2023年12月期第1四半期決算説明

佐藤健太郎氏:社長の佐藤でございます。本日はお忙しい中、ご参加いただきありがとうございます。GMOペパボの2023年12月期第1四半期決算説明会を開始します。

今回の決算のサマリーです。2023年12月期第1四半期は、金融支援事業の成長とストック型ビジネスの堅調な推移により増収となりましたが、金融支援事業の貸倒関連費用が増加したため、減益となりました。

また、当社は以前から、AIをはじめとする技術研究に積極的に取り組んでいます。急速に世の中に普及し始めた「ChatGPT」などのAI技術の分野には、私たちにとっても今後大きなチャンスがあると考えています。

私自身もWeb2.0のような勢いが再び訪れるのではないかと期待しており、今後も迅速にサービスへと展開し、事業成長を加速させたいと考えています。具体的な内容については後ほどご説明します。

AGENDA

本日のアジェンダは、スライドに記載のとおりです。資料後半には参考資料も掲載していますので、お時間がある際にご覧ください。

決算概要(1Q実績)

まずは、2023年12月期第1四半期の決算概要をご説明します。2023年12月期第1四半期の売上高は、前年同期比107.9パーセントの27億3,500万円でした。営業利益は、前年同期比16パーセントの3,600万円となりました。経常利益は投資有価証券評価益を計上したことにより、前年同期比44パーセントの1億400万円となっています。

連結業績推移

四半期ごとの業績推移を見ると、2023年12月期第1四半期の売上高は27.3億円となり、過去最高を更新しています。一方で、営業利益は大きく減少しました。この減少要因については、次ページ以降でご説明します。

営業利益増減分析

当期の営業利益は3,600万円となり、前期の2億2,500万円に対し1億8,900万円減少しました。この減益は、金融支援事業で大口債権の滞留が発生したことにより、貸倒関連費用が増加したことが要因です。

金融支援事業の売上高・営業利益推移(貸倒関連費用等を除く)

利益影響の大きかった金融支援事業に関してご説明します。スライド左側のグラフは、金融支援事業の売上高と貸倒関連費用を除いた営業利益の推移です。右側のグラフは、貸倒関連費用の推移を表しています。

金融支援事業の貸倒関連費用は、前期の第4四半期からさらに増加し、2023年12月期第1四半期では1億8,000万円となりました。一方で、貸倒関連費用を除いた営業利益の推移は、売上高と同様に順調に成長し、8,000万円となりました。

FREENANCE 3者間取引における請求書買取額増加イメージ

これまで、金融支援事業では「3者間取引の規模が拡大している」とお伝えしていましたが、あらためて取引の概要をご説明します。

3者間取引とは、ユーザーと取引先企業と当社の3者で行われる取引を指します。ユーザーが受けた仕事の請求書を、一定の手数料で当社が買い取り、後日、取引先から当社に対して請求金額を支払っていただくという流れです。

FREENANCE 3者間取引における法人数と買取単価

直近では、複数のユーザーが同じ企業に対して請求書を発行し、当社の買い取りを利用することから、1つの取引先から当社に支払われる金額が増加しています。これにより、1法人あたりの月次平均買取単価は1,400万円程度まで上昇しています。

また、取引先企業数も増加傾向にあります。それに伴い、買取規模の大きい取引先企業の債権が滞留し、貸倒関連費用も大幅に増加しました。

帝国データバンク 全国倒産件数の推移

こちらは参考資料です。スライドのグラフは帝国データバンクが出している全国倒産件数の月次推移を表しています。2022年5月以降は前年同期比プラスの傾向が見られ、2023年3月の企業倒産件数は大きく増加しており、マクロ環境が少しずつ変わっていると言えます。

滞留債権の発生要因と対策

金融支援事業で大口債権の滞留が発生した要因と対策をご説明します。1点目の要因は、先ほどお話しした倒産件数の推移からもわかるように、マクロ環境が変わり始めたことです。このような要因は当社でコントロールできるものではありません。しかしながら、変化に対応できるよう客観的な情報を常に収集し、実態把握を行っていきます。

