エグゼクティブサマリー

小代義行氏(以下、小代):pluszeroの代表取締役会長兼CEOの小代でございます。「事業計画及び成長可能性に関する説明資料」について、ご説明させていただきます。よろしくお願いいたします。

まず、エグゼクティブサマリーはスライド2枚で構成されています。説明は割愛しますが、こちらに本日お伝えしたいことを全体的にまとめています。

エグゼクティブサマリー(数値編)

数値編では全体概要として、棒グラフ・折れ線グラフで、業績予想や中期経営目標で開示している数値をまとめています。お時間がない方も、スライド2ページ、3ページのエグゼクティブサマリーをご覧になれば、私どもの成長性に関する概要が把握できるのではないかと思います。

pluszeroの世界観と価値観:知を結集して革新を起こす

会社概要についてご説明します。私たちの世界観では、少子高齢化をマイナスに捉えるのではなく、逆にチャンスとして捉えています。

AIやロボットの導入率を世界最高水準へ引き上げ、日本の生産性を世界一にして、人々の可処分時間や可処分所得を増やし幸福にしていくことを目指しています。かなり青臭い目標ではありますが、本当の意味での生産性を上げたいと考えています。

それに通じる部分として、Vision・Mission・Valuesを定義しています。当社は「知を通じてイノベーションを起こしていこう」という一貫した考えの下、Visionは「人の可能性を広げる」、Missionは「知の創発により、新しい選択肢を生み出す」、Valuesは「ユニークなプロフェッショナルであれ」を掲げています。

pluszeroは「第4世代AI」カンパニー

pluszeroの社名の由来は「零をプラスする」ということです。古代インドの数学において「零」が概念として発明されたことで、数学が学問として爆発的に発展したことにちなみ、名付けられました。古代インドの「零」のように、私たちはまったく新しい概念やアイデアを創出することによって、世界的なイノベーションを起こすことを目指す技術者集団です。

私たちにとっての現代版の「零」とは、「AEI」(Artificial Elastic Intelligence)だと考えています。AEIはpluszeroの造語で、人間のように意味を理解できるAIのことです。特に意味や思考、言語などに着目してイノベーションを起こそうとしています。

AIの歴史は、スライドのとおり第1世代、第2世代、第3世代と進んできていると世界共通で定義されています。ディープランニングを中心に普及している現在の機械学習は、第3世代AIに位置づけられています。

その中で、現在日本の文部科学省の研究機関が、今後10年間で勝負していくべき領域として、第4世代AIを定義しています。詳細に関しては後ほどご説明しますが、私たちが実現しようとしているAEIは、文科省が主張している第4世代AIの中核と相通ずるものがあります。

したがって、私たちはAEIを通じて第4世代AIを実現すると位置づけ、pluszero自身も「第4世代AIカンパニー」と銘打って活動を続けています。

pluszeroの第4次AIであるAEIはディープラーニングの限界を突破する

第4世代AIの定義についてご説明します。文科省の定義では、第1世代は「推論と検索」、第2世代は「ルールベースとエキスパートシステム」が特徴で、人間がルールを手で作る技術パラダイムの時代でした。

第3世代AIでは、データを入力すればルールが抽出される代わりに、ルールはブラックボックスで見えないという特徴があります。第1世代・第2世代AIの流れと第3世代AIの流れを融合し、それぞれの良いところは残しつつ、課題の解決を目指していくものを第4世代と呼んでいます。

このコンセプトは、世界では「二重過程モデル」と呼ばれており、ダニエル・カーネマンのベストセラー『ファスト&スロー』の中でもシステム1とシステム2を融合させるといった話が出てきます。このように全世界的にも、融合させてより良いものを作っていこうという流れは加速しています。ただし、一方でスライド右端に記載のとおり、なんでもできる汎用AI(Artificial General Intelligence)とは大きなギャップがあります。

このような位置づけですが、第4世代AIは特定の対象領域に絞り込むことにより、人間のように意味を理解できることが特徴になります。このようなアプローチによって、AEIはディープラーニングをベースとする既存手法の限界を突破して、高い意味理解を実現する可能性が高いと言えます。

会社の概要

会社の概要です。株主構成としては、取締役の小代、森、永田が計65.6パーセントを保有しています。大株主でもある経営リーダーたちがコミットし続けている会社となっています。

取締役

取締役をご紹介します。pluszeroは、博士の学位を持つ森遼太と永田基樹が創業した会社です。その2名が創業後に、私がジョインしました。私は起業して20年目になりますが、私が経営していたベンチャー企業で、森と永田は大学1年生、2年生の時から活躍してくれており、付き合い自体は15年以上になります。

そのような流れの中で、彼らが「AI分野で勝負したい」と独立・起業して、pluszeroが立ち上がりました。第4世代AIの領域で勝負していくためには、私が経営していた会社とpluszeroを合体させたほうが今後の成長が加速するだろうと考え、私は自分が経営していた会社を解散し、pluszeroにジョインしました。

取締役の小代・森・永田の3トップが、主に経営にあたっています。その他、浅川、大澤、宇陀、影山を加え、全7名体制でリーダーシップをとっています。

優秀な若手が数多く在籍する会社

pluszeroの特徴として、優秀な若手が数多く在籍しています。スライドの円グラフのとおり、当社では全社員中、東大生あるいは東大卒が42.5パーセントを占めます。また、大学院生ないしは大学院卒も43.3パーセントを占めており、技術分野において積極的に学び続ける意識が強いメンバーが多いです。

東大系のメンバー以外も、技術に対して非常に前向きで学び続けるメンバーばかりですので、pluszeroの統一的なカルチャーとして根付いています。このようなカルチャーの下、第4世代AIに対して全社員でチャレンジしています。

