。

Our Service事業領域 (顧客市場カテゴリー)

市川:「体験の創造」について、具体的な事例を教えてください。

原田:現在は、大きく3つに分類しています。BtoBという意味では、展示会や商談会、企業ショールームといったアウトプットが多いです。BtoCでは、PRイベントやプロモーション、ポップアップショップが多く、最近では商業施設や自治体の場作りや文化創造のお手伝いも増えてきています。

市川:本当に価値を作るところに関わることで、BtoC、BtoB、あるいは行政・自治体での取り組みも増えているということですね。

競争優位性

市川:このような取り組みの中で、お聞きしたいことがあります。同業他社とはどのような違いがあるのでしょうか? まずはビジネスモデルとしてどのように違うのか、教えてください。

原田:一番の特徴は、体験を基軸にワンストップで価値を提供できることだと思っています。コロナ禍を経てリアルが復活してきます。リアルな場における「体験の創造」は、博展にとって非常に良い環境にあると考えています。

競争優位性

市川:リアルが入っているところがポイントだと思いますが、大手広告代理店との違いはどのような点でしょうか?

原田:博展には「価値の源泉」と呼んでいる「制作・プロダクトマネジメント」「クリエイティブ」「サステナビリティ」の3つの強みがあります。それぞれが強い会社はありますが、この3つを掛け合わせて市場に価値を提供しているのが我々の独自性だと考えています。

市川:まずは、クリエイティブでセンスがなければならないと思います。次に制作プロダクトマネジメントの実行力、落とし込める力で、なおかつ、お客さまから求められているサステナビリティがしっかりと嚙み合っているところが博展の強みということですね?

原田:おっしゃるとおりです。

今、博展に注目するべき理由

市川:今、博展に注目すべき理由とポイントを教えてください。

原田:1つ目は新型コロナウイルス感染症の収束です。いよいよリアルが活況になっていることを、みなさまも街中や仕事の場面で感じていると思います。その先には、大阪・関西万博や国際見本市があり、政府が強化しているため、我々にとっても追い風です。

2つ目は体験の価値です。コロナ禍を経て、みなさまがあらためて価値の大切さや効果を痛感していることも、我々にとっては追い風になっていると思います。

市川:3つ目は何ですか?

原田:3つ目は私が新しく社長に就任したことです。現在の経営ボードは非常に若く、各事業のリーダーも若い方が多いです。そのような若い世代が、新しい博展の未来に向けて各事業・部門を牽引しているところがポイントだと思います。

市川:原田社長は今おいくつですか?

原田:46歳です。

市川:非常に若い経営陣ということで、期待ができますね。

今、博展に注目する理由の1つ目は、コロナ禍が収束しリアルが活況になっているということで、その中で体験価値が再認識されていることです。また、原田社長のもとで、次世代の成長に向けて社員が邁進しています。

スライドに中期経営計画(2025年12月期)の数字を記載していますが、2023年3月期比で、売上高は36.3パーセント増、営業利益は89.4パーセント増、営業利益率は2.07ポイントの向上を目指して、原田社長のもとで努力しているということですね。本当に期待しています。

原田:ぜひ、期待してください。

体験型マーケティングの変革者「博展」 広告業界での独自のポジショニング

市川:ここからは、「体験型マーケティングの変革者『博展』 広告業界での独自のポジショニング」と題し、原田社長に博展を取り巻く事業環境と独自のポジショニングについて、お話しいただきます。

まず、博展が置かれている事業環境と市場見込みについて教えてください。

事業環境

原田:主要な事業領域である国内のイベント市場やディスプレイ市場は、コロナ禍の影響からは完全に回復しています。また、関連する市場であるインターネット広告とデジタルの事業領域は著しい成長が期待されています。市場として、広告業界イベント領域が約3,000億円、ディスプレイ業界が1兆4,100億円、インターネット広告が2兆7,900億円の規模になっています。

市川:いずれの市場も今年から来年にかけて成長が見込まれています。私はインターネット業界に長く関わっていたのですが、現在は「Online to Offline」や「Offline to Online」のような相互に関連している市場が伸びているようです。博展はそのような業界にポジショニングしていますが、この3つの業界における類似企業や同業他社について教えてください。

原田:まず、広告業界のイベント領域の同業他社は、フロンティアインターナショナルさんやTOWさんのほか電通さんや博報堂さんのグループ会社です。ディスプレイ業界では、乃村工藝社さん、丹青社さんが2大企業になります。インターネット広告は、サイバーエージェントさんをはじめ多くの会社が参入しています。

