当社の経営方針

中村篤弘氏(以下、中村):ジェイフロンティアの中村と申します。よろしくお願いします。

当社は、「人と社会を健康に美しく」を経営理念に、国民の健康寿命の伸長による医療費の抑制や、医療機関のDX化による効率的・効果的な医療体制の構築を目指しています。

当社代表の略歴

中村:簡単に私の自己紹介をします。大学卒業後はドラッグストアに就職し店長を務め、薬の対面販売や、薬剤師のマネジメントを経験しました。そのあと、主にECを担当している広告代理店で営業責任者を務め、「リアルとバーチャルでどのようにしてモノを売るのか」ということを行っていく中で、当社を創業し、「SOKUYAKU」というサービスをスタートしました。

当社が目指す将来の事業モデル

中村:「SOKUYAKU」は、オンライン診療のプラットフォームであり、病気になったらオンライン診療とオンライン服薬指導を受けて、処方薬を受け取ることができるサービスです。これにより疾病期間の短縮化を実現します。

そして治ったあとは、病気にならないように予防に注力する必要がありますので、D2C事業では我々が扱っている機能性表示食品や医薬部外品、OTC医薬品などを活用し、未病・予防期間の長期化を図ります。

我々はこれらを「SOKUYAKUヘルスケア経済圏」と呼んでおり、それぞれ事業を展開しています。

SOKUYAKU事業概要

中村:具体的な事業概要についてご説明します。まずは「SOKUYAKU」についてです。「SOKUYAKU」は、「オンライン診療」「オンライン服薬指導」を受けることができ、ユーザーが薬の受取方法を選択できるサービスで、ビジネス特許を取得しています。

坂本慎太郎氏(以下、坂本):御社が特許を取っている、オンライン診療から処方箋の送付、薬の配送までをワンストップで提供できるこのサービスについて、同業他社で似たような事業を展開している企業はいますか? もしくは「これを除いたらできる」という状況なのでしょうか?

中村:同業他社は存在します。しかし、他社は「オンライン診療はオンライン診療」「オンライン服薬指導はオンライン服薬指導」というかたちで、配送もそれぞれ別の業者を使っています。他社は独立したビジネスになっていることが多いのに対し、我々のサービスではワンストップでできることが強みになっています。

SOKUYAKUで実現したい世界観

中村:我々は24時間、いつでも・どこでも・誰でも、医師・薬剤師とつながり、薬を受け取れる社会の実現を目指しています。

SOKUYAKU事業を取り巻く市場環境(1)

中村:背景についてご説明します。2019年の薬剤費は7.7兆円です。仮にこの1パーセントをEC化したら770億円、10パーセントであれば7,700億円と、当社のターゲットは非常に大きな市場だとご理解いただけると思います。

オンライン診療については、日本ではまだ普及しておらず、オンライン診療が恒久化される閣議決定の前時点の予測で市場規模は200億円くらいです。

SOKUYAKU事業を取り巻く市場環境(2)

中村:外部環境として、医療先進国の日本ですが、人口1,000人当たりの医師数は2.4人と、医療従事者が非常に不足している状況です。また、医師1人に対する65歳以上の人口は112.3人と、世界で群を抜いています。

医療・介護給付金は、現在50兆円弱ですが、2040年には約95兆円になるという予測が出ています。

それにもかかわらず、医療従事者は横ばいで増えていません。このような背景も含めて、医療のDXに貢献して、医療現場の一助になれればと考えています。

急拡大する海外の事例

中村:海外のオンライン診療の市況です。2021年の市場規模は、アメリカが3.17兆円、中国が1.27兆円、インドが1,900億円です。医療費のみでは、日本は世界でも3本の指に入るくらい利用されていますが、今後も拡大していく市場だということはご理解いただけると思います。

海外でオンライン診療が拡大した要因は、大きく2点あります。1点目は政府による規制緩和、2点目はオンライン診療から薬の配送までワンストップで手掛けていたかです。「SOKUYAKU」はこの2点を兼ね備えたかたちで事業を推進しています。