全体としては120名規模の人材プールがいます。正社員とインターンがだいたい半々くらいで、さまざまなことにチャレンジしているのですが、正社員とインターンを大きくは区別せず、実力主義を導入しています。第4世代AIのために文理融合型の人材採用を推進し、開拓を続けている会社になります。

ソリューション提供事業の単一セグメントの会社

事業概要についてご説明します。pluszeroは、ソリューション提供事業の単一セグメントの会社です。AIやITソリューションを用いて、多くの人々の仕事や生活を効率化したり快適にしたりするわけですが、ソリューションの提供方法によって、「プロジェクト型ソリューション」と「サービス型ソリューション」に大きく2つに分かれています。

プロジェクト型ソリューションは受託型のビジネスです。お客さまと業務提携を結んでサービスや商品を納品したり、提供したりする形態です。サービス型ソリューションは、SaaS的にクラウドをベースとしてネットワーク経由でサービスをご提供します。後ほどご説明しますが、具体的には仮想人材派遣と「シェパード」シリーズがあります。

プロジェクト型からサービス型&AEI関連研究へ戦略的投資

現在決算が確定している前期、つまり2022年10月期の数字となりますが、売上構成はプロジェクト型ソリューションが98パーセントを超えています。他社と比較しても高い売上総利益率に基づき、プロジェクト型ソリューションの収益を継続的にサービス型やAEI関連研究に投資し続けている構図となっています。

利益水準とバランスを取った規律あるAEIへの研究開発投資

2020年10月期から、直前の決算対象期である2022年10月期まで、3期分のチャートがスライドに並んでいます。ご覧のとおり、研究開発費を除くと一貫して黒字基調となっています。また、研究開発費自体は毎期8,000万円前後で安定的に投資を行うことができています。

業績推移

業績推移です。スライドは、決算対象期までの創業以来の数字の推移を表していますが、売上高は創業以来、右肩上がりに成長しています。決算対象期に関しても、前年対比で43パーセント伸びており、ここまで非常に順調に業績が推移していると言えます。

営業利益については一番薄いグレーで示していますが、2020年10月期と2021年10月期で合計1億1,200万円の赤字になっています。2020年10月期に第三者割当増資を2億円ほど行いましたが、その増資分の半分までは戦略的に先行投資しようと考え、投資したことによるものです。その成果もあって、2022年10月期からは第4世代AIとして当社で本格的に自走しているAEI関連の売上が、一気に0パーセントから11パーセントまで急伸しました。

折れ線グラフで示している売上総利益率に関しては、一貫して50パーセントから60パーセントくらいの水準で推移しています。今後も同様の売上総利益率を維持しながら、最終的にはサービス型を立ち上げて向上していくことを計画しています。

プロジェクト型の事業の概要

プロジェクト型の事業の概要です。ここでは受託ビジネスであるプロジェクト型についてご説明します。特徴としては、課題発見から保守・運用まで、上流から下流までをワンストップで提供しているところです。

ただし、ワンストップで提供しているといったことは、AIをソリューションとして提供しているさまざまな会社で主張されていると思います。そのため、お客さまの声を参考に、当社にどのような特徴があるのかについてさらにご説明します。

大規模な会社と当社を比較すると、大規模な会社へ依頼した場合に、経営的な話と実際の技術的な話を進めようとすると、戦略系の部隊とシステム系の部隊で担当者が異なることがあります。結果として、お客さまから見ると伝言ゲームになってしまい、「企業としてはワンストップだが、現場のコミュニケーションレベルではワンストップではない」といった話をよくうかがいます。

当社の場合は、役員陣の多くが学生時代から役員経験を持っていますので、その部分をワンストップで進めることができています。

また、他のAIの企業によっては、AIの学習モデルなどをしっかりと作る部分ではスペシャリティがありますが、商品やサービスまで作り込む際に「ITの部分が弱くて不安になった」というお客さまも多いです。当社の場合は、その部分を一気通貫で任せられる安心感があるということで評価されています。

このようなことから、当社の場合は「ワンストップ」が言葉だけではなく、ビジネスシーンの中でもかなり高いレベルで実現できているのではないかと思っています。

類似企業・業界平均と比した高い売上総利益率

類似企業・業界平均と比較して、当社は高い売上総利益率を誇っています。先ほどご説明したとおり、当社には人材やワンストップといった強みがありますが、加えてプロジェクト型においては見積もりの精度が非常に高いことが強みに挙げられます。

見積もりは、金額が高すぎてもお客さまから見てコスパが悪くなりますし、低すぎても当社側が薄利になってしまいます。相互に発展性、継続性のある取引をしようと思うと、見積もりの正確さは大変重要です。

その際に、経営と技術をワンストップでつなげられる点や、技術に関してフルスタックでいろいろなものを見通すことができ、AIもITも両方対応できる人材が多いという点で、当社は見積もりの精度が高くなっています。

また、当社に関わっている弁護士には、「炎上するプロジェクトが非常に少ない」と評価を受けています。受託ビジネスを展開する場合には、炎上するプロジェクト数の割合が一定以上あることが多いそうですが、当社の場合はほぼトラブルがありません。その結果として、pluszeroの売上総利益率が高くなっていると認識しています。

さらに、基本的にITもAIもワンストップで完全内製にしていることで、多層下請けのような構造もないため、経営効率の高い構図になっていると自己認識しています。

プロジェクト型の特徴:幅広い顧客に多様なソリューションを提供

スライドでは、プロジェクト型の特徴をピラミッド図で表しています。ピラミッド頂上の価値層は、最終的に経営的な価値を出すという意味です。そこから下へ向かってプロセス層、データ処理層、インフラ層と広がっています。ITやAI、さらに経営といった点を合わせて考えた際に、幅広いお客さまへ多様なソリューションを提供することができていることを表した図になります。