市川:成長業界であるインターネット広告市場にも関連しますが、オンラインからオフラインにアクセスし、相互に影響し合っている3つの市場がいずれも伸びているということですね。

事業環境

市川:業界における博展のポジショニングについて教えてください。

原田:スライドの縦軸の上部が課題解決で、下部が制作実行です。横軸は、右側が体験基軸で、左側がメディア基軸となっています。この中で、我々は課題解決であるマーケティング価値と体験基軸で独自のポジショニングで狙っており、その価値を届けています。

お客さまの課題解決を上流の戦略面からサポートすることはもちろんのこと、それを高いクオリティで制作実行して提供することで、成果を最大化できるのが我々の特徴です。

市川:スライドにある分布図の右側に注目すると、ディスプレイ業界の他社は、指示どおりにしっかりと取り組む制作実行タイプで、博展は課題解決型に寄っています。また、大手広告代理店と比較すると、CMなどのメディアではなく体験基軸側にいる点が同業他社と異なっているということでしょうか。具体的な事例について、教えてください。

株式会社ブリヂストンTOKYO AUTO SALON 2023

原田:1つ目は、1月に開催されたオートサロンという展示会でのブリヂストンのブースです。コロナ禍での中止はありましたが、2019年からブリヂストンさまの出展をサポートしています。

ブリヂストンさまは第3の創業として「サステナブルなソリューションカンパニーになる」という方針を立てられました。

それに対し、2022年の出展企画では、10年後も20年後もユーザーに「走るわくわく」を提供し続けるために、現在のブリヂストンさまが臨む姿を表現しました。そこで、我々は「Tomorrow Road」というコンセプトを提案しました。そのコンセプトに沿ってプランニングし、デザインやコンテンツ制作から施工に至るまで、トータル的に我々がサポートしました。

このコンセプトを非常に気に入ってくださり、その翌年の2023年もコンセプトの「Tomorrow Road」は変更せず、企画の内容をさらにアップデートしました。

市川:このお写真がその時の様子ですね?

原田:そのとおりです。来場者がタッチパネルやタイヤに触れると情報が表示されるなど、さまざまなデジタル演出を多く用いた体験設計を企画・制作しました。

市川:まさにワクワクするような、華やかで「Tomorrow Road」というイメージに合ったディスプレイだと思います。タッチパネルなどを利用し、さまざまな体験ができるのは、これまでのイベント展示からは一歩進んだかたちですね。

ブリヂストンの担当者がコメントしている記事も拝見しましたが、ブリヂストンのサステナビリティというコンセプトを博展が上手に解釈し、結果的に多くの共感を得られたと喜ばれており、非常に良い事例だと思いました。

「COACH MART」 Holiday Pop Up Store

原田:2つ目の事例は、BtoCイベントの「COACH MART」です。2022年の11月から12月にかけて、原宿の某所に開設したポップアップストアになります。

担当者から聞いた話では、日本のマートとアメリカのコンビニエンスストアからインスピレーションを得たそうです。

市川:非常にかわいらしいストアですね。

原田:そうですね。世界初のコンビニエンスストア風ポップアップストアです。こちらもコンセプトの企画・設計から会場空間デザインや施工まで行ったほか、ノベルティ制作や店員のユニフォームまで、運営や会場提案のすべてに関わりました。

スライドの写真は昼間に撮影したものですが、来店者が楽しめる体験型の仕掛けとして、夜にはネオンライティングも行いました。また、オリジナルのショッピングカートを用意したほか、フォトブースやフォトスポットも設置しました。

市川:まさに体験型ですね。

原田:このように、我々はブランドの新たなファン層を獲得するための体験設計を非常に得意としています。

100年続いているブランドの伝統をしっかり守っていくというよりは、新しいことにチャレンジし、新たな領域でファン層を獲得するために、クリエイティブから制作・施工までを一貫して実施しているのが我々の手法です。結果的にお客さまの期待に非常に高く応えられており、その点が同業他社の違いだと思っています。

市川:なるほど。いわゆる“ザ・コーチ”のようなブランドストアは、むしろ他社のほうが強く、博展はこれまでとは異なる顧客層を獲得する時に、このようなポップストアのようなものをコンセプトから提案できるということに違いがあるのですね。

事業環境

市川:博展はさまざまなお客さまのニーズを捉えているのではないかと思うのですが、最近のお客さまの傾向を教えてください。

原田:2つの事例でご覧いただいたように、顧客やさらにその先のユーザーにとって、体験ニーズは非常に高まっていると思います。

そのほか、コロナ禍で便利さを実感したデジタル化の促進や、環境に配慮したサステナビリティも同様です。

市川:そうですね。高まっていますね。

原田:現在はそれらが大前提となっているため、見つけた課題を解決するというより、更新されていく時代環境の変化に対応し、共に課題を見つけて解決していくパートナーが求められていると切実に感じています。

