ローソク足を発明した日本人は、すごく真面目で研究熱心

福井恵美氏(以下、福井):それでは、あらためて「今の私たちができることって、どんなことがあるのかな?」と考えていきたいと思うんですけれども。

例えばみなさんがご存じのとおり、チャートとかで出てくる「ローソク足」って、日本で開発されたものなんですね。江戸時代の米相場が発端になっているんですけど、「酒田五法」というテクニカル(分析)もあったりして。こんなに世界中で愛されているチャートの「ローソク足」も、日本が発祥という。

投資をされている方は、一般常識みたいな感じなんですけど、私は投資を勉強し始めた時に、歴史がすごく好きなので「こういうのって、日本人が開発したの!?」みたいな感じですごく嬉しかったし、日本人としてちょっと誇らしかったので。

やっぱり日本人って、すごく真面目ですし、最上思考だし、研究熱心だし。こういうのを分析したりするのも、得意な気質を持っていると思うんですね。なので、研究熱心な気質を傾ければ、投資の世界とかでも、もっと日本人は活躍できるんじゃないかと思っています。

子どもは、いったい何歳から投資できるのか?

福井:では「そもそも子どもは、いったい何歳から投資できるのか?」という話なんですけれども、原則、未成年でも投資はもちろん可能です。極論は0歳からでもできるんですけれども、未成年での口座開設には、親権者の同意を必要とするのが一般的です。親権者の同意書とか、住民票とか戸籍とかそういうのを用意すれば、子どもでも口座開設はできます。一応、親権者も口座開設が併せて必要だというのと、入金が必要です。

成人になってしまえば、そういった制限がなくなるので、戸籍謄本とかを出さなくても済みます。金融機関によっては、年齢を満たしていても「貯蓄とか定期的な収入がない」という理由で、口座開設の審査が通らないこともあるんですけれども、基本的にはできます。

(スライドを指しながら)あと、これは金融庁が出しているマネー教育の「マネビタ」というe-ラーニングのサイトがあります。「投資の勉強、何から始めたらいいかわからない」という場合とか、こういったところから入っていくのもすごくいいなと思います。

あとは「金融と経済を考える」というので、高校生の小論文コンクールもあります。金融担当大臣賞をとられたものだと、「父を見て学んだ経営者の姿勢」という、大分県の人の作品が優秀賞に選ばれていたり。

個人的にすごくおもしろいなと思ったのは、「信長の資金調達と現代の日本経済」というもの。興味深いと思って(笑)。私が学生の時だったら、もっとこういうのにチャレンジしたかったと思います。

アニメやゲーム、映画で学ぶ金融リテラシー

福井:(スライドを指しながら)あとは実はこういったアニメもあるんですね。幼稚園児向けとか小学生向けとかのものがあります。中身がすごく昭和な感じでシュールなんですけど『UFOに捕まった子どもたち』という題名のヤツとか(笑)。

あとは『ホシガリ姫の冒険』というのがもう1つと、『100万円あったら、どうする?』というのが金融庁から出ています。こういうのも、幼稚園や小学生のお子さんがいらっしゃる方が、一緒に見たりするのもおもしろいと思います。

あとは、実際に私もちょっといじったりしてみたんですけど、高校生がダウンロードしていることがすごく多いアプリが、『株たす』という株のシュミレーションゲーム。チャートがバーッと動いていって「ゴールデンクロスが発生しました! どうする?」みたいなのが出てくるヤツです。

無料でできるので、ぜんぜん入金とかしなくてもいいんです。これ「IPO投資、当選するか? しないか?」みたいなのとか、カレンダーが出てきて実際の企業名も出ていて、すごくおもしろいですね。ゲーム会社が元で作っているんですけど。

あとは、家族で楽しめる金融ビジネス映画。さっき解説したような、家庭科とかで堅苦しい話を聞くよりも、家庭の中でこういうのから入っていったほうが、興味を持ってもらえるんじゃないかと思っています。

私が最近見たヤツだと、Netflixにもあるんですけど『ビリオンズ』という映画。これは「独立系のヘッジファンドマネージャーと、SECというインサイダーを取り締まるようなところとの、バチバチの戦い」みたいな(笑)。シーズン5くらいまで、ずっとバチバチに戦っているみたいなのがあるんですけど。こういうのもたぶん、投資を勉強し始めたからすごくおもしろいなと思っていて。

昔はSECとかまったく知らなかったんですね。でも1年半くらい前に暗号資産を投資で始めてから、「リップル」というのを当時は持っていたんですけど、そこがSECとめちゃくちゃ戦っていたんですよ。「その戦い、なんで?」みたいな(笑)。その戦いによって、めちゃくちゃ下落したりとか、それがちょっと進展したらまた上がったりとかして。「すごい。これでこんなに値動き変わるんだ」とか思っていました。「最初からこの映画を見ていたら、『SECってこういうことなんだ』みたいなのがもっとわかったな」と思ったりもしています。

でも自分がビジネスとマネー系の(映画)を見るのが好きで、いろいろ見た中で一番好きなのは、『ウォール・ストリート』の新しいほうのヤツですね。「これ、見たことあるよ」という方は?