事例紹介:無人船の自動航行に向けたプロジェクト

多様なソリューションを提供できている事例として1つご紹介します。こちらは、無人船の自動運転に関して、私たちがサポートしたものです。

スライド内の「偽像」という語についてですが、何もないのに何かあるように見えるというようなものを指します。偽像を効率的に検知することが、船の自動運転において非常に重要であり、その精度向上に対してサポートを行った事例となります。

事例紹介:アダプティブ・ラーニング事業の立ち上げ

こちらは教科書の出版社である啓林館とともに行った、生徒の学力を支援するような仕組みです。AIやITを用いて生徒の学習効率を上げるということに対し、何か寄与できないかとご相談をいただきました。その中で、多くのこのような学習支援系ツールは、生徒が間違えた時に類題がいくつか出てくるだけの仕組みになっている傾向があります。

しかし、私たちの開発したサービスでは、生徒が間違えた時に「なぜ間違えたのか」「何がわかっていて何がわかってないのか」「それをできるようにするために、どのようなことをしていけば良いのか」ということを、人間の家庭教師が対応するかのように、しっかりと戦略的にアドバイスするようなサービスを提供できるアプリケーションになっています。

教科書の業界が基本的に過当競争で、なかなか差別化しにくい状況の中で、生徒を中心に教科書、応用問題集、このようなサポートのAIを搭載したアプリのようなものが三位一体となって、生徒の学習を向上させたというところで、1つの成功事例になっていると思っています。

多様なソリューション提供による収益の継続的成長

当社の売上構成についてです。当社はSaaSではなくプロジェクト型の受託がベースですが、毎年ゼロからのやり直しではなく、非常にリピータビリティが高くなっていることをスライドに示しています。

具体的には、4四半期以上、つまり四半期単位で1年以上連続して売上をしっかり計上しているお客さまが、全体中に何パーセントいたかをまとめたのがスライド左側の棒グラフです。1年以上継続的な売上を計上しているお客さまは、直近の2年間で71パーセントと、高い割合になっています。

しかも、リピートされている71パーセントのお客さまの中でも、90パーセントとほとんどすべてのお客さまにおいて、売上が前年度比増加もしくは維持となっており継続的かつ安定的な顧客となっています。

当社の特徴としては、1度お付き合いをさせていただくと、それが末長く続いていき、かつお付き合い自体が太くなっていきます。そのため、期初の時点で一定割合の売上が確定しているところもあります。そのような意味で、受託型のビジネスではあるものの、一定以上の継続性があり、リカーリング・レベニュー的な側面を持っていると思います。

多様な顧客に対するソリューション提供

スライドのグラフは、顧客のプロファイルを因数分解したものです。基本的には、取引者数とプロジェクト数は年々右肩上がりに増えており、1社あたりの売上高の規模も向上しています。

2022年10月期の売上成長率は43パーセントとお話ししましたが、取引者数の成長率は27パーセント程度で、1社あたりの売上成長率が13パーセントと因数分解することもできるとご理解ください。

多様な顧客に対するソリューション提供

2022年10月期の売上高7億2,600万円における、お客さまの構成です。3つ円グラフが並んでいますが、左側の円グラフは上位顧客別売上構成比で、売上高の上位5社が35パーセント、6位から上位10社までにおいても23パーセントで、合わせて58パーセントとなっています。

ここでご理解いただきたいのは、特定の1社で極端にシェアを占めるというかたちではなく、幅広い会社から満遍なく売上を得ることができているということです。

中央の円グラフにある顧客業種別売上構成比では、対象の業界は情報通信業、サービス業、卸売業と小売業の割合が少し多くなっていますが、基本的には特定の業界に特化することなく、幅広くお付き合いしています。

右端の顧客種類別売上構成比ですが、非常に大事な項目ですので注目していただきたいところです。上場企業と未上場企業の割合は、国・地方自治体関連機関も上場企業に含めると、ちょうど半々くらいの割合となっています。

人月・人月単価推移

当社の人月単価は100万円から150万円までの、100万円台前半で推移しています。最も水準の高い競合他社と比べると、非常にリーズナブルにソリューションを提供できている会社になっています。

だからこそ、大規模なお客さまだけに依存しているわけではなく、幅広い規模のお客さまに対して、リーズナブルにソリューションを提供することができており、営業面で非常にプラスになっていると思っています。大企業とAIソリューションの部分で過当競争になっても、当社はそれほど影響を受けない構図になっているとご理解ください。

また、単価以外の部分で、人材をフルタイム換算で計算しても堅調に推移しており、売上の成長目標に対して、必要な人材をしっかり採用することができています。

サービス型の事業概要

今まではずっと受託型、つまりプロジェクト型ソリューションについてご説明ししてきましたが、ここからはサービス型ソリューション、冒頭でSaaS的なサービスとお伝えした事業についてご説明します。

我々は、自社の言葉で第4世代AIのことをAEIと呼んでいますが、AEI技術を活用した具体的なサービスのことを、サービス型では仮想人材派遣という名前で検討、開発しています。現在は、業務提携先と事業立ち上げ中のステータスですので、進行期である2023年10月期から部分的に、仮想人材派遣事業が立ち上がっていきます。

仮想人材派遣について簡単にご説明すると、「すごく賢いチャットボット」というのがイメージとしてはぴったりです。ただし、冒頭でもお伝えしたように、AEIは汎用人工知能と違い、特定のジャンルに絞り込むことで活用できる特徴があります。特定のジャンル内に絞った中で、非常に賢く対応できるチャットボットです。

しかし、チャットボットとは言いつつも、チャット機能だけではなく電話やメール、さらにロボットへ搭載することも可能ですので、さまざまなメディアを通じて、AEIのサービスを仮想の人材として提供できます。また、問い合わせた方とは、多様なメディアで対話することができるサービスになります。