市川:デジタルはもちろんのこと、デジタルとリアルの融合やサステナビリティの必要性は私もさまざまな業界で感じているため、このような変化への対応は必須ですね。

競争優位性

市川:同業他社に対しての競争優位性について、あらためて教えてください。

原田:体験を基軸にし、デジタルとリアルを融合させ、ワンストップで提供可能であることが我々の独自性です。

市川:コロナ禍を経て、リアルが復活していることも、先ほどのイベントやポップストアのようなニーズが高まってきている要因でしょうか?

原田:そうですね。

競争優位性

市川:特に他社では難しいと考えられる強みを教えてください。

原田:この後じっくりとご説明しますが、我々は、「制作・プロダクトマネジメント」「クリエイティブ」「サステナビリティ」という3つの機能を有しており、それを直接お客さまの手に届けられることが強みだと思っています。

市川:スライド左側に記載された3つの強みについて、1つずつ教えてください。

競争優位性

原田:1つ目の強みである「クリエイティブ」ですが、我々は100名を超える個性あふれるクリエイティブメンバーを抱えています。スライドに記載しているように、それぞれがデザイン、プランニング、デジタルに携わっているほか、イベントの未来を探究するチームなどもあります。

市川:クリエイティブメンバーが100名も在籍していること自体がすごいことですが、それぞれの専門性も高そうですね。

競争優位性

市川:2つ目の強みである「制作・プロダクトマネジメント」についてはいかがですか?

原田:まず、国内最大級の高い技術力を有しています。スライドにも「想いをカタチに」というキャッチコピーを記載していますが、さまざまなコンセプトにより人の想いをかたちにし、もの作りを超えた体験から価値を追究していくことを目指しています。

現在は、大阪と東京の2拠点で稼働しており、造作だけではなく、サイングラフィックなども自分たちの手で作っています。

市川:クリエイティビティのみならず、実際の制作物として落とし込めるクオリティの高さは現場ありきということでしょうか?

原田:そのとおりです。

市川:お客さまも安心だと思います。

競争優位性

市川:3つ目の強みであるサステナビリティの取り組みについて教えてください。

原田:当社では、2021年にサステナビリティを推進する専門の部門を設立し、事業の軸であるイベントのサステナビリティを推進しています。これは自分たちの価値を高め、競争優位となるための部門です。

市川:スライドには「競争戦略としてのサステナビリティ」とありますが、単に、環境に良いことを実践しているだけではなく、お客さまのニーズに応えるためのサステナビリティであり、事業に組み込み、売上に貢献しているところが良いと思いました。

顧客数・顧客単価(通期 推移) ※単体

市川:顧客数の推移について教えてください。

原田:当社は多数のお客さまと深い信頼関係を築き、代理店を通さずに直接的な取引を行っています。我々は、体験の価値をさらに多くの方へ届けたいと思っており、そのためには直接お客さまと対話することが重要です。

顧客数は前年比24パーセント増の645社となりました。今後はさらに伸びていくと思いますが、お客さまが抱える課題の一つひとつに応えていくという意味で、顧客単価にも注力し、しっかりと伸ばしていきたいと考えています。

市川:今後、どの程度の企業が博展のターゲット市場になるのでしょうか?

原田:国内では約3,900社の上場企業があり、まだその16パーセント程度しかお取引できておらず、さらに従業員が300人以上の企業数は1万社を超えています。

したがって、ターゲットとなる会社はまだ多数あります。さらに外資系のお客さまもいます。実績でもご紹介した、日本でCOACHを展開しているタペストリー・ジャパンさまやナイキジャパンさまなどの海外ブランドともお取引しています。

BtoBの企業からは「独自のブランドを作っていきたい」という声を非常に多くいただいています。それらの企業が今後の取引先となり、さらに拡大していけるのではないかと思っています。

3ヶ年計画では、2025年の12月には前年比24パーセント増の800社を想定しています。

市川:取引先が645社から800社に増え、直接取引が89パーセントになるということは、利益率も高くなるのではないかと思います。今後もますます期待できますね。

原田:ぜひ期待してください。

なぜ今、「博展」の株に注目するべきか?! 新社長に聞く成長戦略

市川:ここからは「新社長に聞く成長戦略」と題して、博展のこれからの成長戦略についてお話しいただきます。さっそくですが、5月に新しく制定されたパーパスについて教えてください。

Our Purpose 私たちの存在意義

原田:博展ではこれまで「Communication Design~人と人の、笑顔が創り出す未来へ。~」という経営理念を掲げていました。今年5月に新たなパーパスとして「人と社会のコミュニケーションにココロを通わせ、未来へつなげる原動力をつくる。」を策定しました。

市川:これにはどのような思いが込められているのでしょうか?