坂本:前回の登壇から1年くらい経っていますが、この1年の日本のオンライン診療の成長について、何かトピックがあれば教えてください。

中村:自治体でオンライン診療センターなどが開設され、そのようなところからいただくお仕事が増えてきています。また、利便性の高さから慢性疾患の方の利用が増加していることや、美肌やAGAなどのオンラインの自由診療の流行が進んできていることが変化として挙げられます。

日本における規制緩和

中村:オンライン診療の規制緩和が進む中で、昨年4月に、オンライン診療の初診料が対面診療の7割から9割弱に引き上げられました。

また、オンライン服薬指導への規制緩和も進みました。これまではオンライン診療を受けた人しかオンライン服薬指導を受けられませんでしたが、対面診療後でもオンライン服薬指導を受けることが可能になりました。直近でも、在宅における薬剤師の服薬指導が可能になるなど、規制緩和が非常に進んでいます。

日本における規制緩和_特例措置に関して

中村:先日、特例措置終了の記事が日本経済新聞に掲載されていましたが、当社にとっては逆に追い風になると思っています。今までの特例措置は「0410対応」といって「電話で診察や薬の説明をしてよい」というコロナ禍の時限的措置でしたが、これが今年7月で終了します。

今後、電話診察はできなくなります。モニターやオンライン診療のツールなどを使わないといけなくなり、我々のサービスにとっては非常に追い風になると考えています。

経営管理指標(KPI)

中村:病院・薬局提携数の状況についてご説明します。病院は3,009件、薬局は6,014件、合わせて9,023件を超えてきています。今期の提携目標数は1万件ですので、達成できるのではないかと考えています。ユーザー数については、マス広告を含め足元で増やしており、第3四半期は108万5,451人となりました。

坂本:広告投資などにより、病院・薬局提携数やユーザー数が加速している状況ですが、これは想定内でしょうか? 想定を上回るようなスピードなのでしょうか?

中村:想定どおり、順調に進んでいます。新型コロナウイルス感染拡大の第8波の時もそうですが、そのあとも花粉症などで診察件数が非常に増えました。また、リピートしていただける方も非常に増えているため、順調に推移しています。

坂本:つまり、ユーザー登録してからのアクティブ率は想定より高いということですか?

中村:そのとおりです。ユーザーが拡大している中で、一度利用された方のアクティブ率も維持できています。

SOKUYAKUの強み

中村:オンライン診療がなかなか普及しなかった要因は、大きく分けて5つあります。1つ目は、医療機関側にとって「システムの費用負担が重い」という点です。

2つ目は、保険診療の場合は国が医療費の7割を負担するため、「患者誘導の広告が法律で禁止」されていることです。そのため、業界にはマーケティングや集客という概念がなく、システムを導入しても集客できません。

3つ目は、現場で「システムを利用したオペレーションが構築できない」ことです。普段の診察を行いながら、新たにオンライン診療のオペレーションを構築するのは困難です。

4つ目は、「薬の受取までに時間と手間がかかる」という点です。

5つ目は、「受診料が対面診療より高く、患者負担額にバラつき」がある点です。「SOKUYAKU」では、これらを解消する施策を行っています。具体的にご説明していきます。

オンライン化の阻害要因とSOKUYAKUの打ち手①

中村:オンライン化の阻害要因の1つは、費用負担の重さです。他社は、「初期費用◯万円、月額◯万円の利用料」、あるいは従量課金で「売上の◯パーセント」などと料金設定をしています。

一方「SOKUYAKU」では、病院・薬局は無償でシステムを導入することが可能で、患者から1診察当たり150円の手数料をいただいています。オンライン診療で150円、オンライン服薬指導で150円ですので、両方受けると300円のサービスになります。

日々の営業活動の中で、「数年前に他社のシステムを導入したが、なかなか予約が入らない」というお話や、大きな薬局でも、「1,000店舗以上にシステムを入れたが、2年間で10枚、20枚のレベルでしか処方箋が来ていない」というお話をうかがうことがあります。

これは当然のことで、システムを導入しても集客しなければ患者は来ないということです。

オンライン化の阻害要因とSOKUYAKUの打ち手②

中村:ただし、先ほどお伝えしたように、広告が打てないのがこの業界の難点です。そこを解消するため、「SOKUYAKU」では「当日中に薬が届く」とプラットフォーム上でサービスを宣伝しています。我々がプラットフォーム上で集客し、患者を病院・薬局に送客することで、患者が増えています。