(会場挙手)

3分の1くらいですかね。『ウォール・ストリート』は昔のヤツと今のヤツがあるんですけど、どっちも見た方がおもしろいんですけど......今のヤツはすごくおもしろいです。

あとは『国家が破産する日』は、韓国を取り上げたアジア金融危機の映画ですね。日本も渋沢栄一とか(の映画も)あるし、五代友厚とかの映画もすごくおもしろいです。

福井氏が学生時代に出会った、とある先輩のエピソード

福井:あとは、ふと思ったのが、ここでこうやって投資家バーとかにいろいろと来させていただく中で「この投資家の方、やっぱりすごいなぁ」と思うケースって「学生時代から投資を始めてました」という方が、すごく多いですね。「大学生から始めていて、何億円、何十億円もやってます」みたいな方とか......。

「私も大学の時に投資やってればよかったな」って、いまだにすごく思うんですけど。その当時は商学部に通っているのに、まったくぜんぜん簿記も「右から左」みたいな感じで。「もっとちゃんとやっとけばよかったな」って。

でもやっぱり「机上の空論よりも、絶対に実弾でやっていたほうがおもしろかったんだろうな」と思うし、その当時、同志社の先輩で株をやっている先輩が1人いたんですよ。「何やってるんだろう?」と思って見ていたんですけど。

(先輩は)22~23歳くらいで就職してからすぐに、ソフトバンクかなんかの株をけっこう買っていて。大学の時に、いつもデイトレードをやっていて。レンジローバーの車とか、バーンって買ってたりしていて。「先輩、これ、すごいですね!」みたいな話をしてました。

「なんでこれ(株式投資)、始めたんですか?」って言ったら、先輩は名古屋の資産家の息子さんだったんですね。お父さんとかに「始めたら?」みたいな感じで大学の時に言われて、最初は100万円だけもらったらしいんですね。それをもらえるだけ、めっちゃいいなと思うんですけど(笑)。「それを元手に始めた」みたいな方がいたりとか。

あとは投資家の方とかだと「おじいちゃんが亡くなった時に、棺桶に『四季報』が入ってて。それで、おじいちゃんの影響で大学生の時に投資を始めました」みたいな方もいたし。あとは大学の時に「株サークル」を始めて、今はけっこう有名な投資家になっているみたいな人もいるし。学生時代の吸収力って、すごいなぁと。

あとは、投資家バーに1回1人で来た時に「僕は今日、北海道から来たんです」みたいな北海道大学の学生さんがいたんですよ。お話ししていて「偉いなぁ」と思ったのが、ちゃんとバイト代を全部投資に回して、お父さんお母さんも「学費とか、自分でも払いなさい」みたいな感じで......。ちゃんと配当も払えるヤツとか、「僕、こういうのやってるんです」とか、いろいろ解説してくれたりして。「偉いなぁ」と思ったので、学生のうちからやるのは、すごくいいと思います。

ワーク「今日から家で、こんな金融教育ができるかも」

福井:ではここでワークとして、お隣りの方とか正面の方とかで「今日から家で、こんな金融教育ができるかも」「これから家族を持った時に、こういうことをやってみたいかも」みたいなあなたのアイデアを、3分くらいでぜひディスカッションしていただければと思います。

【ここで参加者のディスカッションパートを挟む】

福井:それでは終了してください。では、今ディスカッションしていただいた中で「こんなアイデアが出ました」というのをお話ししていただければと思います。

参加者1:やっぱり、実践でやらせてみる。少額から保護者同伴というかたちで、小さいお子さんでもやらせてみるのが一番かなと思います。

(会場拍手)

参加者2:やっぱり大きく株を買うとかそういうことは、まだ最初は難しいかと思うので、積立とか、ちょっとずつできることから始めたら良いかなという話になりました。

(会場拍手)

参加者3:投資って学校の授業とかでやると、けっこう難しいところから入ると思うんですけど、日常使っている化粧品とか(普段買ってる)お菓子の会社とかから買ってやっていくと、身近でけっこうやりやすいのかなと思いました。

(会場拍手)

参加者4:お互いに、自分の親の世代が「投資をやったら身の破滅(になる)」みたいなかたちで教えられているという捉え方があって(笑)。「絶対するな」みたいな感じで育てられているので、自分がようやくその呪縛から解けて、学び始めたところなので......。子の世代に伝える時には、自分も学びながら、同時並行でやるしかないという話をしていました。

(会場拍手)

参加者5:私も実際、こういう「株」という文字に大学でやっと触れたので。高校とかそれより下の義務教育の時代の時には触れてなかったので、こういうのに触れていたら、少しでもスタートするのが早かったのかなと思います。

福井:大学では、どんな感じで触れたんですか?