2点目は、継続取引先に対するモニタリング不足です。「FREENANCE」では、継続的にサービスを利用される取引先が増えています。そのため、新規取引開始時の与信情報は確認していたものの、継続取引における定期的な与信情報の把握が不足していました。今後は取引先に対して定期的な与信調査を行い、支払能力を確実に検証することで、滞留債権の発生を抑制します。

3点目は、請求書の買取規模拡大への対策不足です。高額債権に対応したチェック機能が弱く、取引規模の拡大に対応しきれていませんでした。今後は与信枠を従来よりも引き下げた上で利用条件をより厳格にし、リスク管理を徹底します。

貸倒関連費用は増加していますが、資金回収に取り組むと同時にリスク管理を徹底することで、引き続き金融支援事業の黒字化を目指します。

セグメント別業績(2023年12月期 1Q)

セグメント別の業績です。ホスティング事業は価格改定の効果を受け、堅調に推移しました。EC支援事業は「カラーミーショップ」が好調でしたが、「SUZURI」の流通が想定を下回りました。

ハンドメイド事業では流通額が前年割れとなったほか、インフラ等のコストが増加しました。金融支援事業については先ほどご説明したとおり、請求書買取額が拡大したものの、貸倒関連費用が増加したため、損失計上となっています。

ホスティング事業

ここからは各セグメント別にご説明します。

まずはホスティング事業です。売上高は前年同期比103.8パーセントの13億6,900万円、営業利益は前年同期比94.4パーセントの4億2,600万円となりました。

ホスティング事業(ロリポップ!)

レンタルサーバーサービスの「ロリポップ!」の売上高は5億9,400万円、営業利益は3億700万円となりました。

顧客単価は、価格改定の効果や上位プランの契約比率が高まり、増加傾向にあります。契約件数は、ホームページの制作から運営・保守・管理まで行う定額ホームページ制作プランをリリースしたものの、低単価のプランで解約が発生し、件数は減少しました。

ホスティング事業(ムームードメイン)

続いて、ドメイン取得代行サービスの「ムームードメイン」の売上高は5億5,300万円、営業利益は4,500万円となりました。顧客単価は、第3四半期に高額ドメインを販売したことにより大幅に増加しましたが、その後、通常の水準に戻っています。

また、前期の第4四半期にドメインの新規取得割引などを実施したことで、契約ドメイン数は一時的に増加しましたが、こちらも現在は通常の水準に戻っています。

EC支援事業

EC支援事業の売上高は前年同期比105.5パーセントの7億円、営業利益は前年同期比93.2パーセントの1億6,300万円となりました。「カラーミーショップ」は、価格改定の効果により好調に推移しましたが、「SUZURI」の流通額が想定を下回り、前年同期比で増収減益となりました。

EC支援事業(カラーミーショップ)

ネットショップ作成サービス「カラーミーショップ」の売上高は5億1,100万円、営業利益は2億200万円となりました。売上高・営業利益ともに前年同期比115パーセントと、好調に推移しています。

2022年4月に行った価格改定の効果を受け、単価の上昇が続いていますが、今年4月で一巡するため、今後は落ち着いていく見込みです。

契約件数は引き続きフリープランが増加している一方で、月額プランの減少傾向が続いています。価格改定から約1年が経過し、月額プランの契約件数の減少はやや落ち着いてきたものの、減少傾向は続いているため、解約率の抑制に取り組むほか、上位店舗向けに展開したプレミアムプランの獲得に注力します。

EC支援事業(SUZURI)

オリジナルグッズ作成・販売サービスの「SUZURI」の売上高は1億8,400万円、営業利益はマイナス2,900万円となりました。

「SUZURI」では、消費動向の変化を受け、流通額が前年割れと厳しい状況が続いています。2023年2月にデジタルコンテンツの販売を開始し、第2四半期にはセールも予定しているため、コストを抑制しつつ、流通額の拡大に注力します。