どのようなCMを打ち出しているかは、次の動画をご覧いただければと思います。

オンライン化の阻害要因とSOKUYAKUの打ち手③

中村:3点目の「システムを利用したオペレーションが構築できない」という点についてです。患者からオンライン診療の予約が入ったら、前日に「明日の何時何分に予約が入っていますのでお願いします」というリマインドの電話を必ずしています。

オンライン診療に慣れていない先生は、予約が入っているのに気づかなかったり、外出してしまったりすることがあるため、病院や薬局へも電話連絡を入れます。病院と患者との間に入って予約時間の変更を行ったり、場合によっては医療機関を変更したりしています。

また、服薬指導の予約が入っている薬局に薬の在庫がないことがあります。その場合は、薬局から我々にご連絡いただき、在庫がある薬局の中で患者の家から一番近いところを探し、予約の付け替えまで行っています。

現在、日医工の問題でジェネリック医薬品が不足しているため、6件から7件に1件くらいは在庫がないことがありますが、例えば大手のドラッグストアであれば、「ある店舗に薬がなかった」と本部にご連絡すれば、近くの店舗でどこに在庫があるかがわかります。

このように、薬の受け取りを完了するところまで注力しており、他社にはないポイントとなっています。

オンライン化の阻害要因とSOKUYAKUの打ち手④(1/2)

中村:薬の受け取りに時間がかかっていた点について、他社では受け取りまでに3日から4日かかっていましたが、「SOKUYAKU」は服薬指導から最短1時間で薬が届くようになっています。

オンライン化の阻害要因とSOKUYAKUの打ち手④(2/2)

中村:他社は、病院・薬局の検索からオンライン診療、オンライン服薬指導、薬の配送と、バリューチェーンが独立していることが多いのですが、「SOKUYAKU」ではワンストップで実現できています。

オンライン化の阻害要因とSOKUYAKUの打ち手⑤

中村:日本経済新聞の記事にもありましたが、オンライン診療の受診料が対面診療より高くなっています。これは、企業がシステム料を病院から請求していることが要因と考えられます。その結果、病院は患者に対して手数料を請求するため、患者は診察料に情報提供料500円、システム利用料1000円と上乗せして払わなければいけなくなっており、同じ診察を受けても値段がバラバラになっていました。

「SOKUYAKU」は病院からシステム料を徴収していないため、画一的な料金で診療できます。

処方薬の受け取り方法

中村:薬局に関しても、他社プラットフォームでは、「Aの薬局は宅配便で送料が600円、Bの薬局はネコポスで300円から400円」などと、送料も薬局によってバラバラになっています。患者にとって料金がわかりづらいという点がありました。

「SOKUYAKU」は料金を単一化させており、当日配送は500円、16時までに服薬指導を受ければ、翌日配送で全国一律400円でお届けすることが可能になっています。急ぎでなければ、メール便で200円から300円程度でお届けできます。

新たに、店舗での受け取りも選択できるようになり、近くであれば取りに行くことも可能です。このように明瞭な料金設定にしています。

当日配送エリアの拡大

中村:配送エリアについては、神奈川県や埼玉県など、当日配送サービスエリアが急速に拡大しています。バイク便や、年配の方向けにお弁当を宅配している業者など、地場に根強い配送業者を活用し、当日配送サービスエリアを広げています。

坂本:当日配送のニーズは非常に高いのではないかと思いますが、何割くらいの患者が当日配送を選ばれるのですか?

中村:服薬指導を受けてからの当日配送の割合は、20パーセントくらいです。

坂本:ほかの患者は取りに行かれるのですか?