原田:「組織としてもう一段階上に進みたい」という、社員一人ひとりの思いが込められています。案件や実績などが着々と次のステージに進んでいく中で、対象を人と人だけでなく、人から社会に広げました。

市川:なるほど。

原田:自分たちが世の中にどのように貢献できるかと考えた時に、これまでは「良いイベントをしよう、良いものを作ろう」というところで終わっていました。今後は自分たちが原動力となり、その先の未来作りに貢献したいと考え、新たなパーパスに掲げました。

市川:このパーパスはどのように作られたのでしょうか?

原田:まず各部門から約70名の有志が集まり、2度のワークショップを開催しました。その上でクリエイティブディレクターと経営ボードで何度も対話を重ね、かつ、社員の意見も取り入れながら策定しました。

中期経営目標と成長戦略

市川:「未来へつなげる原動力をつくる。」というキーワードがありますが、どのような成長戦略を描いているのでしょうか?

原田:まず、2025年12月期の中期経営目標を「独自の価値を持つ Communication Design をチームで確立し、市場の支持と共感を得て、博展のファンを作る」としています。「対 社会・市場」の目標として、事業ユニット戦略の推進や体験価値の追究、事業効率の向上を目指しています。「対 人・組織」においては、社員がイキイキと働き、かつチームで成長できる環境作りに取り組みたいと考えています。

中期業績計画

市川:この中期経営目標における、業績指標について教えてください。

原田:3ヶ年計画における2025年12月期目標として、2023年3月期比で売上高は36.3パーセント増となる190億円を目指しています。営業利益率は5.3パーセントから7.37パーセントに向上させ、営業利益は14億円を目標としています。

市川:今期は変則の9ヶ月決算ですが、仮に9ヶ月で110億円の売上高を12ヶ月分に調整すると、147億円となり実質増収です。営業利益は、同じく9ヶ月で4億円のところを12ヶ月分にすると、5.3億円となります。利益率はいったん低くなるようですが、理由は何でしょうか? 2024年以降の改善と合わせて背景を教えてください。

原田:これは中期計画ではありますが、その先の未来に向けて、人的投資が必要になります。給料のベースアップや、教育・研修・採用にさらに力を入れていく予定です。また、労働環境の改善も大切だと考えているため、IT・インフラ整備も含めた環境への投資に取り組んでいます。

市川:オフィスも移転されるとのことですが、この費用も計画に含まれているのでしょうか?

原田:そのとおりです。移転前後に発生する費用に加えて、クリエイティビティをより創出させるような空間作りにも力を入れますので、その分のコストも含まれています。

市川:今期計画について、1月と3月が大きいとうかがいました。この9ヶ月には入っていないため、単に12ヶ月で調整した結果よりはもう少し実力があると思っています。来期以降、特に期待できる分野について教えてください。

原田:来期だけでなくその先も含めて、体験の価値をより追究するために、デジタルや商空間デザインの分野に力を入れていこうと思っています。

成長戦略< 対 社会・市場>

市川:中期の成長戦略の中では、どちらが売上に効いてきそうでしょうか?

原田:「対 社会・市場」戦略のうち、事業ユニット戦略、体験価値の追究、事業効率の向上という3本の軸を設定しています。

成長戦略<対 社会・市場>

原田:まず事業ユニット戦略ですが、市場カテゴリーとして、BtoBマーケティング市場、BtoCマーケティング市場、中部・西日本エリア市場、そして中小展示会出展に分けています。それぞれに営業、クリエイティブ、制作・プロダクトマネジメントという役割を設け、1つの事業ユニットとして推進しています。

それぞれのユニット長が、各ユニットを1つの会社のようにまとめ上げています。小さい博展を多く作っていくイメージで、市場ごとにより鋭く対応していこうと思っています。

市川:組織を変えたことで、どのようなメリットがありますか?

原田:一番大きなメリットは、スピード感だと思っています。我々はお客さまが答えを持っていない事態に向き合い、一緒に課題を拾い上げ、解決していきます。その課題に対して営業だけではなく、クリエイティブやサステナビリティのメンバーが一体となって取り組むことで、タイムラグや認識のズレがなくなり、よりスピーディーに良いものを提供できると考えています。

市川:お客さまからも良いフィードバックがあるのではないかと思いますが、具体的にどのような声があるのでしょうか? また、社員の意識には変化がありましたか?