ビジネスモデルとしてはいろいろな考え方があるのですが、基本的には、例えば人が30万円の単価で行う業務があった場合に、仮想人材を人月単価として、半分の15万円でご提供するかたちをイメージして展開していく、SaaS的なビジネスになっています。

AEIの知的財産戦略

スライドの図のように、仮想人材派遣という情報システムを頂点に、そこで使われている中核技術には、PSFデータ、N4、パーソナライズ要約というものがあり、それぞれに対して特許を出願しています。特許は、まず仮想人材派遣で1つ取得しており、PCT出願もしています。基本的には、米国・EU・中国でグローバルに展開していこうとしています。

中核技術に関しては、特許は出願済みですが、まだ申請はしていない状態です。ただし、内容については、基本的に仮想人材派遣のドキュメントの中にすべて含まれています。申請が通ればという前提にはなりますが、権利は分割出願という保全したかたちであり、今後は中核技術に関しても特許化していく計画になっています。

当社のAEIテクノロジーとビジネスへの活用

先ほどお示しした4つの技術に関して具体的にご説明します。各技術間にテクノロジーの利用関係があり、上から下に積み上げていくようなかたちになるため、スライドの下側からご説明します。

まずN4とは、Neo Non-loss Normalized Networkの略です。スライドには「意味の表現形式」と記載していますが、N4とは、数学でいうグラフ構造、つまりノードとエッジを使い、丸と線がつながっていくようなかたちで意味を表現する形式のことです。N4では知識を見える化し、保存していくようなことをしっかり行っていきます。

後ほどご説明しますが、ディープラーニングはブラックボックスでもあり、中身が見えない状態です。中身が見えないことによって、信頼性を高めることができないという大きな課題があります。

それを解決するためには、中身を見える化しないといけないため、当社は特許の中核の部分でも、まず意味、つまり中身をしっかりと見える化することに重きを置いています。分離融合型の人材を投入し、世界でどこよりもうまく実現化しようと努力しており、それがN4になります。

具体的には、同じ意味であれば同形にしたり、さまざまなメディアから入った情報を統一的に表現するマルチモーダル対応を行ったり、細やかな人間と同等もしくは人間以上の解像度で意味を捉えたり、意味を欠落させないといった処理を行い、形式的にはグラフ構造で意味を表現したものになります。

次に、そのような意味の可視化に成功した情報をベースに、それを集計・集約することによって、当社の仮想人材的なところで言う知能、つまり脳みそのようなものをモデル化することにトライしているのが、PSFデータです。

Parametric Semantic Frame(PSF)とは、「意味的に、フレーム上」という直訳で説明もできますが、これは言語学的な専門用語です。一つひとつの述語的な言葉に対して、どのような意味を保持しているかを整理したような、知識データベースみたいなものをフレーム情報と言ったり、格フレームと言ったりします。そのようなフレーム上の情報において、特に意味の解像度にこだわり、さらにパラメーターをよりきめ細やかにして意味を保持することを表しており、これを語源としてPSFと呼んでいます。

要するに、先ほどご案内したN4を集計・集約して、知能をモデル化したものを作っているということです。

そして、そのN4とかPSFデータをベースとして、パーソナライズ要約という手法で実現している技術があります。例えば、パソコンなどITのトラブルシューティングの際に、「このレジストリの中で、この項目を変更してください」という内容は、ITの専門家に対して話す場合には、今のように専門用語で説明してもすぐに伝わります。

一方で、パソコンに初めて触るような方に専門用語でお話ししても、伝わらないわけです。何が大事かと言いますと、相手に合わせて言い方を変える、「How」を変えるということが、私たちが実現したポイントなのです。

世の中の市場では、パーソナライズとかカスタマイズをするときに、相手に合わせて言う内容自体を変えてしまうようなことは事例としてもあります。これに対して、当社は意味を高度に、きめ細やかに表現することによって、内容は変えずに、相手に応じて言い方を変えることに成功しています。これにより、いろいろなビジネスシーンにおいて、高度な意思疎通を実現することができるところがポイントです。

これらの技術を総合的に用い、かつ特定のジャンルに限定することによって、対話形式でユーザーにサービスを提供することができる情報システムとして、仮想人材派遣の特許が形成されています。これが当社の技術の根幹となる部分です。

仮想人材派遣:コミュニケーションの自動化レベルと業務への利用

自動車の自動運転のレベルにちなみ、コミュニケーションの自動化レベルをまとめたものです。スライドの左下の、一番高いレベル5にあたるのが汎用人工知能であり、冒頭でお話しした、何でもできるドラえもんのようなものになるのですが、現在の技術の見通しの中ではなかなか実現は難しいと思っています。

一方で、私たちが実現する第4世代AI、言うなれば仮想人材派遣の仮想人材(AEI)においては、レベル4にあたると思っています。こちらは汎用人工知能と何が違うかというと、違うのはたった1つだけです。すべてのジャンルについて適用するのではなく、特定ジャンルのみ対応するという点で、特定ジャンルに絞り込む限り、人間のようにやり取りできるというところが特徴になっています。

一方で、世の中の平均値がどうなのかを見ると、世の中ではレベル1から3が広く分布している状態で、平均的にはレベル2だと思っています。レベル2は、定型表現に対してしっかりと対応できるというかたちです。決められたことはフローチャートに沿ってしっかりと会話することができるが、そこから外れるとなかなか会話が成立しないというレベルです。

仮想人材派遣(AEI)の例 AEIと従来のAIの差別化

仮想人材派遣の例を、従来のAIとAEIを対比しながらご紹介します。例えば、ハードウェアのメンテナンスの現場において、「不具合となる凹みは、何センチメートル程度のことを指すか?」と非常に細かい内容を質問者が聞いた時に、仮に想定される回答として、AとBとが用意されているとします。

その際、従来のディープラーニングベースで、何に似ているかなどを判定する方法だと、不具合とか凹みといった言葉に関して「どのような文が近いか?」を判断した結果、似たような言葉が選択されてしまい、間違った文になって使われているケースがよくあります。