中村:翌日配送やメール便の方が多いです。

To Cサービス_オンライン診療の収益モデル・計画

中村:年間の処方箋枚数は8億枚から8.5億枚ですが、1パーセントのシェアを獲得できた場合は850万枚、5パーセントでは5,000万枚近くです。処方箋のシェアを獲得できるよう、マス広告を含めて展開しています。

マネタイズモデル一覧

中村:「SOKUYAKU」にはさまざまなサービス形態があり、toCの患者向けでは、診察と服薬指導で300円のサービス、提携している自由診療のオンラインクリニックでは10割負担の自由診療の薬を届けるサービスを提供しています。

toB向けのサービスとして現在力を入れているのは、病院・公民館等に「SOKUYAKU」端末を設置するサービス、ドラッグストアで服薬指導を受けた際に他のOTC医薬品や日用品などを一緒に買えるような「ついで買いサービス」、自治体向けサービス、医療人材紹介サービスなどを展開しています。

自由診療のオンラインクリニック(1/2)

中村:自由診療においては特定のクリニックに対して患者の送客が可能ですので、自由診療のオンラインクリニックでは、オンライン診療を行って薬を毎月お届けするサービスを提供しています。

自由診療のオンラインクリニック(2/2)

中村:実際に、シミの医療用医薬品、AGAの薬、低用量ピルなどの販売を行っています。

自治体向けサービス

中村:また、自治体からお問い合わせいただき、オンライン診療窓口の運営受託サービスを開始しています。年末年始に、新型コロナウイルスとインフルエンザが同時流行した際に、オンライン診療で新型コロナウイルスかインフルエンザかを判断し、インフルエンザの方には「SOKUYAKU」を通じて「タミフル」を配送しました。

例えば、土日祝日など病院が閉まっている時、救急病院がいっぱいになってしまわないように、オンライン診療を提供しています。

ついで買いサービス

中村:ドラッグストアの「ついで買いサービス」も順調に進捗しており、テスト運営店舗をさらに拡大していく予定です。「ついで買いサービス」は簡単に言いますと、処方箋と一緒にドラッグストア商品の受け取りが可能というサービスです。

薬局・ドラッグストアとの提携(1/3)

中村:薬局・ドラッグストアとの提携も順調に増加しています。

薬局・ドラッグストアとの提携(2/3)

坂本:提携についてはある程度完了されていますか? それとも、まだまだ増やせるというイメージなのでしょうか?

薬局・ドラッグストアとの提携(3/3)

中村:調剤薬局は全国に約6万件ありますが、直近で約6,000件に導入できました。これからもさらに増やしていけると見ています。

D2C事業の方針

中村:D2C事業についてです。健康維持を推進するために、メーカーとして健康食品、医薬品、漢方薬、化粧品など、未病・予防サービスを提供しています。

D2C市場における当社のポジショニング

中村:D2Cと言われる企業の中でも、ターゲットニーズに合わせた集客をインターネット、オフラインで半分くらいずつ行い、新規顧客獲得の効率を上げていることが我々の強みです。

インターネットのオンラインによる集客をメインとしているところは、オフラインの販促が苦手、逆にオフラインがメインのところはオンラインが苦手という傾向があるのですが、我々はそれぞれのチャネルで獲得できています。

強み①:クロスメディア活用による「売る力」

中村:端的に言いますと、新規顧客の獲得効率が非常によいのが我々の強みです。2019年11月に、事業譲渡で月商4,000万円の漢方薬のサイトを買収したのですが、足元では月商3億5,000万円を超えるようになりました。パッケージを変えたり、送料を下げたり、LTV(顧客生涯価値)を上げる施策を行った結果、非常に伸びています。

強み②:製薬会社や大学との連携による新商品開発

中村:商品開発にも力を入れています。製薬会社の承認が下りると、さまざまなメーカーが名前とパッケージを変えて同じものを販売するケースが多いのですが、我々は独自配合にこだわっています。

例えば、漢方では「満量処方」で調合していますので、我々しか販売できません。また、シミの薬では、1回6粒飲まなければいけなかったものを3粒に減らすなど、製薬会社に研究をお願いして品種改良をしたものを販売しています。

強み③:厳格な広告審査体制

中村:広告規制については、景表法、特定商取引法、薬機法などに基づき、厳格にチェックしています。「厳格な社内チェックリストに基づき3部署でチェック」「2社以上の第三者機関への確認」「3つの弁護士事務所への意見確認」など、しっかりとした広告審査体制を構築しています。