原田:まず、この数年でもう一段レイヤーの高い仕事をいただけるようになったことは非常に嬉しく、良い傾向だと思っています。お客さまからは、メンバーが職種を超えて良い体験を作ろうとしている様子がひしひしと伝わってくるとお聞きし、非常に嬉しいことだと思っています。

市川:小さな博展が多く生まれるように組織が変化したことで、ファンとなるお客さまが今後も増えていきそうでしょうか?

原田:まさにそのとおりです。前期の取引社数は645社でしたが、2025年には800社を想定しています。

成長戦略<対 人・組織>

市川:取引の単価も向上していくと思いますが、それに対応する人材戦略はどのようにお考えですか?

原田:「対 人・組織」戦略として、人材開発と経営基盤の構築に注力し始めました。体験型マーケティング事業を拡大する上で、一番重要なファクターは人です。多様な価値を発揮できる人材を採用し、育成することが最重要課題となっています。また、働きやすい環境作りとして、ITインフラへの投資なども進めていきます。

成長戦略<対 人・組織>

市川:現在はどの業界でも人手不足と言われていますが、採用活動において必要な人材は確保できているのでしょうか?

原田:採用に関しては20年以上、全社を挙げて取り組んでおり、多くのノウハウも蓄積されています。私は魅力的な人材を採用するには、当社の社員が魅力的でなければいけないと思っています。社員一人ひとりがイキイキと働いている姿を見ていただき、我々の魅力を感じていただくことが大切です。

そのためには既存の社員がより良く働ける環境を作っていかなければいけませんし、彼らと学生たちとのコミュニケーションをより充実させることも大切だと思っています。

市川:採用はしっかりとできているということですね。採用した人を育成する仕組みにはどのようなものがありますか?

原田:グレード別の目標管理制度や、エンゲージメントサーベイを活用した育成マネジメント強化などが挙げられます。その中でもリーダー育成に関しては、マネジメントもプロフェッショナルも合わせて強化していこうと思っています。

市川:人材育成に関して、社員の意欲や帰属意識を高める取り組みはありますか?

原田:今年10月に19年ぶりに本社オフィスを移転します。京橋の東京スクエアガーデンを新たな拠点として、社員たちがよりクリエイティビティを発揮し、社員同士のコミュニケーションが活発になることを期待しています。

市川:価値を発揮する人を育てるには最適の環境になりそうですね。

中期業績計画

市川:中期業績計画について、あらためてお示しいただきたいと思います。

原田:2025年12月期の目標は、売上高190億円、営業利益14億円、純利益9.8億円としています。

市川:純利益10億円が目前ですね。

原田:今期予想では営業利益を下げていますが、それは未来に向けた投資を続けていくためです。今後は必ずそれが実となり、回収できると思っています。

株主還元について

市川:投資家のみなさまが気になる株主還元についても教えていただけますか?

原田:今期は変則の9ヶ月決算ですので中間配当はありませんが、期末の配当は15円を予定しています。配当利回りは7月6日時点で2.2パーセントになる見込みです。

市川:成長企業として今後利益が拡大していく中で、配当利回りは2パーセントから3パーセント程度が見込めますが、悪くない数字だと思います。また、現在の株価について、2023年3月期の実績ではPER10倍程度でした。今期ベースではPERは20倍から21倍程度となりますが、変則の9ヶ月決算であることが市場にあまり伝わっていない印象があります。

昨年のPER10倍という数字についても、私としては実力が正当に評価されていないのではないかと思っています。しっかりと還元されていくと思いますが、今後の方針についても教えてください。

原田:株主のみなさまには、業績に伴って今後も安定的に還元していきたいと思っています。現在は株主優待について、100株以上を6ヶ月以上保有されている方には「QUOカード」500円分、1,000株以上を3年以上保有されている方には「QUOカード」2,000円分を1枚贈呈しています。

今、博展に注目するべき理由

市川:あらためて、今、博展株を注目するべき理由を教えてください。

原田:まず、コロナ禍が収束し、いよいよリアルが活況になっています。2025年の大阪万博開催に加えて、政府も国際見本市を増やすと発表しています。それは我々にとって追い風であり、コロナ禍を経て体験価値の大切さをあらためて認識いただいています。

そして、今年から私が新たに代表となり、経営ボードも非常に若い仲間たちに変わっています。新体制の元で一致団結し、次世代の成長に向けて邁進していきます。ぜひ、今後もご期待ください。