それに対して私たちは、先ほどの特許のようにN4でしっかりと意味を漏らさず展開して、この言葉が何を表しているかという一つひとつの言葉の意味も正確に捉え、その上で信頼性の高い回答ができるという技術を持っている、という例をお示ししています。

仮想人材派遣(AEI)の例 仮想人材によるITシステムの運用保守支援

丸紅情報システムズと今取り組んでいるITの運用保守に関しての、仮想人材派遣の事例です。

丸紅情報システムズのお客さまの企業がいて、そこからコールセンターのように、ネットワークオペレーションセンターに問い合わせが来ます。その問い合わせの際に、お客さまが何を求めているかを把握して、そこで合意形成する部分を、一次受付と呼んでいます。その一次受付をしっかりと、仮想人材が対応します。さらに一次受付後に、このようなタスクが必要だということでタスクを整理するわけですが、そのタスクにおいて、人間と仮想人材がコラボして、一部のタスクに関しては自動実行してしまいます。

結果として、もともと人間が5人ほど働いていた業務が、最終的には人間が1人で仮想人材が4人といったかたちでも、同等の作業ができるようになります。人間が稼働する内の20パーセントから80パーセントを、仮想人材が代替するといったことが実現できるサービスになります。

仮想人材派遣の共同事業立上の例

仮想人材派遣に関しては、スライドに示している対象を重点ターゲットとしており、現在はアビストと丸紅情報システムズとの間で共同事業を立ち上げています。その他に、スライドには記載していませんが、丸紅情報システムズ以外の大手商社とハードウェアのメンテナンスについてAEIを適用する事業を進めています。事業の進み具合に関しても、後ほどご説明します。

仮想人材派遣を絵空事にせず、ご案内した3社とともに、現在の進行期から新しくサービスを立ち上げようとしていることをご理解いただければと思います。

第4世代AIへの注目の高まり(1/2):文科省系シンクタンクの見方

事業環境についてご説明します。冒頭にもお話ししたことですが、第4世代AIとは私たちの造語ではありません。あくまでも、文部科学省がCRDSという政府系シンクタンクの中で、人工知能研究の新潮流について戦略化していく中で、第1世代、第2世代、第3世代の良いとこ取りをしてまとめていくAIを、第4世代として定義したものがベースとなっています。

また、戦略プロポーザルの中では、第4世代AIというかたちで、第1世代、第2世代、第3世代を組み合わせる潮流だけではなく、従来のディープラーニングが持つブラックボックス的な面において、信頼性が高まらないという課題を解決し、信頼されるAIを作るという2つ目の潮流があります。

それらの潮流を解決していくことが、今後10年間で日本が取り組んでいくべきこととして、スライドにまとめています。

第4世代AIへの注目の高まり(2/2):経産省系機関の見方

こちらは、経済産業省のNEDOにおける今後10年間のAIアクションプランをまとめた資料です。

大切に取り組んでいかなくてはいけないAI技術開発のポイントとして2つ挙げられているのが「意味理解のAI」「演繹と帰納の融合」です。このあたりは、先ほどの文部科学省のCRDSが提唱する「第4世代AI」や「信頼されるAI」の内容に完全に合致しています。

文部科学省と経済産業省を合わせた産学両面の分野で、今後日本が10年間のスパンで戦っていかなくてはならない領域として、「第4世代AI」や「信頼されるAI」が掲げられているとご理解ください。

CRDSによる第4世代AIの定義

文部科学省の資料から、第4世代AIの定義に関するスライドを引用したものです。第1世代、第2世代と第3世代を足したものが第4世代AIであるという、先ほども出たお話の再掲になります。

AIの技術動向とAEIの位置付け(1/3) 精度と解釈性の2つが大切

現状のAIについて、今まで第1世代、第2世代、第3世代とご説明してきましたが、AIの評価軸には大きく2つあるということについて、みなさまにご理解いただけるよう、スライドのグラフに基づいてご説明します。

縦軸の「モデルの精度」とは、産業適用した際に、いかにタスクの精度が高くなっているか、正確に意味の理解がなされているか、という意味理解のレベルを示します。

横軸の「モデルの解釈性」については、意味の説明可能レベルと記していますが、先ほどの文部科学省の定義での「信頼されるAI」が、ちょうど横軸の意味そのものになっています。

横軸の左側はディープラーニングがブラックボックス的な状態であるのに対して、右端に行けば行くほど、より中身を見える化して、説明可能で信頼性が高い状態にでき、中身もチェックできるかたちになるという軸になっています。

ちなみに、33ページの出典である文部科学省の「人工知能研究の新潮流」という資料の中では、「信頼されるAI」を構成する要素として、ブラックボックス、脆弱性、バイアス、品質補償、フェイクのようなものが、克服していかなくてはならない課題だと定義されています。

横軸に関しては、そのような5つの要素で指摘されるようなブラックボックス的な部分を見える化し、その上でしっかりと信頼性の高い状態を作り上げていくかたちを表しています。このようにご理解していただけると一番正確かと思います。

こちらは論文もあるのですが、縦軸と横軸で評価した時に、理論的にはディープラーニング的な手法にこだわる限りは、解釈性を上げようとすればするほど、グラフ上の赤色の点線に従って精度が落ちていく、要はトレードオフになるといった関係があると言われています。こちらについては参考論文を見ていただければと思います。

スライド右下のナレッジグラフの例をご覧ください。第1次・第2次AIブームはルールベースだとお伝えしました。人間がルールを手作りしていくところで知識を見える化し、構造化したものが代表例として挙げられています。

今お話ししたようなブームはディープラーニング以前にもありました。しかし、当時はコンピューターの処理能力が足りず、クラウドソーシングのような手法もありませんでした。そのため、なかなか精度を上げることができず、スライドに記載のようなポジショニングになっています。