そのため、特に規制の影響を受けていることはありません。

新規ブランド「SOKUYAKUビューティー」をリリース

中村:新たに発売した化粧品のシリーズです。「SOKUYAKU」の冠をつけた「SOKUYAKUビューティー」という商品をリリースしています。漢方薬も「SOKUYAKU漢方」とパッケージにロゴを入れており、D2C事業の商品を買っていただく中で「SOKUYAKU」の認知も進めています。

ユーザーの許可を同時に取っているため、「SOKUYAKU」のユーザーに自社商品を買っていただいたり、逆に自社の商品を買っていただいた方に「SOKUYAKU」を紹介したり、クロスセルが可能となっています。

経営管理指標(KPI)

中村:D2CのKPIである新規獲得した定期顧客数は、今期40万件の目標に対して第3四半期が終わった時点で30万2,000件の獲得と順調に推移しています。

B2B事業の方針

中村:B2B事業のヘルスケアマーケティングでは、ヘルスケア関連商品を扱っている企業向けのブランディング、マーケティング、広告代理業を行っています。また、BPOサービスとして、配送、コールセンターなどのお手伝いを行っています。

経営管理指標(KPI)

中村:B2B事業の主要経営指標は取引先数です。インサイドセールスやセミナー集客により顧客が増加しており、順調に推移しています。

中長期アクションプラン

中村:中期計画についてです。今期の売上高目標166億9,000万円に対して、順調に推移しており、2025年5月期の300億円を目指しています。

主な成長戦略としては、既存事業のオーガニック成長、「SOKUYAKU」と事業シナジーがある企業とのM&Aによる成長、「SOKUYAKU」周辺領域の事業で伸ばす「SOKUYAKUヘルスケア経済圏」の成長という3つの戦略を考えています。

3ヶ年計画 (2023年5月期・2025年5月期)

中村:今期は先行投資を行っていますので、売上高目標167億円に対してマイナス営業利益20億円という計画で出しています。先行投資のタイミングについては後ほどご説明します。

2023年5月期 計画値(先行投資をしない場合)

中村:先行投資をしない場合の計画値については、売上高138億8,100円、営業利益10億円500万円と見込んでいますが、今期は、あえて先行投資を行いユーザーを獲得する計画としています。

なぜこのタイミングで投資するのか

中村:このようなサービスというのは、一度使って利便性が高いと実感していただければ、ずっと使っていただけるケースが多く、No.1のプラットフォームを確立するために先行投資を行い、ユーザーを増やしていきます。

前期(2022年5月期)に病院・薬局を獲得できたこともあり、今期(2023年5月期)はユーザーを増やしていけるよう注力しています。

地上波TVCMの効果について

中村:前期に、福岡県と石川県でテストマーケティングを行ったところ、会員登録数はそれぞれ9.6倍、23倍と実績をあげることができましたので、さらに集客を強化しています。

坂本:広告戦略についておうかがいします。広告投入額が増えていますが、来期もこのペースでいくのか、もっと増やすのかを教えてください。

中村:現在最終検討中ですが、来期については7月の決算発表時に数字をお示しします。有料サービスや薬の定期配送もスタートしているため、来期はしっかりと回収しながら、ユーザーを増やしていく戦略を考えています。

第3四半期 連結業績

中村:第3四半期の業績についてです。連結売上高166億6,900万円の計画に対して、127億2,100万円と進捗率は76パーセントとなっています。連結営業利益はマイナス20億2,800万円の計画に対してマイナス6億9,000万円で着地しています。

第3四半期 連結業績_各事業詳細

中村:セグメント別の連結業績です。メディカルケアセールス事業は58億円、計画に対する進捗率は80パーセントです。「SOKUYAKU」のユーザー獲得・利用が順調に推移しており、自治体からのオンライン診療センター受託、医薬品では漢方薬や発毛剤を中心に新規顧客の獲得が順調に進んでいます。

ヘルスケアセールス事業は30億円、計画に対する進捗率は69パーセントです。漢方薬や発毛剤を中心に新規顧客好調で、そちらに広告配分を寄せたことにより若干ビハインドしています。不調ということではまったくなく、獲得は順調に進んでおり、効率がよいほうに広告投資を寄せたかたちの結果となっています。