参加者5:大学は、ぎっしり活字でしかないので、正味、覚えて翌日には忘れました(笑)。

(会場拍手)

参加者6:事業をやっているほうに、事業投資というか自分の会社を動かして、お金を投資しちゃうんですけど、金融投資というのもちょっとずつやろうかなと思ったら、「ぜひやるんだったら、個人より法人のほうがいいよ」と教えていただいて(笑)。今、もうちょっと聞きたいなと思っています。

福井:投資家の、常連の方のアドバイスってことですね。ありがとうございます。

(会場拍手)

参加者7:金融教育というところで、しばらく前に大学生くらい(の方)から、「こういう仮想通貨の話があって、どうなんだろう?」とか、そんな話を聞いたことがあって。

「通常だとありえない儲け話」的な話だったり、そのへんって、「金融リテラシーがあれば、ある程度ジャッジできる。もしくはリスクがどれくらいあるか認識できるんだよなぁ」と思ったことがあるので、そのへんを若い時にいろいろ勉強ができたらすごくいいのかなと思っています。

(会場拍手)

福井氏が考える、11個の提案

福井:ありがとうございます。いろんな方のお話をおうかがいできると、「やっぱり、こういうふうにやってみよう」みたいな気づきもあるかと思います。

「実際に私がやるんだったら、どんなことをやりたいかなぁ」というので、いろいろ考えてみたんですけど、一緒にできることを11個くらい挙げてみました(笑)。

知識でいうと、机上の空論よりも現場体験というので、1番目に「一緒に投資をする」。

会社とか銘柄とかを「こっちとこっち、どっちがいい?」って......。例えば「飲料メーカーでコカ・コーラとサントリーだったらどっちがいい?」みたいな話をして「僕、こっち」と言ったら「選んだ理由をディスカッションする」だったり。

2番目は、家で「お店屋さんごっこ・商店ごっこ」をする。それで「儲けたのを小遣いにする」とかでもいいかもしれないんですけど。自分自身、子どもが2歳~3歳くらいの時に一緒に「お店屋さんごっこ」をしていて。ずっと領収書を作って、「領収書下さい」とか言って(笑)。なぜか「領収書にすごく敏感な子ども」みたいになっちゃったんですけど(笑)。そういうのができたりすると思いますし。

あとは、今日はお持ちしたんですけれども、ロバート・キヨサキとかのキャッシュ・フローのボードゲームだったり、6歳からできる投資ゲームというカード......。(実物を見せながら)こういうのとかも、玩具であったりして。中を見ると、アイス屋さんの株とかいろいろあったり、貸借対照表とか損益計算書とか、いろんなものが中に入っていたりして、すごくおもしろいと思いました。「モノポリー」とか、子ども時代にされていた方もいると思うんですけど、やっぱり大人になって「めっちゃいいゲームだな」と思ったりします。

3番目は、今日のこういう(イベントの)ような感じで、実際に起業家とか投資家とか、いろんな大人たちと直接触れ合うのも、すごくいい金融教育だと思います。

4番目は一緒に証券会社に行くとか。実際に行って、窓口の人にいろいろ教えてもらうだったり。

5番目は、毎月の明細整理を自分でやっている時に、隣にちょこんと座らせて。何をやっているかどうかはそんなに事細かに言わなかったとしても、感じるものがあると思うんですよね。それで家計を考えるとか。

6番目は、外国に連れて行くとか。7番目は、マクドナルドとかお店とか、見聞きするものを「ビジネスモデルってどうなってると思う?」って一緒にディスカッションするとか、考えたりとか。

8番目は、これは「心持ち」だと思うんですけど、「礼を尽くす」だったり、「クオリティ・オブ・ライフが高くなるようなお金の使い方」を一緒に考えたりとか。ただ「これが欲しいから買ってあげる」じゃなくて、より幸福度が高い使い方を一緒に実践するとか。

あとは、一緒に銀行に行く。これは自分自身も、金融教育というわけじゃないと思うんですけど、父親が自営で、何回も銀行に連れて行かれたんですね(笑)。すごく体感としてリアルな経験で深く記憶に残っています。

あとは「仕事の話を両親とする」とか。最後は、子どもが選んだ投資先がプラスになったら、「家族配当」みたいな感じで子どもに還元したりとか。そういうのも、一緒にできるんじゃないかと思います。

一番の複利は、時間と自己投資

福井:自分自身の実体験として、やっぱり一番の複利というのは、時間と自己投資だと思っています。学んだこととか、もちろん損することもたくさんあると思うんですけれども、後に100万円、1,000万円、1億円みたいなかたちで豊かな人生、人間関係と積み上がっていけば、それが一番の未来投資だなと思います。

私自身、夢の1つが、子どもと「小学生投資家」「起業家」みたいな感じで、YouTubeとかを一緒にやって、投資したいなと思っています。

あとは、日銀の隣に貨幣博物館というのがあるんですけど、そこにお子さんと行かれた方はいます?

(会場挙手)

すばらしいですね。あれ、すごくわかりやすい資料とかめちゃくちゃいっぱいあるんですよね。夏休みなので、一緒にそういったところに足を運んでみられるのもいいかなと思います。

日本の子どもたちが、みなさん、学生さんがマネーリテラシーを少しずつ身につけて、世界のマーケットをつかんで、荒波を乗り越えサバイブできるように、切に願っております。ここまでご清聴いただきまして、ありがとうございました。