2軸の中で、第1次・第2次AIブーム、ライバルとしての第3次AIブームがご覧のようなポジショニングだということは、第4世代AI、つまりAEIを評価していく上でも重要であるとご理解ください。

AIの技術動向とAEIの位置付け(2/3) 現在の主要技術の流れと課題

世の中のトレンドについてです。ディープラーニングは「べき乗則」で、規模を大きくすればするほど精度が上がっていくといわれています。そのため、「Microsoft」「OpenAI」「Google」などが競い合って規模を大きくし、精度を高めようとしています。

規模に関しては、大きく3つの要素で構成されています。「購入されるデータの量」「AIを学習させる時のパラメータ数」「投入する計算資源」の3つの「べき乗則」に比例するかたちで、精度が上がっていくことが経験則としてあります。

ただし、データは無限に用意できるわけではありません。ある論文に「データは無限に存在せず、どこかで枯渇する」という主張がありますが、過去のデータで未来をすべて記述できるわけではないため、どこかで壁にぶつかります。それが現在の動きです。

「ChatGPT」は、この「べき乗則」を突き詰めようとしています。また、「ChatGPT」の3倍の性能だといわれるGoogleの「Sparrow」も、同様の動きだと考えられます。

ディープラーニングはブラックボックス化しているため、見える化しなければなりません。説明可能なAI、Explainable AI(XAI)の動きもありますが、パラメータが効いているかなどを調べているだけでは、本当の意味での信頼性が高まりません。したがって、こちらも壁にぶつかります。また、形式論理を融合させる話もありますが、元々のディープラーニングにブラックボックス化しているところがあるため、部分的に融合させても限界があります。

現在、世の中の多くのAI企業がディープラーニングに注力していると思いますが、今ご説明した流れに概ね当てはまるのではないかと考えています。

第1次・第2次AIの、ルールベースで積み上げていくナレッジグラフの部分に関しては、機械学習との融合に力を入れて取り組んでいます。しかし、見える化する際の意味の欠落や意味の解像度の低さが壁になり、精度が上がりにくいことがトレンドになっています。

AIの技術動向とAEIの位置付け(3/3) AEIの独自工夫のポイント

ディープラーニングとナレッジグラフのトレンドを踏まえた上で、AEIがどのようなものなのかについてご説明します。特許のところでもご説明しましたが、AEIは「ナレッジグラフ」の技術をベースとしています。

意味を見える化し、まずは信頼性をホワイトボックスのかたちで担保するところからスタートし、3つの工夫により精度を上げていきます。最終的にはディープラーニングにおけるブラックボックス化での信頼性の低さを改善します。「特定のジャンルに絞り込む」という限定付きではありますが、ディープラーニングを凌駕するかたちになります。

3つの工夫というのは、推論効率の向上になります。「推論」とは、既存の知識を使って新しい知識を導き出すことです。勉強に例えると、ポイントをつかんで応用して未知の問題も解いていくといった、天才の勉強方法のようなイメージです。一方で、ディープラーニングは、データを丸暗記するイメージです。

私たちは「意味の欠落の低減」「意味の解像度向上」、同じ意味であれば同じかたちにする「意味表現の正規化」や、曖昧に捉えられることが多いものをモデル化し、それに基づいて正確性を向上させる「コンテキストの正確性向上」をベースとし、推論効率を向上させています。これらはすべて、N4やPSFデータで実現しています。

また、意味をきちんと見える化し、知能をPSFデータとしてモデル化しているからこそ、部分的に更新することができます。

機械学習の部分適用に関しては、例えば人間でも、直感的に判断すると「そこは言語化できない」ということが起こります。全体を見える化した中でも部分的な自動化、「スモールブラックボックス」があるということです。

また、見える化して精度を上げていく部分で、私たちは機械学習を随時活用しています。全体の見える化や信頼性を担保した中で、機械学習とも融合させていく方法により、精度の向上を実現する構図になっています。

当社事業に対する社会的ニーズ

当社事業に対する、社会的ニーズについてです。IoT・AIにおいては、2030年にGDPを約132兆円押し上げる効果があります。また、AIビジネスの国内市場に関しても2兆円超の規模があり、AI・IoTを中心に社会的ニーズが高まっているとご理解ください。

AEIが狙う市場①:技術的に困難である分、代替できる市場は巨大

AEIが狙う市場として、TAMやSAMについてご説明します。まずTAMとは、ある市場の中で獲得できる可能性のある最大の市場規模、つまり商品・サービスの総需要のことです。

これまでご説明してきたAEI、つまり仮想人材が対応できる職種として、情報通信業の6割から7割は運用保守という話もあります。教育学習支援業や事務作業、セールス・プロモーションの部分に関して、一定の割合を効率化できると見込んでいます。そこから計算すると、約94兆円の莫大なTAMがあるということです。

第4世代AIの領域に関しては、今後日本が10年間で勝負すべき領域だと考えています。難しい分、実現した時のインパクトも大きいとご理解ください。

専門的・技術的な職業従事者には、他にも対象にできるものがありますが、産業的に特定することが難しく、対象外としています。また、AIは日本語だけではなく、英語や各国語にも対応しますが、概算が難しいため対象外としています。

AEIは非常に汎用性が高く、今後10年から20年で起こる1,000万人規模の人材不足の救世主になり得る技術だと、ご理解いただければと思います。

AEIが狙う市場②:SAMレベルでも市場は巨大

Serviceable Available Market(SAM)についてです。こちらは、TAMの中でターゲティングした部分の需要です。パートなどの雇用形態で部分的に働いている方々の仕事に関しては支援できると考え、SAMのターゲットとして想定しており、約25兆円の市場があります。物理的な身体を持たず、ロボットなどと連携しなくても業務を完結しやすい職種を中心に選定したSAMの計算になります。