ヘルスケアマーケティング事業は38億6,700万、計画に対する進捗率は78パーセントと順調に推移しています。

株主優待制度のご紹介

中村:株主優待制度です。6ヶ月以上保有していただいた方には、より多くの当社商品をプレゼントさせていただいていますので、ぜひよろしくお願いします。

「SOKUYAKU」の使い方について、2分程度の動画をご覧いただければと思います。

中村:私からの事業説明はこれで終わります。ありがとうございました。

質疑応答:SOKUYAKU事業の売上・利益変動について

坂本:「SOKUYAKU事業の売上・利益の変動が大きくて心配しています。今後の変動を教えてください」というご質問です。個人的には成長している事業の売上・利益の変動は仕方ないと思いますが、特に広告を入れたりすると反応が大きいという話をいただいています。

中村:そうですね。

坂本:そのあたりのイメージを教えていただけたらと思います。

中村:おっしゃるとおり、広告が主な費用となっています。通期営業利益計画値のマイナス20億2,800万円に対して第3四半期はマイナス6億9,000万円ですが、これは広告が出せていなかったということではなく、目標どおりのKPIで順調に獲得しています。

マス広告を出した時に、北海道テレビ、テレビ静岡、名古屋テレビ、テレビ愛知など、さまざまなニュース媒体に「SOKUYAKU」を取り上げていただき、そのおかげもあってユーザー数が増加しました。

このように費用がかかっていないこともあり、強気というか、そこまで費用を踏まなくても広告を打つことができたということです。

坂本:広告費が余っているというより、計画どおりに使わなくてもきちんとユーザーが獲得できたということですね。

中村:今後、さらに効率がよくなるよう「SOKUYAKU」もWebブラウザに対応していきます。アプリをダウンロードしなくても使えるようになるため、さらに利便性や獲得効率がよくなってくると思っています。

質疑応答:「ついで買い」の進捗状況について

坂本:「ドラッグストアの『ついで買い』がなかなかリリースされず心配しています。進捗はいかがでしょうか?」というご質問です。

中村:テストも一部の地域で実施していますし、引き続き順調に進めています。UX/UIも含めて買いやすいかたちにしていますので、楽しみにしていただければと思います。

「SOKUYAKU」の強みについてご説明します。フードデリバリー企業を使用すると手数料が30パーセントから40パーセントかかるため、1,000円の薬が配達料を含めると1,400円になってしまいます。

また、保管・管理についても、薬は容量が200SKUほどあるため、食品サイトのインターフェースでは選びづらく、不便です。しかし「SOKUYAKU」のサイトはドラッグストアに特化しているため、ご利用しやすくなっています。

ドラッグストアのEC化がうまくいっていないことには、理由があります。大正製薬の「リポビタンD」やライオンの「バファリン」など、売っているものはどこの店でも同じですので、「買うのは『Amazon』や『楽天』でいいよね」となってしまいます。

しかし「SOKUYAKU」の場合は、例えば「銀座4丁目の◯◯ドラッグストア」「八王子の◯◯ドラッグストア」のように、自分がいつも行っている特定のドラッグストアの商品を「ついで買い」できるため、利便性が向上すると考えています。

質疑応答:ステルスマーケティング規制がD2CやB2Bに与える影響について

坂本:「ステルスマーケティング規制が御社のD2CやB2Bに与える影響を教えてください」というご質問です。

中村:先ほどもご説明しましたが、当社は元々広告審査をシビアに行っていたため、ステルスマーケティング規制による影響は特に受けていません。

2023年10月からインフルエンサーのステルスマーケティング規制がスタートしますが、当社のPRはきちんしたレギュレーションに対応しているため、影響はないと考えています。