ハンドメイド事業(minne)

ハンドメイド事業の「minne」の売上高は前年同期比89.7パーセントの4億1,300万円、営業利益は前年同期比55.8パーセントの2,700万円となりました。消費動向の変化を受け流通額が伸び悩んだことで減収となり、インフラコストの増加も影響したため減益となりました。

ハンドメイド事業(minne)

「minne」の2023年第1四半期の流通額については、消費動向の変化を受け、前年同期比90.3パーセントの37億円となりました。前年同期比で顧客単価は増加しましたが、流通額は苦戦が続いています。第1四半期では、「minneカレッジ」の2期生の募集や、デジタルコンテンツの販売も開始しました。引き続き、非物販領域の展開を進めていきます。

金融支援事業

金融支援事業の売上高は2億5,100万円となり、前年同期比278.5パーセントと大きく成長しました。営業利益は先ほどご説明したとおり、貸倒関連費用が増加したことにより、9,300万円の損失となりました。

FREENANCE KPI推移

「FREENANCE」のKPIの推移です。利用者数が順調に増えており、1人あたりの平均買取単価も増加傾向にあります。

FREENANCE 請求書買取額推移

請求書買取額の推移です。3者間取引は抑制し始めた一方で、2者間取引の利用者数が拡大したことにより、第1四半期の請求書買取額は31.2億円となりました。

当社のリスク負担に応じて手数料率の改定を行った結果、手数料率は7.8パーセントへと上昇し、売上高の拡大に寄与しました。

2023年12月期業績進捗(セグメント別)

2023年12月期の業績進捗についてです。セグメント別の業績予想に対する第1四半期時点の進捗は、各サービスともトップラインはおおむね想定どおりとなっています。ホスティング事業の進捗はまずまずですが、2月に実施した価格改定の効果が、今後出てくる見込みです。

利益面では、金融支援事業以外は想定どおりに進捗していますが、金融支援事業の貸倒関連費用によっては、変動があると考えています。引き続き、滞留債権の回収や管理体制強化に取り組んでいきます。

ストック型ビジネスのARR推移

ストック型ビジネスの「ロリポップ!」と「カラーミーショップ」の一過性収益を除いた売上高を集計したARRの推移です。

ホスティング事業は、2020年の約10億円から2023年第1四半期には約11億円へと成長しています。「カラーミーショップ」は約3億円が約5億円となっており、どちらの事業も2022年から見ると順調な成長が継続しています。

今後も価格改定の効果が見込まれますが、新規契約の獲得と解約の抑制にも取り組み、ストック型収益の拡大を目指します。

EC関連サービス流通額の推移

「カラーミーショップ」「SUZURI」「minne」のEC関連サービスの流通額は前年同期比で減少しています。第1四半期は季節性要因もあり、毎年若干の弱含み傾向があるほか、消費動向の変化による影響も受けています。

流通規模が大きな店舗の退店も一部で見られるため、「カラーミーショップ」ではプレミアムプランを導入し、上位店舗の支援ができるプラン提供を行い、退店の防止と流通規模の拡大のサポートに取り組みます。

2023年12月期の主な施策(セグメント別)

各サービスの施策です。ホスティング事業の「ロリポップ!」と「ムームードメイン」ではコスト増に対応するため、2月から価格改定を実施しました。また、足元ではAIを活用したホームページ作成機能の提供も開始しました。引き続きユーザーニーズを把握し、機能改善を行うことで契約の獲得を目指します。

EC支援事業の「カラーミーショップ」では、プレミアムプランの継続的な営業と解約抑制に向けた施策を実施します。「SUZURI」では、デジタルコンテンツの販売を開始したことにより、3Dモデルの販売に注力するほか、企業アライアンスやIP活用による販売強化に注力します。