中長期的な成長イメージ

成長戦略についてご説明します。冒頭にお話ししたソリューション提供事業の中で、SaaS的なサービス型と受託的なプロジェクト型の2つがあります。プロジェクト型という受託開発で足元の基盤をしっかりと固めながら、サービス型を展開することで成長させていきます。

AEIは、基本的に「仮想人材派遣」や「シェパードシリーズ」のようなサービスになりますが、サービスを開発するためのプロジェクトは、プロジェクト型として位置づけています。そのため、最終的にはすべてがサービス型になりますが、AIに関連してはプロジェクト型も一部含まれることになっています。プロジェクト型が98パーセントでサービス型が2パーセントでも、AEI関連が11パーセントあるのは、そのような事由になっています。

経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標と考え方

私たちは中長期的に営業利益の成長率を見ていきますが、短期も含めて常に見ているのは営業利益成長率、売上高成長率、売上総利益率であり、この3つが重要指標です。

なぜかというと、中長期的に営業利益を伸ばしていくために、AEIにしっかりと投資していきたいためです。それには売上を伸ばしながら売上総利益率をしっかりコントロールしていくことが大事だと考え、重要指標としています。

参考指標としてリピータビリティ、つまりお客さまからの信頼をいかに獲得して継続していくかや、AEIなどのサービス型の比率を高めていくことも見つつ、最終的には3つの重要指標へコミットしていきます。

経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標と考え方

先ほどお話しした指標の具体的な数字です。中期経営目標として4ヶ年のCAGRを出しています。

営業利益成長率は80パーセント以上、売上高成長率は約40パーセント、売上総利益率は66.4パーセントと高水準になっていき、継続的な顧客への売上比率は同程度の70パーセントを維持します。また。AEI関連売上比率は一気に40パーセント超となり、サービス型売上比率も3分の1まで達するものと考えています。

期間別の成長戦略の概要

先ほど、短期・中期・長期の成長について説明する中で、中長期で見るのが営業利益成長率で、常時見るのが売上高成長率と売上総利益率だとご説明しました。

その中で、シェパードシリーズと仮想人材派遣に関連するものが、実際に伸びていきます。プロジェクト型は安定的にしっかり伸ばし、シェパードシリーズは事業化を図って横展開し、その上で周辺ニーズに対応していきます。

一方で、仮想人材派遣については業務提携先と事業を立ち上げます。かつ、AEIの中核技術をSaaSで展開したり、PaaS化したりして、私たちのサービスやプラットフォームを他社に使ってビジネス展開する仕組み作りを考えています。また、さまざまな対象にAEIをOEM提供するかたちで広げていくことも考えています。

中期経営目標(2026年10月期)の重要KPI

これまでのご説明を踏まえて、私たちは2023年1月25日の株主総会および事業報告会において、2026年10月期中期経営目標を新たに発表しました。

先ほどお話ししたように、営業利益成長率CAGRが81パーセント、売上高成長率CAGRが40パーセント超という、非常にチャレンジングな目標になっています。

スライドのグラフの青枠で囲んだ部分に関してです。AEIを活用したサービスを立ち上げたいということで、こちらの目標を設定しました。

「AEIで勝負する」と再三ご説明していますが、内部的にはこのような数字目標を持ち、コミットして進めてきました。数字を隠して事業を展開するのではなく、このタイミングでしっかりとみなさまにも共有したいと考え、AEI関連売上比率も含め、売上高、営業利益、売上総利益率、営業利益率を数字ベースで開示しました。

また、2022年12月14日に業績予想を発表しました。創業以来、事業計画も毎年100パーセントを達成していますので、確実に達成する義務があると捉えて取り組んでいます。

業績予想と中期経営目標は位置づけが異なるものとご理解ください。

中期経営目標の位置づけと数字的な特徴

中長期の到達目標を明確化しました。私と森の代表取締役両名は、中期経営目標にコミットしています。中期経営目標の位置づけは、AEI成功時の標準的な成長シナリオになっています。

先ほど強調してお伝えしたとおり、こちらは業績予想とは別物となっており、非常にチャレンジングな目標だと捉えていただければと思います。

スライドには「2025年10月期から利益率が大幅に改善」「2025年10月期で固定費が前期に比較して減少」と記載していますが、47ページのグラフでご説明すると、2025年10月期に営業利益率が前年の18パーセントから33パーセントに伸びています。また、2026年10月期には50パーセントにまで急伸します。こちらは、後ほどご説明する技術ロードマップに従って進化を遂げています。

スライドに「2025年10月期で固定費が前期に比較して減少」と記しているのは、2024年10月期は重点的にAEIへ投資するためです。ここでしっかりと投資を行うからこそ、2025年10月期以降が伸びるとご理解ください。

中期経営目標の設定根拠

中期経営目標の4年後の数字について、いくらお話ししていても説得力は増しません。私たちは投資家のみなさまにご理解いただくために、目標設定に関する主要な根拠をスライドにまとめました。

まずは、技術的側面です。後ほどご説明しますが、AEIの技術的なロードマップを示しています。また、先ほどご説明したように、汎用性の高い特許も取得しています。

技術的なポジショニングの優位性では、ディープラーニングや第1世代・第2世代のルールベースに対抗しながら、AEIをきちんと伸ばしていくかというポジショニングを取っています。

次に、リソース面です。先ほどもご説明したように、必要人材の確保状況が順調であること、中期経営目標の2026年10月期までの期間限定ですが資金が確保できていること、資金調達の多様性を確保できたことなどから、リソース面に関しても隙がないと考えています。

冒頭にもご説明しましたが、私たちは主要な経営リーダー3人で、3分の2程度の株式を保有しています。AEIで世界一になるための資金調達がしやすい面が、プラス要素としてあると見ています。