質疑応答:「SOKUYAKU」を展開する上での課題と見通しについて

増井麻里子氏:「SOKUYAKU」を展開する上で、課題となっているものは何でしょうか? また、今後の展開の見通しについて教えてください。

中村:当日配送サービスエリアの拡大スピードを上げていきたいと考えていますが、ガソリンを含めた物流費用が全体的に上がっています。

当日配送サービスは現在500円で行っていますが、スピードを上げるために、エリアによって配送料を上げることを検討する必要があると考えており、重要な課題です。

今後の展開としては、当日配送サービスエリアを拡大し、アプリをダウンロードしなくてもWebブラウザを使えるようにすることで、ユーザーの利便性を向上させます。

また病院の状況も変化しており、「SOKUYAKU」で診察を行っている先生の中には、病院を完全に閉めて、対面診療を行わず「SOKUYAKU」のみで診察を行う先生もいます。

坂本:そのような時代になってきているということですね。

中村:また、診察が多いということで、オンラインの先生を雇用している病院もあります。

坂本:それでも経営できるということでしょうか?

中村:そのとおりです。そのような変化が起きています。医師にとっては医療事務や看護師の人件費がかからず、在宅で診察できるためです。

坂本:通常の病院運営にかかるコストが大幅に削減されるということですか?

中村:おっしゃるとおりで、そのようなことも可能になってきます。また、先ほどお話ししたように、医者不足の解消にもつながります。

実際に「SOKUYAKU」を試している方からの声もいただいていますが、都心だけではなく地方や北海道など、病院・薬局が近くにない方も利用されています。例えば離島を含め、長崎からフェリーで往復約8時間かけて病院に通っていた方からは、「薬が自宅に届くようになって非常に助かりました」という声をいただいています。このように、病院に通うのが大変な方々に便利に使っていただいています。

坂本:地元の小さな薬局では在庫がない可能性もあるため、在庫がある薬局から送ればよいということですね。

中村:そのとおりです。翌日には必ず届きます。

坂本:意外とおもしろそうです。効率がよいため、先生方も多くの診察を行えますね。

中村:おっしゃるとおりです。

坂本:クリニックには、「受付が必要」などさまざまな法律があるため、「病院はあるけど家で診察を受ける」ということもあると思います。

質疑応答:SOKUYAKU事業のボトルネックについて

坂本:「SOKUYAKU事業について、御社はオンライン診療で薬からワンストップで提供できることが強みですが、そのバックグラウンドとして、特許や優れたオペレーションがあることを理解しました。とはいえ、どこかにボトルネックがあるかもしれません。もしあるとしたら何でしょうか?」というご質問です。

中村:診察件数が増えてきた場合、再診ではなく初診に対応してくれる先生を増やすことが非常に重要です。

我々も啓蒙活動として、順調にオンライン診療を行っている先生に勉強会を開いていただいて、他の先生に話を聞いていただいたりしています。また、導入後の使い方やうまく進めていく方法についても支援しています。

さらに、一時的に予約が取りづらくなった診療科の先生を増やすことで、現在は予約が取りづらい状況がない状態を維持しています。この状態を確保しつつ、いかにアクティブ率を上げていくかが非常に重要だと考えています。

このビジネスの最大のポイントは、ユーザーの成功体験です。「初めてオンライン診療を利用して非常に便利だった」という体験や、医療機関のオンボーディングで、完全にオペレーションできるまでサポートができるかが重要です。

坂本:先生も頭の切り替えが必要だと思います。「触診が基本」という診療科が多い中、そこをどのように乗り越えるかも重要なポイントですね。

中村:おっしゃるとおりです。もちろん、相性が悪い診療科もあります。例えば心療内科の場合、「デパス」などの薬はオンラインでは処方できません。

また、歯科医師のように歯を直接見なければならない場合もあります。鎮痛剤の処方やマウスピースを作る程度ならよいのですが、相性が悪いことがあります。

現在使われている診療科は、内科、皮膚科、小児科、婦人科、眼科などです。

坂本:「精神科こそオンラインのほうがよい」という話を聞くことがあります。

中村:実際、相談のかたちで診察している医師もいます。

坂本:それも大事ですね。

質疑応答:中長期のアクションプランについて

坂本:「中長期のアクションプランについて、目標は比較的高めに設定しているのでしょうか?」というご質問です。

中村:当社はCAGR(年平均成長率)30パーセントから40パーセントを目指しているため、かなりアグレッシブな計画です。ただし、現在立てている経営指標をしっかりと達成していけば、目標を十分達成できると考えています。

質疑応答:配送料について

坂本:「SOKUYAKU」を使って薬局で薬を受け取る場合、配送料はかからないという認識でよいでしょうか?