ハンドメイド事業では、非物販領域であるデジタルコンテンツの販売を行うほか、東京ビッグサイトにてハンドメイドマーケットの実施を予定しています。また、サイト内部広告の導入も進めていきます。

金融支援事業は、月額料金プランの契約獲得と管理体制や債権回収をしっかりと行い、利益の確保を目指します。

AI技術に対する当社の方針

当社のAI技術への対応についてお話しします。当社では、AIの進化によって2年後、3年後にはAIを利用したWebサービスが当たり前になると想定しています。

このような急速な変化は従来の技術とは異なり、私たちが想定する以上に普及のスピードが速く、革新的なものになる可能性があります。当社のサービスにおいても、その流れに追いつくためのスピード感が求められると考えています。

ECの分野でも、各ユーザーがAIによっておすすめされた商品を選ぶようになることが想定されます。さらに、AIがユーザーの要望を読み取り、商品を薦めてくれることも可能になるかもしれません。

当社の強みは、これまで多くの表現者を支援して培ってきた、多様なユーザーのみなさまのニーズへ迅速に対応できる開発力です。

私たちが20年前の創業時に提供を開始した「ロリポップ!」のビジネスでは、ホームページ制作におけるサーバー利用を誰でも簡単に、数百円でできるようにしたことで、一般のユーザーに急速に普及し、業界のゲームチェンジャーになったと自負しています。

AI技術の領域でも、時代の流れをいち早く察知し、サービスへの展開を通じて最高のユーザー体験を提供したいと考えています。

サービスでのAI技術導入①(EC関連サービス)

すでにEC関連サービスの「カラーミーショップ」「SUZURI」「minne」では、AI生成機能が提供されています。

「カラーミーショップ」と「minne」では商品情報や作品情報から、SNS投稿用の宣伝文を自動作成できます。また「SUZURI」では、ユーザーが入力したキーワードを元に、アイテムの説明文を生成できます。

ユーザーにとっては、SNS投稿の説明文を考える時間を大幅に削減できるため、作業の効率化につながります。また、最適なキーワードやハッシュタグ、絵文字の選定など、データや最新トレンドにもとづいた分析を活用し、ユーザー自身が思いつかなかった表現やアプローチによるアウトプットを増やすことが可能です。

サービスでのAI技術導入②(ロリポップ!、GMOレンシュ)

さらに「ロリポップ!」では、作りたいホームページの概要をテキスト入力するだけで、Webサイトのコードを生成する機能を導入しました。コーディング工数の削減になるだけではなく、自動生成されたコードをホームページへと落とし込み、そのままサーバーやドメインを契約できるため、今までよりも手軽にホームページの制作を行えます。

「GMOレンシュ」では、教室運営者が受講者にお知らせする際の文言を、簡単な箇条書きや条件を指定するだけで、文章を自動生成する機能を導入しました。これにより教室運営者の手間を削減し、より多くの時間をアウトプットへ割けるようになります。

今後のサービスにおけるAI技術の導入

今後のAIに関する取り組みについてです。現在「SUZURI」では、「スリスリAIチャット」という機能の提供が始まっています。これまでの検索を中心としたAIの活用に加え、対話型AIをサービスに含める取り組みを進めています。ユーザーはチャットでたずねるだけで、キャラクターとの会話を楽しみながら、自分に合った商品をおすすめしてもらえます。

このように対話型のAIを活用し、あらゆるユーザーへ総合的な支援を行うことで、より良い購入体験が実現できると考えています。今後は、流通額の規模の大きい「カラーミーショップ」と「minne」にも導入し、ユーザーのみなさまがより快適にショッピングを楽しめる環境を提供する予定です。

AIに関する取り組みはまだ始まったばかりですが、急速な進化を遂げています。当社としてもスピード感を持って、トレンドを押さえながら展開を進めていきたいと考えています。

私からのご説明は以上となります。ありがとうございました。