マーケティング面に関しては、アビストおよび丸紅情報システムズと連携しながら行っています。加えて未発表が1社、商談中が1社あり、そのような流れの中で設定根拠があるということです。内部的にも、経営目標の数字をしっかりと作り込んだ上で発表しています。

中期経営目標達成に向けたAEIの技術ロードマップ

技術的ロードマップについて、ご説明します。今期は新興期をはじめとし、ホップ・ステップ・ジャンプの3段階で伸びていきます。

今期から仮想人材派遣のサービスが部分的に開始され、翌期には安定運用が開始されます。3年目以降には、一気に規模が拡大します。提携パートナーは、今期は3社から5社です。最重要分野に限定しつつ、パートナーも段階的に増やしていきます。

30ページでご説明したとおり、問い合わせが来た時に、お客さまが何を求めているのかを把握し、同意を取るところまでを1次受付と言います。

こちらを徹底的に自動化するのが1つ目のステップ、一次受付をした後にタスクを切り出し、自動実行する度合いを高めるのが2つ目のステップです。「問い合わせ受付後のアクション実行」は、今お話ししたような2段階で進化していきます。

スライド右側の「他分野・業界への初期導入時の設定」についてです。後ほどご説明しますが、AEIの仮想人材派遣は他分野へ進出していきます。

ただし、人間も転職すると勉強し直さなければなりません。今は手間暇がかかりますが、3年目以降には高度に自動化していきます。仮想人材派遣の展開スピードは3年目以降から上がるため、2025年以降の数字が劇的に改善し、高くなっているという構図になります。

AEIを利用したシェパードシリーズの事業化検討

AI技術を活用したシェパードシリーズについてご説明します。スライドに記載の「シェパードHR」は、シェパードシリーズの中でも、特に求人広告を対象にしたものです。広告説明文章などにおいて、労働条件などに関する法令等への適合性がしっかりしているかどうかをチェックするツールになります。

シェパードHR:求人広告のチェックを自動化

求人広告・記事を制作すると、人が誤字脱字をチェックする流れがあります。その中で「シェパードHR」は、ガイドラインや法規制に適合しているかどうかをチェックします。具体的には休日日数や賃金、労働時間をチェックします。

シェパードHR:利用イメージ

求人広告はご覧のようなかたちで、フリーフォーマットで書かれています。「シェパードHR」は、その意味を人間のように理解し、スライド右側のフォームに転記します。

求人広告の項目には、数字がきちんと分かれて入力されています。数字を正しく入力するためには、フリーフォーマットの中で表現された意味を理解しなければなりませんが、AEIがしっかりと意味を理解しているからこそ、空欄を埋めることができます。

法規制やガイドラインのチェックも、きちんと意味を捉えているからこそ正確にできることですので、非常に質が高い作業が可能になります。

シェパードHRの従来技術との違い

先ほど、同じ意味であれば同じかたちになるという「情報の意味表現の正規化」がポイントだとお伝えしましたが、空欄にきちんと入力できることが重要になります。

他社の多くが「このような表現は良くないね」という、誤字脱字のチェックのみをしているのに対して、私たちが法令・規約への適合チェックや、曖昧な表現のチェックにまで踏み込むことができるのはAEIの正規化によるもので、それが従来技術との最大の違いだと考えています。

シェパードシリーズの特徴と強み

「シェパードHR」のチェック制度は、結果として80パーセントを超えています。「まだ、80パーセントなの?」と思われるかもしれません。しかし「シェパードHR」ができないものは、人間が判断しても「これは曖昧で、どっちとも取れないよね」と、原稿を見直さなければならないものばかりです。

したがって、基本的に「シェパードHR」は人間と同等のチェック精度だと認識していただいて良いと思います。

仮想人材派遣の適用範囲の更なる拡大

仮想人材派遣についてお話しします。スライドの表は、仮想人材派遣において先行している製造業、メンテナンス業界から、メディア・広告、コールセンターへと適用範囲を一気に拡大することによって成長していくことを表したものです。

AEIを活用したその他の事業展開

AIを活用した、その他の事業展開についてです。業務提携先とさまざまな事業を立ち上げていますが、サービス立ち上げ前から先行して開発ライセンスを供与し、イノベーションを起こしていることによる収入があります。

また、「仮想人材派遣」における中核技術、各種のAPIを個別に提供するかたちでの利用料収入も、将来の収益として見込んでいます。

資金使途

今回、IPOで資金調達したものに関しては、主にAEIの研究・サービス開発費用に投資します。プロジェクト型・サービス型ともに技術陣をしっかりと整備することにより、成長していくことを想定しています。

事業とのリスクと対応方針

事業とのリスクと対応方針です。私たちは、イノベーティブに新しいことを立ち上げようとしています。そのため、「ChatGPT」などと差別化し、産業適用をしていく部分で、リスク要因を意識しなければなりません。

また、さまざまなビジネスに産業適用していく中で法的規制があったり、事業開発していく中で大きい壁にぶつかってしまったりすることは、主要なリスク要因として挙げられると思います。

現在、人材確保に関しては順調ですが、今後事業を拡大していくにあたり、そのペースを継続できるかどうかもポイントになります。また、当社は世界初というところで、特許を中心に知的財産権を保全していかなければなりませんので、意識すべき点だと考えています。

SDGsへの貢献

SDGsだけではなくESGも踏まえて、未来に向けてどのように貢献していくかについて、ご説明します。

私たちは、主に仮想人材、パーソナライズ要約、啓林館プロジェクト、プロジェクト型全般、シェパードシリーズといった技術やソリューションにおいて、「3.すべての人と健康に福祉を」「4.質の高い教育をみんなに」「8.働きがいも経済成長も」「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」という4つの部分にかなり高いレベルで貢献できると認識しています。

ご説明は以上です。みなさま、ご清聴ありがとうございました。