中村:受け取りの場合、配送料はかかりません。「なぜオンラインなのに受け取りが必要なのか?」と思うかもしれませんが、「SOKUYAKU」をスタートした際、当日配達を選択していた患者が、実際に薬を受け取りに行ったケースがあったためです。

つまり配送業者が集荷に来ているのに、「近くまで来たから取りに来た」と患者が先に取りに来てしまうことがあったため、あえて店頭受け取りを入れたかたちです。

坂本:意外と「会社に行くついでに取りに行く」という人もいるかもしれませんので、あったほうがいいと思います。

質疑応答:メディアでの紹介による恩恵について

坂本:「これまでのCM効果により、ユーザーの数は増加し、認知度も向上したと思います。それ以外に予想しなかった恩恵などがあれば教えてください」というご質問です。

中村:先ほども少しお話ししましたが、ニュース媒体などで紹介されたことが非常に大きかったです。もちろん、新型コロナウイルスや花粉症などの影響もありました。

また、最初にテストで導入したドラッグストアなどで予約が入るようになったことから、全店で導入することになりました。その結果、薬局側から病院を紹介していただけるケースが非常に増えました。

「自分が導入したので、近くの先生のところに入れてくれないか?」というリクエストが増えたということです。ユーザーは近い薬局を選択できます。

坂本:「近くの病院を紹介すれば、AIが選んでくれるだろう」ということはあるかもしれませんね。

質疑応答:SNSへの移行について

坂本:「広告について『YouTube』をはじめとするSNSに切り替える考えはあるでしょうか? 薬事法などの問題もあるかもしれませんが、若者をターゲットにする場合、広告よりも「YouTube」のほうが安いというパターンもあると思います。そのあたりはいかがでしょうか?」というご質問です。

中村:実は、仕込みではなく広告も依頼していないにもかかわらず、先日、多くのユーザー数を持つYouTuberが「『SOKUYAKU』をよく使っている」と言って紹介してくれました。それによってユーザー数が増えた経緯があります。

現在、「SOKUYAKU」を利用しているユーザーは40代から50代の方が多いのですが、若い層の方にも使っていただき、便利さを体験していただけるよう、強化していきたいと思っています。また、SNSも検討していきたいと考えています。

質疑応答:SDGsで注力している点について

坂本:「SDGsのバッジを付けていらっしゃいますが、会社としてどこに力を入れていますか?」というご質問です。

中村:我々は、女性の雇用や健康経営に注力しています。例えば、ヘルスケア企業として禁煙外来の費用を会社が負担するなどの取り組みを行っています。

質疑応答:今期の赤字について

坂本:「赤字は今期限定の見通しでしょうか?」というご質問です。最後に、将来的な戦略がイメージできる話をお聞きしたいと思います。

中村:7月の通期決算発表時に具体的な数字はお伝えしますが、再来期に向けて利益を出すための体制を作っていく計画です。

先行投資を行っていますが、リピートや単品での定期購入など、我々がすでに行っているD2Cのビジネスと同様のKPI管理を「SOKUYAKU」においてもしっかりと行っており、「この単価で獲得できるのであれば、先行投資をしたほうが絶対に会社の中期的な意味合いがある」となれば、投資を検討します。そのようなこともしっかりと考えながら、計画を立てて発表したいと思います。

坂本:御社は他のビジネスでキャッシュを稼ぐことができるため、先行投資に力を入れられるところが強みだと思います。しかしゼロベースで始めた場合、赤字が続くこともあると思います。将来の利益化については、どのようにお考えですか?

中村:先ほどもお話ししましたが、「SOKUYAKU」で獲得したユーザーに対して自由診療で毎月薬を届けることにより、回収効率は確実に改善されます。さらにはオンラインクリニックで診察を行うため、「SOKUYAKU」のユーザーにもなります。

ユーザー登録と同時に獲得コストを下げ、売上・利益も上げられるよう、第3四半期から戦略を転換しています。このように、しっかりと収益を上げながらユーザーを増やしていくことができると考えています。